『世界は経営でできている』  by 岩尾俊兵

世界は経営でできている
岩尾俊兵
講談社現代新書
2024年1月20日 第1刷発行 
2024年2月21日 第4刷発行

 

友人がSNSで面白かったとあげていたのと、新聞の広告でも宣伝されていて、「大反響!ベストセラー」となっているので、読んでみようと思った。
図書館で借りようかとおもったら、すごい予約の数だったので、買って読んでみた。

 

幅広帯には、おびただしい広告宣伝の文字、、、。

”みんな 人生の経営者!
 大反響!ベストセラー

「 資本主義から仕事の楽しさと価値創造を取り戻す 痛快エッセイ集」
斉藤幸平氏 推薦!
 仕事から家庭、勉強、恋愛、孤独まで、 笑いながら読めて、ものの見方が変わる。

 私たちはいつまで価値を奪い合うのか?
 今、 日本に足りない「経営」の正体!
・老後の人生「大失敗する人」の共通点とは?
・なぜ優秀な部下が無能な上司に変わるのか?
・頑張れば頑張るほど成果が遠のくのはなぜ?
・飲み残しを放置する夫は経営が下手?
・注意書きを増やすと 事故も増える理由とは?
・人間とサルの違いは 経営にあった?

本書の主張
①  本当は誰もが人生を経営しているのにそれに気づく人は少ない。
②  経営概念によって人生に不条理と不合理がもたらされ続けている。
③  誰もが本来の経営概念に立ち返らないと個人も社会も豊かになれない。

と、まぁ、これだけでちょっと読んだ気になれるくらい、、、。

 

そして、裏表紙の裏の説明には、「はじめに」からの抜粋が。
” 結論を先取りすれば、本来の経営は「価値創造(=他者と自分を同時に幸せにすること) という究極の目的に向かい、 中間目標と手段の本質・意識・有効性問い直し、究極の目的の実現を妨げる対立を解消して、豊かな共同体を作り上げること」だ。
この経営概念の下では、誰もが人生を経営する当事者となる。
 幸せを求めない人間も、生まれてから死ぬまで一切 他者と関わらない人間も存在しないからだ。 他者から何かを奪って自分だけが幸せになることも、自分を疲弊させながら他者のために生きるのも、どちらも間違いである。「倫」理的な間違いではなく、「論」理的な間違いだ。”

なるほどね。

 

著者の岩尾さんは、慶應義塾大学商学部准教授。平成元年佐賀県有田町生まれ。組織学会評議員、日本生産管理学会理事を歴任。著書もいくつかあるらしい。

 

目次
はじめに: 日常は経営でできている
1 貧乏は経営でできている
2 家庭は経営でできている
3 恋愛は経営でできている
4 勉強は経営でできている
5 虚栄は経営でできている
6 心労は経営でできている
7 就活は経営でできている
8 仕事は経営でできている
9 憤怒は経営でできている
10 健康は経営でできている
11 孤独は経営でできている
12 老後は経営でできている
13 芸術は経営でできている
14 科学は経営でできている
15 歴史は経営でできている
おわりに:人生は経営でできてる
謝辞:本書は他力でできている
タイトルはパロディでできている

 

感想。
なるほど、、、。面白いけど、私には、「おわりに」だけ読めば十分って感じがした。〇〇は経営でできているということを15例あげているわけだが、、、考え方の基本は一つ、「共同体をつくる」なので、若干、事例がくどい、、、。そして、有名な著書や名言からのパロディが踏んだんに織り交ぜられているのも、若干、くどい・・・。

読んでいて、若いなぁ、、、、っておもったら、やっぱり若かった。平成元年ということは、1989年生まれか?なるほど。そうか、30代かと思うと、がんばって書いているなぁ、という気がした。

うん、自分の今持っているものを表現しようとしてくれている熱意を感じる。言っていることは間違っていないと思うし、うんうん、そうだね、って思う。こういうのが好きな人は好きだと思う。大ベストセラーになるのも、わかる。目からウロコ、、っていう人もいると思う。自分で書いて、自分に突っ込みいれる、、、みたいな表現も多くて、こういうのが好きな人には面白いし、読みやすいと思う。


最後の、「タイトルはパロディでできている」で、参照作品が列挙されているところが若者向けっぽい。もちろん、私にももと文献がなにかわからない言葉もあったけれど、こうして参照元をかいて置いてもらえると、あ、そうそう、、ってわかって、モヤモヤが解消する。
そう、こうして情報を提供するというのも、「経営」なのだよね。

あらゆることにおいて、自己の利益だけでなく、「共同体」としての利益を頭に置いておくべき、ということ。それが、人生を経営するということ。
最後の参照作品リストを提供するというのは、いってみれば、著者と読者の共同体を豊かにするため、ってことだろう。

 

帯にあった質問の答えを本書から抜粋すれば、こんな感じかな。

・ 老後の人生「大失敗する人」の共通点とは?
 「目的と手段の不整合」:その場にふさわしくない手段で、自己の目的を達成しようとする
 → 会社や組織の上下関係の延長線で、共同体に接する。
  (例)介護施設で、介護士にえばりちらす
  (例)自宅で、配偶者にえばりちらす

 

・ なぜ優秀な部下が無能な上司に変わるのか?
 顧客不在の仕事が無能な上司をつくる。
 →  「価値を作り出す」仕事ではないことで、お給料をもらって当たり前になってしまう。
 (例) 裸の王様組織。知らず知らずのうちに、無意味な仕事を作っている。 
 
・頑張れば頑張るほど成果が遠のくのはなぜ?
 →無能な上司のつくった、無意味な仕事をしている。部下もその無意味さに気が付かない。

 

・飲み残しを放置する夫は経営が下手?
 → 夫婦関係に母子関係を求める夫。妻との共同体をつくることを忘れている。

 

・ 注意書きを増やすと 事故も増える理由とは?
 → 人の集中力には限界がある。伝えたい事をたくさん伝えようとすると、何も伝わらない。
 (例) 〇〇禁止、✖✖禁止、△△禁止、とたくさんの貼り紙をだすと、何が重要かがわからなくなって、どれも守ってもらえなくなる。

 

・ 人間とサルの違いは 経営にあった?
 → サルも人間も、「虚勢合戦」をしている。上下関係の形成を通じて、自分の順位をあげようとする。人間社会でのマウンティングは、まさにサルといっしょ。そこに、「ともに豊かな共同体をつくる」という経営の概念をいれることができるのが人間のはず・・・。

 

最後に、人生を経営しようと思ってもうまくいかないときは、「究極の目的は何か」を問い直せばいい、といっている。対立する手段、対立する意見がそれぞれどの目的に寄与しているのかを考える。手段自体ではなく「手段への目的への寄与・役割」に着目することで、解決策はみえてくるはず、と。

 

そう、近視眼的になると「究極の目的」をわすれてしまいがち。長い目でみて、広い視野でみることが大事だよね。

 

それをわざわざ「経営」といっているわけだ。だから、世界は、世界は経営でできている。まぁ、「世界は思いやりでできている」とかより、キャッチ―なタイトルで、目をひきやすい。

 

「経営する」を英訳してみると、run、manage。

人生は、run。

人生は、manage。

そこには、常に主体性がある。

ということ。

 

自分の人生は、自分で考えて、自分で決めよう。

 

 

『注文の多すぎる患者たち』 by  ロマン・ピッツィ

『注文の多すぎる患者たち  野生動物たちの知られざる 診療カルテ』 
ロマン・ピッツィ 著
不二淑子 訳
 株式会社ハーバーコリンズ・ジャパン
2024年1月18日 発行 第1刷

Exotic Vetting  - What Treating WIld Animals Teaches You About Their Lives (2022)

 

