『男を殺して逃げ切る方法』 by ケイティ・ブレント

男を殺して逃げ切る方法
ケイティ・ブレント
坂本あおい 訳
海と月社
2024年12月13日 初版 第1刷発行
HOW TO KILL MEN and GET AWAY WITH IT (2022)

 

2025年2月15日 日経新聞朝刊の書評 で紹介されていた本。 タイトルが刺激的。
記事では、
”写真や動画で日常を共有するSNS、インスタグラム。2024年6月に総務省が発表した調査結果によると、全年代の50%以上が利用しているそうだ。10代と20代にかぎってみれば、70%以上が使っている。そんな時代を象徴するようなベストセラーが翻訳された。ケイティ・ブレントの『男を殺して逃げ切る方法』。著者は英国のジャーナリストで、本書が小説デビュー作だという。
 主人公のキティは、ロンドンに住む29歳の女性だ。食肉加工業で成功した一家の出身で、容姿にも恵まれ、インスタのフォロワーは数百万人。パーティーや旅行に出かけたときの様子、美容の情報、企業から提供された商品の宣伝などをSNSにポストして暮らしている。しかしキティは、裏の顔を持っていた。なぜ華やかなインフルエンサーが、女性にとって有害と見なした男を次々と殺すシリアルキラーになったのか。キティは経緯をふりかえりながら、自分のライフスタイルを語っていく。
・・・・中略・・・・
キティの殺人は行き当たりばったりで、後始末は杜撰(ずさん)だ。著者は本書について〈ハウツー本ではなく、皮肉とダークユーモアに満ちた犯罪小説〉とコメントしているという。リアルな完全犯罪を描くことに主眼はない。一見恵まれているのにSNSの中でしか生きている実感を得られないキティが、殺人をきっかけに過去のトラウマに向き合い、女性を暴力で支配する世界に復讐(ふくしゅう)する物語になっている。
死体を抱えてピンチに陥ったときのインフルエンサーらしいごまかし方など、コミカルな場面も多い。ダークだけれどもポップで、抗(あらが)えない魅力がある。”

とある。

 

う~ん、気になるけど、SNS世代でない私にとってはどうかな?と思いつつ、図書館で予約していた。数か月待って、順番が回ってきたので借りて読んでみた。

 

表紙をめくると、
” キティ・コリンズ 29歳 
美人でお金持ちの人気インスタグラマー 
だけどそれは表の顔 
じつは、かなりワケあり 
「切れ味抜群」の ダークヒロイン 
ここに誕生”
とある。

 

著者のケイティ・ブレントは、受賞歴ある英国のジャーナリストにして作家。 2005年より新聞、雑誌、Web サイトで記事を執筆。2023年、 念願の小説家デビューを果たした本作がベストセラーに入り 一躍注目の的に。

 

英国の女性作家。本書のヒロイン、キティが住むのもロンドン。最後に、「ケイト・ブレントからの手紙」と、まぁ、あとがきみたいな2ページがあるのだけれど、本書を書くきっかけの一つが、#MeToo運動だったということ。読みながら、まるで#MeToo運動の過激版だなぁ、と思ったら、まさにそうだった。

 

感想。
面白かった。
プロローグで、いきなり絞殺の殺人場面・・・。およよよ。これは?えぐいお話か?と思うのだが、つづく1では、チェルシーで「自分へのご褒美朝ごはん」を外で優雅に楽しむキティ。キティは、インフルエンサーで、街をあるけば、数百人いるフォロワーに気づかれ、「きゃぁ!!キティ! 一緒に自撮りしてもいいですか?」と言われる人気者。

 

そんなキティには心許せる女友達がいる。今は恋人はいないのだが、物語の中で新しい恋に落ちる。キティは、 ヴィーガンだけれど、お酒は飲む。クスリはやらない。女友達と夜な夜なパーティーも楽しむけれど、友達がクスリをやっても、キティはやらない。そんな、美しく、品行方正にみえるキティだけれど、実は、シリアルキラー

 

お話の設定自体が、殺しの場面、後始末、それじゃぁすぐ警察に捕まるだろう、、、というかんじの軽さがある。推理小説ではないから、なんとも雑な殺人シーン・・・・。でも、なんだ、たんなる殺人好きの変態女のはなしか?と思いきや、、、途中から、キティが殺す男たちにある共通点が見えてくる。

 

まぁ、ようするにレイプ魔。女性から見れば、ろくでもない男。半分くらい読んで、それにしても、ちょっとおどろおどろしいし、、、とおもって、読むのを辞めようかと思い始めたころに、キティが新しい恋に落ちる。。。すると、、キティが抱えている闇が見えてきて、だんだんと面白くなって、残り半分は一気読み。

