『「夢のエネルギー」 核融合の最終回答』 by アーサー・タレル

「夢のエネルギー」 核融合の最終回答
アーサー・タレル
横山達也 監修
田沢恭子 訳
早川書房
2025年1月20日 初版印刷
2025年1月25日 初版発行
THE STAR BUILDER      Nuclear Fusion and the Race to Power the Planet (2021)

 

広告で見かけた。最終回答?!そこまできたの!?

私は、もし、もう一度学生に戻って社会人をやり直せるなら、「核融合」の研究をしてみたいと思っている。まったく、物理に詳しいわけでも、発電に詳しいわけでもないけれど、未来の地球に必要な技術は、培養肉でも、昆虫食でもなくて、エネルギー問題の解決にあると思っているから。遺伝子治療も、人工臓器も、エネルギー無くしては不可能。携帯電話もインターネットも、生成AIも、あらゆるものは電気がなくてはなんの威力も発揮できない。やっぱり、エネルギーでしょ!って思う。まして、日本は、エネルギー輸入大国だ。夢を夢で終わらせない、スタービルダーたちのお話。図書館で借りて読んでみた。

 

表紙の裏には、
”「 核融合は実現するはずです。ちゃんと起きるはずなのです」(本書より)
中国、 ロシア、 アメリカ、 EU、 インド、 韓国、 日本
核融合の実現をめぐり、 世界各国の政府系研究所や 国際機関、 そしてスタートアップ企業や投資家までもが参戦し、 熾烈な競争を繰り広げる現代。
いま、 最も勝利に近いプレーヤーは誰か? 本当に実現できるのか?
徹底した調査と取材で夢のエネルギーの最前線に迫る。”
とある。

 

残念ながら原書が2021年なので、翻訳書がでた2025年には、本書の中で述べられていたことが期待とはことなる形で終わりを迎えたところもあるのだが・・・。

 

著者の アーサー・タレルは、 イングランド銀行の金融安定性 リサーチ&データ シニアマネージャー 。インペリアル・カレッジ・ロンドンで慣性閉じ込め核融合の研究に従事し、 プラズマ物理学の博士号を取得。現在はデータサイエンティストと経済学を研究する傍ら、 核融合研究所のアウトリーチ活動を行っている。

監修の横山さんは、 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構那珂フュージョン科学技術研究所 研究員。2022年東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学 専攻終了。博士(科学)。若い!!んだろうな。

 

目次
プロローグ 突拍子もないアイディア
第1章 スタービルダー
第2章 恒星を作り、地球を救え
第3章 原子からのエネルギー
第4章 宇宙は恒星をどうやって作るのか
第5章 磁場を作って恒星を作る
第6章 慣性を使っ恒星を作る
第7章 新たなスター ビルダー
第8章 これはちょっと危険では?
第9章 核融合レースのゴール 
エピローグ  核融合をしない余裕はあるのか
謝辞
監修者解説
原注

 

感想。
面白い!けど、ぜ~~んぜんわかんない!!!っはっはっは!
技術の深いところはわからないけれど、それでも、読んでいるとドキドキ心拍数が上がるくらい興奮した。こんなにわからないことが、なんで面白いんだか?!だけれど、、、。

核融合でエネルギーをつくるという技術の難易度と、でも、それはできるはずであるということは立証されているということが、ワクワクしてしまうのだ。

 

ただただ、最高のエネルギーだと思っていたのだけれど、やっぱり、そんなに簡単ではないし、放射線が全くでないわけではない、ということが分かった。まぁ、自然界は常に放射線にあふれているわけなのだが。いわゆる核分裂反応を利用した原子力発電所とちがって、核融合核融合の連鎖を止めるのが簡単、いやいや、連続させるのが困難なので、福島第一発電所のような暴走は起こらない。止めようと思ったら簡単に止まる反応ということ。

 