日経新聞の2024年3月2日朝刊の書評に出ていたので、図書館で借りて読んでみた。

原題は、『エキゾティックな(風変わりな?)獣医』なのだけれど、、、、「注文の多すぎる・・・」というタイトルは、日本でなければキャッチ―ではないだろう。

 

記事では、

”本書の魅力は、患者たちの多様な生体構造と治癒の仕方、最適解を求める著者らの奮闘を垣間見るにとどまらない。最終章の「保全する」に至って著者は、地球上に野生動物のスペースを増やすため、誰にでもできることがあるとメッセージを発す。それは動物性食品の摂取量を減らすことだ。私たちがどんな地球に住みたいと願い、何を幸福と考えるかの問いかけとなっている。”と。

 

副題にある通り、 患者と言っても人間ではない。野生動物たちのお話。表紙をめくると、カラーの写真付きのページが数枚続き、様々な種類の野生動物の写真と、その患者としての特徴が書かれている。

ヤマアラシは臓器を触診することは 麻酔なしには不可能だ、とか、 象はその体格から CT や MRI スキャナーでの画像診断には限界がある、とか。。。哺乳類だけではない、フクロウの顔は主に羽毛でできていて、目の独特な形状を維持するための細い骨のX線写真がでていたり。鳥かとおもえば、 コドモオオトカゲ、アシカ、タツノオトシゴ、、、、。

通常獣医というのも、人間の医者に内科とか外科とか専門があるように、哺乳類とか、鳥類とか、、、専門があるのかと思ったら、 どうやらこの人は何でもかんでも見てきた人みたい。エキゾティックだ。

 

著者のロマン・ピッツィは、 英国獣医動物学会 会長。 王立獣医師協会が認定する獣医師のエキスパートであり、野生動物外科の世界的権威として知られる。長年にわたり エジンバラ 動物園、スコットランド国立野生動物保護センターで活躍。 国際自然保護連合(IUCN)メンバー。

ソフトカバーの単行本だけれど、けっこう分厚い。495ページ。

 

目次
はじめに
1  セイウチの自殺願望 麻酔する
2  靴紐でワニを捕まえる 捕獲する
3  狼の毛でストレスを測る 採取する
4  ヤマアラシのつかみ方とフクロウの目の覗き方  触診する
5  ハブの心臓に針を突き刺す 採血する
6 シカが鎌状赤血球貧血で死なない理由  検査する
7  キツネザルの数値は嘘をつく 診断する
8 カメの偏頭痛と 6本指のキツツキ 撮影する
9 空対空ミサイル はいかにしてクロサイを助けるのか  検温する
10 ゴリラの心臓にペースメーカーを植え込む  手術する
11 機嫌の悪いカバの歯科治療  歯を治す
12 マナティーのジャンクフード 給餌する
13  スプーン1杯のアリで薬を飲ませる 投薬する
14 靴と交尾するペンギン、 精子のいらないコモドオオトカゲ  繁殖する
15 クマのプーさんは射殺された 解剖する
16 シャチのケイコを追え 野生に帰す
17  ドードーからジャワサイまで 絶滅動物たちの墓碑 保全する

 

感想。
なんとまぁ、、、多くの生き物たちが、、、、。正直言って、でてくる動物の名前がわからない。まぁ、たくさん、たくさんの動物の名前が出てくる。セイウチ、タツノオトシゴ、ゾウ、、、、なんていうのはわかりやすい。ゴールデンターキンバーバリーシープ??そして、一つの話から、 マッコウクジラ、ミズナギドリ、 イワトビペンギンハイイロアザラシ、アオウミガメ、、、とたくさんの動物の話に展開していく。

まぁ、、、よっぽど動物に詳しくて、動物好きなら熟読しちゃうかもしれないけれど、私は読んでいるうちに、めまいを感じた・・・・・。世界がひろすぎる~~~。

 

でも、面白い!

 

最初のセイウチの話では、セイウチは麻酔をかけると必死に息を止めて自殺しようとしちゃうということ。セイウチは潜水反射により水中で30分以上も 息を止めることができる。 酸素を節約するために心臓の鼓動を遅くし、脳や心臓といった重要な臓器の血液と酸素の供給を最大化するのだ。セイウチは、麻酔をかけられると、水中にいると思い込み、 呼吸を止めて 心拍数を下げる。麻酔を長くかければかけるほど、呼吸はとまったまま、、、、という重大事態が発生してしまうのだ、と。

 

そして、麻酔には150年以上の歴史があるけれど、 実は麻酔薬が効く正確な生理学的メカニズムはまだ分かっていないのだそうだ。なぜある化合物が投与されると脳は意識を失い患者は痛みを感じないのか?麻酔は睡眠とは全く違う。投与量が多ければ患者は死ぬ。 麻酔薬は結局のところ毒物、ということ。

そうかそうか、いわれてみればそうだ・・・・。

 

人間だって、人によって必要な投与量が違う。ちなみに、私はいわゆる胃カメラを飲むときに鎮痛剤のようなものでも過剰に効いてしまって、通常の人が1時間で覚醒する量でも、半日以上目覚めることができない。。。しかも、もともと心拍数が低いので、私の心臓は脈拍30台まで落ちるそうだ、、、。計器はアラームを鳴らし、医者も看護士もびっくり。と、なることが30代の時に判明して以来、通常の人の1/5くらいの投与にしてもらうようにしてきた。それでも、「では、薬いれますねぇ、、、、」の言葉を聞き終わらないうちに、私の意識は無くなる。。。まだ、一度も死んだことはないので、一応、麻酔として有効に効いていると言える。。。

 

と、麻酔だけでなく、薬の投与、骨折の治療、治療のための捕獲の仕方、、、動物によって本当に様々だ。1人の獣医が、これだけたくさんの動物を見るのかと思うと、めまいがするくらい、、、多岐にわたる。いやぁ、、、、すごい。国境のない医師団も、僻地での人命救助活動にあたっていてすごいと思うけれど、野生動物保護の獣医さんもすごい・・・・。

患者は、獣医を敵とみなして攻撃してくることもあるわけで、命がけ。毒蛇だっていれば、人間の何倍もの体重のあるゾウ、サイ、、、あるいは、ライオン、チーター、、、。

本当に話が多岐に渡りすぎていて、私には、ついていけないところもあったけれど、ひたすら、感心してしまった。

 

でも、本当のところ、野性の命に人間が手を加えるってどうなのか??という疑問もわいてきた。著者も、そういう疑問をもったことがないわけではないそうだ。ただ、人間によって傷つけられてしまった動物を見殺しにすることはできない、、、と。

人間が放置したゴミ、プラスチック、毒物、、、そういったもので傷つく野生動物は後を絶たない。あるいは、人間による都市開発や農地開発によって、住む場所を失われてしまった動物、環境が大きくかわってしまった動物たち。彼らを見殺しにはできない、、、。うん、なるほど、獣医だったら、そうだろう。。。

動物によってことなる生態。人間と同様の診断方法は使えない動物たち。心臓の形も違う。脳の形も違う。骨格も違う・・・。歯科治療も行う獣医さん。いやぁ、、、もう、マジシャンのようだ。。。

 

時には、動物園の動物の治療にあたることもあるそうだが、やはり、野性とはことなる生活をしている動物は、またちょっと違う。。。

 

動物園の動物たちは、私たちに動物のことをおしえてくれるために、野性の人生(動物生?!)を犠牲にしてくれているのだよな、、、と思った。

 

私も、動物は好きだけれど、獣医になろうと思ったことはないし、ペットとして飼おうと思ったこともない。今の生活では動物の世話ができないから、、、。でも、やっぱり、動物の生態って面白いんだなぁ、、って思う。

 

野生動物の話の本だけれど、動物園の動物のことへも思いをはせることができる一冊。

生き物好きなら、お薦め!

