『成瀬は天下を取りにいく』 by 宮島未奈

成瀬は天下を取りにいく
宮島未奈
新潮社
2023年3月15日 発行
2024年4月5日 13刷

 

2024年本屋大賞に輝いた一冊。

日経新聞(2024年4月10日)の記事では、

”受賞作は滋賀県大津市を舞台に、主人公・成瀬あかりの中学・高校生活における独創的なチャレンジを連作短編で描く。09年から当地に暮らす作家にとって愛着のある場所だが、小説の土台に据えたのは時代の巡り合わせが大きかった。

「(執筆した)20年当時はコロナ禍で外へ出て行けなかった。滋賀のなかで小説を書いてみようと思ったときに西武大津店の閉店があり、その史実をもとに書いた」と語る。百貨店の西武大津店は20年8月31日に閉店した。連作第1話は、カウントダウン中継に映り込むべく奮闘する成瀬を描く。”
と。

 

気になる、気になる。
図書館の予約は、数百人の予約者。これは、もう、買うしかないだろう・・・・。
と、早速Amazonでポチリ。

すぐに届いた。ついでに、続編の『成瀬は信じた道をいく』もいっしょに、すぐに届いた。そして、すぐに開封

 

お!なんだ、このアニメチックな表紙は!
新聞の活字だけをみていたので、装丁すら知らずにポチったので、お!とおもった。でも、中は活字オンリー。べつに、児童書ではない。新聞の記事でも、”多世代に響く”最近の本屋大賞、といっていたので、なるほど、と思う。

 

帯には、
” かつてなく最高の主人公、現る!
2024年本屋大賞ノミネート!

「 島崎、わたしはこの夏を 西武に捧げようと思う。」
 中2の夏休み、 幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出したー。”

 

著者の宮島未奈さんは、1983年 静岡県富士市生まれ。 滋賀県大津市在住。 京都大学文学部卒。2018年『二位の君』で第196回 コバルト短編小説新人賞を受賞。 2021年 『ありがとう西武大津店』で 第20回 「女による女のための R-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。同作を含む本書がデビュー作。

って、しらなかった。単行本としてデビュー作だそうだ。

 

目次
ありがとう西武大津店
膳所(ぜぜ)から来ました
階段は走らない
線がつながる
レッツゴーミシガン
ときめき江州(ごうしゅう)音頭

 

感想。
最高!!!
面白過ぎる!!!
涙が出るほど笑える!!!!

いやぁ、こりゃ、本屋大賞とるよね!!
201ページの単行本。
読みだしたら止まらない。
ほぼ、2時間で読み終わった。

電車の中であろうと、ぶっ!!!と、声をだして笑ってしまう。

 

著者のことをあまり知らないままに読み始め、主人公の成瀬あかりと島崎みゆきが中学二年生の夏からはじまり、かつ、いかにも若々しい文章だったので、著者は30代?と思ったら、1983年生まれ、、、というから、一応、40代か。でも、2020年のコロナ禍に書き始めた時は30代後半ということ。かつ、なんか可愛らしい女性を想像してしまった。新聞の記事では、宮島さんのコメントとして、「『重い小説』は優れた書き手がたくさんいる。コロナ禍の閉塞感もあり、私は明るく楽しい話を書きたかった」と紹介されている。

うん、明るく楽しいよ!!!
これはね、元気になるわ。
そして、たしかに、若者から高齢者まで、、少なくとも、50代の私でもおおいに楽しめた。

成瀬!!!いけーーー!!!がんばれーーーー!!
大好きだよーーー!!
応援してるよーーーー!
って、言いたくなる感じ。

 

実は、本を購入したときは、ちゃんと新聞の記事は読んでいなかった。だから、西武大津店閉店が、架空の話なのか、史実なのかをわからないままによんでいたのだけれど、そんなことはどうでもいい。とにかく、面白いのだ。

 

そして、確かに一つ一つのお話は、それぞれ完結している。でも、登場人物は、重なっていくし、成瀬と島崎は高校生になるし、テンポよく、連続小説を読んでいる感じ。

 

