『秋津温泉』 by 藤原審爾

秋津温泉
藤原審爾
(大活字本シリーズ)1989年10月10日
底本:集英社文庫「秋津温泉」

 

夏休みに、岡山に転勤した友人Kの元を訪れることにした。Kが奥津温泉に連れて行ってくれるというので、岡山のガイドbookをみたりしていたら、奥津温泉が舞台になったお話が『秋津温泉』だと出てきた。1962年には映画にもなったらしい。

図書館で探したら、(大活字本シリーズ)しかなかったので、まぁ、中身がいっしょならいいか、とかりてみたら、本当に字が大きくて、、、読みにくいほど大きかった。。。

映画と原作は、ちょっと違うらしい。でも、舞台が奥津温泉であることは一緒。

 

別の新潮社のHPでの紹介には、
”この秋津の町へ私は十七の初夏、伯母に連れられはじめてやって来た……。自然豊かな秋津の温泉宿を舞台に繰り広げられる、激しくも切ない愛の日々を描ききった作品。1962年に岡田茉莉子長門裕之が主演し、吉田喜重監督の手で映画化された永遠の名作。”
とあった。

著者の藤原さんは、1921年生まれの作家。本書『秋津温泉』は、26歳の時の作品。ということは、1947年か。解説によれば、膨大な数の作品の中でも代表作が本作と。

 

感想。
う~ん、、、なんで、これがそんなに秀作といわれるのだろう、、、。解説にはメルヘンとあるが、ちょっと川端康成の『雪国』と似ているものを感じる。
 

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たしかに、『雪国』のように、情景描写や、人びとの心の揺れ動く様子は文学っぽいかもしれない。でも、だが、しかし、、、女好きな男と、馬鹿な女の話っていってしまえばそれまでだけれど、、、女の私からすれば、はん!何言ってんのこの男。女を馬鹿にするな、と、、、、思わなくもない。

男のロマンなのかなぁ。妻子をもっても、ほかに自分をおもって狂おしく待っていてくれる女がどこかにいる、って思いたい。。。。

 

ま、いいんじゃない。
なぁんてね。

以下、ネタバレあり。

 

物語の主人公は、河崎周平。6歳で両親をなくし、伯母に育てられている。伯母は夫を亡くし、独り者。その「周平=私」は、あまり体が丈夫ではなく、療養もかねて秋津温泉をおとずれる。定宿が秋鹿園。そこで出会う大学教授の板野さん、画家の岡田さん、といったおじさんたちに見守られながら、私は、秋津温泉の時間を過ごす。

最初に、私が恋するのは、ふもとの大野屋家の娘・直子。最初は子供の憧れのような、直子もただの子供。数年後に訪れた時には、すっかり女らしくなった直子に惚れる。酔っぱらって、寝てしまったら、起きたら直子が隣に寝ている。そそくさと、逃げるように宿をあとにする私。

 

さらに時が流れて、秋鹿園で働いていたお谷さんは亡くなり、秋津温泉でその娘・高崎新子に出会う。

そして、戦争がはじまり、岡田さんは徴兵され、秋鹿園は、軍の施設として使用するために、営業を休止。私も戦争のなかを生きる。岡山にも空襲の手は迫る。
秋鹿園で知り合った人々はみな、互いの消息は不明のまま、お互いを心配している。

 

戦争がおわったのか、新聞広告に、「秋鹿園再開」の文字をみつけた私は、さっそく秋津温泉へ出向く。その時の私は、伯母をなくし、妻と娘とくらしていたが、一人で秋津温泉へいく。

そして、秋津温泉で新子と再会。かつ、戦地で夫をなくし、子供と二人くらしという直子も居合わせる。

直子と周平の仲を嫉妬する新子。直子や新子の存在をしっていても、無事ならいいですねと言うばかりの妻。

周平は、やはり、妻と子供が大事とおもいながらも、新子の激しい愛情表現に流されていく。

 

おいおい、なんなんだよ、それは!
と突っ込みたくなる。

 

”直子さんと別の道を歩んでしまったはかなさ虚しさに、私の意識はいちずにかすかになっていった。・・・・”

 

”直子さんは、つい4,5歩前で、私に背を見せ真下の渓流を眺めた姿で、いちめんに春陽をうけていた。艶色よい髪をアップに結い、目に沁みるほど襟足の白さを春陽にひからせているのだった。”

 

”17歳の春、伯母に連れられ秋津に登って以来、秋津は私のこの世での夢の国ともなっていた。ここ十年余りの歳月の間、悲しみ悩み苦しみを幾度となくその不思議と透明な気配の中へもちこんだことであろうか。。。。”

 

新子は、婚約する。その婚約者の若者の逞しい体を見て、胸をえぐられる思いをする私。

新子は、私に結婚なんかするなと言ってほしい。言わない私。

 

ほんとに、『雪国』の駒子と島村を見ているよう。
イラっとすんなぁ!もう!
と、突っ込みたくなる。

まぁ、こういうのが名作なんだね・・・・。

 

春、夏、秋、冬、季節ごとの秋津温泉の様子が描かれているので、温泉が恋しくなるという意味では、名作。

この話の主人公も体が弱い。結核の療養に温泉が流行った時代背景も、こういうお話をうませるのかもしれない。

 

ちなみに、川端康成は1899年生まれ。『雪国』の初版発行1948年。う~ん、似たような時代に、似たようなお話、、、って感じ。

まぁ、この二つの名作を、似ていると感じるのは私だけかもしれないけど。

時代的には、戦後GHQ支配下にあった日本か。表現の自由は認められていたから、みんな、こういうのを待っていたのかもしれない。

時代によって、評価されたり、人気が出たりする作品も色々だから、ね。

 

でも、読んでみてよかった。

奥津温泉への期待がさらに高まった!

 

ちなみに本書の最後には解説がついていて、章ごとにお話が要約されている。ただ、ストーリーを知りたかったら、その部分だけ読んでも十分かも。