 

ちなみに、「クマのプーさんは射殺された」、、、っていうのは、解剖の話の中ででてきた。本当に、最後は老衰で射殺されたのだそうだ。著者が病理医時代、解剖の合間に通った動物学会図書館で、ウィニペグクマのプーさんの主人公)、アメリカグマの検視詳細の手書きインデックスカードを見つけたという。ロンドン動物園には、いまでもウィニペグの写真が残っていて、その中にはA・A・ミルンの息子である幼いクリストファー・ロビンウィニペグにスプーン1杯のハチミツを与えているものもあるそうだ。

そうか、プーさんには、モデルのクマがいたのか・・・。

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読書は、楽しい。

 

 

『風をとおすレッスン  あいだで考える』 by 田中真智

風をとおすレッスン
あいだで考える 人と人のあいだ
田中真智
創元社
2023年8月10日  第1版第1刷発行

 

真智さんの本だから、読んでみた。

 

田中真智さんは、1960年生まれ。あひる商会CEO立教大学観光研究所研究員、 元立教大学講師。 エジプトに8年にわたって 滞在し、 中東・ アフリカを旅して回る中で、コミュニケーションや対話について考えるようになり、アヒル商会を設立。

 

ご縁あって、一度、お会いしたことがある。真智さんの不思議な魅力にすぐに惹かれた。まじめに、「あひる商会」とおっしゃるので、はじめは冗談かと思ったら、真面目な話だった。それ以来、私もあひるの魔力に惹かれている。自分で、あひるグッズを集めるには至っていないけれど、気が付けば、あひるのマグネットとか、、、以前から持っていたことに気が付いた。きっと、あなたの家にも一つくらいあるはず、あひるグッズ、、、なんてね。

 

本書は、「あいだで考える」というシリーズで、「 10代以上 全ての人のための人 文書のシリーズ」だそうだ。イラストも入っていて、やや小さめな大きさといい、ほっこりする感じの本。

 

表紙をめくった裏には、
だが、つながりを断ち切れば
自由になれるというわけではない。
人とのつながりなしに自由はありえない。
大事なことは、
「つながりにとらわれないこと」だ。
 そのためには、つながりを断ち切るのではなく、
ゆるめることだ。
と。
真智さんらしい言葉。

 

ちなみに、こんな優しい言葉がこぼれる真智さんは、女性ではない。ひげをはやしたオジサンです。

 

はじめに 「つながり」をゆるめる
1章  「私」の中の小さな 私たち
2章  対話と「間」
3章  人への距離
4章  物語と焚き火の時間
おわりに 天使を通すレッスン
人と人のあいだをもっと考えるための作品案内

 

感想。
あぁ、、、いい。
ちょっと、涙がでちゃうくらい、優しい。
特に思い当たることがあるとか言うわけがなくても、、、これは、心に響く。
あぁ、真智さん、ありがとう。優しい言葉をありがとう。

でも、きっと、真智さんは誰かを慰めようとか、励まそうとか、そんなことで言葉を紡いでいるのではなく、自分の中からふつふつを湧いてくる言葉を綴っている。だから、、響くのだ。

 

この本の中の言葉を、どう受け止めるかは読み手次第。でも、きっと、はっと気が付く何かがあると思う。

 

第1では、真智さんが旅行するときにあひるとかっぱをつれていく、という話。大の大人が、あひるとかっぱのぬいぐるみをつれて旅しているのだ。そうしているうちに、あひるとかっぱが、自分の言葉で語り出す。「自分」がつくりだした、「一人称」ではない自分がいることに気が付く。自分の中の複数の声を聴き取ることができるようになってくるのだ、と。

 

ちょっと、わかる。ふと、不愉快な目にあったとき、三者になって自分を見つめる目をもっていると、冷静になれる。あひるやかっぱは、その第三者になってくれるのだ。あひるが「ここでおこっちゃだめだよ」といってくれる。ふと、緊張がほぐれる。うん、わかるな、その感じ。

 

「私」というアイデンティティは、多くは、他者によってつくられる。親は、子どもがいないと親にはなれない。先生は、生徒がいて先生になる。あなたは、〇〇、と認めてくれる他者が多いほど、アイデンティティは強固になる。アイデンティティが強固になればなるほど、孤立することへの不安や恐怖は薄まり、社会から必要とされている安心感が得られる。それゆえ、人は、他者に認めてもらいやすいキャラを演じ、それをアイデンティティにしようとする。SNSで「いいね」を貰いたいと思うのも、他者に認めてもらいたいから。承認欲求。

 

でも、「認められた」という思いが先に立って、それに合わせたキャラに徹したり、嫌われないような役割ばかりを演じたりしていると、そのアイデンティティにとらわれすぎて、自分は本当はどうありたいのか、本当はなにを大切にしたいのかを見失ってしまうリスクがある、と。

あぁ、、、まさに・・・・。

 

人を絶望から救いあげる力という話で、フランスのロマン・ガリーの『天使の根』という話が紹介されている。 第二次世界対戦中のドイツの収容所を舞台とした話。捕虜になったフランスの兵士が、架空の「高貴な女性」と共に暮らしているかのように振舞い、生きる気力を失わなかった、という話。ドイツ兵は、その「高貴な女性」を殺すことはできなかった。人の想像の世界は、だれも奪うことはできない。そして、その想像力が生きる力になった。

 

ユダヤ精神科医ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』からの引用も紹介されている。アウシュビッツから生還した彼の言葉。
ここで必要なのは 生命の意味についての問いの観点 変更 なのである。すなわち人生から何を我々はまだ期待できるかが問題なのではなくて、 むしろ人生が 何を 我々から期待しているかが問題なのである。そのことを我々は学ばねばならず、 また絶望している人間に教えなければならないのである。

人生が 自分に期待しているものは何だろうか、と能動的に考えるということ。

ちょっと、難しいけど、、、、受動的な存在から、能動的な存在になること。

 

人の内心を聞く能力の持ち主を扱った映画として、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン・天使の詩が紹介されている。他人がかんがえていることがすべてわかってしまう天使・ダニエルの話。ダニエルは、天使なので、人が考えることがなんでもわかっちゃう。でも、人にはダニエルの姿は見えない。ある時、ダニエルは人間の女性・マリオンに恋をする。そして、マリオンと語らいたいがために、天使をやめて、人間になる。すると、マリオンと語り合うことができるようになったけれど、マリオンの心がよめなくなる。だから、一生懸命、話す。相手の気持ちを「わかりたい」とおもって、言葉を交わす。ダニエルは、それで、幸せだった。人の世界は、モノローグではなく、ダイアローグでできている。
わからないからこそ、愛しあうことができるし、わからないからこそ、驚いたり、喜んだり、怒ったりできる。「わからないこと」がこの地上を鮮やかな色彩で染めあげている。

 

「わからない」から、対話する。
「きみのいいたいことはわかった」って、いわれたら、「もうきくきはない」ってことだ。

相手のことを勝手に「こうだろう」と決めつけてしまったら、そこで対話はおしまい。
勝手に、相手の内心を読まないことは、相手の尊厳を守ることにも通じる。

これは、ちょっと、目からウロコ。。。。
相手の気持ちになれ、というより、相手のことはわからない、、、って事の方が大事かもしれない。

 

かってに、相手のことをわかった気になるって、、、相手に失礼だし、リスキー。かってに期待して、かってに裏切られたって嘆いて、、、。「そんな人だと思わなかった!」って怒ったり。自分で、かってに相手のことをわかった気でいただけなのに、、、、。

 

星新一の『ボッコちゃん』の中の『肩の上の秘書』は、笑える。でも、苦笑・・・。未来の世界で、みんな肩の上に秘書代わりにロボットのインコを乗せている。主人の本音を、インコが敬語表現にして社交辞令やお世辞を交えて会話する未来。
セールスマンと主婦の会話。

 