そして、成瀬の行動力に元気をもらう。一般的に言えば、成瀬のような子はちょっと扱いにくい、可愛げのない子なのかもしれない。やることがちょっと突飛だ。いやいや、ちょっとどころか、だいぶ飛んでる。頭が良すぎて、周囲から浮いちゃう子。でも、幼い時から同じマンションにすんでいて、成瀬の側にいる島崎みゆきにとっては、つかずはなれず、、、。べったりでもなく、無視するでもなく、、、その二人の距離感がまたいい。成瀬は、自分の気持ちを表情に表すタイプではなく、言葉もぶっきらぼう。でも、みゆきは、成瀬のことを理解している、成瀬もみゆきは理解してくれていると思っている。そういう、二人なのだ。その関係がいいんだぁぁぁ。

 

キャラとしては、圧倒的に成瀬がたっているけれど、わたしはみゆきも好きだ。

とにかく、笑えるし、ほっこりするし、元気をもらえる一冊。
気楽に読める、軽い一冊。
いやぁ、、、ポチった甲斐があったよ。これは。

 

チョットだけ、ネタバレ。
成瀬の「 わたしはこの夏を 西武に捧げようと思う」の宣言が意味するのは、大津市にあった西武百貨店閉店が決まり、街のシンボルがなくなることを惜しむ地元の人たちの様子をローカルTVが毎日カウントダウント中継するので、そのTVに毎日映りこむという宣言。

成瀬は、いつも大きなことを口にする。成瀬が口にしたのは、「200歳まで生きる」「TVにでる」「紅白歌合戦にでる」・・・。

成瀬は、 大きなことを100個言って1つでも叶えたら「あの人すごい」になるという。


みゆきの独白。
” だから日頃から口に出して種をまいておくことが重要なのだそうだ。それはほらふきとどう違うのかと尋ねたら、 成瀬 はしばらく考えた後「同じだな」と認めた”

 

別に、西武ライオンズのファンでもないのに、ユニフォームを着こんで、毎日TVにうつる成瀬。怪しい姿に、レポーターは見向きもしない。。。他に「残念です~」とか「さみしい~」とか思惑通りの答えを言ってくれそうな客たちにマイクを向ける。でも、毎日TV中継現場に出没する成瀬。そして、いつのまにかみゆきも一緒に、、、。TV番組としては成瀬の存在を無視し続ける一方で、TVを観ている人たちの間では、「あのユニフォームきている女の子、また映ってる!」と、SNSでもコメントがあがるようになる。あるいは、西武のキャップをくれようとするおばちゃんが現れたり、子どもたちに「あのおねぇちゃん」と言われたり。

ところが、閉店直前になって、成瀬は祖母が亡くなってTV中継現場に行けなくなってしまう。みゆきは、成瀬に代わってTV中継現場に向かう。そして、、、、。

何はともあれ、成瀬は最後の現場に間にあう。

 

成瀬が、面白いのだ!!
無言で、TVに映り続ける成瀬が。

 

でも、これは、序の口。
二話目の「膳所からきました」は、もっと、ぶっとんでいる。

「島崎、わたしはお笑いの頂点を目指そうと思う」
そして、M-1にでるのだ!!!みゆきとコンビで。中学生だから、親の承諾が必要。成瀬の両親も、みゆきの両親も、面白過ぎる。あれこれ言うことなく、同意書に印鑑を押してくれる親。
そして、二人のコンビ名が膳所(ぜぜ、大津市の町の名前)から来たので、「ゼゼカラ」

二人がネタを練習するところとか、実際に、M-1の予選にでるところとか、、、笑いの涙なしには読めないくらい、おかしい・・・。

わたしは、漫才というものにあまり興味が無いのだけれど、二人が参考にしたミルクボーイの「コーンフレーク」というネタを思わずYouTubeで探してみてしまった。。。

あぁ、笑いっていいね。。。

 

そして、「階段は走らない」では、急に、40代のオジサンたちがでてくる。それは、成瀬らと同じ地元で育った男性たちで、後に、地元振興のためにお祭りの司会にゼゼカラが活躍することにつながる。

 

「線がつながる」では、成瀬もみゆきも高校生になっている。二人は別々の高校に進むけれど、やっぱり、つながっている。成瀬は、高校でもやらかす。登校初日はなんと、坊主あたま。。。。髪の毛がどのように伸びるのかを実測するため・・・。

そして、かるた部での、活躍。

もう、とにかく、無茶苦茶なようでいて、こういう高校生いてもおかしくないし、身近なような気もして、楽しいのだ。

成瀬をみていると、「やってみる」ことの大切さを思う。
いやぁ、ほんと、面白い!!
こういう本こそ、本屋大賞!だと思うわ。 

 

痛快!

だね。

 

読書は楽しい!!!