『アラビアン・ナイト 下』  ディクソン編

アラビアン・ナイト 下
ディクソン編
中野好夫 訳
岩波少年文庫
1961年12月16日 第1刷発行
2001年9月18日 新版 第1刷発行
FAIRY TALES FROM THE ARABIAN NIGHTS (1951)

 

前回の上に続いて、続きの(下)を図書館で借りて読んでみた。やっぱり、面白い。

megureca.hatenablog.com

 

もくじ
ヘビの妖精と2ひきの黒犬
シナの王女
魔法の馬
ものいう鳥
アリ・ババと40人の盗賊
漁師と魔物
解説『アラビアン・ナイト』と私  西江雅之文化人類学者)

 

 『千一夜物語』の名でしられる物語集からの抜粋。岩波文庫の完訳だと、全13冊らしいが、それらの中からの選りすぐりをディクソンがまとめたのが本書。最後についている、解説によれば、もともと『千一』というのは、千の夜ということではなく、”たくさんの”という意味だったらしい。しかも、最初にこれらの物語を集めた時は、『千物語』というタイトルだったとか。まぁ、いずれにしても、たくさんの面白いお話があって、シャフラザード姫が命を救われた、ということ。

本書にでてくる「シナの王女」が住む、シナは、今でいえば中国からインドネシア、マレーシア当たりまでのことをさすが、物語にでてくる中国は、まったくの想像の国だったらしい。
アラビアン・ナイト』という物語集になった歴史をたどると、まずは、インドの民話、ペルシャ起源のものがたり、イスラム教の風味が加えられたバグダード、エジプトのカイロと、さまざま国の話が付け加えられ、後に、フランス語や英語に翻訳された、ということ。最も古い本としては、西暦879年にあたる年号がついたものがあるそうだ。

 

879年、日本は??紫式部も生まれていない。古事記は712年完成だけれど、これは神話だから、このような普通の市民がでてきたり、王様がでてくる物語ともちょっと違う。そもそも、フィクションの物語をつくるという娯楽自体、いつのまに発生したのだろう、、、。面白い。

 

本書におさめられているのも、王子と王女のハッピーエンド物語だったり、貧乏人があれよあれよといいことが続いて夢のようなお金持ちになるとか、夢物語。まぁ、少年文庫になっているのだから、あまりにエゲツナイお話は組み入れなかったのだろう。。。

それにしても、やっぱり、こういう夢物語は楽しい。そんなことあるわけない、ってことばかりが起きるのだけれど、わーい、わーい!!って、楽しくなっちゃう。どれも、聞いたことあるような、似たよな話だなとおもうけれど、それぞれに面白い。

 

「ヘビの妖精と2ひきの黒犬」は、親の財産を継いだ3人姉妹の末っ子が、贅沢三昧して結婚にも失敗した姉たちを最後まで面倒見てあげる、けなげな末っ子の物語。そして、王子様と出会って、ハッピーエンド。黒犬は、強欲なので魔法で犬にされてしまった姉二人なのだけれど、末っ子は、魔法使いに姉たちが可愛そうだからもとに戻してあげてって、懇願し、姉たちも無事に元の姿に。

 

「シナの王女」は、別々の国の王子と王女が、妖精と魔人のお国自慢に巻き込まれて、一晩だけ出会い、双方一目ぼれする物語。しかし目が覚めると、妖精たちの魔法は元に戻っているので、お互いに幻の一目ぼれ。でも、逢いたい気持ちが奇蹟を起こす。なんともファンタジー、かつ、一生懸命相手を探す熱意の物語。

 

「魔法の馬」は、いんちきインド人が献上した「魔法の馬」で、王子が空に舞い上がり、遠い国まで飛んで行ってしまう。そして、そこで王女様と出会って、、、最後はやっぱり、双方の国王に祝福される二人。

 

「ものいう鳥」は、本当は皇帝の子供達だった、二人の兄と、一人の妹のものがたり。意地悪な大奥(とはいっていないけれど、要するに女の争い)で、生まれてすぐに川に流されてしまった子どもたちで、皇帝は子どもの存在もしらなかったのが、最後は、皇帝、実の親子の再会。それを助けたのが、「ものいう鳥」。「ものいう鳥」をつかまえに行くのに、二人の兄は、臆病風で失敗して石にされてしまうが、末っ子の妹が「ものいう鳥」を手に入れるだけでなく、兄を助ける。兄妹愛のハッピーエンド。

 

「アリ・ババと40人の盗賊」は、よく聞くタイトルだけれど、そうか、こういう物語だったか。アリ・ババは、つつましく暮らしていたけれど、盗賊たちの宝の隠し場所を知ってしまう。「開けゴマ」の呪文で、秘密の財宝を手に入れる。でも、ちょっとだけ、遠慮がちに手に入れるのだが、アリ・ババが急に金を手に入れたのに気付いた欲張り兄が、アリ・ババにその秘密を聞きだし、アリ・ババの真似をして、「開けゴマ」といって、わんさか財宝を持ち帰ろうとする。ところが、「開けゴマ」の呪文をわすれてしまい、中から出られなくなる。そこに盗賊登場!兄は、あっさり八つ裂きに・・・。で、アリ・ババは、帰ってこない兄を探しに隠し場所にいってみると、そこで、兄の体のバラバラ遺体を発見。持ち帰ると、職人に兄の体を縫い合わせるように依頼し、病死だったことにして、静かに事を収めようとする。しかし、盗賊たちは、アリ・ババに仕返しをしにやってくる。それを、気が利く、かしこいお手伝いさんモルジアーナのおかげで、難を逃れる。モルジアーナのおかげで、盗賊の退治までしちゃう。油攻めの窒息死、、、。けっこう、エゲツナイけど、、ま、、、物語。


「漁師と魔物」は、真面目な漁師が、真面目に働いて、皇帝に認められるハッピーエンド。

 

どれも、ハッピーエンドだからいいね。しかも、悪い奴は、あっさり八つ裂きにされたり、殺されちゃう。あわわわわわ、って感じだけれど、、物語だから、楽しめる。

 

アリ・ババは、死んだ兄さんの奥さんを、お嫁さんにもらうのだけれど、その時にはすでに自分の妻はいる。二人目の妻ってこと。「それは、回教の世界ではめずらしいことではありません」ってでてきた。まぁね。

 

バクダードとか、イスラム教の一夫多妻とか、、、『イラク水滸伝』ともちょっとかぶるから面白い。1000年以上も昔のお話が、今も続いているような錯覚が・・・。

アラビアン・ナイト、面白かった。

 

無人島にいくなら、お供にしてもいいかも。いやいや、無人島に海賊が襲ってきそうでこわくなるかな・・・。