おんがくねずみ ジェラルディン
はじめて おんがくを きいた ねずみの はなし
レオ=レオニ
谷川俊太郎 訳
好学社
©1979
2017年7月6日 第24刷
レオ=レオニの絵本シリーズ、図書館で借りて読んでみた。
表紙をめくると、本作についての谷川さんのお話が。
”レオニの幻想と現実
1冊ごとに変化に富んだ主題と手法で、私たちを楽しませてくれるレオ=レオニの新作、 今度は音楽が主題になっています。 フレデリックと違って、 主人公の女ねずみジェラルディンは、どうやら都会の住人らしい。 フレデリックは生まれながらの詩人でしたが、ジェラルディンは生まれてからこのかた音楽を聞いたことがないのです。 これは そのジェラルディンがいっぱしのフルーティストになるまでのお話です。
幻想と現実の入り混じる この不思議な物語のかくしている意味は、 たやすく解きほぐすことができません。 ただ、 チーズの中から音楽が生まれるというレオニの発想に、 私は つい最近日本でも 飜譯(翻訳)された彼の驚くべき本 「平行植物」に通じるものを感じます。レオニの幻想は、それがどんなに突拍子のないものであっても、その根を私たちの身近な現実に降ろしていて、そこに彼の想像力が子供のそれに通ずる秘密があるのではないでしょうか。”
なるほど~。
と、読む前に、あらすじを想像してしまう言葉が。
出てくるねずみのすがた、フレデリックと似ている。
でも、最初にジェラルディンが登場する場面は、森の中ではなく、台所の雑貨、食べ物に囲まれている。
ジェラルディンは、これまで音楽を聴いたことがなかった。
音と言えば、
人間の声、扉のばたん、犬のわうわう、水のじゃぁじゃぁ・・・・
ところが、ある日、ジェラルディンは台所ですごく大きなパルメザン・チーズを見つけた。かじってみたら、すごくおいしい。
でも、ひみつの隠れ家に運ぶには大きすぎる。
ジェラルディンは、となりにすんでいる友達のところに行って、チーズの話をした
「もし はこぶのを 手伝って くれたら みんなに たっぷり ひときれ ずつ あげるわ」
チーズがだいすきなみんなは大喜び。
チーズをみると
「おおきいなぁ!でっかいぞう!すごいねぇ!すてきだわぁ!」
わくわくしてさけんだ。
なんとかかんとか、ジェラルディンのかくれがまでチーズを運ぶと、ジェラルディンはチーズのてっぺんによじ登って、小さな歯で、ひときれ、またひときれ、と切り出した。
ともだちがおいしそうなチーズの切れ端を運び出す一方、ジェラルディンは目をまんまるにして自分ががかみとった後をみつめた。
そこには、ふたつのおおきな耳があらわれていた。
チーズの耳だ!
ともだちがいってしまうと、ジェラルディンは、チーズをかみとり続けた。
でてきたのは、おおきなねずみ。
さらに、かみとり続けた。
とうとう、ねずみが全身をあらわした。
その姿は、フルートをふくねずみだった。
ジェラルディンは、見つめた。
そして、気が付いた。
フルートはねずみのしっぽの先だ!
びっくりしてそのチーズの彫像をみつめながら、ジェラルディンは、いつしか眠りに落ちた。
突然、ジェラルディンはきいたことのない音にめざめた。
それは、ねずみのフルートから聞こえてきた。
ジェラルディンはとびあがった。
暗くなるにつれて、おとはますますはっきり、節が付き、やがて見えない金と銀の糸のように空中をただよった。
「音楽だ!」
ジェラルディンは気が付いた。
「これこそ、音楽に違いない!」
朝陽がでて、チーズの彫像がゆっくりと光を浴びると、音楽はちいさくなり、とうとうとまってしまった。
「ふいてよ ふいて。もっとふいて!」
ジェラルディンは頼んだけれど、もう、音は出てこなかった。
「また、ふいてくれるかしら?」
その日の夜がちかづくと、ジェラルディンは気が付いた。
黄昏と共に、かすかに音楽が始まり、夜明けまで続いた。
夜ごと、夜ごとに、チーズの彫像のねずみは、ジェラルディンのためにフルートを吹いてくれた。ジェラルディンは、節がわかるようになり、昼になってもそれが耳に残るようになった。
ところがある日、通りで友達に会うと、みんなすっかりまいっていた。
「ジェラルディン!たべものがすっかりなくなってしまった。あのチーズをわけてくれ」
ジェラルディンは、
「そんなことできないわ!」
「どおして?」怒ってみんなはたずねた。
「だって、、、、なぜって、、、あれは音楽だもの!」
みんなはびっくりして、ジェラルディンを見た。
「音楽って 何さ?」
ちょっとのあいだジェラルディンは考え込んで、それから一歩うしろにさがると、おごそかにしっぽの先をもちあげ、つぼめたくちびるにあてて、深く息を吸い込んで、吹いた。
ジェラルディンは、ちからいっぱい 吹いた。
ふうふう、ぜいぜい、きいきい 吹いた。
ともだちは みんな ペコペコのお腹がいたくなるまで笑った。
だがやがて、長いやわらかい美しい笛の音が、ジェラルディンの唇からもれてきた。
ねずみたちはおどろいて息をこらした。
ほかのねずみたちも、この奇跡を聴きにあつまってきた。
としよりねずみのグレゴリーがささやいた。
「もし これが音楽というものなら、ジェラルディン、おまえの言うとおりだ。あのチーズを食べるわけには いかない」
「いいえ」ジェラルディンがうれしげにった。
「これで チーズをたべることができるわ。
なぜって、もう、音楽は 私のものに なったんですもの」
ジェラルディンの音楽について、みんなは納屋へむかった。
そうして、ジェラルディンがいちばん楽しい節を吹いている間、みんなは腹いっぱいチーズをたべた。
おしまい。
おぉぉぉ!
結構、感動の物語。
しっぽがフルートとは。
「音楽が私のものになった」とは!
夜のあいだだけ音楽を奏でた謎のチーズねずみ彫像。なんて、不思議な話でしょう。音楽が自分の物になるって感覚、うらやましい。鼻歌でうたえるだけでなく、自分のしっぽで吹けるようになっちゃうなんて、なんて素敵な。
それも、毎夜毎夜聞き続けた結果か・・・。
継続は力なり、ってことか?!
これは、とても楽しいお話。
でも、私なら気前よくチーズをたべちゃっていいわ、なんて言えないかも。だって、またわからなくなったら、チーズの彫像にフルートを吹いてもらいたいし。。。
背水の陣でフルートを習得!ってことか。
ちなみに、ジェラルディンは、女の子という設定らしいけれど、描かれるねずみはぜんぶおんなじ。女の子だからって、リボンとかつけていないところがまたいい。としよりねずみも、絵の中にまざっているのだろうけれど、見分けがつかない。そういうところも、レオ=レオニの普遍の楽しさ、かもしれない。
チーズの中からフルート吹きが出てくるのも、しっぽがフルートなのも、楽しい。
絵本は楽しい。
癒される。
そして、絵本にでてくるチーズといえば、やっぱり、パルメザン・チーズだよね。
