ふれてみよう!伝統芸能
歌舞伎ってなんだ!?
児玉竜一 監修
ほるぷ出版
2025年3月18日
図書館の児童書コーナーで 目に入ったので借りて 読んでみた。ちょうど、映画『国宝』ブームで、これまでにない観客層も歌舞伎を観るようになっているらしい。たしかに、『国宝』の俳優たちの演技はよかったけれど、やっぱり、歌舞伎は歌舞伎だ。本物の歌舞伎を見るのとは、まったく違う。そんな歌舞伎。たまに観に行くけれど、詳しいわけではないので、児童書でちょっとお勉強。
表紙をめくると、フリガナ付きで
”みなさんは、「 歌舞伎」を知っていますか?
その名の通り、「 歌(音楽)」 と「舞(舞踊)」と「技(演技)」が一体となった演劇です。 音楽を伴う 舞踊劇 という面と、セリフによって物語を展開するセリフ劇という面とをあわせもっています。
そのみりょくは、 観客を楽しませる工夫が詰まっているところ。「見得(みえ)」や「早替り」などの独特な演出から、 観客の近くで俳優が演技をする「花道」などの舞台装置、はなやかな衣装や大道具に至るまで、観客の目を引きつける工夫が凝らされています。 歌舞伎は江戸の庶民から絶大な人気を得て、 庶民が好んだ 文芸、 浮世絵、 ファッション、 音楽、 落語 など、 様々な文化とつながり、 流行を生み出し続けてきました。
この本では 歌舞伎の歴史や、役と衣装、 舞台や音楽に加えて人気の演目のあらすじを紹介します。
この一冊で、きみも「歌舞伎」がわかる!」
引抜(ひきぬき):後見が素早く糸や着物を引き抜くことで、一瞬で衣装が変わります。”
と引抜の図解入りで説明がある。
絵本のような大型本。文字もしっかりあり、写真と絵と説明で、かなり盛沢山。
目次
歌舞伎ってどんなもの。
初めての歌舞伎
女だけから男だけに歌舞伎の歴史
大勢がたずさわる歌舞伎の仕事
かっこいい役から憎い 悪役まで 立役と衣装
豪華な美女も強い女も 女方と衣装
観客の視線を奪う 歌舞伎 ならではの表現
ココも見どころ
工夫が詰まった 歌舞伎の舞台舞台
性格がわかる隈取と身分がわかる髪型
舞台を作り上げる音楽
歌舞伎を支える舞踊
人気の演目
勧進帳
助六由縁江戸桜
仮名手本忠臣蔵
東海道四谷怪談
弁天娘女男白波
尾上右近さんインタビュー
コラム 歌舞伎をみてみよう
感想。
うん、これは大人が読んでも十分楽しめる。
初めて歌舞伎を観に行くなら、その前に読んでおくと、ずっと楽しめるかも。
歌舞伎に登場するキャラクターは、色男、ヒーロー、悪人、武士、遊女、姫、動物、とそれぞれに説明がある。いまさらだけれど、あぁ、なるほど。歌舞伎は史実に基づいた物語というより、庶民が楽しめるように脚色されている。だから、歴史上の人物がでてきたからといっても、お話はフィクションだ。四谷怪談のように有名になりすぎて、物語であったことを忘れちゃいそうなお話もある。まぁ、娯楽なんだよな、っておもうと歌舞伎を観ることがすごーく特殊なことではなく、日本の娯楽の楽しみの一つって、思える。まぁ、安くはないけど。それは、他のミュージカル、オペラ、演劇、なんでもそうだろう。歌舞伎が取り立てて高価なわけではない。そして、一度本物をみれば、役者だけでなく大勢の裏方やスタッフ、演奏家もいての舞台だということがよくわかる。そりゃ、それなりのお値段だよね。映画でフィルムを上映するだけっているのとはちょっと違う。
ポイントだけ、覚書。
・始まりは、出雲のお国という女性が始めた「歌舞伎踊り」。人気になりすぎて、風紀が乱れると言って江戸幕府が一時禁止。その後、男性だけで演じられるようになる。
