源氏物語 4
角田光代
河出文庫 古典新訳コレクション
2024年2月20日 初版発行
2024年10月30日 2刷発行
*本書は2018年11月に小社から刊行された『源氏物語 中』(池澤夏樹=個人編集、日本文学全集05) より「初音」から「藤裏葉」を収録しました。
3巻の続き。
目次
初音(はつね) 幼い姫君から、母に送る新年の声
胡蝶(こちょう) 玉鬘の姫君に心惹かれる男たち
蛍(ほたる) 蛍の光がみせた横顔
常夏(とこなつ) あらわれたのは、とんでもない姫君
篝火(かがりび) 世に例のない父と娘
野分(のわけ) 息子夕霧、野分の日に父を知る
行幸(みゆき) 内大臣、撫子の真実を知る
藤袴(ふじばかま) 玉鬘の姫君、悩ましき行く末
真木柱(まきばしら) 思いも寄らない結末
梅枝(うめがえ) 裳着の儀を祝う、女君たちの香
藤裏葉(ふじのうらば) 夕霧、長年の恋の結実
初音は、元日の朝、六条院の様子で始まる。光君は、大事にする女たちを六条院を中心にそれぞれの邸へ落ち着かせる。西北(冬)には明石の御方、南西(秋)には秋好中宮、北東(夏)には花散里、玉鬘をすまわせ、南東(春)には、光君、紫の上、明石の姫君が暮らした。光君は、年始の挨拶に、それぞれの邸を訪れる。夕霧(光君と葵の君の子)には、花散里の面倒を見るように言う。そして、光君は、尼になった空蝉や、末摘花のことも思い出す。娘としてひきとった玉鬘は、いかにも美しい。
胡蝶は、美しい玉鬘に、内大臣(かつての頭の中将・本当の玉鬘の父親)の息子・柏木、光君の弟の兵部卿宮(蛍宮)、夕霧(中将の君)、右大将(鬚黒ひげくろ)など、男たちがこぞって惚れ込む様子。玉鬘大人気。可憐な玉鬘を、光君も娘として育てているけれど、手放すのを惜しく思っている。
蛍は、玉鬘にあいたくて仕方がない男たちの話。筑紫の大夫監からにげてきたのに、ここでも男たちに追い回される。みんな手紙を送ってくるのだ。光君まで、おまえをはなしたくない、みたいなことを言うので、玉鬘は気苦労が増えて、どうしたらいいのかと思い悩んでいる。『住吉物語』『日本書紀』などを読んでも気が晴れないし本当のことは書いていない。光君は、物語は現実よりも本当のことが書いてある、伝えたいから書いたのが物語の始まりだ、などという。夕霧もまた玉鬘の美しさに惹かれるのだが、紫の上がさらに美しいと思い、それでも幼なじみの雲居雁がやはり可愛かったと思う。内大臣は、玉鬘のうわさを聞くにつれ、自分にも美しい隠し子がどこかにいるのではと思うようになる。本当は、玉鬘が内大臣の子なのに・・・。
常夏では、内大臣が柏木に自分の子を探してきてもらう。つれてきた近江の君は、はねっかえりのとんでもない娘だった‥‥。が、引き取ってしまったために、返すわけにもいかず。末摘花は美しさの点で他の女と違うけれど、近江の君は育ちがひどい…。
野分は、はげしい野分で邸が雨風にさらされ、心配した夕霧が六条院をあちこちと駆け回り、風にひらりと舞い上がった隙に、父と玉鬘が身を寄せ合うところを目撃してしまう。まさか、女のうわさの絶えない父とはいえ、自分の娘と?!?!と夕霧が疑心暗鬼に。
行幸は、冷泉帝(母は藤壺、本当の父は光君)の大原野への行幸の機会にまつわる話。玉鬘が冷泉帝を目にすることで宮仕にでることを決心するように仕向ける光君。が、その前に裳着の儀(平安時代の女性の成人式)を執り行う。その前に、光君は玉鬘の本当の父が内大臣であることを大宮を通して内大臣に打ち明ける。若い頃は遊び仲間だった光君と内大臣だったが、最近では内大臣のライバル意識から縁遠くなっていた二人だったが、再び近づく。柏木は、美しい玉鬘が実のきょうだいであると知って、つらくも、うれしくも思うのだった。裳着の儀のあとも、兵部卿宮は熱心に玉鬘に求婚する。近江の君は、自分はだれにも相手にされないとドタバタと騒ぎ立てる。挙句の果てに、「天の岩戸を閉じて引きこもっていた方が無難だろうね」なんて言われちゃう。
藤袴は、まさかの玉鬘の結婚。玉鬘は宮中へ参内することがきまったが、あまりに玉鬘にほれ込んだ鬚黒の大将は、一目だけでもとむりやり玉鬘の部屋に張り込む。見るだけと思っていたけれど、見たら自分をとめることができず玉鬘を自分のものにしてしまう。そうなっては仕方がないと、鬚黒と結婚することを決意した玉鬘。光君もびっくり。が、その結婚はすんなりいったわけではなく、鬚黒の北の方は、そのことに腹を立てて癇癪を起し、子供たちをつれてぷりぷりと実家に帰ってしまう。いたたまれない、、、玉鬘。
真木柱は、北の方の娘が、父と離れたくないと泣いて手紙を真木の柱に託す。北の方は、癇癪を起して鬚黒に火鉢の灰を浴びさせる。
北の方の実家では、娘の出戻りが面白くない。光君は須磨にいたころの恨みつらみをもって、いま、こんな仕返しをしているのだ、と被害妄想。式部卿宮は、光君を悪く言う妻に悪口を言うのはやめなさい、といいつつも「あの賢いお方は、前々から深くお考えになって、こうした仕返しをしてやろうと思っていらしたのでしょう。そうおもわれているこの私が不運だということだ」などという。光君、とんだとばっちり。
藤袴~真木柱は、まるで昼ドラのコメディ版のような場面が続く・・・・・。鬚黒の北の方、内大臣が娘にした近江の君、キャラの濃い2人の女性が、明るいコメディにしている。
このあたりは、紫式部も書きながら楽しんだに違いない…。
梅枝は、明石の姫城の裳着の準備。朱雀院の皇子である東宮も同じ2月に元服の儀があるので、姫君は東宮妃となるみこみ。色々な人が香で競い合う。
藤裏葉では、玉鬘が自分の本当の娘であることを知った内大臣が、かつて光君の息子だからといって夕霧と雲居雁(内大臣の娘)を引き離したことを、もうそろそろ二人の仲を許してもいいかと思い始める。まだ幼いうちに引き離されてしまった二人だが、夕霧の心の中には常に雲居雁がいた。そして、幼い恋は、とうとう実った。
娘として育ててきた明石の姫君や玉鬘がお嫁に行ったことで、光君は自分もそろそろ出家したいと思う。でも、紫の上を残して出家する決心もつかないのだった。
