『明治神宮 内と外から見た百年』  by  今泉宜子

明治神宮 内と外から見た百年 
鎮守の森を訪れた外国人たち 
今泉宜子(いまいずみよしこ) 
平凡社
2021年9月15日 初版第1刷

 

明治神宮について勉強したくて、図書館で「明治神宮」で検索したら出てきた本。

 

2024年に全国通訳案内士(英語)の資格をとって、ガイド登録していたのだけれど、仕事にはしていなかった。登録先から送られてくる仕事募集案件をながめつつ、ずーっと見送っていたのだが、ふと目についた都内観光案内の案件募集に応募したら、仕事が決まってしまった。こりゃ、ちゃんと勉強しなきゃ、、、ということで、ちょっと焦っているのである。試験対策で、表面的に勉強しただけで、人に語れるほど詳しくない。

ガイド用の案内書をちらりと見て、知らないことだらけであることに、ちょっとワクワク。あぁ、また楽しく勉強してしまえ!と。

 

と、本書の前に明治神宮の基本事項。
1.御祭神は、第122代天皇明治天皇と 昭憲皇后。
2.創建 1920年大正9年) 11月1日
3.広大な鎮守の杜は、造成された人工林

と、まずもって、こんな基本的なことも知らなかった。。。何度も足を運んだことがあるのに・・・・。ははは・・・。私の明治神宮への興味なんてそんなものだったのだ。

それを、人に案内できるほどに学ぶのだから、こりゃ、一つ大きな目標ができた。この歳になって、目標をもって学べるのは幸せなことである。

 

本書は、2020年の明治神宮鎮座百年祭りの翌年に出版された新書。表紙裏の説明には、
” 2020年11月1日 明治神宮は鎮座百年祭を静かに迎えた。 
近年、外国からの訪問客が参拝者の多くを占めるこの森は、日本における世界の窓、世界における日本の窓でもある。 飛行機乗り、革命家、占領者、日系移民、大統領など、百年の間に 明治神宮を通り過ぎていった外国人たち。 明治神宮を舞台に日本と世界が交錯する百年の物語。とある。

 

著者の 今泉さんは1970年 岩手県生まれ。 明治神宮国際神道文化研究所主任研究員。 東京大学教養学部 比較日本文化論学科卒業後、 雑誌編集者を経て、 國學院大學神道学を専攻。 2000年より 明治神宮に奉職。

 

はじめに
序章 明治神宮の誕生
第一章 世界が空に夢中だったころ
1、航空界の夜明け
2、空の大航海時代
3、親善の翼から航空戦力へ

第二章 独立運動の志士は祈った──革命家たち
1、鎮座二十年、皇紀二千六百年、幻のオリンピック
2、亡命タタール人が榊に託した日本との未来
3、大東亜会議の独立主義者と日本の結節点
1945│敗戦と明治神宮

第三章 スポーツの戦後と外苑の行方──占領者たち
1、明治神宮とGHQの人々
2、戦後スポーツの復活
3、その場所は誰のものか

第四章 絵画館にみる美術と戦争──続・占領者たち
1、外苑聖徳記念絵画館戦争画
2、占領下の絵画館とCIEの態度
3、美術をめぐる占領政策
1958│明治神宮の戦後復興

第五章 祖国への眼差し──日系移民たち
1、海の向こうから戦後復興を支えた移民たち
2、カリフォルニアのライス・キング国府田敬三郎の闘い
3、日系ブラジル移民と神社人たちの戦後史
1964│明治神宮とオリンピック

第六章 参拝の向こう側──大統領たち
1、国賓、外国人元首、王族たち
2、アメリカ大統領の参拝と明治天皇
3、チェコスロヴァキア大統領の訪日と大阪万博
4、平成・令和の即位礼と外賓たち
2020│100年目の明治神宮──結びにかえて

参考文献
[附録年表] 明治神宮を訪れた主な外国人たち 1920―2020


感想。
へぇ~~!マニアックすぎるけど、面白い。明治神宮についての本ではなくて、明治神宮にまつわる歴史とおとずれた人々の話。確かにサブタイトルに「鎮守の森を訪れた外国人たち」とあるので、その通りの本だった。外国人観光客に話して聞かせるにはちょっとマニアックすぎる話だったけれども、 ネタとしては面白い。 説明にあった 「飛行機乗り」 というのは、 空の旅の安全祈願に訪れた人たちのこと。 今では 飛行機に乗るからと言って安全祈願をする人なんてそうそういないだろうけれど、人類が初めて空を飛んで間もないころの話。 太平洋無着陸横断飛行という日本人の挑戦者は、命を落としているという話は、初耳だった。まぁ、そういう歴史があっての今の空の安全ということ。

リンドバーグ がニューヨークからパリまで単独による全人未到の大西洋無着陸横断飛行を成し遂げたのは1927年。もっと 昔の話かと思っていたけれども、 まだ100年も経っていないということ。こりゃびっくり。日本人も太平洋無着陸横断飛行に挑戦し、その前には明治神宮をお参りして、国中で盛り上がったらしい。

 

第二章の独立運動の志士というのは、第一次世界大戦から第二次世界大戦のころの話。1940年は、皇紀2600年、鎮座20年の記念の年で、明治神宮は年間を通じて 賑やかだった。
皇紀:初代天皇である神武天皇が即位したとされる年を元年とする日本の紀年法。西暦より660年大きい値。

 

