『ブッダ【第9巻】象頭山の教え 』 by 手塚治虫

ブッダ【第9巻】象頭山の教え
手塚治虫
潮ビジュアル文庫
1993年3月10日 第1刷
1994年11月25日 第14刷

 

第8巻の続き。

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タイトルの「象頭山(ぞうずせん)」は、釈迦が「煩悩の炎」について説法し、拝火教(はいかきょう)のカッサパ兄弟を改宗させた、仏教の重要な舞台。

 

目次
第五部
第4章 アングリマーラ
第5章 拝火殿
第6章 カッサパの帰依
第7章 ワニの河
第8章 象頭山の教え

 

主な登場人物
ブッダ:出家し修行を続けている。

・デーパ:サモン。苦行僧。ブッダと対立しながらもブッダについていく。

・タッタ:山賊。ダイバダッタにそそのかされて、マガダ王国の兵士になった。

・ルリ王子: コーサラ国、パセーナディ大王の息子。

・アナンダ:シャカ族。人を怨み、数々の強盗を行ってきた。しかし、どんなことがあっても不死身な不思議な力を持っている。それは、ブッダを憎む妖女(蛇の化身)によってもたらされていた。が、妖女には、リータと別れないと特別な力を奪うと言われる。

・リータ:アナンダが拾った娘。

・アヒンサ:アナンダに強盗を持ちかける盗賊。バラモンを憎んでいる。

・カッサパ:バラモンの大聖者。拝火教を信じる三兄弟の兄。それぞれ、五百人以上の信者をかかえている。弟たちはナディーとガヤー。


アナンダは、アヒンサという男と出会い、商人がカッサパのもとへ届ける金塊を奪う計画を立てる。が、途中で失敗し、大けがをする。いつもならすぐに治る怪我が治らないのは、リータのせいだとアヒンサがいい、アヒンサがリータを遠くへやってしまう。すると、アナンダの怪我は治った。

アナンダとアヒンサは、カッサパのところへ金塊を盗みにいく。が、拝火教の聖者は火と水を自由に操って、二人を懲らしめる。虎に追い詰められたアナンダは、虎を殺そうとするが、カッサパに「無益な殺生はやめい」と言われカッサパの精神力に圧倒される。二人は、塔に閉じ込められて窒息死させられそうになる。

 

と、そこに、リータに導かれてブッダとデーパがカッサパのもとにやってくる。アナンダを解放してほしいというブッダだったが、カッサパは断る。であれば、私もアナンダと同じところへ入れてもらって、一晩一緒に過ごすというブッダ

 

ブッダは、瀕死のアナンダと一緒に一晩過ごし、アナンダにとりついた蛇の化身と戦う。もちろん、説法で。化身の妖女は、とうとう退散していった。しかし、半死状態のアナンダを生の世界へ連れ戻すため、ブッダは再び死の淵の世界へ入り、アナンダの命を救い出す。

 

息を吹き返したアナンダは、ブッダをみると死の淵からつれもどしてくれた人であると悟る。

アナンダと共に無傷で塔からでてきたブッダをみて、カッサパはブッダの力を試してみたくなり、丸太に手を触れずに割ってくれなど、無茶な要求をするが、なんとブッダはそれを成し遂げてしまう。おどろいたカッサパだったが、次は手を触れずにこのマキに火をつけてみよという。

無茶なことばかりいうカッサパをみていたアナンダは、であれば、とマキに火をつけ、「ブッダは触っていない」というのだった。その火はみるみる燃え広がる。いつも水を自在にあやつっていたカッサパだが、この時は貯水池がからっぽで拝火堂はみるみる火が燃え広がった。今度は、「火を消してくれ」とブッダに懇願するカッサパだったが、「火をつけろといったのはあなただ」と言われてしまう。

 

激しい火事のなか、急な土砂降りになる。拝火堂の火事は静まった。「どうやって雨をふらしたのですか?」と聞くカッサパに、「私は雨謎なぞふらしはしない。勝手に降ったのでしょう」というブッダだった。

