『生きがいの見つけ方  生きる手ごたえをつかむ脳科学』 by  茂木健一郎 

生きがいの見つけ方
生きる手ごたえをつかむ脳科学 
茂木健一郎 
PHP新書
2025年7月29日 第1版第1刷

 

雑誌だったか、新聞だったかの広告で見かけた。茂木さんの新しい本。私自身は、「生きがいを見つける」ということにさして興味がない。そんなものは見つけるものではなく、かってに生きがいになるものだと思っているから。でも、何が書いてあるのかは気になる。
図書館で借りて読んでみた。

 

表紙をめくると、
” 生きがいとは、脳が感じる「今ここ」の奇跡
「 やりたいことがわからない」「 生きている実感がない」ーーー そんな悩みに、 脳科学が答えをくれる。
私たちの行動は無意識に導かれ、 脳は結果を後から「選んだ」と錯覚する。 それでも、行動し、感動し、宇宙の中の 自分を感じるとき、生きる手応えは生まれる。 行動主義の先に見える、 生きがいの地平。 脳科学者が、 脳と心のし研究の最前線から導く、 生き方のヒント。”
とある。

PHPらしい説明文。

 

目次
はじめに
序章 生きがいとは何か
第1章 偶然と必然
 1 自由意志はあるのか
 2 偶然とは何か
第2章 意識と無意識
 3 無意識の耕し方
 4 行動が感情をつくる
第3章 自分と他人
 5 人とつながる脳の働き
 6 スマホ依存の脳科学
第4章 人工知能と生命
 7 人工知能と言語のパラドクス
 8 究極の質問と理解できない答え
第5章 境界はあるのか
 9 「私」が「私」である謎
 10 人生と記憶
おわりに

 

感想。
うん?なんだ?
前回、 茂木さんの本を読んだ時にも感じたのだけれど、 タイトルと内容が一致しない。 目次を見てわかるように、 生きがいの話から 人工知能の話まで飛んでいる。かつ、はじめにで、
”この本は 「生きがい」だけについて語ったものではない。 自由意志の謎、 意識と無意識、 人工知能と人間の違い、  言葉と概念、 宇宙と意識の関係ーー いっけん無関係に見えるトピックが点と点のように並んでいる。”
とあって、つまり、 茂木さんが 話したいことが書いてある感じ。。。
面白いと言えば面白い。でも、なんだか、色々な本の焼き直しのような感じもする。ご自身の著書だけでなく、最近発行された海外の本も含めて、リツイートしている感じ。『運動脳の鍛え方』を読んだ時の違和感とちょっと似ている。

megureca.hatenablog.com

 

今回は、『 奪われた 集中力』で言っているのと似ているなぁ、という既視感。

megureca.hatenablog.com

 

まぁ、同じ時期に、同じような本を手にしてしまう私の傾向ということなんだろう。

点と点がつながるというより、並んでいる、、、、ので、ちょっとあちこちに思考が飛びすぎる。けれど、まぁ、なるほどね、と、、、。さーっと読んでみるのには良いかもしれない。興味のあるところだけ、深堀すればいい。

 

序章では、「生きがい」は「生きる理由ではない」と言っている。それは、「生きがい」という言葉に含まれる「甲斐」という語は、単なる理由や目的を意味するのではなく、むしろ「生きる喜び」や「生きることの実感」に近いということからもいえるだろう、と。

ご自身の著書『生きがい』(The Little Book of Ikigai: The secret Japanese way to live a happy and long life)(イギリス版元から出版)が、世界32の言語で翻訳され、57の国で出版されてベストセラーとなっているとのこと。世界が「生きがい」に注目しているという。

そういわれると、まるで「生きがい」をもって生きることが目的に聞こえなくもない。。。
いや、そうじゃないだろう、、、と、私は思うのだが。

「私は、生きがい持って生きてます」と、宣言されても、ねぇ。。。そんなの誰かに宣言する事でもないし、あの人の生きがいは素晴らしくて、こっちのひとの生きがいはたいしたことない、、、とか言うものでもない。もちろん、茂木さんもそんなことをいっているわけではないのだが、「生きがい」という概念自体が日本発というのは興味深い。だからこそ、宣言するものではないのだろう。不言実行が美徳かのようにいわれる国だもの。とまぁ、そんな日本という国の背景もあっての、本書でのトピックスの飛躍なのかもしれない。

 

一方で、序章では「生きがい」と言う概念を科学的に考える際に参考になるのが「グッドハートの法則」と言う話がでてくる。

経済学者のグッドハートは「指標が目標 化すると、その指標は正しく機能しなくなると指摘した」と。

”例えば、為替水準は本来経済が健全である結果だが、それ自体が目標になると経済は歪む。「幸せ度数」や 「偏差値」も同じで、それをあげることが目的化すれば本来の意味を失ってしまう。”