明治神宮は鎮守の森の「内苑」とスポーツ文化施設からなる「外苑」が一体となって構成されている。これもしらなかった・・・。そして、外苑では、 1924年国民体育大会が行われた。第一回は、 内務省の主催で行われたが、 1926年に 体育行政事務が内務省から 文部省に移ったことで、学生生徒の参加不参加をめぐり 両者が紛糾した。 そこで 第3回大会から新たに設立された民間団体が主催することとなった。それが、 「明治神宮体育会」。

 

1940年は、 アジアで初めてのオリンピックが東京で開催されるはずだった。 1938年7月に返上したので、幻のオリンピックとなってしまったのだが。 外苑競技場はオリンピック 関係者が当初主会場として計画した場所でもある。

 

そういえば、国立競技場って、、、そうか、「外苑前」って、、、明治神宮の外苑だったんだ。そんなことも、今更ながら認識。数えきれないほど足を運んでいるのに、そんなこと気にしたこともなかった。

 

と、そんな戦時中ともいえる1940年、 満州国皇帝溥儀明治神宮に参拝している。 満州国皇帝陛下奉迎運動大会が、開催されたのだ。

いやぁ、しらなかったぁ!!

 

他にも、インドから日本に亡命してきた ラスビハリ・ボースも明治神宮に訪れた。後に「中村屋のボーズ」と呼ばれた在日インド人。中村屋カレーの父!

 

間に挟まれているコラム「1945 敗戦と明治神宮」では、GHQ明治神宮をどう扱ったかが語られている。国家主義神道を否定したGHQは、どうみたのか。戦後、日本の神社の取り扱いは、3つのカテゴリーにわけられた。

1  古代的起源に基づき 地方の守護神を祭った 大多数の神社
2  伊勢の大神宮のごとき 少数の 古代的宗教の神社
3  靖国、明治、乃木、東郷 その他の国家的英雄を祭る近代的神社

明治神宮は、当然カテゴリー3となる。 信教の自由な範疇で存続すべき存在ではあるが、微妙なところにあったのだ。判断は揺れに揺れた。神社界でも意見がわれた。潰されなくてよかった。


また、外苑には、聖徳記念絵画館がある。明治天皇昭憲皇太后の御聖徳を永く後世に伝えるために造営された、神宮外苑のシンボルともいえる存在、、、ということらしい。戦後、戦争画の扱いというのはなかなか難しいものがあったようだ。アメリカに移送されそうになった絵もあった、と。美術品の収奪というのは、ある意味戦勝国のやりたい放題の時代のなごりであってもおかしくなかったのだ。

 

明治神宮を訪れたことのある著名人。
アメリカ合衆国第39代大統領 ジミー・カーター(1979)
アメリカ合衆国第40代大統領 ロナルド・レーガン(1983)
・ アルゼンチンの作家 ホルヘ・ルイス・ボルヘス
・ 映画監督アルフレッド・ヒッチコック(1960)
・ フランス人 哲学者 ジャンポール・サルトル、 妻のシモーヌ・ド・ボーヴォワール(1966)
アメリカ合衆国第43代大統領  ジョージ ・W・ブッシュ(2002)
アメリカ合衆国第44代大統領   バラク・オバマ(2014)

トランプは、2019年に来日した際、安倍晋三元首相とともに六本木の炉端焼き店にはいったけれど、明治神宮への参拝はなかったらしい。

 

明治神宮は宗教絡みの視察先ととらえられることもあり、外賓の母国で、「キリスト教徒の・・・・なぜ異教の神様・・・」と問題視されることもあるため、賓客に神宮内のどこまで進んでいただくか、、など、神経をつかうところらしい。

 

アイゼンハワー明治神宮訪問は、日本国内での安保条約反対運動の激化で、訪日そのものが取りやめになったために、かなわなかった。東京大学学生の樺美智子が圧死した翌日、岸首相はアイゼンハワーの来日を中止した。

 

とまぁ、明治神宮というか、歴史の勉強になった一冊だった。

 

最後についていた年表から、歴史と明治神宮にまつわるところだけ抜粋
1920年11月1日  明治神宮鎮座祭
1926年10月23日  明治神宮外苑奉献報告会
1931年 9月18日 満州事変
1937年7月7日  盧溝橋事件 日中戦争始まる
1939年9月1日  ドイツ軍 ポーランド侵攻 第2次世界大戦勃発
1941年12月8日 ハワイ真珠湾攻撃 日本 対 米英宣戦を布告
1945年4月14日  B 29 の爆撃により 明治神宮社殿炎上
1945年8月15日  終戦
1945年9月18日  憲法記念館を除く外苑全施設、進駐軍に全面接収 
1947年12月10日  外苑聖徳記念絵画館、接収解除
1952年3月31日  明治神宮外苑 全面接収解除
1958年11月1日  明治神宮本殿遷座祭 (奉幣の儀)
1964年10月10日  東京オリンピック大会開催
1989年2月24日  昭和天皇大喪の礼
1989年11月9日  ベルリンの壁崩壊
1990年11月12日  即位礼正殿の儀(昭和から平成)
2019年10月22日  即位礼正殿の儀(平成から令和)
2020年11月1日  明治神宮鎮座百年祭

 

この間、たくさんの来賓が表敬参拝している。2019年10月21日には、 ウクライナ国大統領 ボロディーミル・ゼレンスキーも表敬参拝している。コロナ前。ロシア侵攻前。

 

外国人観光客にも、日本人にも人気の明治神宮。その歴史を知ると、この先もずっと大事にしてもらいたいなぁ、と思う。読んでみてよかった。