セールスマン「買え」とつぶやく。インコは、「きょうおうかがいしましたのはほかでもございません。このたび、当社の研究部が、やっと完成いたしました新製品をおめにかけようとおもったわけでございます。」

主婦のインコは、「買えと言ってます」と主婦につぶやく。
主婦が「いらないわ」とつぶやく。インコは、「 家では とてもそんな高級品を揃えるほどの余裕がございません もの」と婉曲な断り文句をいう。

セールスマンのインコが、「いらないそうだ」と要約する。
セールスマンが、「そこをなんとか、、」とつぶやくとインコが、「 でもございましょうが こんな 便利な品はございません」、、

と、延々と、インコを介した会話が続く、、、、。わらっちゃうけど、私たちが社会のなかでやっているのは、インコに喋らせているような会話かもしれない。。。


最後の、「天使をとおすレッスン」って、「天使をとおす」ってこと。タイトルは、風をとおすレッスンだけど、それは、天使をとおすってこと。

 

みんなでわいわいと会話している途中、ふと、沈黙が流れることがある。間が持てず気まずい空白をうめようと、わざと関係ない話をしてみたり、咳払いしてみたり、、、。と、そんなことをせず、その気まずさに耐えてみるということ、空白を埋めたくなる誘惑をこらえて、空白を味わってみるということ。

フランスの慣用句で、こうしたふとした沈黙の時間を「天使がとおった」と表現するのだそうだ。

「間」にとどまってみること。
沈黙が出来てしまったとき、すばやく間を埋めて、何かを話続けるのがコミュニケーション力だと思われているところがある。けれど、無理やり間をうめようと相手に合わせて思ってもいないことを口にすれば、かえって苦しくなる。気まずさ、もやもや、所在なさ、心もとなさを何とかしようとせず、そこにしばし、たたずんでみる。

「人生のほとんどは、そういうものでできている。」って。

うん。
「間」があるから、考える。
立ち止まって、考える。
「間」は、大事。

 
他にも、たくさんのお話がでてくる。コンパクトながら、ぎゅーーっと密度のこいお話が詰まっている。

 

人と人との関係に悩んでいる人も、悩んでいない人も、だれにでもきっと心に響く何かがあると思う。超おすすめ。


って、私は図書館でかりちゃったんだけど、手元においてもいいかな、って思う。

真智さん、やっぱりすごい人です。

 

最後の作品案内を覚書。
・『7つの人形の恋物語』 ポール・ギャリコ
・『サイコシンセシスとは何か  自己実現とつながりの心理学』  平松園枝
・映画『インサイド・ヘッド』  ピート・ドクター監督 (アニメ作品)
・『自由の大地』 ロオマン・ギャリイ
・『夜と霧  強制収容所の体験記録』 ヴィクトール・E・フランクル
・『感じるオープンダイアローグ』 森川すいめい
・『 忘れられた日本人』 宮本常一 
・映画『ベルリン・ 天使の詩』 ヴィム・ ヴェンダース監督
・『ボッコちゃん』 星新一
・『現実はいつも 対話から生まれる 社会構成主義入門』 ケネス・J・ガーゲン
・『歎異抄』 唯円
・『生物から見た世界』 ユクスキュル
・『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤亜紗
・『ダチョウはアホだが役に立つ』 塚本康浩
・『馬鹿一』 武者小路実篤
・『火の賜物  ヒトは料理で進化した』 リチャード・ランガム
・『ヒトの社会の起源は動物たちが知っている 「利他心」の進化論』  エドワード・O・ウィルソン
・『どこへいこうか、心理療法 神田橋條治集』
・『 先祖の話』 柳田邦男
・『 エンド・オブ・ライフ』 佐々涼子
・『愛するということ』  エーリッヒ・フロム

 

読んだことのあるものもの無いものもあるけれど、とっておきのリストだと思う。

 

やっぱり、読書は楽しい。

そして、自分で考えるっていうことが、本当に大事だと思う。

たくさん読もう。

たくさん考えよう。

そして、Action.

人生は、その連続。

 

 

『坂の上の雲 三』 by 司馬遼太郎

坂の上の雲 三
司馬遼太郎
文藝春秋
2004年5月15日 新装版 第1刷発行
2009年10月30日 新装版 第4刷発行
*本書は 昭和45年(1970)6月に刊行された『坂の上の雲 三』の新装版です。

 

坂の上の雲 二』の続き。

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日露戦争の戦況がメイン。時々、秋山兄弟への言及もあるけれど、もっぱら日本軍とロシア軍の動きについて。

 

目次

砲火
旅順口
陸軍
マカロフ
黄塵
遼陽
旅順
沙河

 

最後の方のページには、連合艦隊および第三艦隊編成表(日露開戦時)が載っている。作品中にでてくる主な登場人物だけ抜粋すると、次のような感じ。
連合艦隊司令長官東郷平八郎(中将)
第一艦隊(旗艦三笠)
 司令長官:東郷平八郎
 参謀長:島村速雄
 参謀:有馬良
 参謀:秋山真之
第二艦隊(旗艦出雲)
 司令長官:上村彦之丞
第三艦隊(旗艦厳島
 司令長官:片岡七郎

 

明治37年2月6日、日本がロシアに対して国交断絶を通告。ロシアの宣戦布告が9日で、日本は10日。そして、日露戦争が始まる。始まる前から、戦いが長引けは日本の戦力は干上がってしまうことは明らかだった。

 

陸では秋山好古らが、コサック騎兵を含むロシア軍と戦っていた。好古は、日清戦争のときと同じように、やはり戦場でも酒をのんでいた。日露戦のころには、ブランデーをたのしんでいた。そして、ロシア軍がどんどん攻めてきても、好古は退却もしなければ攻め込みもせず、現場に居続けた。砲弾がぶんぶん飛んできても、なんでもないかのようにブランデーを飲み続けた。部下が、退却しましょうと進言しても、「敵もくたびれてくるはず」と、ひたすらその時が来るのを待った。そして、たしかに、敵はだんだんと北へ退却し始めて、好古らのピンチは去っていく。

 

「鈍感」になることで、ピンチを抜けた好古。のちに、退却を進言してきた部下に対しては、「聞こえぬふりをして寝てやった」と語っている。。。さすが、豪傑好古!やっぱり、かっこいい!

 

マカロフは、ロシアの海軍中将で、軍の士気を高めるのが得意で、水兵たちのあいだで、「マカロフじいさん」という歌がはやるくらい、人気者だった。海軍戦術がすごいというより、人のこころを掴むのが上手いっていう感じ。マカロフは、自分の戦略・戦術を末端の水兵たちにまで語って聞かせた。当時、そのようなリーダーシップは極めて斬新だったらしい。下っ端は、トップの考えはしらんでもいい、っていうのが当たり前だった中、マカロフは違った。隅々まで自分の考えを伝えることで水兵たちの心をつかみ、組織を一つにすることができる人だった。老齢ではあるけれど、人に好かれたマカロフも、旅順で戦死。

 

当時、名将が無くなった際には、敵艦隊に弔辞を送るという習慣があり、マカロフの死に対して弔辞を送るかと部下にいわれた東郷は、「やめよ」とだけいった。後に、ただその気が起こらなかった、といっている。冷静だった。マカロフの死のあと、東郷の日本軍も同じように大勢の死者をだす。海上戦で主力になるべき戦艦を失っても、東郷は動揺することが無かった。悲報に「みな、ご苦労だった」とだけ言って、そこにあった菓子皿から菓子を食べるように艦長たちにすすめた。そういう人だったらしい。

リーダー、動じないって大事。好古にしても、東郷にしても、そこは群を抜いている。

 