読後の感想は、「面白かった!」となった。

 

プスっとナイフで刺して簡単に男を殺したり、薬をつかったり、死体を切り刻んでミンチにしたり!!と、おいおい!ちょっと!と、じっくり読んでいられない場面もあったりする。「阿部定」を彷彿させる場面も・・・・。

 

ネタバレすると、キティは、行方不明になっている父親がいるのだけれど、実は、15歳の時にキティが殺したのだ。母に暴力をふるっている父を目にして、花瓶でメッタ殴り。母と二人で、父が経営する会社(食肉処理)の工場で、父をミンチに・・・・。世間的には「行方不明」ということになっている。その母は、ロンドンのキティに高級アパートメントを買い与え、自分はフランスへ。

 

キティが殺すのは、女に暴力をふるったり、レイプしたりしてきた男。ところが、ある時、レイプ魔の弟を間違って殺してしまう。。。それから、キティはもう二度と男殺しはしない、と自分にちかうのだ。。。が。。。。

 

最後は、、、友人の父親にキティ自身がレイプされそうになり、その場面は逃げ出すのだけれど、その友人の父親というのが芸能業界のドンで、まさに#MeTooで訴えられることになり、、、友人に父親を殺してくれと頼まれる。その友人は、キティの犯してきた連続殺人を実は全部見ていた。。。。もう一人くらい、殺してもいいでしょ、、、とキティに迫る。キティにとっても、自分の父が行方不明になってから(キティが殺したんだが)、父親がわりとなってくれた人。友人は、父を殺してくれないなら、キティがこれまでに犯してきた殺人を世の中にばらす、、、と。キティが殺人するたびにSNSで「俺は見ている」と脅してきた謎のストーカー男は、実は身近な女友達だったのだ。その友人は、自分は父親にレイプされつづけてきた、クズ父親だから、同じように殺してくれ、、と。

 

で、キティは最後の殺人を犯してしまう。が、そのあと、友人が父親にレイプされていたのは嘘だといいだし、、、、

” 3人でも秘密は守られる。 そのうちの2人が死んでいれば。”と友人に言うと、友人の命も・・・・・。

 

エピローグは、友人とその父親殺しから半年後、恋人のチャーリーと幸せに暮らしているキティ。そして、テレビのニュースで若い女性の遺体がテムズ川で発見されたと報道されている。クリスマスパーティー以降、女性の被害者はふたりめ。

キティの血が騒ぐ・・・・。

 

”チャーリーがバスルームでなにか言っているけれど聞き取れない。全身に送られる血の勢いと速さが増してきて、今はごうごうという自分の血流の音しかない。お腹の奥の方で、長い眠りから覚めた動物のように、何かが身じろぎし、片目をあけて伸びをするのを、わたしは感じている。”

おしまい。

 

あぁ、、、また、キティは、殺人鬼に戻るのか。でも、クズ男なら、やっちゃえ!やっちゃえ!なんて、不道徳な私の声・・・・。

 

コミカルに描いているものの、やはり、殺人犯であるキティ。。。。最初の半分はちょっとえぐすぎるだろう、、、と思って読んでいるのだけれど、後半は、ろくでもない男がでてくると、キティ!やっつけちゃえ!と、、、、おもわず思っている自分がいたりする。この作品は、女なら楽しく読めるかも。男には、ぞっとする話かも。。。笑えないよって。

 

実に、微妙ながら、エンタメに仕上げている部分が面白い。レイプ犯のようなカス男なら、死んでくれ!と思う女目線と、キティが間違って目的の男の弟を殺してしまったことで苦しむという人間目線と、、、けっして、ハードボイルドではない。チャラく殺人事件を書いている怖さもあるような、、、、、

 

まぁ、何とも言えないけど、なるほど、こういう展開ね!と、プロットは楽しめる。エロいの、グロいの、、苦手な人には薦めないけど、、、、けっこう、面白い。なるほど、日経新聞の書評でも取り上げるわけだ、と思った。

 

400ページ弱のソフトカバー単行本。わりとサクッとよめるので、クズ男は死ねばいいと思っているひとには、お薦め、かな。。。

女は、怖いね。

 

ちなみに、キティは、初めて女を殺したのが、最後の場面にでてくる友人の女性で、その遺体を処理するときに、男より軽くて扱いやすかった、、、と言っている。だから、男は簡単に女を殺すんだ、、、ってさ。

 

あぁ、怖い、怖い。

 

こういう本が、ベストセラーになるっていうのも、怖いかも、、、ね。

 

でも、やっぱり、読書は楽しい。