チコときんいろのつばさ
レオ・レオーニ
さくまゆみこ 訳
あすなろ書房
2008年8月30日 初版発行
2019年10月20日 8刷発行
TICO AND THE GOLDEN WINGS (1964)
レオ=レオニの絵本を求めて、図書館で借りて読んでみた。
表紙をめくると
”はねのない ことり チコが
おおぞらを とべるように なったとき、
なかまたちは・・・・?”
とある。
え、チコ、羽がないの???
中表紙に描かれているのは、丸みを帯びた葉脈くっきりの葉っぱをつけた草木。
ページをめくると、はっぱがいっぱいの中に、トリが・・・。
”これは 私のかたに とまった ことりの チコが はなしてくれた おはなしです”
とはじまる。
こどものとき、チコにはつばさがありませんでした。
他の鳥と同じように、歌ったり、ぴょんと跳ねたりすることはできたけど、飛ぶことだけはできなかった。
仲間は、チコのところに木のみや果物を届けてくれた。
チコは、仲間のように飛びたいなぁ、と思っていました。
「きんいろに輝く つよくてりっぱなつばさがあったら、どんなに いいでしょう。
そんな つばさがあれば、雪をかぶった山のてっぺんだって、かるがると超えていけるのに。」
ある夏の夜、チコのところに真珠色に輝く魔法の鳥がやってきて、願いをかなえてくれるといいました。
「ぼくにもつばさをください。立派な金色のつばさを!」
すると、パッと光がさして、チコの体につばさが生えました。
チコはうれしくなってあちこち飛びまわりました。
チコがまいおりてくるのをみると仲間の鳥はいいました。
「金色のつばさをみせびらかしているわ」
「じぶんは特別だとおもっているらしいな」
みんなはチコをおいて、どこかへ行ってしまいました。
どうして、仲間に入れてもらえないのでしょうか?
みんなと違うのは、わるいことなのでしょうか?
一人ぼっちのチコはさびしくてたまりませんでした。
ある日、チコはかご作りの男にであいました。
おとこは、泣いていました。
「なにか 悲しいことでもあるのですか?」
「こどもが病気なのに、薬を買うお金がないんだよ」
チコは、自分の金色の羽を抜いて、男に
「これを売って薬をかってください」といった。
おとこは、喜びました。
チコが金色の羽を抜いた後には、黒い羽が生えてきました。
この日からチコは、困っている人を見るたびに、金色の羽を抜いて、困っている人にあげました。人形遣いは人形を、おばあさんはつむぎ糸を、海で迷った船乗りは磁石を手に入れました。
さいごまで残っていた何枚かの羽は、美しい花嫁さんにあげました。
チコのつばさの羽は、つやつやした黒い色にかわりました。
その夜、チコはほかの鳥たちが集まっている大きな木にとんでいきました。
なかまの鳥はいいました。
「ようやく君も僕たちと同じになったね」
その晩、なかまとからだをよせあっていても、チコはなかなかねむれませんでした。
かごづくりのこども、にんぎょうつかい、おばあさん、花嫁さん、、、チコの羽で幸せになった人たちのことを考えていたからです。
「つばさの色はかわったけど、心のなかはかえられない。
かんじることや、かんがえることは、みんなそれぞれちがうはず。
おもいだって、みるゆめだって ちがうんだもの」
おしまい。
最後のページは、木の上で、目をつぶった鳥に挟まれて目を開けているチコ。みんなと同じ、黒い羽。ほかの鳥と見分けがつかない。でも、目を開けているのがチコだよね。
見た目は、みんな一緒。でも、かんがえていることは、それぞれ、ちがうんだね。
微妙にちょっと、悲しい、複雑な気持ちになるお話。
チコは、なぜ、金色の羽になったときに、みんなに受け入れてもらえなかったのだろう。
金色の羽を抜いて、困った人にあげたあと、なぜ生えてきたのは黒い羽だったのだろう。
みんなと同じ黒い羽になったから受け入れてもらえたのは、ハッピーエンドなのか?
もとの羽のないチコになったほうが、ハッピーだったのか?
微妙に、ちょっと、せつない・・・。
次の日は、チコはぐっすり眠れたかな。。。。
みんなそれぞれ違っているということに、気が付いたチコがハッピーなのかな。
羽根の色なんて、もうどうでもいいということか。
やっぱり、心の中はみんなそれぞれ違う。
思っていることは、それぞれ違う。
金色の羽をうらやましがる鳥がいれば、うらやましがらない鳥もいるだろう。
チコはこれから先、雪をかぶった山のてっぺんも越えて、きっとたくさんの世界を見るのだろう。金色の羽はもうないけれど、きっと、また、困った人を助ける方法を考えて、つやつやした黒い羽で人を幸せにするのかな?
心の中は、みんな違う。
見た目だってみんな違って、当たり前。
いろんな「ちがう」が当たり前の世界を知ると、
ちいさな「ちがう」が、どうでもいいことだって気が付くことがある。
世界を広い目でみると、生きるのが楽になる。
チコは、きっと、そういう世界を垣間見たんだ。
だから、これは、ハッピーエンドなんだな。
黒い羽で、これからも大きな世界を見ることができるしね。
絵本は、深い・・・・。