それに比べて、、、残念な人物として描かれている人たちもいる。

本書の中では、山形有朋について、けちょんけちょんにけなされている。人望無し、、、の人だったらしい。器が小さい、「子供じみた大人」と書かれている。「権力好きな、そしてなにより人事いじりに情熱的で、骨の髄から保守主義者であったこの人物の頭脳に、あたらしい陸軍像などという構想が浮かぶはずがなかった」って。でも、山形は陸軍の長老であり続けた。実力のない人間が組織に居座ることによる、全体への悪影響。なかったわけがない。ついでにいうと、日露戦争をすすめた陸軍の最高幹部は、多くは長州人だった。山形しかり。まだ、明治維新後の薩長藩閥の影響が大きかった。

 

「人事いじりに情熱的」な人間ほど、組織にとってがんはない。それは、今の時代も同じ。。。。

 

動じないといえば、真之についても、好古以上に異常なまでの大胆さが表現されている。軍の規律とは無関係に、真之は活動したり、寝たりしていた。なぜか、それが許された。いきなり寝たかと思うと、不意に起きてコンパスと定規をもって思ったことを学理的に具体化してみせたり、その様子はまるで狂人だった、と。

 

黄海海戦は、ロシアも日本も散々な海戦となった。どちらにとっても、失敗。つまり、失った命が多すぎた。ロシアは、旗艦ツェザレウィッチの司令塔が爆撃で死んだまま、船がすすんだので、他の船はそれぞれどこへ向かえばいいのかわからなくなってしまう、という事態に陥る。逃げるロシア。それでいて、日本としては1隻も沈めてはいない。このままロシア船に逃げ切られると、今度は、日本艦隊が危うい・・・。真之もまずい!と呆然となる戦だった。それでも、真之は、自分の「神秘的幻覚」のようなもので、天賦のかんにたよるところがあった。晩年、真之は心霊的世界にこってしまったのは、戦時中の経験がそうさせたのではないか、と。へぇ、、出家したいといっていた真之は晩年に心霊的世界にこったのか、しらなかった。

 

物資としてはほとんど勝ち目がなかった日本だったけれど、僅かに有利な点は、「下瀬火薬」と呼ばれる、爆発すると発生するガスが3000度にもなる火薬をつかった砲弾だった。また、日本海軍はロシアよりも砲弾を命中させる技術も高かった。日本軍とロシア軍の位置関係から、日本側が太陽を背にして攻撃していたことも命中率を高めることに寄与した。運の強さ、、、。

 

一方で、陸軍はこの時代から、「戦いは作戦と将士の勇敢さによって勝つ」という伝統的迷信に犯されていた。必要な砲弾の量すらまともに計算できない参謀本部だったのだ。だから、好古は、攻撃できる弾もなく、ただ、相手が疲れるのを待つしかなかった・・・。そのいい加減さは、あまりに、あんまりだ・・・。

そして、「膨大な血がながれたが、官僚制度のふしぎさで、戦後たれひとりそれによる責任をとった者はない」、と。。。

 

遼陽では、ロシアのクロパトキンが大山巌児玉源太郎率いる軍に敗北する。しかし、この時、日本側の死傷数は2万を超えた。そんなこともあって、遼陽会戦における日本軍は、世界には勝利者とはうつっていなかった。お金の工面にヨーロッパに飛んでいた日銀副総裁の高橋是清は、日本の公債を買ってもらうのに苦労する。そこを救ったのは、ユダヤ人のヤコブ・シフだった。ロシアはユダヤ人を迫害していたことから、ヤコブは日本に肩入れしてくれたのだった。でも、当時の日本人には、そういった「人種問題」というのはあまり実感できていなかった。でも、アメリカで奴隷になったことのある高橋にとっては、「ロシアにおけるユダヤ人を救うために日本を応援する」ということが理解できた。

 

ここで、ロシアが、19世紀に方々を侵略征服した歴史が語られている。ポーランドフィンランド、、、そして、それは今現在のウクライナにもつながっているということか・・・・。

 

山形有朋と同様、けちょんけちょんなのが、乃木希典自分の手柄を立てたいがために、かたくなに海軍と協力することを拒んだ・・・。203高地を攻めてくれという大本営海軍の懇請は、陸軍側も同意していたのに、現地の乃木軍ががんとして動かなかった・・・。

 

乃木希典というと、私にはそういう悪いイメージしかないのだけれど、ずいぶん昔に「〇乃」という名前の女子が、自己紹介で「乃木将軍の乃なの」と嬉しそうにいっていたことにすごい違和感を感じたのを思い出した・・・。

 

日本の作戦で苦笑してしまったのが、ロシア軍が外との交信に「伝書バト」を使っているということが明らかとなり、長岡というやはり長州出身の参謀本部次長が、「鷹をとばして鳩を襲わせる」という案をおもいついたって話。実際に、大本営鷹匠を呼んで作戦人事に加えた。ところが、鷹は鳩を襲う習性が無いという。で、「隼なら鳩を襲うかも」ということで、野生の隼をつかまえて訓練することから始めた、、とか、、、。この隼が旅順の空を飛ぶことはなかった・・・。松の根の油で飛行機を飛ばそうとしたのと、どっちもどっち、、、。

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そして、沙河会戦。ここでもまた、日本軍は、2万人を超える死傷者をだす。陸軍は、砲弾を生産するということも忘れていた。

日本陸軍はというのは、要するにそのような智能上の欠陥としかいいようのない体質を最初からもってうまれついていた。」の一文で三巻は締めくくられる。 

 

そして、日露戦争はまだ続く・・・。

う~~ん、上手く書くなぁ。読ませるなぁ。って感じ。

当時、スパイとして活躍したと言われている、明石元二郎についても、ちょっとだけ出てきた。佐藤優さんに言わせると、本当のスパイではないらしいけど。

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また、続きを、、ゆっくり読んでみよう。

読書は、楽しい。

 

 

『アーサー王物語』by ジェイムズ・ノウルズ

アーサー王物語
ジェイムズ・ノウルズ 作
金原瑞人 編訳
偕成社文庫
2000年7月 1刷 
2017年9月 16刷
KING ARTHER AND HIS KNIGHTS

 

読み物として有名な、『アーサー王物語』だけれど、読んだことが無かった。 先日 図書館を歩いていたら、 児童書のコーナーで見つけたので、読んでみることに。

 

読み終わって、訳者解説をみてはじめて気が付いたのだが、『アーサー王物語』は色々な作家が「アーサー王伝説」を物語としてかいているらしい。なんと、夏目漱石も、アーサー王を主人公にした作品を一つ書いているのだと。 『薤露行(かいろこう)』という作品だそうだ。知らなかった。

 

アーサー王伝説は、紀元6世紀頃、イギリスにモデルとなった人がいたようだがはっきりとしたことは分かっていない。 当時、多くの人々に尊敬を集める優れた王がいたことは確かなことだそうだ。先日の、 フランク・ロイド・ライトの展示会でも、アーサー王に仕えた誇り、、みたいな話が出てきていた。

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そして、このアーサー王は伝説となって、物語は次第に膨らんでいく。多くの騎士の物語が加わり、魔法の話が加わり、聖杯探求の話が加わり、、、。
12世紀に、 ジェフリー・オブ ・モンマスという年代記作家がブリテン王列伝』をかき、15世紀に、トマス・マロリーがアーサー王の死』をかいた。そして、18世紀、19世紀、20世紀と、多くのアーサー王物語』が誕生した。マーク・トウェインの『 アーサー王宮のコネチカットヤンキー』は、奇想天外なパロディだそうだ。

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そして、今回は、たくさんのなかから、まだ翻訳されていないもの、子どもでも読めるもの、センチメンタルではないもの、という条件で探し、ジェイムズ・ノウルズの『アーサー王物語』を翻訳するに至ったということ。ジェイムズ・ノウルズ(1831~1908)は、建築家でジャーナリスト。ロマン派で作家や詩人とも付き合いがあり、自分で評論なども出す人だったらしい。