・歌舞伎の音楽: 黒御簾音楽(黒御簾の内側で演奏される)。三味線と唄の「長唄」「 義太夫節(竹元)」「常磐津節」「 清元節」。
・後見(こうけん・黒衣(くろご)): 俳優の演技を助ける役。衣装替えを手伝ったり小道具を渡したり、動物の着ぐるみの中に入ったり。
・ツケ: 舞台の上手の端で2本の木を板に打ち付けて音を出すこと またはその担当の人。
・二枚目:美男の意味。 江戸時代に芝居小屋が今年出演する歌舞伎役者の看板を並べた時に、2枚目に若い スター 役者の名前を掲げたことから。 3枚目には道化役の名前を掲げたことから三枚目は面白い人を指すと言われる。
・真面目な実事師の武士は、「生締(なまじめ)」というぴっちりとみだれの無いまげ。
荒事師では、髪型も衣装も大げさで目立つもの。
・女方の衣装:傾城(けいせい)のまな板帯。まな板帯(5Kg)には、かつらの重み(2Kg)とバランスをとるように、前を重くする機能もある。
・衣装の色:赤は情熱、華やかさ、若さ、正義感。緑は素朴さで田舎娘などでよく使う。
・見得(みえ): 物語の重要な場面や 登場人物の感情が盛り上がってきた時に美しいポーズで静止してみせる 演出。
・六法(ろっぽう): 手足を大きく動かしながら進む 派手で大げさな歩き方。
・引抜:後見が素早く糸や着物を引き抜くことで、一瞬で衣装が変わる。映画『国宝』で『鷺娘』の引抜場面が印象的。
演目の中から「勧進帳」
源義経は弁慶たちと山伏の一行に変装し平泉へ逃げようと旅をしていました。 途中、安宅の関を守る富樫左衛門から義経たちが山伏姿で逃げているらしいから山伏は通せないと言われます。 弁慶が、自分たちは東大寺の勧進の 一行だと説明すると、 富樫は勧進帳を読み上げてみなさいと言います。そこで 弁慶は 有り合わせの巻物を勧進帳であるかのように取り出し 読み上げます。 富樫は弁慶の話を信じ 通行を許します。
関所を通る際 義経が見破られそうになります。 弁慶は疑いを晴らすため打ち殺してやると 義経を杖で打ちます。 富樫は弁慶の思いを察し、 自分の責任となることを覚悟の上 弁慶たちを通します。
安宅の関を通った後、 義経はその部下たちは 弁慶を褒めますが、弁慶は主君である 義経を打ってしまったことから涙を流します。ここで富樫が 疑った お詫びに と酒を持って現れます。 弁慶はお礼にと延年の舞いを舞い、 密かに富樫に感謝します。 弁慶は 義経 たちを急いで出発させ自分も後から追いかけるのでした。
見どころは、弁慶が何も書いていない巻物を、勧進帳だと言って読み上げる、変装を見破られそうになって弁慶が義経を打つ、 物語が終わって 弁慶が退場をする時に見せる飛び六方の引っ込み。
と、こうして読んでいると、歌舞伎が見たくなる。
仮名手本忠臣蔵も、史実とはちょっとずらしてある。あくまでもフィクションだよっていうことで作られているから。庶民が楽しんだ娯楽。そう思うと身近だ。最近では歌舞伎のチケットもむか~しのように取りにくくもない。花道近くもいいけれど、やはり、正面で観るのが見やすくて好き。ついでに、私はいつもイヤホンガイドも借りて観る。やっぱり、歌舞伎のセリフは日本語で聴いていても、私にはわかりにくい。ナレーションもふくめたイヤホンガイド、初心者にはおすすめ。
本書は、映画『国宝』を観て、初めて歌舞伎に興味を持った人にお薦め。
2025年の本だというこのシリーズ、なかなか良かった。他、狂言や能のシリーズもあるみたい。暇なとき、読んでみよう。
やはり、児童書コーナーは大人にも良い本がたくさんある。
