『ハイエク入門』  by 太子堂正称 (その2)

ハイエク入門 
太子堂正称(たいしどう・まさのり)
ちくま新書
2025年5月10日 第1刷発行

 

その1、の続き。

megureca.hatenablog.com

 

目次
はじめに
第1章 若き日のハイエクとその知的伝統
第2章 ケインズハイエク―世紀の経済論戦
第3章 ハイエクの「転換」
第4章 「関係性」の心理学―感覚秩序論とその思想連関
第5章 自由の条件
第6章 自生的秩序論へ
終章 ハイエクの自由論

 

 

 

出てきたキーワード、覚書。

ゲシュタルト崩壊:心理学の用語で、同じ文字や形を繰り返し見続けることで、全体としてのまとまりが失われ、意味や形がバラバラに見えてしまう現象。概念や制度の一貫性が失われる。ある経済理論や制度(例:資本主義、福祉国家、金融システム)が内部矛盾や過剰な複雑化によって「全体像」が理解できなくなり、部分的な断片の寄せ集めにしか見えなくなるときに「ゲシュタルト崩壊」と表現される。

 

ファビアン主義: 暴力革命ではなく、議会活動を通じた斬新的な社会改革によっ 階級感の対立が生み出す失業や貧困、 経済格差といった矛盾を解決しようとする イギリス発祥の社会主義

 

ハイエクは、マックス・ウェーバー(1864~1920)の下で学ぼうと計画していたが、彼がスペイン風邪で死去したことや、金銭的な問題もあってかなわなかった。

 

L・ウィトゲンシュタイン(1889–1951):「語り得ぬものについては沈黙せねばならないハイエクの遠縁の従兄。ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」論は、ハイエクの「自生的秩序論」の影響を受けている。

 

・「自然利子率」と「市場利子率(貨幣利子率)」の均衡が重要。:クヌート・ヴィクセルが提唱した概念。政府の介入でバランスさせることはできないというのがハイエクの考え。

 

・ ”大恐慌からの回復を果たしたのは、ニューディール政策(大きい政府の介入)ではなく戦争によってであった。

 

・ミュルダール:スウェーデンの経済学者。ハイエクと同時にノーベル経済学賞を受賞。北欧型福祉国家の理論家。

 

ゲーム理論」:フォン・ノイマン、オスカー・ モルゲンシュテルンが開拓。人の行動を完全予見することはできない。互いの戦略を読み合うと、堂々巡りで結論がでない。

 

・市場競争の本質:知識、情報の発見的機能。自由があってこそ機能する。

 

・社会は、単一の理性が俯瞰的に把握して全体を「設計」することは不可能。社会主義ファシズムと言った全体主義は、「理想社会」を構築しようとするが、それはできないというのがハイエクの思想。

 

・『リスク、不確実性、利潤』(1921):フランク・ナイト著。アメリカのシカゴ学派。不確実性の概念。

 

・『隷属への道』:ハイエク著。「あらゆる党派の社会主義者に捧ぐ」。計画経済とそれによる個人的自由への抑圧を激しく批判する本。ハイエクは、市場経済を成立させる条件を整える作業を「庭師」に喩えた。自由放任ではなく、整える。

 

ジョージ・オーウェル(1903~50):『1984』(1949)。ハイエクの著書『自由への条件』への書評で、 イギリス 労働党を支持する社会主義者として計画経済の有効性にこだわりつつも、 ハイエクの時流に乗らない見方に率直な共感を示した。

 

ハイエクは、社会の仕組みを 神経学的、生理学的な観点に意図しながらニューロンシナプスの理論を用いて説明した。
  …まるで今のAIじゃないか・・・・。

 

ザ・ビートルズ「タックスマン」:社会保障政策を維持するために高額所得者に対して90%を超える税率が課されたことに抗議して、政治声明的な楽曲として発表された。

 

・「ケインズベヴァリッジ体制」は、長期的には大きな混乱をもたらし、1973年の 第4次中東戦争に端を発するオイルショックにより、高度成長の時代は世界的に終焉をむかえた。

 

累進課税は、 同一賃金同一労働を歪めることもある。 勤勉な者や消費者からの評価が高いものへの賃金は、相対的に小さくなってしまう。 人々の労働 インセンティブが大きく 阻害されることになる。 ハイエクは、 過度な 累進課税は、 所得再配分機能を適切に果たすことに失敗しているとした。

 

負の所得税」:累進課税ではなく、一定額から定率で課税。一定額に満たないものは負の所得税として給付金がでるしくみ。ベーシックインカム論を構成する一つ。

 

・日本の年金:「賦課方式」。現役世代がその年度の高齢者への給付を負担する。1950年代の考え方に基づいて始まっている。
よく考えれば、これまで積み立てていなかった高齢者の救済の仕組みではないのか?「積み立て方式」は、自分が現役時代に保険料をはらい、老後にそのお金を受け取る。それなら、年金制度の崩壊とか、、、ないだろう、、、、という気もする。そんなこと言ったら高齢の有権者に総スカンだろうから、政治家は言いださないということか・・・。

 

福祉国家のタイプ:「自由主義型」(アメリカ、イギリスなど)、「保守主義型」( フランス、 ドイツなどの大陸 ヨーロッパ)、「 社会民主主義型」(北欧)。

 

ザルツブルク大学:1969年、70歳でハイエクフライブルク(スイス)で定年を迎える。金銭的理由で、職をもとめて、故郷オーストリアザルツブルクに帰郷。ザルツブルクは、モーツァルトカラヤンの故郷としても知られる。

 

・「自生的秩序論」では、人びとの「社交」の場が重要とされた。イギリスのコーヒーハウス、 クラブ、 フランスやオーストリアのサロンやカフェは、 学問や思想の普及や交流、伝播の重要な担い手だった。
失われた時を求めて』のサロンもそうだったのだ。

 

「理性は情念の奴隷」:デイビッド・ヒュームの言葉。

 

サン・シモン主義ハイエクが批判。アンリ・ド・サン=シモン(1760–1825)に由来。封建制度や旧貴族に代わって、産業家・科学者・技術者が社会を導くべき、つまり「産業を中心とした新しい社会秩序」が重要とした社会主義の考え。 

 

経済用語を多少理解していないと、難しいとおもうけれど、わからないなりに面白かった。新自由主義大きな政府と小さな政府の違いの理解によい一冊かもしれない。

良書だと思う。

 

わからなくても、、、読書は楽しい。