 

ということで、そんなジェイムズ・ノウルズの『アーサー王物語』を、思いっきり「かっこよく」訳したとのこと。

 

表紙の裏には、
アーサー王と円卓の騎士たちの物語
魔術師マーリンに守られ、
不思議な運命を持って生まれたアーサー王
今から剣を引き抜き、 王となるや、
 名剣エクスカリバーを手に入れ、
ブリテン国を統一する。
そして、 美しい グウィネビアを妃に迎え、
 円卓の騎士 と呼ばれる地上最高の騎士たちにかこまれる
しかし、理想の騎士団は結局は長くは続かなかった。”
とある。

 

目次
序章
第1章  アーサー、岩から剣を抜いて王となる
第2章 アーサー、 名剣エクスカリバーを手に入れ 反逆者を打ち破る
第3章 アーサー王、王国よりサクソン人を追い払いブリテンを統一する
第4章  アーサー王アイルランドノルウェーガリアとフランスを征服する
第5章  バリン卿の悲劇
第6章 バリン卿、痛恨の一撃。弟のバラン卿との戦い
第7章  ア―サー王と グウィネリア王妃の結婚、そして 円卓の設置
第8章 アーサー王、 ローマを征服し 皇帝に即位
第9章 湖の騎士ラーンスロット卿の冒険
第10章 ボーメン卿またはガレス卿の冒険
第11章 聖杯の探求とパーシヴァル卿、ボールズ卿、ガラハッド卿の冒険
第12章 ラーンスロット卿とアストラッドの美妃
第13章 アーサー王とラーンスロット卿の戦い
第14章 アーサー王の最期

 

感想。
うん??何だこりゃ??
なんとも、とりとめのない、、、、。話の内容としては、目次にある通りの登場人物が、目次にある通りのことを体験、経験していくのだが、、、要するに、侵略、征服の時代において、アーサー王ブリテンを守ったんだぁ!って話。でも、最後は、ラーンスロット卿と自分の妃の不倫を疑って、無用な戦い、、、。

 

時々でてくる、魔術師や魔法を妖精みたいな登場人物が、物語を完全フィクションの世界に誘い、多くの騎士が、自分の名誉と欲のために戦う。最悪なのは、兄弟で協力しあっていたはずのバリン卿とバラン卿が、仮面や姿形を換えているために相手がだれだかわからないまに戦い、命を落とす、、、。

 

えぇぇ?!これが、どこが面白い話なの?!?!と思ってしまった。

 

なんとも、とりとめがない。妖女に惑わされたり、あやしげな男がでてきたり、、、。みんな、自分はアーサー王に仕える勇ましい剣士だと思っている。まぁ、そうかもしれないけど、普段は、宴会して飲んだくれているだけじゃないか!ってつっこみたくもなる。

 

これは、ブリテンの人にとっては、国の英雄の話なんだろう。ローマを追い払ったあげく、ローマを征服したことになっているアーサー王。史実はちょっと違う、、、、。

ブリテン人のためのおとぎ話、、、かなぁ。。。。

湖から魔法の剣がとどいたり、白い竜と紅い竜が闘う姿がアーサー王出現の兆しだったり、、。アイルランドから力ずくで奪いとった巨石で、騎士たちの墓を飾ったり、、、。
ちなみに、そしてできた記念碑が、ストーンヘンジということになっている・・・。

毒殺されたり、剣で刺されて死んじゃったり、次から次へと騎士が死ぬ。魔法がかかる。。。意外だったのは、アーサー王自身のはなしは、半分以下くらいってこと。だれが主人公の物語だかわからなくなるくらい。。。

アーサー王を軸にしたお話の方が面白そうだな、、、って思った。

 

こんど、夏目漱石の『薤露行』でも読んでみるか。。。。マーク・トウェインの『 アーサー王宮のコネチカットヤンキー』も面白そうだ。でも、本家本元を読んでおかないと、パロディが楽しめないよね。。。果たして、本書は、本家本元のアーサー王物語といえるのだろうか、、、。

と、ちょっと謎の残る感想・・・。


ま、児童書だったしね。アラビアンナイトは、児童書でも結構楽しめたけれど、本書はちょっと消化不良感を残した。ま、アーサー王物語がどんな感じか、、、っていうイメージは出来たかな。あと、ブリテンスコットランドアイルランドの歴史も垣間見えたかもね。

 

ふ~~~~ん、で?!って感じ。

ま、そういう読書もあるよね・・・。

 

 

 

『進化思考』 by 太刀川英輔

進化思考
生き残るコンセプトをつくる「変異と選択」
増補改訂版
太刀川英輔
海士の風
2023年12月31日 第1版第1刷

 

知人が、面白かったと言っていたので、図書館で借りて読んでみた。
なかなか分厚い、単行本。出版の「海士の風(あまのかぜ)」とは、鳥取県の北60キロにある人口約2000人ほどが暮らす離島、海士町にある。かつて、後鳥羽上皇島流しにあったところ。

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東京から8時間かかる辺境であるその町は、地方創生と学校教育で大きな成功をおさめた、奇蹟の島とよばれている。社会問題を取り扱った話題の中で、「海士町」をめにすることは度々ある。著者の太刀川さんは、そういった活動にも共感し、創造的進化を期待して、海士の風から出版されている。

 

著者の太刀川さんは、デザインストラテジスト、NOSIGNER代表。デザインストラテジストって、なんじゃら??っておもうけど、隈研吾さんのもとで建築デザインをまなび、「創造する」ということに興味を持ち始め、本書にのべられているような、創造と生物進化の関係性研究をはじめ、そこから、「明日の希望につながるプロジェクトのためのデザイン」を仕事にしている、とのこと。なかなか、ユニーク。

 

表紙の裏には、
” 進化思考
それはヒトの想像力を、生物の進化と同じ構造を持った進化現象と捉え、「変異と選択」の往復によって、誰もが持つ本来の想像力を導く思考法”
とある。

つまりは、思考法についての本。最初に、ザーーっと目を通してみて、なんだか話が多岐に渡りすぎていて、とりとめないなぁ、、、と思った。533ページを、ザーーーっと目を通してから、しばらく、休息。この本は読むべき本なのか?読まなくていいかも、、、。ちょっと、考えてみた。数日後、再び手にとって読み始めた。うん、なかなか、面白いかもしれない。でも、盛り盛りで、途中でやっぱり飽きてきた。それでも、うん、なかなか、面白い、、かな。

 

目次
増補改訂版によせて
はじめに
序章 創造とは何か
第一章 進化と思考の構造
第二章 変異 (HOW)
 1 変量 極端な量を想像してみよう
 2 擬態 違うものや状況を真似よう
 3 消失 標準装備を減らしてみよう
 4 増殖 常識よりも増やしてみよう
 5 移動 新しい場所を探してみよう
 6 交換 違う物に入れ替えてみよう
 7 分離 別々の要素に分けてみよう
 8 逆転 真逆の状況を考えてみよう
 9 融合 意外な物と混ぜ合わせよう
第三章 選択 (WHY)
 1 解剖 内側の構造と意味を知ろう
 2 歴史  過去の系譜を引き受けよう
 3 生態  外部に繋がる関係を観よう
 4 予測  未来予測を希望に繋げよう
第四章 創造 CREATION
終章 創造性の進化
おわりに
増補改訂版の協力にあたって 監修者
出典一覧
参考文献
詳細目次

 

感想。
濃い!
というか、、、モリモリ!
やっぱり、最後の3/1は、だんだん飽きてきた。。。。

読むのは、最後の「終章 創造性の進化」だけでもいいかも。。彼の主張はそこにある、それまでは、延々と進化と創造性について、、。
でも、まぁ、面白いとは思う。創造のヒントはたくさん詰まっているともいえる。

 

人は、なぜ創造するのか。
創造とはなにか?
だれでも、創造者になれるのか?

