『デューン 砂漠の救世主 新訳版 上』 by フランク・ハーバート

デューン 砂漠の救世主 新訳版 上
フランクハーバート
酒井昭伸
早川書房
2023年4月10日 印刷 
2023年4月15日に発行
Dune Messiah(1969)
*本書は、1973年8月に早川文庫、SFから刊行された『デューン 砂漠の救世主』の新訳板の2分冊のうちの上巻です。

 

デューン 砂の惑星』の続き作品。

megureca.hatenablog.com

 

原書 の『Dune Messiah』を今年のホノルルフェスティバルの帰りの空港でペーパーブックを買っていたのだが、なかなか読み進んでいなかった。このところ数か月、ベッドで睡眠剤代わりになっている。図書館で新訳版を見つけたので借りて読んでみることにした。

 

裏の説明には、
ポール・アトレイデスが、惑星アラキスで帝国の権力を奪いとり、遂に帝座について12年。彼を救世主と妄信する砂漠の民フレメンは、聖戦を敢行、人類を1つにした。だがいま、ベネゲセリット結社、航宙ギルド、そしてベネ・トレイラクスの踊面術士(フェイスダンサー)ら旧勢力は、糾合して皇帝への陰謀を企み、密かに策略の手を伸ばしていた!
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督により映画化された伝説的傑作、『デューン砂の惑星』続編の新訳版”
とある。

 

映画のDUNE パート2が、どこまでお話が進んでいたのかももう記憶の彼方、、、。でも、パート3が2026年公開予定らしい。

 

本書は、序文、ブライアン・ハーバートのコメントがある。 「内容に触れています」と 但し書きがあった上で、 本編の世間での評判、そして父 フランク・ハーバートの意図について書かれている。最後に、” ワシントン州シアトルにて 2007年10月16日”とある。

どうも、DUNEは、3部作で、この 「砂漠の救世主」は、真ん中の第二作で、第一作を読んだ人たちから熱烈に求められた続編だったにもかかわらず、その内容にがっかり、との声も大きかったらしい。読んでみればわかる。最強だったはずのポールが、、、そんなことになっちゃうの?!と言う展開なのだ。そして、第三作まであって完結するので、その間にこのような展開も必要だったのだと、釈明するようなことばにも聞こえる。まぁ、それでもやっぱり、SFの世界だもの、何が起きたっていいのだ。山あり、谷ありでの大団円。

 

序文のあとにも、なにやら取り調べのようなQ&Aが続き、英語で読んでいた時には場面設定がわからず、なんだなんだ?!と言う感じだったのだ。それが、翻訳版をよんだら、あぁ、そうかそうか、と納得。

 

序文も、最初の問答も、前座的な感じ。だけれど、予め「評判があまりよくなかった」第二作ということで読むと、なぜか気が楽。。。。お話は、すでに、ポールが皇帝の座について12年後、という設定。

 

久しぶりなので、登場人物。

ポール・アトレイデス:主人公。ムアディップ。ウスール。皇帝。ベネ・ゲセリットの目指した「クウィサッツ・ハデラック」演算能力者(メンタート)、未来予知ができる。
ルーラン:ポールの正妃。ポールは皇帝の座を得るために政略結婚。
チェイニー:ポールの愛妃。フレメン。
アリア:ポールの妹。予知能力をもつ。
ヘイト:偶人(ゴウラ)。敵からポールの元に送り込まれる。アイダホ・ダンカン(ポールたちを守るために殉死した元ポールの重臣)の肉体を持つ。
スキュタレー: ベネ・トレイラクスの踊面術士。ポールの敵。
エドリック: 航宙ギルドの操縦士。ポールの敵。
・ガイウス・ヘレネ・モヒアム:  ベネ・ゲセリットの老教母 。ポールの敵。
・スティルガー:宰相。チェイニーの叔父。
・レディ・ジェシカ:ポールの母。本作には登場しない。惑星カラダンに住む。


感想。
やっぱり、面白い。でも、第一作、デューン砂の惑星を読んでいることが前提。じゃないと、チェイニーを妾にして、イルーランと結婚した経緯とか、アリアの不思議な力について、話についていけない。場面転回のしかたも、DUNE砂の惑星と一緒で、史書からの言葉が引用されて、章が変わる感じ。

