『ブッダ 【第1巻】 カピラヴァストウ』  by 手塚治虫

ブッダ 【第1巻】カピラヴァストウ
手塚治虫
潮ビジュアル文庫
1992年12月25日 第1刷
2001年2月25日 第38刷

 

図書館でジュニアのコーナーを歩いていた時に、目に入った本。ブッダ手塚治虫の『ブッダ』。読んだことがない。私は、坐禅会に参加しているけれど、ブッダのことをよく知らない。 生まれてすぐに 7歩歩いて「天上天下唯我独尊」と言ったとか、木の下で悟りを開いたとか、元は王子だったとか、、、まったくもって断片的な知識しかない。

日本のこころ」と仏教は、やはり深いところでかかわりがないわけがない。一度、ブッダについて、勉強してみるか、ということで、とりあえず1巻を借りて読んでみた。

 

裏の説明には、
” 紀元前6世紀 今のネパールの小族シャカ族の王族として生まれた釈迦。 だが彼の周りは カースト制の厳しい 身分差別の中で苦しむ人々がいた。
「 身分を決めたのは人間  身分で苦しむのも人間」
人はなぜ生きるのか、人はなぜ苦しむのか…。
生命の神秘な謎を解くため、彼は修行に励んだ。
巨匠手塚治虫が描く大スペクタクルロマン!”
とある。

 

手塚治虫(てづかおさむ)は、昭和3年大阪府豊中市生まれ。 大阪大学医学専門部卒。 中学時代より漫画を描き始め、昭和21年18歳の時デビュー。22年に『新宝島』が大ベストセラーに。『鉄腕アトム』『アドルフに告ぐ』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、作品多数。1989年、他界。

 

本書は、マンガの後に解説(呉智英・評論家)が付いている。解説によると『ブッダ』の連載は、1972年8月から。手塚なりの解釈で、フィクションや架空の登場人物も交えながら物語になっているとのこと。

 

解説から引用すると、
大乗仏教で「三身(さんじん)」ということを言う。仏陀の三つの、すなわち 法身(ほっしん)」「 応身(おうしん)」「報身(ほうしん)」のことである。法身とは普遍的な心理そのもの、応身とは歴史的に実在した釈迦、報身とは衆生を救う形を備えたものとしての仏、ということになろうか。 この三身のうち、法身と報身は進行の対象であるが、 応身は信仰の対象であると同時に、人間的興味の対象でもある。
何の信仰心を持たない人にとっても、そのひたむきな姿、内心の葛藤や苦悩、真理を獲得した歓喜などには、共通の尊敬の念を抱かせるものがある。 手塚治虫の「ブッダ」はこの応身に従って釈迦を描いたものだ。”

 

釈迦が実在の人と言われてもピンとこない私なので、手塚ブッダは、私にちょうど良い本のような気がした。

 

目次
第1巻 カピラヴァストウ
第1部 
第1章 バラモン
第2章 浮浪児タッタ
第3章 ブダイ将軍
第4章 告知
第5章 チャプラ
第6章 玉杯

 

感想。
久しぶりに手塚マンガ。やっぱり、面白そう。坐禅会の後の住職のお話にでてくる地名がチラホラ。まぁ、どこまでが史実なのかはあとで調べることにして、とりあえずこのお話を読んでみよう、という気になった。

 

舞台は、ヒマラヤ山脈のふもとインダス河の流れのかなた。およそ3500年前から始まる。インドの始まり、征服者アリアン人は身分制度をつくり、指導者としての自分たちをバラモンと呼んだ。

インドの社会の中で、バラモンは長い間絶対権力者だった。バラモンは、自分たちの下に武士、平民、奴隷などと階級をつくって人々をよりわけ、その差別はインドに長く根差してしまった。

だが、やがてバラモンは驕りにふけるようになり、見栄や贅沢の中に堕落をしていった。人々は、新たな教えを求めた。そんな歴史的背景。

 

主な登場人物
ナラダッタバラモン。アシタ一門の一人。「神になるべき人か、世界の王になるべき人か、偉大な人物があらわれる」というアシタの言葉に従い、その人(ブッダ)探しの旅に出る。

アシタ:みんなから尊敬されるバラモン

タッタ:ナラダッタが「その人」探しの旅の途中で出会う不思議な力をもった少年。身分はバリア。意識を集中させて、動物と魂を入れ替えることができる。
*バリアは、当時の身分制度で最も低い階級。スードラ(奴隷)より下で、人間以下の存在とされた。

チャプラ:スードラの少年。タッタたち(バリア)に売り物の反物を奪われたことで、母が遠くに売られてしまうことになる。

ブダイ将軍:コーサラ国の将軍。後にチャプラに命を助けられて息子とする。

スッドーダナ:カピラヴァストウの城、シャカ族の王。後のブッダの父。

マーヤスッドーダナ王の妻。後のブッダの母。


ナラダッタは、「その人」探しの旅の途中で、タッタという不思議な少年の話を聞く。

そのころタッタは、チャプラから商品を奪って、バリアの仲間と山分けしようとしていた。チャプラは、主から反物を取り返してこない限り母を奴隷として別の土地へ売り飛ばすといわれてしまい、反物を取り返しにバリアのところへ行く。