 

エジソン、ダビンチだけでなく、普通の私が、創造者になれるのか?アーティストになれるのか?デザイナーになれるのか?

 

それは生まれついた才能でしょ、って思っているなら、そうではないかもしれない。ここに、太刀川さんがまとめてくれたさまざまな思考法を駆使すると、だれでも創造的に、クリエーターに、アーティストになれるかもしれない。

そんな気にさせてくれる一冊。図表も、なかなかサイエンスであり、哲学的であったり。


目次も、よく見ると、章の中の小項目の上下が揃っている。デザインされた目次ともいえる。トカゲのしっぽはちょん切れてもまた生える、、という話の中では、しっぽの切れたトカゲの図があり、ページをめくると、のこったしっぽだけが描かれている。

説明をわかりやすくするためのアナロジーも楽しい。コミュニケーション力のところで、関西のおばちゃんの「アメちゃん」の話とか、漫才のボケと突っ込みとか。。。ときどき、ぷぷぷ、、って思わず笑っちゃうのだが、内容は真面目。

 

太刀川さんは、創造の力によって、文明の課題、社会課題を解決する!と思っている。だから、熱い。どうしたら、みんなが創造的になれるか、本気で考えている。だから、その思考法を本にしたということ。創造性は、生まれつき持っているだけではなく、鍛えることができる。きっと、彼はそう信じている。私も、ちょっと、そう思う。でもね、創造力が鍛えられるものだとしても、本人が「鍛えたい」とおもわなければ、先が無い。「創造的に社会課題を解決したい」という意思があってこそ、本書は楽しめると思う。

 

ところどころに、「進化ワーク」と称して、具体的に思考をはたらかせてみる54個の進化ワークが記載されている。これを真面目に取り組んだら、結構面白い授業になりそうだ。1年かけてやってもいいかもしれない。最後の方で、著者はリベラルアーツの重要性にふれているのだけれど、こういった「進化ワーク」を実際にやってみるということこそ、リベラルアーツだな、って思う。って、私は、ちょっとめんどくさい、、、と思って、じっくりは取り組まなかったけれど、、、。進化ワークが課されていることで、その項で考えねばならないことが何だったかが総括できているというところもなかなか憎い。やるね。これも本の構成として創造的だわ。

 

なるほど、っておもったことを覚書。

トーマス・エジソンの言葉
「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である。」 
「私は失敗したことがない。ただ、 1万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ。」
「失敗したわけではない。 それを誤りだと言ってはいけない 勉強したのだと言いたまえ。」
 もう、何度聞いたかわからないほど、度々耳にする言葉ではあるけれど、いい言葉だ。

 

・知能には流動性知能と結晶性知能がある。若者の知能が流動性。年寄りの知能が結晶性。やわらかさとかたさ。なかなか面白い表現だ。企業経営でもこの二つのバランスが大事。
で、2018年の日本大手企業経営者の就任年齢57.7歳と、アメリカの46.7歳の数字が提供されている。1990年代からの株価の変化をみると、アメリカが10倍になっているのに、日本は横這い・・・。変化に対応できなかった日本は、、、結晶性知能に頼っていたのだ・・・・。いたたた。。でも、わかる。。
 ただ、結晶性知能が悪いわけではない。両者がバランスすることが大事。

 

・創造力を育む教育の不足について。試験や受験ありきの教育をうけてきた学生が、いきなり、「これまでにない商品企画をしてくれ」「斬新な発想で新規事業を発案してくれ」といわれて、茫然自失しても仕方がない。2018年に「生きる力」とやらが学習指導要領に加えられたらしいけど、、「生きる力」のある大人がどれだけいるのか、、、。
没個性の教育をしておきながら、いきなり「個性の発揮」といわれても困る、といっていた女子大生をおもいだした。

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・文化と進化の類似性を指摘する論考にふれていることで、「創造性を再現性のある自然現象として、学習可能なものにかえられるかもしれない」という、著者の気づき。

そして至ったのが、
 「創造性とは、変異と選択の往復による進化現象である」ということ。

生物学を一つの専門とする私としては、本文中、時々、変異という言葉と、変化という言葉の使い方が、混同しているなぁ、、、と気になるといえば気になるのだが、、、。つまりは、変化しながら、選択をすることで、生物は進化してきた、ということ。そして、生物の創造だけでなく、人が何かを創造するときにも、「変わる」と「選ぶ」を繰り返しているということ。

その、著者のいう「変異」と「選択」の思考の切り口が、第2章、第3章で、延々と述べられる。「変異」でアイディアを大量に生み出し、「選択」で必然と思えるものを選ぶ。そのくり返しが創造活動なのだ.。その切り口詳細は、目次にある。

 

・失敗や挑戦がなければ進化しない。失敗もまた、創造的プロセス。

これは、大いに共感。まさに、エジソンの言葉の通り。やってみて、上手くいかないという発見をするというのも大事。「一歩踏み出す」それこそが創造の第一歩。命さえなくさないなら、なんでも挑戦してみればいい。

 

・変異の「増殖」の話で。世界でもっとも歯の多い生き物は、カタツムリ!って。その歯の本数、なんと約2万本。おろし金のように歯がついていて、なんと、コンクリートまで食べる。知らなかった!

 

・変異の「移動」の話で、ところ変われば、、、という土地の名前について。オーストラリア「エロマンガ盆地」、「熱風の吹く平原」という意味だそうだが、日本人には、「エロ漫画盆地」、、、。他、オランダの「スケベニンゲン」、アメリアリゾナ州の「アホ」、チェコの「フルチン」、バリ島の「キンタマーニ」、、、。ところ変われば、、、。笑っちゃった。ちなみに、タイ語では、「本当に?」ということを「チンチン?」という。タイでは、「チンチン?」を連呼していたけれど、日本ではあまり連呼しない方がいい・・・。

 

・変異の「移動」の話から、グーテンベルグ活版印刷機は、ワインの葡萄圧搾機を応用したものだった、と。へぇぇ!!!しらんかった!!ワインがなければ、印刷技術はできていなかったかもしれない。ワイン、ばんざーい!

 

・変異の「移動」の話から。コンピューターゲームで世界中を圧巻する任天堂は、もともとは花札の会社で、日本ではじめてトランプをつくった会社である、って。へぇ!知らんかった!

 

・変異の「逆転」の話から。ソフトバンク孫正義氏が、Twitterで彼の髪を中傷する相手に対して、「髪の毛が後退しているのではなく、私が前進しているのだ」という名言をのこした、って。すばらしい!!ネット上では、「ハゲしく同意!」と共感が沸き起こり、感動が生まれた、って。Good job!! ま、私はハゲでマッチョって、好きだよ。

 

・選択の「解剖」の話から。物事は分解してみるとわかりやすくなるということ。著者が高校生の頃にであった本からの一節が紹介されている。
難しい問題に出会った時は、その問題を階段だと思って分解して、 1段ずつ上がればいい。 わからない問題は、 階段を抜かしてしまっただけなのだ。」と。
 世界中の どんな難しい問題も、 実は簡単なものの集合でできているということ。
おぉ、目からウロコ。そうだ。確かに、そうだ。。。
物事を複雑に、難しくしているのは、塊のまま見ているからだ。分解せよ。さすれば、解ける!うん、そんな気がしてきた。

 

フィボナッチ数列1,1,2,3,5,8,13,と増えていく数列。前の数時との足し算ね。フラクタル構造には、フィボナッチ数列が現れることが良くある。フラクタル=自己相似性。オウムガイの断面図とか、ひまわりの種の並び方。自然が作り出す不思議。ひまわりの種の並びに、規則性があったとは、、、。

 

・史上最高の建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉。デザインの本質は、「少ないほど豊か」。「細部に神が宿る」。

