『成瀬は信じた道をいく』 by 宮島未奈

成瀬は信じた道をいく
宮島未奈
新潮社
2024年1月25日 発行
2024年3月5日 4刷

 

前作、 2024年本屋大賞受賞作品『成瀬は天下を取りにいく』の続編。

megureca.hatenablog.com

 

同時に購入したので、ほぼ同時に一気読み。届いた日のうちに、2冊とも読了。
いやぁ、おもしろかった。

 

帯には、
” その前、 誰にも予測不能
唯一無二の主人公、 再び。
・・・・と思いきや、 まさかの事件が勃発!?

 わが道を突き進む 成瀬あかりは、 今日も今日とて知らぬ間に、 多くの人に影響を与えていた。「ゼゼカラ」ファンの小学生、成瀬の受験を見守る 父、 近所のクレーマー(をやめたい)主婦、観光大使なるべくして生まれた女子大生・・・・ 個性豊かな面々が、 新たな成瀬あかり史に名を刻む。
そんな中、幼馴染の島崎が故郷に帰ると、成瀬が書き置きを残して失踪しており・・・?!”

と、本作でも成瀬が大活躍。

 

目次
ときめきっ子タイム
成瀬慶彦の憂鬱
やめたいクレーマー
コンビーフはうまい
探さないでください

 

感想。
いやぁ、、、面白い。
だいぶ、成瀬節になれてしまって、一冊目ほどのインパクトはないけれど、ちゃんと、数々のイベントのなかで成瀬が有言実行していくのが面白い。

 

成瀬ファンになった小学生・北川みらいちゃんは、すっかり、成瀬の子分かのように。でも、成瀬は、みらいちゃんを大事にするものの、特にえこひいきするわけでもなく、たんたんと成瀬の道をいく。

 

本書の聖地巡礼がすでにブームになっているらしいが、確かに、本書をよんで、大津市を、膳所を訪ねたくなる。琵琶湖の観光船、「ミシガンクルーズ」もしてみたくなる。なんと、成瀬がミシガンクルーズでデートする。本人はデートのつもりではないのが、なお面白い。著者が、特に大津市に思い入れがあるわけではなかったとはいっているものの、こりゃ、琵琶湖の大宣伝だ。かつ、京都大学も宣伝されているかも。。。成瀬のような子がちゃんと大学生をやれる大学?!

 

以下、ネタバレあり。

 

「ときめきっ子タイム」は、大津市立ときめき小学校に通う北川みらいちゃんのお話。小学校で、「ときめき地区で活躍している人を調べる」という課題が出て、お祭りの司会をしていたゼゼカラに目をつける。小学校には、成瀬が小学生の時に描いた「観光船ミシガン」の絵が飾られていた。そう、成瀬は、歌もうまければ、絵もうまくって、入賞作品をそのまま小学校に飾られていたのだ。

で、みらいちゃんは、成瀬と島崎みゆきに出会う。ちょっと変わった成瀬に、友だちたちは引き気味になるけれど、学校での課題発表は大成功。そして、その後もみらいちゃんは、成瀬のファンとなっていく。

 

成瀬慶彦は、成瀬あかりのお父さん。娘の京大受験に付き添うことになった父は、娘よりも緊張している、、、。そんなことはお構いなしに、たんたんと受験会場へ向かうあかり。受験は2日間におよぶ。1日目を無事に終え、大津市にすむ成瀬親子は、京都から大津へ帰ろうとするのだが、その時、あかりが見つけてしまう・・・。なんと、京大の敷地にテントをはって寝ようとする輩を。それは、高知県からはるばる3000円で京大入試に臨んでいるという城山友樹。あかりは、「こんな寒い時期に野宿は命にかかわるからやめたほうがいい」と声をかける。お金がないから仕方がないし、これをネタにYouTuberをしているという。そんな城山にあかりは、こともあろうか「うちに来たらいい」と。。。娘が娘なら、父も父だ、、、。城山を家に連れて帰る。すんなり受け入れる母もすごい。そして、城山は、成瀬家の廊下で寝袋で一晩すごし、2日目の受験へ。

そして、、実は、父の心配は、あかりの合否ではなかった。あかりなら合格して当然。心配していたのは、あかりが京大に合格したら、1人暮らしをしに京都に行ってしまう、、、ということだった。家のパソコンで、家探しやら、家具探しをしている形跡を見つけてしまったのだ・・・。

 

あかりは、見事に合格。城山も合格。そして、、、1人暮らしの話をするかとおもいきや、自分は家から通うつもりだ。調べていたのは、友人のためだ、、、と。
めでたしめでたし。父の心配は、杞憂におわる。

 

「やめたいクレーマー」は、成瀬がバイトするスーパーの万引き犯を、店の客(ご意見箱にクレームを書き入れるのが趣味の主婦)といっしょに解決しようというお話。

 

「コンビーフはうまい」は、コンビーフを食べるのかと思いきや、令和の時代にもかかわらず携帯電話をもたない成瀬が、実家の電話番号の語呂合わせとして伝える。。。「コンビーフはうまい」しかし、、、その番号は読者にも解読不明、、、。

 

「探さないでください」では、とうとう、成瀬は紅白歌合戦に登場!!どうやって登場するかは、、、ネタバレなしにしておこう。

 

それにしても、よく考えられたストーリーだと思う。
くだらない、といってしまえばそうかもしれないけれど、そこに、成瀬の純粋で正直な人類愛がある感じが、なかなかいい。

 

あかりとみゆきは、みゆきの父の引っ越しで、すでに大津と東京と離れ離れになっているのだが、ゼゼカラは永遠なのだ、、、。

いいねぇ。。。


本作のなかで、成瀬は琵琶湖大津観光大使になっている。成瀬は、きっと美人なんだろう。頭もよくて、美人で、、ちょっと風変わりな、、、。

一話ずつ、TVの連ドラにできそうな気がする。成瀬を演じるならだれだろう?はつらつとしていて、賢そうで、坊主頭すら似合いそうな女優さん。。。最近の若い女優さんはしらないけど、、、広瀬すずとか?


そして、成瀬が社会人になるところも見てみたい。一作目では、閉店してしまった「西武百貨店を建てる」って宣言しているから、会社社長くらいになっちゃうかも?!

 

一方で、著者の他の作品も読んでみたい。これからもたくさん書いてほしいな。本屋大賞なんてとっちゃうと、周囲の期待もすごいだろうけれど、気にせず、好きなものを書いてほしい。万人にうける作品じゃなくたっていい。作品として残すだけでもすごいことだ。がんばってね!っていいたくなる。

 

読書は楽しい。