タッタたちをみつけだしたものの、チャプラはバリアたちにボコボコにされてしまう。バリアに奴隷の気持ちなんかわからない!というチャプラ。

 

「お前たちは人間以下でもそうしてお母さんと一緒にいられる。僕のお母さんは、奴隷として売り飛ばされてしまうんだ!」

 

それをきいたタッタは、チャプラのお母さんを取り戻してやる、といって、虎にのりうつって奴隷売りの列をおそい、チャプラのお母さんを助けてやる。

虎になったタッタは、また、もとのタッタにもどった。チャプラはタッタにどうして虎になることができるんだ?と聞く。

 

「おいらは悲しいときはケダモンと一緒に泣くんだ。苦しいときゃケダモノといっしょにうめくんだ。」


そして、ある時、気持ちがケダモノと一緒になることができるようになった、といった。

母を助けてもらったチャプラは、タッタを兄貴分とおもうようになる。

 

と、チャプラの母を助けている間に、隣国の兵隊がタッタやチャプラの村を襲い、皆殺しにしてしまう。コーサラ国のブダイ将軍の一団で、カピラヴァストウの都を襲う途中だった。

慌てて村に戻ったタッタとチャプラとその母だったが、すでに村は丸焼けで、タッタの母も殺されていた。あたりにはまだ兵隊がいたので、3人は、チャプラたちの主だった商人の家の酒樽の中に身を隠す。そして、酒樽を盗み出した兵隊たちによって、ブダイ将軍の屋敷迄運び込まれ、反撃の機会をまった。

 

と、そこに、「その人」を探す旅をしていたナラダッタとであい、共にブダイ将軍のもとを抜け出して、旅をすることになる。

 

その年、イナゴの被害であたりは飢饉となる。ナラダッタ、タッタ、チャプラ、チャプラの母の四人は、小屋に逃げ込んでイナゴ被害をやり過ごすが、食べ物、飲み物にも困る。

そんなとき、タッタが野ネズミが地面を引っかいているのをみつけ、そこに、食べ物の入ったツボを掘り出す。4人で分けようというチャプラだったが、タッタは教えてくれた野ネズミや、集まってきた動物たちにも分けてやる。その様子をみたナラダッタは、タッタが「その人」なのではないか、と思う。バラモンではなく、バリアの身分なのに・・・・。

 

チャプラは、タッタに馬にのりうつってもらい、その馬に乗って再び軍隊の元を目指す。と、途中でブダイ将軍が一人で沐浴中にワニに襲われているところに出会い、将軍に取り入ることを思いつく。チャプラは、瀕死の将軍を助けたことで、命の恩人として将軍の息子となる。タッタは、ナラダッタとチャプラの母の元へ戻る。

 

ブダイ将軍率いるコーサラ国軍は、シャカ族とコーリヤ族が仲良く住むカピラヴァストウの小さな城を攻め落とそうとしていた。 カピラヴァストウの城では、スッドーダナ王が敵を迎え撃つ準備をしていたけれど、イナゴ大発生やブダイ将軍の瀕死の怪我で敵襲がなくなり、不思議なラッキーを妻のマーヤとありがたがっていた。

マーヤは、6本の牙を持った白い象の夢を見た晩に、身ごもった。そして、その後も二人の間には不思議なことがおこった。4か月後、その子はこの世に産声をあげる。

 

ブダイ将軍の息子となったチャプラは、タッタや母たちと離れ、一人将軍の子としての特訓を続ける。そして、あるとき、ブダイ将軍は、チャプラが奴隷の身分であった事実を知るのだが、二人だけの秘密にする。

 

チャプラが去った後、タッタ、ナラダッタ、チャプラの母の三人は、何とか食べ物をみつけて生きのびていた。が、ある時、へびの卵を前に、タッタが自らの命をへびにさしだすから、二人は卵をたべて生きのびろ、といってへびに自ら食われてしまう。どうすることもできずにそれをみていたナラダッタは、「自然の中で人間も、けものも互いに助け合う」ということをタッタに教えられたと理解する。

 

へびに丸呑みされたタッタだったが、そこへ突然現れた男の放つ矢によってへびが殺され、タッタがお腹から救い出される。男は、ブダイ将軍の元にいるチャプラと腕騙しの決闘をしに行く途中だという。3人は、チャプラがブダイ将軍の元で無事にいることを知る。

 

だんだんと腕をあげていたチャプラは、すっかりコーサラ国で人気者となり、大臣の娘マッカリ姫にも惚れられる。腕自慢では、王杯を手にするほど強くなり、いつか偉くなって王座にすわり、王の身分を手に入れたいと思うようになる。

 

と、1巻は、まだブッダは生まれない。

2巻へ続く。

 

なるほど、バラモン身分制度ブッダの誕生前までの人々の苦労。そして、人間だけでなく自然に生きる動物にも上下などないということ、手塚マンガにブッダの教えが垣間見える。