わすれられないおくりもの
スーザン・バーレイ Susan Varlay さく・絵
小川仁央 訳
評論社
1986年10月10日 初版発行
2022年2月10日 92刷発行
BADGER'S PARTING GIFT(1984)
名作絵本の一つ。1986年初版とのことだが、絵は見覚えあるのだけれど、お話は知っていたような知らなかったような・・・。とあるところで話題になって、図書館で借りて読んでみた。英語版もあったので、日本語版とあわせて読んでみた。
英語で読むと、日本語で読むより外国のお話っぽい、、、って、当たり前だろ!って突っ込まれそうな感想なんだけど、やっぱり、ニュアンスがちょっとちがうんだよなぁ、という気がする。gingerbreadが、「しょうがパン」って訳になっているけれど、いやいや、ジンジャ―ブレッドはお菓子の一種だし、型抜きしている絵からして、ジンジャークッキーのことだと思うぞ。desperately unhappyは、「やりきれないほど悲しく」、となっているけれど、desparatelyと言われた方が、絶望感がつたわってくる、、、どうしようもなく悲しい、とかかな、とか。。。まぁ、そういう発見も、英語と日本語を比較して読んでみて楽しいところ。
日本語版の表紙をめくると、
”読者のみなさまへ
まわりのだれからも、したわれていたアナグマは、としをとって死んでしまいました。かけがえのない友を失ったみんなは、どう、悲しみをのりこえていくのでしょうか・・・・。
スーザン・バーレイの 手になるこの感動的な絵本は、友人どうしのあり方や、たがいに、心や技を伝え合っていくことの大切さ、ひいては、人間の生き方をも静かに語りかけています。
すぐれた作品は、 読む人それぞれの思いや経験によって様々な新しい発見があることと思います。 どうか、この絵本との出会いが、皆様にとって貴重なものとなりますよう願っております。”
とあった。
スーザン・バーレイは、1961年イギリス生まれ。絵本作家。美術学校に通っていたころから絵本作家を目指し、卒業制作としてつくっていた『BADGER’S PARTING GIFT』でデビュー。その後、『The Monster Bed』などの作品を発表。
BADGER’S PARTING GIFTを直訳すれば、「アナグマの別れの贈り物」
物語の最初から、アナグマは年老いている。とても賢く、みんなからたよりにされていて、困っている友だちは誰でも助けてあげた。でも、もう年を取って、自分の死ぬのがもう遠くないことも、知っていた。
アナグマは、死ぬことを恐れてはいなかった。
死んで体がなくなっても心は残ることを知っていたからです。
ただ、あとに残していく友だちのことが気がかりで、 自分がいつか 長いトンネルの向こうに行ってしまってもあまり悲しまないようにと言っていました。
ある日のこと、アナグマは、モグラとカエルが、丘の上でなかよくかけっこしているのを見て、自分ももう一度走れたらな、と思いました。
そして、その夜、机にむかってゆっくりと手紙をかきながら、ぐっすり寝てしまいました。
アナグマは、夢をみます。
アナグマは、走っていました。杖も使わずに。どんどんどんどん、トンネルの中を走りました。
ふと地面から浮き上がったような気がしました。
すっかり自由になったと感じました。
次の朝、アナグマの友達は、みんな心配して、集まりました。アナグマが、いつものようにおはようを言いに来てくれないからです。
キツネが悲しい知らせを伝えました。アナグマが死んでしまったのです。
キツネはアナグマの手紙をみんなに読んでくれました。
「長いトンネルの向こうに行くよ。さようなら アナグマより」
森のみんなは アナグマをとても愛していましたから悲しまないものはいませんでした。
Mole especially felt lost, alone and desperately unhappy.
なかでもモグラは、やりきれないほど悲しくなりました。
(私なら、「中でもモグラは、一人ぼっちで取り残されてしまったようで、どうしようもなく悲しくなりました」って訳すかな。)
モグラは、毛布がぐっしょり濡れるほど泣きました。
その夜から雪が降りました。みんなを温かく守ってくれる家の上にも雪は降り積もりました。
雪は、地上をすっかり覆いました。
けれども、心の中の悲しみを覆い隠してはくれません。
アナグマは、悲しまないようにといっていましたが、それは、とても難しいことでした。
春が来て、外に出られるようになると、みんな互いに行き来してはアナグマの思い出を語り合いました。
モグラは、一枚の紙から上手に手をつないだモグラのくさりを切りぬくことを教えてもらいました。
カエルは、スケートをならいました。
キツネは、ネクタイの結び方を教えてもらいました。
ウサギの奥さんは、今では村中で有名な料理上手ですが、最初にアナグマからジンジャ―ブレッドの作り方を教えてもらいました。
雪が消えたころ、アナグマがのこしてくれたものの豊かさで、みんなの悲しみも、きえていきました。アナグマの話が出るたびに、だれかがいつも楽しい思い出を話すことができるようになったのです。
モグラは、最後にアナグマを見た、カエルとかけっこした丘にのぼりました。アナグマがのこしてくれた、おくりもののお礼がいいたくなりました。
「ありがとう、アナグマさん。」
モグラは、なんだか、そばでアナグマが聞いていてくれるような気がしました。
そうですね。
きっとアナグマに、聞こえたに違いありませんよね。
おしまい。
英語の最後は、
“Thank you, Badger,” he said softly, believing that Badger would hear him.
And….somehow….Barger did.
believingだから、「気がして」というよりは、「聞いていてくれると信じて」の方がピンとくる。でも、優しい感じがするのは「気がして」かもしれない。絵本は直訳するものではないからね。
絵も、かわいい。ペンと水彩だろうか。印象がピーターラビットと似ている。動物たちも、それぞれの動物の特徴がよく出ていて、シンプルだけど、素敵。
モグラがアナグマに教えてもらったような、一枚の紙を折りたたんで、ハサミを入れて、繋がった何かを切り出すって、子供の頃によく遊んだ。モグラが手をつないでいる鎖を切り出している絵は、楽しいし懐かしい。ウサギと一緒に作っているジンジャーブレッドは、ウサギの形のくりぬき。鼻眼鏡に、エプロン姿のアナグマが可愛い。
そして、desperately unhappyで、毛布で涙を拭いているベットの上のモグラも、かわいい。
そうなんだよ、生き物は死んじゃうんだよ。
人は、死んじゃうんだよ。
なみだが枯れるほど泣いても、いつか笑って思い出話ができる日が必ず来るんだよ。
雪に閉ざされても、春が来れば雪はとける。
アナグマは、長いトンネルの向こうへ行ってしまった。
人は、死んだらどこに行っちゃうんだろうね。
ゼロポイントフィールドか?!
宇宙のどこかに、みんなで一緒に、ごちゃっているのかもね。
いつかは、私もそこへ行く。
行く前に、やりたいことは、やっておかないとね。
みんなにとってのアナグマからの”わすれられないおくりもの”は、”感謝の思い出”かな。
アナグマも、手紙を残す相手がいて、幸せだったね。
ありがとう、と言いたい相手がいるのも、幸せなことだ。
絵本は楽しい。

