オペラ『夢遊病の女』 新国立劇場 

オペラ 夢遊病の女
新国立劇場 

【作曲】ヴィンチェンツォ・ベッリーニ
【指揮】マウリツィオ・ベニーニ
【演出】バルバラ・リュック


知り合いがゲネプロに誘ってくださったので、観てきた。
本講演は、10月3〜14日。

2階のR席。中央よりの1番の席だった。

 

チラシには、
”不実を疑われた1人の花嫁。
潔白の鍵を握るのは夢遊病
充実の歌手陣で贈るベッリーニの傑作”

 

ベルカント・オペラを代表する作曲家ベッリーニの傑作を新国立劇場初公演。村の結婚をめぐる物語を叙情的な音楽が彩ります。新国立劇場が誇る合唱団の魅力があますところなく活かされるのも聴きどころ一つ。。。。” とある。

 

ベルカント・オペラとは、オペラ歌唱法のひとつで、イタリア語で「美しい歌」「美しい歌唱」を意味するベルカントからきている。美しい流麗な旋律とドラマに沿った高度な歌唱技術が特徴。日本では一般的に「ベルカント・オペラ」として、ロッシーニ(1792~1868)からベッリーニ(1801~1835)、ドニゼッティ(1797~1848)が代表作と言われているらしい。


私は、知らないお話だったので、あらすじを予習していった。
新国立劇場のHPで見ることができる。

www.nntt.jac.go.jp

 

加えて、新国立劇場は、毎度、YouTubeでも講演前にオペラトークをアップしてくれるので、こちらも、予習にお薦め。

youtu.be

チラシにも、簡単な紹介がある。

”スイスの小さな村でまもなく結婚を迎えるアミーナとエルヴィーノ。お忍びで村にやってきた領主の跡取りロドルフォ伯爵が投宿した宿屋を、その夜アミーナが訪れる。 彼女は夢遊病で、 無意識のまま彼のベッドで寝入ってしまう。 不実を疑い 結婚をやめると言い出したエルヴィーノと彼に横恋慕する 宿屋の女主人リーザ。 アミーナの潔白を証明しようと 奔走するノルドルフ伯爵と、若き恋人たちの運命は。”

 

14:00に始まって、途中休憩有で、17:00過ぎに終演。

 

感想。
いやぁぁ、すばらしい。
やっぱり、ゲネとはいえ、すばらしい。

 

アミーナ役のクラウディア・ムスキオのソプラノが美しかった。ロドルフォ伯爵役の妻屋秀和さんは、バスの声も演技もよかった。アミーナにもリーザにも惚れられているエルヴィーノだけど、エルヴィーノ役のアントニーノ・シラグーザは、すばらしいテノールなんだけれど、、、イケメン、、、って感じはしなかった・・。若者というには、若干、、、なんて。。。なんて、でも、素敵だった。

でもって、話の流れからすると、アミーナはエルヴィーノに心底掘れまくっているのだけれど、エルヴィーノが一番ふらちもの、、、のような感じ。

 

だいたい、オペラもバレエも、主役の男はだらしがないことが多い・・・・。

 

アミーナは、舞台の最初から最後まで真っ白な衣装で、可憐で、美しかった。夢遊病という設定が面白い。そして、ロドルフォ伯爵もこれまた女好き男なんだけれど、いい人で、宿屋のお風呂シーンが面白い。

 

一幕は、夢遊病状態のアミーナの様子から始まる。最初は、音もなく、アミーナと取り付く霊のような陰の存在のダンサーたち。数分間は、オーケストラの音なしで踊りだけでの演出。アミーナの普通ではない様子が感じられる。で、音楽が始まるとともに、目覚めてからは、村の一場面。アミーナとエルヴィーノの結婚話で、村中の人が、もりあがっている。そこに、ロドルフォ伯爵がやってきて「あの人はだれ?」と村人たちが囁き合う。

 

合唱団もよかった。村人に扮する合唱団の歌声と、ソロの歌声とが重なり合って、オペラでしか味わえない臨場感というか、迫力。

 

一幕の間に一度幕が下りて、場面が転回すると、宿屋でくつろぐロドルフォ伯爵の部屋に舞台がかわる。そして、お風呂に入っている。そこに様子を見に来る宿屋の女主人リーザ。リーザがやってきたので、お風呂から出て服をきるのだが、すっぽんぽんでお風呂からでたロドルフォ伯爵。そこを付き人役があわててタオルを広げて、観客からの視線を遮る。笑っ!!


これは、笑い所だろう!とおもうのだけれど、新国立劇場のお客様は、大きな声をたてて笑わない。。。フフッという小さな笑いが客席に漏れた。

 

で、ロドルフォ伯爵は、リーザにいいよるのだが、いやよいやよといいながらまんざらでもないリーザ。。その様子も笑える。

そして、立ち去るリーザ。そこにやってきた夢遊病のアミーナ。伯爵は、アミーナの美しさに心を奪われそうになるのだが、可憐な姿のアミーナをそっと寝かしたままにして立ち去る。

 

伯爵の部屋で寝ているアミーナをみて、裏切り者だ!と叫ぶ村人、そして、怒るエルヴィーノ。目覚めても、なぜ自分が伯爵の部屋にいるのか、わからないアミーナ。潔癖を訴えるものの、だれも信じてくれないアミーナ。

あぁ、アミーナ、。ピンチ!!

で、一幕終了。

 

二幕では、教会に場面が切り替わる。エルヴィーノはアミーナの裏切りを嘆き、リーザと結婚すると言い出す。一応、元カノという設定らしい。そして、村人もそれをお祝いしようとするのだが、伯爵がやってきて、「アミーナは夢遊病なんだ」と説明。だれも信じない。と、突然、アミーナが教会の屋根の上に登場。

 

悲しみのあまり泣き疲れて寝ていたアミーナは、夢遊病で教会の屋根にのぼり、そこで、エルヴィーノへの愛を歌い続ける。

 

アミーナが本当に夢遊病で、潔癖であることに気が付くエルヴィーノ。
結局、二人の愛はもとのさやにおさまる、、、というハッピーエンド。

 

エルヴィーノは、「愛も、真実も、誠実も、何もない」といって嘆くのだけれど、結局、コロコロ女をかえるおまえが一番誠実じゃないだろ!と突っ込みたくなる。

また、リーザもロドルフォ伯爵の元を訪れていたことがばれた時には、なぜか、アミーナの育ての親が、リーザが伯爵の部屋で落としたハンカチを証拠品として取り出して見せる。

いろいろ、ツッコミどころも満載で、楽しい。。。ふふふっとわらっちゃう。

 

でいて、圧倒されるほどの歌声。合唱団も含めてすばらしかった。養母役の谷口睦美さんの歌声も素晴らしかった。

 

オペラってすごいなぁ。。。
やっぱり、声が楽器ってすごい。

ベルカント・オペラという言葉は知らなかったのだけれど、歌としてとても自然な感じで、思わず一緒に歌ってみたくなってしまう感じ。アミーナ役のクラウディア・ムスキオは、身体も華奢な感じで、どこからあれだけの声がでてくるのか、と歌のすごさに感動。寝たまま歌う場面もあるのだけれど、寝ててあれだけの声量って、、、と、本当に感動する。

 

一緒に見にいった女性は、ヴィオラ弾きで、あとで感想を聞いたら、私にはわからない音楽と歌とのずれなどに気が付いていたらしい。

みんな、それぞれ見るところ、感動するところがちがうので、観終わった後に感想を聞きあうのも、また楽しい。

感動を共有できるって、楽しい。

 

素敵な舞台だった。
お薦め。