これからの地球のつくり方
データで導く「7つの視点」
ハナ・リッチー Hannah Ritchie
関 美和 訳
早川書房
2025年3月20日 初版印刷
2025年3月25日 初版発行
Not the End of the World (2024)
2025年6月7日の日経新聞、(短評)で紹介されていた本。 記事には
”著者は新型コロナウイルス感染症のデータを世界規模で分析・公開した中心的な科学者の一人。本書ではデータサイエンティストの目で大気汚染や気候変動、生物多様性の喪失など7つの問題を見つめ直す。
たとえば大気汚染は最悪期を過ぎ、死亡率は低下している。1人あたり温暖化ガス排出量もピークアウトした。野生生物種が回復している地域もある。一方、農業の拡大と肉の多消費は広い土地と大量のエネルギーを要し環境悪化をもたらすという。効率を犠牲にした有機農業への過度の傾斜も避けるべきだと説く。
持続可能な地球の実現をあきらめる必要はない。視点を変えれば重視すべき新たな対策も見える。そんな前向きなメッセージが伝わってくる。”
とあった。
環境問題は、 私の興味の対象の1つ。 図書館で借りて読んでみた。
表紙の裏の袖には、
”これがデータに基づく新世代の常識!
地球環境問題「7つの視点」
・大気汚染: 多くの国の人は、ここ数世紀で最も綺麗な空気を吸っている。
・気候変動: 二酸化炭素削減は想像以上に速いペースで進んでいる。
・森林破壊: 1980年代を境にピークは過ぎた。
・食料問題: 地産地消よりも、食べる肉の種類を変える方がはるかに効果的。
・生物多様性: 化学肥料と農業の禁止は、生態系を守る上では逆効果。
・プラスチック 汚染: レジ袋やストローばかり気にしても意味がない。
・乱獲漁業: 洋食の生産量が天然魚の漁獲量を上回った今、「漁業崩壊」は非現実的。”
とある。
これだけ見ても、悲観的ストーリーではなく、明るい未来の話であろうと想像できる。これは、読むのが楽しみになる。
著者のハナ・リッチーは1993年生まれ。データサイエンティスト。オンラインメディア「Our World in Data」副編集長、オックスフォード大学主任研究員。エディンバラ大学で地球環境科学を学び学士号、カーボン・マネジメントの研究で修士号、地球科学の研究で博士号を取得。《ニュー・サイエンティスト》誌では「新型コロナウイルス感染症のデータを世界に提供した女性」と形容された。
若い!若者が、地球の未来を明るく語るのは良いことだ!
早川書房のHPには、
”ビル・ゲイツ「2023年冬のおすすめ本3冊」選定
マーガレット・アトウッド激賞
「CO2排出量は想像以上に速いペースで減っている」「私たちはここ数世紀でもっともきれいな空気を吸っている」――新鋭のデータサイエンティストがファクトと数値を手に気候変動、食糧問題、生物多様性などの難題に切り込み、希望に満ちた未来を描き出す。”
とあった。
目次
はじめに
1章 持続可能な世界 方程式の前半と後半
2章 大気汚染 きれいな空気を吸う
3章 気候変動 気温を下げる
4章 森林破壊 木のために森を見る
5章 食料 地球を食い尽くさないためにできること
6章 生物多様性の喪失 野生を守る
7章 プラスチック ゴミに溺れる
8章 乱獲 海を略奪する
おわりに
2~8のそれぞれの章には、
・どのようにしてここまできたか
・今どこにいるか
・XXXXどうしたらいいか
・あまり力をいれなくていいこと
という項目がある。これは、わかりやすい。
みんな知りたいのは、具体的にどうすればいいのか、何はやっても無駄なのか、ということだろう。まさにその目次になっているので、読みやすい。
感想。
うん、面白かった。『ファクトフルネス』(2018年、 ハンス・ロスリングら)を読んでいるのにちょっと近い印象がある。みんなの環境問題に対する思い込みを覆すデータ、情報を提示し、そのうえで何が重要かを語っている。
「はじめに」で、著者が『ファクトフルネス』のハンス・ロスリングのプレゼンをみて、世界の見方が変わったと告白している。それまでは、多くの若者同様に地球の未来を悲観していたそうだ。でも、未来はある!と目覚めたのがハンスのプレゼンだった。私もハンスのプレゼンに刺激を受けたし、本も繰り返し読んだ。何といっても、彼の開発したアプリで統計をわかりやすく見える化したプレゼン(2006)は、秀逸‼の一言。