そして、全てのことは自然の成り行きだ、と。

人間がこうしたい、ああしたいと思うのは欲です。捨てておいても、この自然界はひとりでに変わっていきます。人間のちからでそれを止めることはできません
というブッダに、アナンダは
「俺みたいな人間が生れたのも自然のなりゆきだっていうのか!」と食って掛かる。

「おまえは悪魔の子でもなんでもない。自然に生まれ、自然に育ったただの人間だよ」といって、これまでに何人も人殺しをしてきたというアナンダに「大事なことはおまえ自身がしっかり生きていくこと」という。

 

感動したアナンダは、ブッダに弟子にしてくれと懇願。
カッサパは、だれから教わったか?と聞く。

ブッダは、自分で悟ったんです、と。

カッサパは、「あなたこそわしの師だ」といって、信者たちと一緒にブッダについていくことにする。

 

アナンダは、ブッダをここまで連れてきたリータと再会。そして、一行はいっきに500人に増えて、カッサパの二人の弟のところへむかった。

 

その旅の途中、アナンダは、これまでの罪の意識でうなされるようになる。よい薬が川向こうにあるからといって、リータは川に向かった。が、リータが川でワニに襲われてしまう。ブッダはわたしがワニと話してくると言って、一人で川に入っていく。ブッダはリータの身代わりになろうとワニをおびき寄せる。リータは無事にワニの群れから抜け出し、一人、アナンダたちのまつところへ帰った。ブッダといると過去の罪の意識にさいなまれるからもう逃げ出そうといって、アナンダはリータを連れて修行僧たちの一団を抜け出した。森を歩いているうちに人の気配を感じる。そっと覗くと、木に縛られ血だらけになっているブッダブッダに暴力をふるっているのは、アヒンサだった。

 

何をされても抵抗しないブッダの様子をみたアナンダは、飛び出して行って、アヒンサに襲い掛かる。が、ブッダに、「私は今この男と話をしている」といわれる。「一度死んで生まれ変われ」と自分に危害を加えるアヒンサに対して、無抵抗でひたすら語り続けるブッダ。アヒンサは、ブッダを殺害することもできずに逃げ出してしまう。

 

ブッダは、どんな悪事を働いてきたとしても、いまここでその人生はおしまいにして、新しく生き直せと諭していた。アナンダは、その言葉を自分事としてきいていた。そして、「おれも人殺しの強盗で、悪魔の申し子だ。おれでも生まれ変わって、新しい人生をふめますか?」と聞く。

ブッダは、「逃げ出そうとしていたところで私を見つけて助けに来てくれた、おまえはもうとっくに生まれ変わっている」、というのだった。

 

三人は、元の場所へ帰るために再び川にはいる。土砂降りのなか、ワニたちがブッダをカッサパの弟ナディーとガヤーの場所へと運んでくれた。すでに、兄カッサパからブッダのことを聞いていた二人だったが、ブッダを信用できない二人は象頭山で自分たちの弟子に講演をさせて、恥をかかせようと考える。

 

翌日、象頭山に登ったブッダは、いつものように静かに座り、話を始めようとするが、ナディーがいきないり火をかかげ、「火についてはなせ」といいだす。それは、とても消せそうにない大きな火だった。

ブッダは、静かに話し続けた。
「一切が燃えている。この燃えさかる火を一瞬のうちにけせるだろうか?
誰でも消せるのだ。」

「どうやって?」と怪しむナディー。

「わからないなら教えよう。こうやって目を閉じればいいのだ」

「馬鹿馬鹿しい、みえなくなるのは当たり前だ!」というナディーだったが、

「あなたは、その当たり前のことさえ、気づかなかったでしょう」というブッダ

そして、人間の欲が人の運命を狂わせる。自然のままに生きているのが一番強い、という話をする。

ナディーとガヤーの二人も、これまでの宗教をすてて、ブッダに弟子入りする。

 

そして、頭を丸めた修行僧はさらに数をふやしたのだった。

 

ブッダの説法の旅は、10巻に続く。 

アナンダ、カッサパというのは、実際のモデルがいるブッダがの弟子ということらしい。