 

以下ネタバレあり。

要するに、第二作は、ポールを蹴落とそうとする元皇帝(イルーランの父)陣営の組織とポールとの戦い。言ってみれば、クーデターを企てる悪とポールの戦い。そして、第一作と同じように、史書からの引用であるかのように、歴史が語られていく。もちろん引用は、『歴史の分析 ムアディップ』とか、フィクションだ。語り手が変わることで、物語の視点が少しずつ変わる。ポールの視点、アリアの視点、イルーランの視点、ベネ・ゲセリットの老教母・モヒアムの視点。

 

皇帝の座について12年にもなるポール。チェイニーとの間に子供は生まれていない。最初に生まれた子供は、戦争のときに亡くなってしまった。それから、チェイニーは妊娠することがなく、その理由はイルーランによってチェイニーの食事に盛られ続けていた避妊薬だった。

 

敵のスキュタレー、エドリックは、相変わらず不気味な様相。謎の重力中和タンクの中で浮いているのはエドリック。ポールに対する陰謀の密談の場には、ベネゲセリットの老教母やイルーランも参加している。 

 

お話の最初は、その陰謀の密談の場。この秘密会合の面々は、ポールを失脚させることをねらって、「ヘイト」をポールの元へ送り込む計画を共有する。ヘイトは、 トレイラクス会のつくった偶人で、アイダホ・ダンカンの死体をもとにつくられたロボット人間。見た目は、ダンカン=史上最強の剣士のひとり、だけれど、ポールを破滅させるように仕込まれている。

ついでに、スキュタレーによって、 ポールの妹アリアがヘイトに恋心を抱くようにも設計された。

 

場面は、ポールの住む館。ポールは、皇帝について12年。数々のジハードで多くの領民を亡くしたことに心を痛めている。チェイニーとの子も、戦いの中で命を落としてしまった。チェイニーは、ポールにコーヒーをいれながら、世継ぎのことを話し出す。12年も子供ができないのだから、 もう自分の子供を産むことができないかもしれない。だから、イルーランに子供を産ませてはどうか、とポールに話す。だが、ポールは、「イルーランとはけっして臥所をともにしない」といい、  チェイニーの提案を拒む。 イルーランに子供を産ませればチェイニーの命が狙われることを心配しているのだった。

 

そこに、イルーランがやってくる。自分と子供をつくるつもりがないのなら、他の男との間に子供を作るというイルーランに、怒りを爆発させるポール。そんなことはさせない!と。
ポールとチェイニーは、子供を持つために、元のフレメンの生活に戻った方が自分たちはしあわせなのではないのか、とも語り合うようになる。少なくともチェイニーは、フレメンの住みか群居洞(シエチ)に戻りたいと思うようになっていた。
ポール自身も、 自ら身を引く権力があるうちに地位を捨ててチェイニーとどこかへ行ってしまいたいと思うようになる。

 

スキュタレーは、一人の老フレメン・ファロクを通じて、ポールの元にヘイトを送り込む。ヘイトは、エドリック(宇宙ギルド)からの贈り物としてポールの元へ届けられる。ヘイトは、見た目はダンカン・アイダホ。生まれる前の記憶を持つアリアは、ポールの元に送られたヘイトを見て、身震いをする。ダンカンは死んだはず。ポールもまた、ヘイトがダンカンをもとにつくられた偶人であることをすぐに認識する。偶人である証拠に、目は金属の眼球で、右も左もみていない。

 

ポールは、偶人ヘイトに向かって質問する。
「ヘイト、それはお前が持つ唯一の名前か?」
「そのように呼ばれてます。ム・ロード」
「自分が贈り物であることは理解しているのか?」
「 そのように説明を受けております。ム・ロード」
ヘイトは、ポールの質問に率直に答える。
そして、
ヘイトは、かつてはダンカン・アイダホの肉体であったことをポールから聞かされる。

ポールは、ヘイトを贈り物として受け入れた。エドリックらが帰っていったあと、ヘイトと二人になった時、ポールはヘイトに尋ねる。
「 お前は何のために訓練され、世の贈り物とされたのだ?」
「 あなたさまを破滅させるためです」

