『ドン・キホーテ』  by ミゲル・デ・ セルバンテス

ドン・キホーテ
ミゲル・デ・ セルバンテス
牛島信明 訳
岩波少年文庫
1987年11月18日 第1刷発行
2000年 11月18日 新版第1刷発行
2019年6月5日 新版第16刷発行

 

図書館の児童書のコーナーで見つけた本。時間つぶしにさらっと読める本を探していたら、目についた。 ドン・キホーテはバレエの演目としても有名。バレエでは、ドン・キホーテの旅と別に、キトリとバジルという若い二人の恋愛物語がメイン。ドン・キホーテの旅は、二人の恋愛劇の合間のコメディとして挿入されている。ま、その元になったと言っていいドン・キホーテ

 

作者のミゲル・デ・ セルバンテスは、 1547~1616。400年以上前のスペインの作家。本作は、古典中の古典といっていい。正規の学校教育はほとんど受けず、兵士としてイタリアやアフリカで戦い、1571年には史上有名なレバントの海戦に参加し、左腕を負傷した。その後、海賊にとらえられたり、反乱の首謀者となったり、数奇な運命を経て帰国。1585年に第1作『ラ・ガラテーア』、 1605年には『ドン・キホーテ』を出版する。 これは出版されるや、たちまち世の喝采を博し、10年後に続編を出版した。これらは世界の古典として読み継がれてきた不朽の名作である、とのこと。

 

あとがきによると、本書は、原作の1/6程度に短縮された前篇と後篇との抜粋をまとめたものらしい。岩波少年文庫シリーズで時々挿画があるものの約370ページ。セルバンテスが仕事のいざこざがもとで50歳を超えて牢獄に繋がれ、「わびしい牢獄の中で生まれた作品」が、『ドン・キホーテ』ということ。牢獄の中で作家生活ができるというのも、なかなか、、、。わびしい生活だったからこそ、この楽しく、愉快で、それでいて人生を考える作品が生まれたのかもしれない。

 

本の内容紹介には、
”騎士道物語に夢中になりすぎた郷士とその従者の荒唐無稽な話と思われがちなこの長編古典『ドン・キホーテ』を、ふたりの人間性に焦点をあてて真の面白さを浮き彫りにした画期的な編集。” とある。

 

目次
1 英雄の誕生
2 風車の冒険
3 勇敢なビスカヤ人との戦い
ドン・キホーテと従者サンチョ・パンサのゆかいな対話
5 冷酷な馬方どもに出くわしたドン・キホーテの気の毒な冒険
6 城だと思いこんだ旅宿で、われらの騎士に起こったこと
7 城と思いこんだ旅宿で、ドン・キホーテ主従になおもふりかかった災難
8 羊の群れの冒険
9 死体をめぐる冒険
10 マンブリーノのかぶとの獲得
11 ドン・キホーテが囚人たちに与えた自由
12 思い姫ドゥルシネーアに会うため、エル・トボーソの町へ向かう主従の対話
13 ドゥルシネーア姫を魔法にかけるためにサンチョが用いた策略
14 勇敢な《森の騎士》との出会い
15《森の騎士》との一騎討ち
16《鏡の騎士》と従者の正体、ならびに彼らがもくろんだこと
17 ドン・キホーテと緑色外套の紳士との間に起こったこと
18 前代未聞のライオンとの冒険
19 モンテシーノスの洞穴への潜入
20 ドン・キホーテがモンテシーノスの洞穴の底で見たという、おどろくべきこと
21 世に名高い、魔法の小船の冒険
22 公爵夫妻のドン・キホーテ主従にたいする悪ふざけの始まり
23 ドン・キホーテに知らされた、ドゥルシネーアの魔法を解く方法
24 島の領主として赴任するサンチョにドン・キホーテが与えた忠告
25 サンチョの領主就任と統治の始まり
26 領主サンチョ・パンサの食事
27 ドン・キホーテとサンチョの往復書簡
28 疲れはてたサンチョ・パンサの統治の終末
29 公爵邸からの出発に際して、侍女アルティシドーラとの間に起こったこと
30 牛の群れに踏み倒されるドン・キホーテ主従
31『ドン・キホーテ』の偽作の存在を知っておどろくドン・キホーテ
32《銀月の騎士》との一騎討ち、ならびに《銀月の騎士》の正体について
33 約束の一年を羊飼いとして暮らすことを決意するドン・キホーテ
34 ドゥルシネーアの魔法を解くための苦行にたいする報しゅう
35 帰郷
36 ドン・キホーテの死
あとがき