半分くらい読んで、すこしその論調に飽きてきたこともなくはないのだけれど、一応、通読した。個別のどうしたらいいか?という対応策案は、賛否両論あるかもしれないけど、やっても意味のないことを明示してくれているのは、わかりやすい。例えば、紙のストローとか。これだけ?は、私もトランプ大統領に共感する。どう考えても阿保らしい。
意外に思うのは、地産地消は地球環境問題からするとあまり意味がないということ。輸送エネルギーがかからないからよいかと思ったら、大した影響ではないらしい。どちらかと言うと、地域経済活性化のための地産地消かな。まぁ、食べ物は新鮮な方がおいしいし。
と、ところどころ目からうろこが落ちたりしつつ、技術も情報も、過去の物に囚われていてはいけないなぁと感じた。まゆつばと思っても、まずは耳を傾けるっていうのも大事かも。そして、真偽のほどは、自分で確認すればいい。少なくとも本書の著者も、過去の自分の常識にとらわれずに、新しい情報を積極的に取りに行ったことで本書が生れた。若者よ、明るい地球を信じて、生きていこう!!
気になったところ、覚書。
・ネイティブ・アメリカンのことわざ。
「 必要なものだけを取り、 その土地を見つけた時のままに保ちなさい」
・大昔のケニアのことわざ。
「 大地に優しくしなさい。 大地は両親からの贈り物ではなく、 子供たちからの借り物なのです。」
・”脱成長は、持続可能な未来につながらない。 脱成長派は豊かな人から貧しい人に富を再配分すれば、すでに手元にある資源で全ての人のが良質な生活を送れるようになると主張する。 だがそれでは帳尻が合わない。 全ての人が高水準の生活を送るには再配分だけでは足りないこの世界はまだそこまで豊かではない。”
そうだ!そうだ!
私も脱成長、反対派。
・ モントリオール議定書: 1987年、 43カ国が調印。 オゾン層を破壊する恐れがある物質を1989年以降に順次 撤廃していくことに合意した。 20世紀の終わりには 174 の主体が モントリオール議定書に調印した。 オゾン層を破壊する物質の使用は10年のうちに8割が削減された。
これは、私も研究所のサラリーマン時代に大量の冷凍庫、冷蔵庫のフロンガスの代替ガス切り替え対応をしたので、実感としてある。
現在は、99.7%まで、削減されている。
・ エネルギーのはしご: 調理 や暖房用に使うエネルギーの源が、 経済の 発展に伴って変化していくというはしご。低所得では、木・木炭・石炭を燃やし、所得が上がってくると、灯油、ガス、液化天然ガスと変化し、最後は何かを燃やすのではなく電気を使うようになる。木・木炭・石炭などの個体を燃やすことは、空気汚染の要因にもなっている。大気汚染をなくしたければ、固形のものを燃やすのをやめること。
・ 再生可能エネルギーと原子力は、化石燃料に比べてはるかに 安全で気候に優しい。温室効果ガスの排出量、大気汚染事故による死者数は、石炭、石油、天然ガス、バイオマスの順に多い。水力、風力、原子力、太陽光は、比較にならないほどどちらも少ない。
原子力は、目に見えないから怖いと感じ、必要以上に嫌われる。実際に原子力発電所で事故が起きた時の被害は大きいけれど、実は、火力発電所、水力発電所(ダム崩壊)などの事故で亡くなる人の数は、原子力の比ではなく大きい。著者は、原子力をもっと活用するべきだと語る。
・自然災害による年間死者数は、過去100年で半減し、48%になった。多くの人が、自然災害が増えていると感じているのは、環境報道が増えたから。
・一人当たりの二酸化炭素の排出量は、10年くらい前に天井を打った。スウェーデン、フランスは、原子力発電と水力発電によって、非常に低炭素の電力網を備えている。
・現代の人の炭素排出量は、実は2世代前(祖父母の時代)の半分。テクノロジーのおかげで、単位当たりの二酸化炭素排出量は、はるかに少ない。
クーラーや冷蔵庫を買い換えたら、電気代がぐっと下がったということを経験している人は多いのではないか?
