つぐみのひげの王さま (グリム童話より)
モーリス・センダック 絵
矢川澄子 訳
評論社 児童図書館・絵本の部屋
1979年12月10日 初版発行
2008年9月20日 3刷発行
KING GRISLY-BEARD (1973)
河合俊雄『村上春樹で出会うこころ』の中で、個人の成長と「家族から分離」という文脈で紹介されていた本。
グリム童話、面白そうだとおもって、図書館で児童書を探してみた。すぐに借りられる本書を借りて読んでみた。
ちょっと小ぶりな絵本。
なんか、みたことがある絵の気がする。しかし、本書には絵や訳者についての情報は載っていない。調べてみた。
モーリス・センダックは、アメリカ合衆国の絵本作家。世界中で約2000万部売れた『かいじゅうたちのいるところ』をはじめ、80冊を超える作品を発表し、現代絵本界を代表する存在である、って。
そうだそうだ、『かいじゅうたちのいるところ』の人だ!
ページをめくっていくと、物語になっている文章が上段、下に絵がある。絵の中にちょっとだけ吹き出しのセリフも。
ある王さまに、お姫さまがひとりありました。とても綺麗だけれど気位が高く、いばりんぼうの姫でした。お姫さまを結婚させようと、王さまは大きな宴会を開いて、たくさんの殿方をまねきました。公爵、伯爵、、、ひとりずつ、お姫さまにあいさつをします。でも、お姫さまは、
「ビヤだる」
「腰くだけ」
「ずんぐり、むっくり」
「死神」
「生木を暖炉でかわかしたの」
と、ケチをつけるは、人を笑いものにするは。
中でも、とりわけお姫さまの物笑いのたねになったのは、上座にいたある善良な王さまで、このひとはあごがちょっと曲がっていました。
「まるでつぐみのくちばしみたい」
そのときから、この人には「つぐみのひげ」というあだながついてしまいました。
年取った王様は、自分の娘がひとを馬鹿にするばかりで、求婚者をことごとくふってしまったので、怒って、
「よろしい、それならこのつぎ戸口にあらわれる最初のこじきをお前の婿にしてやる」と宣言しました。
そして、2、3日して、ひとりのこじきがやってきて、王さまはお姫さまを結婚させてしまいました。そして、
「こじきの妻となったからには、城にいるのはふさわしくない」といって、お姫さまを城から追放してしまいました。
そして、お姫さまはこじきに手をとられて、城の外へでてこじきの小屋に向かいました。道中、大きは森、緑の牧場、大きな都を通り、その都度「だれのもの?」ときくと、こじきは「つぐみのひげの王さまのもの。あいつといっしょになっていたら、いまごろおまえのものだったのに」と答えました。
お姫さまは、召使もいないこじきの家で暮らし始めました。火をおこすのも、お湯を沸かすのも自分でやらなくていはいけません。そして、2,3日でお金はつかいはたしてしまい、市場で物売りをしなくてはなりませんでした。亭主が新しいものを手に入れて、それをお姫さまが市場で売りました。でも、あるとき、市場のすみで並べていたお姫さまの壺をよっぱらった騎兵が粉々にこわしてしまいました。
「おまえは、ひとなみには役に立たない。ここの王さまのお城で女中としてやとってもらえ」というので、お姫さまは、台所女中として下働きをすることになりました。
料理の手伝いをしたり、辛い下働きをさせられたりしたけれど、ときには小さな壺にこっそり残りものを分けてもらって家に持って帰り、二人で食べていました。
そのうち、王さまの総領の王子さまの婚礼が祝われることになり、大変贅沢な料理が用意されました。お姫さまは、召使たちがときどきおいしそうな料理をほうってくれるので、それを壺にしまい、持って帰るつもりでいました。
そこへ、ふいに美しく着飾った王子さまが現れました。そして、お姫さまの手をとって、一緒に踊ろうと言います。あわてて、断ったお姫さまでしたが、思わずぎょっとしました。それは、むかしじぶんが袖にしたあのつぐみのひげの王さまだったのです。
王子は、お姫さまを広間へ引っ張り込みましたが、その勢いでお姫さまのもっていたかくし袋のひもが切れ、食べ物をいれた壺が床に転がってしまいました。みんな、どっと吹き出します。あわてて逃げ出すお姫さま。
でも、階段の上で誰かにひきとめられました。それは、またしてもつぐみのひげの王さまでした。
「こわがらなくてもいい。お前と一緒にすんでいた、あのこじきは、じつはこのわたしなのだよ。おまえを愛すればこその芝居だ。壺を壊したのもわたしだ。これもみな、おまえの高慢な鼻をへしおり、思い上がりをいましめるために、たくらんだことなのだ」
「わたしがわるうございました。わたしなんぞ、あなたの奥方にしていただく資格はございません」というお姫さまでしたが、王子は、
「忌まわしい日々は過ぎ去った。こんどはみんなでわれわれの結婚を祝うときだ」といいました。
そして、小間使いがやってきて、お姫さまはまばゆいばかりのきらびやかな衣装をきせられ、父王もやってきて、みんなでふたりの結婚を祝いました。
おしまい。
なるほど。家族から分離して、パートナーをみつける個人の成長。お姫さまも、よくおとなしくこじきのいうことを聞いて暮らしたこと。私なら、こじきのところから逃げ出す術を考えちゃうなぁ・・・。
なんとも、グリム童話だ。
家を出ること、家族と別れることは、何かの始まりでもある。個人の成長は、家から離れることで始まるというのも、わかる気がする。