返答の率直さに衝撃を覚えたポールだったが、禅スンニ派メンタートとしての面影を見て納得するのだった。

 

ヘイトは、自分には予知能力はないと言った。でも、確かにメンタートとしての能力をもっていた。アリアは、ポールとヘイトの様子を見て思う。「この男、危険人物だわ。私たち二人にとって・・・」

 

ヘイトをポールへ差し向けることに成功した陰謀会合の面々。イルーランは、ポールの状況を報告する。老教母は、なんとしてもチェイニーとポールの子が生まれることを阻止せよとイルーランに命令する。万が一懐妊することがあれば、チェイニーを殺害せよ、と。しかし、イルーランはチェイニーを憎んでいるわけではなく、避妊薬を食事に盛ることはできても、とてもチェイニーを殺すことなどできないのだった。互いに、相手を利用する事しか考えていないイルーランと老教母。イルーランもまたベネ・ゲセリットであり訓練を受けた女。


われ恐れず、 恐怖は心を殺すもの。
恐怖は全き抹消をもたらす小さな死。
我は恐怖に立ち向かう・・・
と、ベネ・ゲセリットの教えを呟き、心の落ち着きを取り戻す。

 

アリアは、ヘイトが気になるようになる。やはり、ダンカンなのか。心のモヤモヤを晴らすかのように、戦闘訓練に明け暮れる。その姿は、もう少女ではなく、女性だった。ポールですら、妹の女性らしくなった姿にハッとさせらる程だった。


ポールの側近スティルガーは、アリアもそろそろ婿殿をお迎えせねばなりません、と言い出す。その言葉に、アリアは赤面する。うろたえつつ、怒りを覚えるアリア。

そして、ポールたちの館に侵入者の形跡を発見。何者かが・・・・。

 

アリアは、サンドワームを捕獲して他の惑星に売り払おうとしている輩がいるという話を聞いて、砂漠にパトロールに出る。そこで見たのは、元フレメンの女のバラバラになった死体。同行していたヘイトにこの死体をどうみるか?と尋ねるアリア。ヘイトの答え、動き、ソプター機の飛ばし方などは、まるでダンカンだった。質問をはぐらかしたことをアリアに怒られると肩をすくめた。そのしぐさまで、ダンカンそのものだった。かつて、兄を守って命を落とした男ダンカン。

 

そして、ヘイトは、アリアに自分の過去について質問を始める。ヘイト自身が、「ダンカン」であった過去をイメージするようになっていたのだった。二人は移動しながら、ポールとアリアの父の頭骨がおさめられている「アル・クドゥス(聖なる場所)」の上空を飛ぶ。
アリアに、あれが 「アル・クドゥス」と教えられたヘイトは、「いつの日か、じかに尋ねてみなくては。御父上の遺骨の傍に侍れば、かつての記憶がとりもどせるかもしれません」
というのだった。

 

アリアは、はっと気が付く。ヘイトは、過去の記憶を取り戻したがっている。そして、アリアとヘイトの会話が続く。ヘイトは、アル・クドゥスを飛んで、確かに何かを感じたのだった。それが何なのか。やはり、ダンカンとしてポールの父、そしてポールに仕えていた時の感情がヘイト中に残っているのか。

ヘイトに何が起きているのかを問い詰めようとするアリア。二人の口論。その口論はふととまる。ダンカンが、、、ヘイトがアリアにキスしたことで。

 

二人が館に戻ってくると、ポールは女性フレメンの死体の話を聞く。嫌な感覚。ポールは、予知なのか幻覚なのか、月が崩れ落ちる映像を感じる。もう、皇帝としては破滅がまっているということなのか・・・・。

不穏な空気を感じつつ、、、下巻に続く。 

 

どうしても、映画DUNEの面々の顔が浮かんでしまう。でも映画ではアリアはまだジェシカのお腹の中か、生まれた直後か、、、。映像にするなら、どんな美しい女優さんだろう、、、と想像してしまう。

 

それにしても、ポールにまっているのは破滅なのか、、、、続きは下巻!