そもそも、核融合とはなにか?それは、太陽で起きている反応。太陽のエネルギーの源泉が核融合太陽は水素をはじめとするガスでできていて、1500万度にもなる中心部では、水素の原子核同士が融合し、より重たいヘリウムの原子核に変わる。それが核融合。融合のときに大きなエネルギーが生まれる。

つまり、核融合でエネルギーをつくろうというのは、地球上に「太陽」=「恒星」をつくろう、ということ。

 

うん、ここまではわかる。要するに、すごい密度、すごい温度で、原子核が反応できるような条件を作ってやって、投入したエネルギー以上のエネルギーを生み出そう、ということ。

 

1500万度?!よくわからない温度である。でも、とにかく、核融合するときには膨大なエネルギーができる。でもって、放射性物質を燃料とするわけではなく、海水に含まれる原子でいいのだ。。。。太陽よりずっと小さな地球上で、燃料をプラズマ(電離ガス)状態に保つためには、太陽より更に高い温度にして、磁場などで封じ込めると「地上の太陽」ができる、ということらしい。

 

そもそも、恒星を地球上でつくるというアイディアは 1940年代からあった。「スターマシーン」だ。そして、それを目指す人々を「スタービルダー」と呼んでいる。

最も単純な核融合( 必要とされる 温度が最も低い)で 必要な2つの反応 物質は重水素三重水素 という特殊な水素原子。 重水素は極めてありふれていて、 バスタブ一杯の海水に5g 含まれていて、その抽出法もわかっている。 三重水素は ごく弱い 放射性を持つが、 崩壊するので地球上に大量には存在しない。 しかし鉱石や海水に含まれるリチウムから作ることができる。

リチウムや重水素が地球上から枯渇するのは、3000万年以上さきのこと。。。化石燃料とはけた違い。この、燃料が枯渇しないというのも核融合の魅力。

 

核融合の構想は、20世紀に原子の構造を発見した 物理学者の アーネスト・ラザフォードの登場から始まった。核反応をそれと知らずに成し遂げて、核融合反応と核分裂反応を発見した。それは、反応は起こりえるけれど、正味のエネルギーを得るのはとてつもなく難しいということをしめしていた。 ラザフォードは 才気煥発で革新的で勤勉な物理学者で 1908年にノーベル化学賞を受賞している。なんでも、ポテトマッシャーも彼の発明らしい。 仲間の物理学者 ニールス・ボーアによれば、「権威に敬意をほとんど抱かず、偉ぶった話しぶりには我慢ならない性分」だったと。

 

核融合の話には、「プラズマ」の話が欠かせない。プラズマは、原子が電離した状態。太陽からのプラズマが地球の磁場にぶつかると、極へ誘導されて、オーロラを発生させる。なんだかよくわからないけれど、飛んでいるやつ。核融合をコントロールするには、このプラズマをコントロールしないといけない。温度、密度、閉じ込めが必要な主要素になる。

温度や密度は、なんとなくわかる。閉じ込めというのは、オーロラみたいに好き勝手に降り注がないように、高エネルギー状態の原子核たちを閉じ込めるということ?!かな?ちょっと、このあたりの理解は曖昧。でも、とにかく、かってに外にとびだしちゃったら、エネルギーに変換できない、というのはなんとなくそんな感じがする。

 

核融合実験炉「欧州合同トーラス(JET)」では、1億5000万度に到達するのが理想。いったいどうやって、そんな温度測るんだ?とおもったら、やはり、そういう質問をした伯爵がいたらしい。答えは、核融合チャンバー内にレザーを発射して、ビームに含まれる光の粒子すなわち光子がプラズマ中で電子とぶつかった後、どのくらい変化するかを調べることによって計算する、だそうだ。まぁ、こう聞いても、チンプンカンプン・・・だけど、1億度を超えても温度を測る方法はある、ということらしい。

 

封じ込めの方法によって、いくつかの核融合炉の種類がある。磁場を使う方法、慣性を使う方法、、、。この辺りは、難しくてよくわからないのでさーーーっとよんだけれど、まったく異なる方法なので、ビデオのβとVHSみたいなものか?って、この比喩がわかるのも昭和世代だけか・・・・。磁場によって閉じ込める場を「トカマク」という。