・食品にまつわる低炭素生活を送るには
1.肉と乳製品の摂取を減らす。特に牛肉。100カロリーの餌を投入したとき、食肉になるのは、鶏肉13カロリーに対して、牛は3カロリーにしかならない。
2.効率の良い農業手法を取り入れる。有機農業はエコではない。
3.作りすぎない。食べ過ぎない。
4.食品廃棄を減らす。
5. 世界の イールドギャップ (収量格差)を埋める。
・ 一般には炭素排出に大きなインパクトをもたらすと思われているけれど 実際には大して効果のないこと。
1. ペットボトルをリサイクルする。
2. 古い電球をエネルギー効率の良い電球に取り替える
3. テレビを見ない映画をストリーミングしない インターネットを使わない
4. 食洗機を使っても使わなくてもあまり変わらない
5. オーガニック食品を食べる。 むしろ 炭素排出量を増やす可能性がある
6. レジ袋 か 紙袋か。大差ない。
・ アマゾンの森林破壊の割合は1990年代の終値 ピークを迎え それ以降減少している。
・ 世界の食糧生産を全員に均等に分けたら、 少なくとも1日1人5000カロリーは取れる。 人間1人が必要な量の倍以上。 言い換えると 世界の今の人口が2倍になっても十分な食料を生産しているということ。
・地産地消はたいして、エコにならない。食物輸送による炭素排出量のほとんどは、ローカルな地上輸送。海上輸送は、食べ物に関わる炭素排出量のうちのわずか0.2%。航空輸送はさらに少なく、0.02%。
・太平洋ゴミベルト:ムーア船長は、 トランスパシフィック ヨットレースの帰り、カリフォルニアの自宅に戻る時、巨大なプラスチックゴミの一帯をみつけた。今では、太平洋ゴミベルトと言われている。およそ160万平方キロメートルに渡って広がっている。数字だけでいえば、日本の国土の4倍?!
・プラスチックのストローはどうでもいい。レジ袋をたまにつかうのもいい。エコバックを忘れたことに気が付いても、それほど気をもみすぎなくていい。
・ごみ埋め立て地は思っているほど悪くない。
・養殖による水産品の生産量は、天然魚を越えている。海の魚はいなくならない。
・ピーター・ドラッカーの言葉。
「測れないものは管理できない」
環境保護にもいえる。
・心に留めるべき3つのこと。
1.「自然主義」が環境にやさしいわけではない。善い環境活動家は、環境にやさしい行動が、効果的な行動と一致する。
2.個人の行動変容だけでは環境問題は解決できない。しくみの変革が鍵。
3.同じ方向に向かう人たちと力を合わせる。
へぇ、そうだったんだ、、、という驚きもあった本書。心に響いたひとつのことは、なにか小さな環境にやさしいことをしたから、「こっちはよいことにしよう・・・」と、大事なことを取り組まない自分に気づけ、ということ。
今日は、エコバック使ったから、○○してもいいか、、とか。
きりきりと、切り詰める必要はないのだろうけれど、なにが本当に効果的なのかを理解して取り組むっていうのは大事。メディアの情報に流されないほうがいい。スポンサーのいるメディア報道は、必ずしも一番大事なことを語っていないことがある。
なにが大事か、自分の頭で考えよう。
そして、行動しよう。
本当の豊かさって何かな。
戦後80年、もう一度考え直してみよう。