 

まぁ、わからなくはない。これを読んで肯くのと同時に、ピーター・ドラッカーの「測れないものは管理できない」と言う言葉が頭にうかんだ。

megureca.hatenablog.com

 

「何を」測るかというのは、結構大事な課題。結果をモニタリングしているはずが、結果の数字だけが目標になってしまっては本末転倒ということは、世の中結構ある。出生率もそうだろう。。。。

本書を読んでいても、「生きがいの見つけ方」の「how to」は出てこない。ただ、偶然を大切にするとか、人とつながっていた方がいいとか、なんとなくそうだろうなぁ、、、というポジティブになりそうなことが出てくる。なんとなく、気持ちが落ち込んでいるとか、ブルーなときに読むと元気づけられるのかな?

 

あまり付箋をつけることなく読み終わった一冊だったけれど、ちょっとだけ覚書。

セレンディピティを掴むための3つの秘訣:3つのA
 行動し(Action)、気づき(Awareness)、受け入れる(Acceptance)

 

・『皇帝の新しい心』( ロジャー・ペンローズ: イギリス 数理物理学者、  ブラックホールの存在を理論的に証明した業績が評価されてノーベル物理学賞)(1989): 人工知能の限界を鋭く論じた本。

 

・ 「休んでいても進んでいる。」
ラソンでずっと走り続けていると、 ペースを落として休んでしまうことがある。 そんな時「 負けた」と言う気持ちになる必要はない。「 進んでいるという行動の事実」そのものに意識を向けたほうがいい。

 

発達心理学者 ジョン・ボウルビィが提唱する「安全基地」: 子供が親から愛情を受けることで安心し、愛された経験がその子供の「安全基地」となることで 外の世界に積極的に関わることができる。 この 父がしっかり確率と他者への関心を持ち 利他的な行動が自然にできるようになる。 逆に、安全基地が不足すると自分のことで精一杯になり、利他的な行動を取ることが難しくなる。

『奪われた集中力』ででてきた、ADHDの子供の話とかぶる。「安心」できる環境がいかに重要か。大人の話でも「 心理的安全地帯」のあることが、良い職場に重要と言う話といっしょ。

 

・” スマホのアプリやコンテンツは、私たちの脳の報酬系を刺激し ドーパミンを分泌させるように設計されている。 特に SNS や 動画プラットフォームは ユーザーのスクリーンタイムを長くすることで広告収入を増やす仕組みを採用しているため、一秒でも長くスマホを見てもらうための仕掛けが張り巡らされているのである。”
これも、『奪われた集中力』とおなじ話。

 

・ 人生の時間をという資源を自律的にかつ 持続的に使うためには、「LINEを観るタイミングは自分が決める」という非同期的なやり方にするほうがいい。

だから、アラートは、切っておいた方がいい。本当に緊急に連絡が必要なことなら、電話がかかってくる。

 

・「純粋記憶」:アンリ・ ベルクソンの提唱した概念。 ベルクソンは記憶は2種類あると考えた。 1つは「習慣的記憶」、 もう一つが 「純粋記憶」。
「 習慣的記憶」とは、例えば、 自転車の乗り方など、身に染みついたもの。「純粋記憶」とは、脳が無くても残るような記憶。この、純粋記憶を「外套」に例えて説明したのが小林秀雄。記憶が「外套」ならば、脳はその外套をかけておくための「釘」に過ぎない。脳は、記憶を引き出すものであるけれど、記憶そのものは脳の中に閉じ込められているわけではない、ということ。思い出せなくても、何かを経験した「事実」が残っていること。

マルセイ・プルーストの『失われた時を求めて』で、「私」が、紅茶とマドレーヌから習慣だけ思い出した子供の頃のワクワクした感覚みたいなものが、「純粋記憶」ということだろうか。

 

と、思いながら読んでいたら、茂木さんも同じようなことを書いていた。でも、茂木さんは『失われた時を求めて』を読んでいないそうだ。

megureca.hatenablog.com

 

茂木さんの本は、他の本とのつながりを探すために読むといいのかもしれない。

 

「生きがい」なんて言葉にしなくても、毎日を、今ここを、丁寧に暮らしていれば豊かな暮らしになっていく。そして、自分の頭で考えるためのツールを手にすると、アイディアも自然と湧いてくる。そしてそれがまた、次につながる。

 

今日は、今日できることを頑張ろう。

「安全地帯」を守ろう。