 

磁場による 閉じ込め核融合は、 通常コンベアベルトが絶えず動いている テイクアウト用のピザのオーブンのように持続的に稼働する。 一方で慣性閉じ込め核融合はパンを焼くオーブンのようにバッチ処理方式で稼働する。米国の国立点火施設(NIF:National Ignition Facility)では、慣性閉じ込め核融合で開発を進めている。NIFでは、 太陽の中心の圧力 1000億 気圧を上回る気圧で、爆縮を行う事を目指している。

慣性閉じ込めと磁場閉じ込めの最大の違いは、核融合プラズマの維持される時間であり、 磁場は プラズマを永久に閉じ込められるのに対して慣性方式では1億分の1秒ほどしか 閉じ込められない。つまり、バッチ反応だ。

連続反応と、バッチ反応、どっちが大変かと言えば、、、安定運転状態が維持しやすいのなら連続だけれど、バッチのほうが、シンプルともいえる。炊飯器で、お米を炊くのはバッチ反応。これを連続で、24時間常に出来立てご飯ができ続けるような仕組みは、複雑になる、、、と言えばわかってもらえるだろうか・・・・。

 

慣性閉じ込め核融合のが、水素爆弾。一回、ドカンとやって、おしまい。 1952年に エドワード・テラーらが開発した、水爆実験。 オッペンハイマーらの反対を押し切って、水爆開発に走ったテラーの話が、こんなところに出て来るとは・・・。

megureca.hatenablog.com

 

水素爆弾は、最初に原爆の爆発を起こして、そののちに核融合反応を起こさせるため、大量の放射線もでる。第五福竜丸は、原爆の1000個分の威力のある水爆で、被爆したのだ。そんな兵器、作っていいわけがない。。。核融合の誘発に原爆をつかうのが水爆。核融合によってさらに強力な衝撃波や熱放射が発生し、それを閉じ込めないから、爆弾になる。

 

磁場閉じ込め、慣性閉じ込めの他にも、液体金属で閉じ込める方法など、新しいスタービルダーの挑戦が続いている。あるいは、燃料も、重水素三重水素ではなく、通常の水素を使う方法の開発なども。

 

第8章では、核融合にまつわる安全性への疑問の答えが述べられている。第8章を読むだけでも、メカニズムはわからなくても、原子力発電との違いがわかる。原子力発電、つまり核分裂反応を用いるときは、原料にも放射性がある。核融合につかう重水素は、放射性があるといっても、非常に弱く、皮膚表面の死んだ細胞の層すら透過しない。核融合の実験所で働く人々の浴びている線量は測定できないほどに低い。

 

かつ、水力発電、石炭発電、どのような電力源でも危険がゼロなわけではなく発電所建設、ダム建設など、関わるあらゆる局面での死亡者数を統計的に比較すると、エネルギー生産あたりでいえば、水力発電の方がダム決壊による事故によって、その死亡者数はチェルノブイリ原発事故を換算しても、より高くなるそうだ。確かに、チェルノブイリ原発事故や福島原子力発電所のような事故があると、原子力が圧倒的にリスクが高いような印象を持つけれど、必ずしもそうとも言えない。風力や太陽光でも死者は発生しているのだ。


核融合にまつわる開発はこれからも熱い競争になるのだろう。日本だって、負けてないのだ。その話は、監修の横山さんが解説でのべてくれている。

 

核心の技術のことは、まだまだ理解できていないけれど、ちょっとずつ、核融合の話に出てくる言葉に聞きなれてきた。わからないなりにも、触れる機会を増やしていると、どこかで、あ!そういうこと!って、なる日が来る、、、と信じて、これからも機会があれば核融合の話に触れていきたいと思う。日本も、臨界プラズマ試験装置JT‐60SA(トカマク方式/量子科学技術研究開発機構)を始め、開発は進んでいる。がんばれ~~!

 

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