そうか、「神は細部に宿る」って有名な言葉だけれど、日本人っぽいって思っていた。谷崎潤一郎の『陰影礼讃』に出てきたのかな?忘れた。

 

・ミースへの敬意をこめて「少ないもので多くを実現する」と語った建築家バックミンスター・フラーは、宇宙船地球号という言葉をつくった。あぁ、立花さんの本『宇宙からの帰還』にも出てきた。

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・選択の「歴史」の話から、比較による創造性への効果について。わずかなスープの味の違いがラーメン屋の存亡にかかわる。違い、比較、大事。

 

・選択の「歴史」の話から、「完全にオリジナルなものは存在しない」。世界は、過去の影響を受けて変化してきている。過去を読み解き、前例の失敗を理解し、変わらないものを頼りにしながら、新たな挑戦をめざす。
 独自性なんて、、、自分の思い過ごしかもしれない。絵画も、音楽も、、、過去の歴史のパーツからできているかもしれない。オリジナリティってなんだろうね。

 

・選択の「歴史」の話から、電気自動車の特許は、1830年代にさかのぼるということ。当時は、その電気自動車に必要なリチウム電池なんてなかったし、地球温暖化による化石燃料への危機感なんてものもなかった。

 

・選択の「生態」の話から、キップリングの5W1Hの問いで、森羅万象のつながりを網羅的に理解できるという話。5W1Hは、もちろん、WHAT、WHY,WHEN、WHERE、HOW,WHO。そして、さらに、その思考のために言語が発達する。

 

と、、、書き続けると長くなってしまうので、これくらいにしておこう。

 

大事なのは、その創造性を何に使うかということではないだろうか。本書の中でも、南方熊楠が引用されている。自然観察と想像。曼荼羅と心とものの概念。

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人は、自然に学ぶことで、創造性を高めることができる。そして、その創造性を私たちの共同世界のなかの課題解決に活用するということ。そして、社会が進化する。

 

進化の力は、自然の力、ってっことかな。

 

 

海外旅行 ハワイ 5日目 ( 最終日)

出発から5日目、ハワイの旅もおしまい。

 

マイナス19時間という、わかりにくい時差で、時間感覚がよくわからなくなっているけれど、ハワイの夕方に飛行機にのって、翌日の夜に日本に戻るという、、、行きは、1日得した気がするけど、帰りは、1日損した気がする、、、。

 

最終日の午前中にダイアモンドヘッドへ行こうかと思ったけど、登るにはweb予約が必要で、前日に予約しようと思ったら、午前中の予約は満杯で、断念。

朝のうちに、ビーチまで散歩することに。

 

6:30には目覚めたので、早めに出掛けようも着替えていたら、ホテルの非常ベルが高らかに鳴り響く!おいおい、、、。どうせ、ミスアラームだろう思いながらほっていたら、今すぐ避難しろとの放送。おそらく、アラームとセットの自動音声。周りの部屋からは、ガヤガヤとドアを開けている音。まぁ、出てみるか、携帯とパスポートだけポッケに突っ込んでドアを開けて廊下を覗いてみると、ホテルのスタッフらしき兄ちゃんが、警報器を棒でツンツンつついてる。あ、、、いつものことなのね、、、。

彼が、no problemと言っているので、そのまま部屋に戻り、出掛ける準備継続。

しばらくすると、アラームはリリースされたので通常行動に戻ってよし、の放送。やっぱね。

 

そして、外へ散歩に出掛けた。前日に見かけて、朝にコーヒー飲みにこようかな、って思っていたホテル目の前のコナコーヒーショップは、長蛇の列!

びっくり!美味しいのかも知れないけど、、、並ぶ気はしないので、スルーパス。そして、ショッピング街を通りすぎてビーチへ。ものの5分くらいだろうか、あっという間にビーチに到着。

 

ノースショアより、俗だ!と思いつつも、やっぱり、これぞワイキキビーチ?!朝から、いろんな人が散歩したり、サーフィンしたり、水遊びしたり。女の子が可愛い。ビーチが似合う。ダイアモンドヘッドをビーチ越しに拝む。


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ホテルに戻る前に、自分へのお土産に”ALOHA”と書かれたTシャツを購入。レディースのMを選んだのだけど、いまいち、サイズがわからん。店のお姉さんに、これは私には小さいかなぁ?って聞いたら、小さかったら、レシート持ってきたらサイズ変えてあげるよ!って。で、結局、Mを購入。ホテルに戻って着てみたら、いいサイズ!これで帰ろう!日本に帰ったら部屋着かな。結構、満足。16ドル!

最近、観光旅行に行くと、Tシャツを買うのがお気に入り。日常で使えるし、安いし。

 

9:00前には部屋に戻って、12:00のチェックアウトまでのんびり過ごした。ずっと団体だったので、久しぶりのquiet timeを過ごした。初日の夜にスーパーで買ったバナナやヨーグルト、ハム、などで朝御飯とランチ。コーヒーは部屋にマシーンがあったので、外に行かなくても好きなだけ飲むことができた。残った食べ物で、開封してないものは、チップとともに机の上に残してきた。未開封のジュースくらいは、きっと誰か、食べてくれるかな?行きの飛行機の中でもらった、ハワイのマカデミアナッツチョコも、おいてきた。

 

チェックアウトして、空港まで団体移動。帰りの便へのチェックインは割とスムーズで、待つことなく荷物預けまで完了。搭乗開始まで2時間近くあったので、ラウンジでカレーを食べた。ワインも、アメリカのメジャーでありつつ結構よいものが置いてあったので、ついでに、泡と赤を一杯ずつ。。。

 

飛行機は、往きと同じ、エコノミー席2-4-2の並び。それでも、結構空席もあり、私は、チェックインの時に隣が空いている通路側の席に変更しておいたら、ちゃんと、隣は空席のままだった。

 

飛行機に乗ったら、もう日本時間で行動。日本は、お昼過ぎのはずなので寝ないで起きているぞ、、、と。本を読んで、ご飯の間は映画を観て、、、ご飯のときにワインを飲んだら、、、結局、1時間くらいは寝てしまった。ちなみ、機内で「Barbie バービー」を見たのだけれど、結構笑えた。ジェンダー問題を色々言われていたけれど、コメディだと持ってみれば、それなりに笑える。ラスト、バービーが人間になって初めての出勤かと思いきや、産婦人科へ訪問っていうのが、苦笑い、、、、だけど。

 

3泊5日の旅も、あっという間。コロナ関係の手続きも不要になったので、帰国の手続きも、スムーズ。だがしかし、、、荷物が出てくるのを待つだけで、1時間くらいかかった。夜の羽田は荷物さばきが遅い、、、。まぁ、私たちは、三味線のケースがFragileで預けていたので、別途係りの人が運んでくれたというのもあって、だいぶ時間がかかった。

 

そして、羽田空港で、解散。

 

結局、一日もすっきり青空をみることはできなかったけれど、ホノルルってこんなところなのね、って知るには十分だったかな。食事は、まぁ、、、取り立ててすごくおいしいってものもない気がするけれど、ノースショアで食べた、ジョバンニのガーリックシュリンプは美味しかった。あと、初日の夜のステーキも美味しかったかな。ただ、物価は高い。最低賃金が高いんだから、そりゃそうだ。でもって、この円安。

サンドイッチがこの値段かぁ、、、って。

日本のコンビニなら、300~400円くらいで買えそうなもなものも、8ドル、1000円以上。若者には、厳しいやね。

 

JTB企画のホノルルフェスティバル、楽しませていただきました。私にとっては、現地集合、現地解散の方がありがたいんだけどなぁ、、、、って感じはあったけど。色々な人とも出会えてよかったと思う。

 

お世話になった皆様、ありがとうございました!!

やっぱり、旅は楽しいね。