 

感想。
面白かった。けど、ちょっとセツナイ感じもする。人間性が描かれていると言えばそうなんだろうけど…。
目次にある通り、ほとんどは、ドン・キホーテサンチョ・パンサのどたばた旅物語。文字の読み書き物ができないただの百姓だったサンチョ(妻子あり)だけれど、ドン・キホーテと旅する中で、次第に影響をうけて人として成長していく。その様子が、微笑ましいような、ドン・キホーテの無茶ぶりが、コメディとして爆笑してしまうような。。。


これが、400年も昔に書かれたお話で、そのころのスペインはカトリックによる世界制覇という願望に翻弄されて、だんだんと衰退していった時期だったというのは、興味深い。

人は、社会情勢が変わりつつあるときにこそ、物語を書きたくなるものなのだろうか。小説を書くって、人間の不思議な習性なんだな、、、と思う。現実の世界では果たせなかった夢を小説に託すのか?ちょっと、寂しいけれど、楽しい物語。

 

以下、ネタバレあり。まぁ、有名な古典なのでご存じの通り。。。。だけど。

 

主人公のドン・キホーテは、49歳。本名はアロソン・キハーノだが、財産も売り払って騎士道物語を買って読みふけり、ついには、思慮分別を無くし、自分は囚われの姫を救う騎士だと信じ込んでしまう。そして、百姓のサンチョ・パンサをつれて、絶世の美姫ドゥルシネーアを救う旅に出る。ドン・キホーテは、自分が英雄の騎士だと信じている。まぁ、正気ではない。一緒に騎士道の道をいくのは、ドン・キホーテの愛馬ロシナンテと、百姓のサンチョ・パンサ。サンチョは、馬をもっていないのでロバを連れていく。2人と2匹の旅。

自分を騎士だと信じ、騎士道の掟を貫こうとするドン・キホーテは、宿屋をみれば「城」だといい、水車や風車をみても魔法で姿を変えた巨人の敵だと信じて、勇敢に?!戦う。サンチョから見ても、他の人から見ても、どう見たって水車や風車でしかないのに‥‥。そんなあほなこと、と思いつつも、数々のピンチを潜り抜けていくドン・キホーテに、サンチョも次第に親しみを感じ、従者として主人を守ろうとする。ときには、まんまと悪ふざけで主人をだましもするサンチョ。それによって助けられるドン・キホーテ。ライオンと対峙したときは絶体絶命かと思いきや、ライオンはお腹がいっぱいだったのか、ドン・キホーテには見向きもせず檻に自ら戻っていく。ややや、ご主人は本当にすごい人なのか?サンチョの素直さが微笑ましい。

 

すったもんだ、旅の珍道中ありのなか、最後は、キハーノをつれ戻したい村の学士が演じる「銀月の騎士」との戦いに敗れ、騎士としての約束をたがえず、村に帰ることを承知するドン・キホーテ。騎士の恰好をすてて村に帰る。村に戻って正気にもどったキハーノは、女中や姪に大歓迎される。サンチョもまた、妻や娘に大歓迎される。そして、正気を取り戻したキハーノは憔悴して、寝付いてしまう。ドン・キホーテに散々振り回されたサンチョだったが、こんどはドン・キホーテの信じた夢を「元気になって今一度旅にでましょう」と励ます。が、ドン・キホーテは、姪や女中、サンチョへの財産分与の遺言を残すと、そのまま死んでしまう。みんなが深い悲しみで涙をながし、物語はおしまい。

 

本書は、原作の1/6の長さで、省いた物語の中には、それだけで短編として成立するような素晴らしいものもあるらしい。

 

まぁ、概要をつかめればいいかな、と思って読んだので、原作(通りの翻訳)を読み直すことはしないかな。正気を取り戻して死んでしまうドン・キホーテもちょっと悲しいし。

 

それにしても、最近読む本は、人が死んでしまうものが多い…。人の死なないお話がいいな…。なんて思う。『失われた時を求めて』も『源氏物語』もたくさん人が死ぬ。長編だからやむ無しかもしれないけれど、「人の死」というものは、物語を書く時の一つのテーマであるということなのか。

 

さて、2026年は、もっと小説も読んでみようと思う。 ドストエフスキーも、そろそろ手にしてみるか・・・・・。