『アラビアン・ナイト 上』  ディクソン編

アラビアン・ナイト 上
ディクソン 編
中野好夫 訳
岩波少年文庫
1959年6月25日 第1刷発行
2001年9月28日 新版第1刷発行
2019年6月5日 新版第14刷発行
FAIRY TALES FROM THE ARABIAN NIGHTS

 

前から読んでみたいとは思っていたけれど、 あまりにも大作なので躊躇していた『千一夜物語』。図書館の児童書の棚で見つけたので、とりあえずこれでもいいか、と思って借りてみた。

 

本の裏には、
無人島に置き去りにされた船乗りシンドバッドは、島に住む巨大なロック鳥に捕まって空に飛び立つ。降り立った谷底には、一面のダイヤモンドと無数のヘビが・・・・・。シンドバッドの冒険」や 「アラジンと魔法のランプ」など 10編。”と。

 

Dixonによる、はしがき(中野さん訳)によれば、

”「千一夜屋物語」という名高いお話の本があります。空想や魔法の話を集めた本としては昔からこれほど面白いものはないと言われています。 これは、その中から、とりわけ名高い話ばかり 16点を選んだものです。もともと「千一夜物語」の話はみんなアラビアだとかインドだとか 中国だとかから来たものですが、なかでもここに選んだのは、 一番よくできたものばかりです。だからこそ ヨーロッパへ伝わってきても、元からヨーロッパにあった話よりもたちまち有名になってしまいました。” と。

 

もともとは、死刑宣告を受けたシャハラザードが、毎晩、シャハリヤール王に語り継いだお話。毎晩一遍ずつ語ったシャハラザードは、夜明け頃になるとお話のいい所でやめてしまう。続きを聞きたいシャハリヤール王は、話の続きのために、シャハラザードを殺すことはせず、そんな日々が千夜つづいた。。。そして、シャハラザードは結局許される。って話だって、『熱帯』にでてきた。

megureca.hatenablog.com

 

それぞれのお話は、誰がつくったのか、今ではよくわかっていない。とにかく500年以上前にできて、全部で264篇からなっている。

そんな中からの抜粋が、本書。シンドバッドの冒険って、そうか、アラビアン・ナイトの中の一つだったんだっけね。アラジンと魔法のランプだって。

 

もくじ
船乗りシンドバッドの1回目の航海
船乗りシンドバッドの2回目の航海
船乗りシンドバッドの3回目の航海
船乗りシンドバッドの4回目の航海
船乗りシンドバッドの5回目の航海
船乗りシンドバッドの6回目の航海
船乗りシンドバッドの7回目の航海
アラジンと魔法のランプ
ペルシア王と海の王女
ベーデル王とジャウワーラ姫

 

感想。
これは、お手軽すぎるかもしれないけれど、、、楽しいお話だ。
どのお話も、知っているようで知らないような。魔法のような、おとぎ話のような、、、でも大人でも夢中になっちゃうのがわからなくもない。

 

シンドバッドの始まりはこうだ。

”私は父からたくさんの財産を残してもらいましたが、 若い頃の無駄遣いで大抵使い果たしてしまいました。でも 私は自分の過ちに気がつきました。財産というものは、減りやすいもので、私 みたいな 金遣いの下手なものは、たちまち 無くしてしまうものだということもよくわかりました。 それから、 時間もまたこの世では一番尊いものなのに、 これまた だらしない生活でくだらなく過ごしてしまったことを知りました。 そんな風に色々反省してみると たまらなくなり・・・・・。”

 

そして、シンドバッドは、海上貿易の商人たちと一緒に、航海にでることにする。しかし、はじめての航海中、島と思って上陸したところがクジラの背中で、みんなびっくり!クジラが動いたとおもったら、順風がさっと吹き起こり、船長はあわてて船をだす。そして、シンドバッドは、うっかり、置いてけぼりで、一人海に取り残されてしまう。

運を天に任せて漂い、必死に泳ぎ、ほとほと疲れてもうだめだ、、、。と思ったとき、ドッときた波で、シンドバッドは思わぬ島に打ち上げられる。そして、その島に住む、ミハラジ王に助けられる。そして、そこで暮らすことに。王たちと仲良く過ごしていたある日、港に一隻の船が入ってくる。なんと、それは、シンドバッドを海に置いていった、シンドバッド初航海に乗った船だった。そして、船長や仲間との再会。船長は、シンドバッドの無事を喜び、シンドバッドの荷物も返してくれる。荷物からミハラジ王にお礼の品々をわたし、商船と共に家に帰るシンドバッド。島を去るシンドバッドに、ミハラジ王は、たくさんの返礼の品をくれた。そして、シンドバッドは、これまでの苦労を忘れて、バクダットですっかり落ち着いた生活をはじめたのでした。
ちゃん、ちゃん。

 

が、話は次につづく。
航海と難破で懲りたはずのシンドバッドは、再び船にのるのだ。。しかし、航海するたびに、難破して島に打ち上げられ、死にそうな目にあう。それでも、シンドバッドだけは、いつも助かって、結局は、バグダットに帰ってくる。
そんな話が、7回目の航海まで、続く・・・。

 

難破したり、助かったり、宝石を見つけたり、ヘビにおそわれたり、、。どれもこれも、おとぎ話だけれど、楽しい。鳥の脚に自分を括りつけて、飛び立つ鳥にくっついて無人島から脱出したり、どうせ人食い蛮人に食われるならと、いかだで進んだ真っ暗な洞窟の先は別の国だったり、、、。

 

人食い蛮人の島では、太っていて美味しそうな船長がまっさきに食べられちゃう。その描写は、シュールすぎてコミカルでもある。美味しそうでなかったシンドバッドは最後まで食われずにすむ。

 

タチの悪い海坊主に抱きつかれて捕まったときは、ぶどう酒を飲ませて、よっぱらわせて振り落とす。ぶどう酒は、たまたまひろったひょうたんに、ぶどうの汁を絞って入れて置いたら、ワインになっていた、って話。シンドバッドは、思いがけずにワインが出来上がって、悲しみも全部わすれちゃう。げんきんなやっちゃ。

 

どの島でも、宝石や宝物にであう幸運。そして、ちょっと臆病で、でも正直者のシンドバッドは、だれかに助けられるのだ。

 

出会った宝の中には、「竜涎香(りゅうぜんこう)」っていうのがでてきた。何かと思ってしらべたら、
竜涎香はマッコウクジラの腸内に発生する結石であり、芳香があるため香料に用いられることが多い。マッコウクジラから排泄された竜涎香は、水より比重が軽いため海面に浮き上がり、海岸まで流れ着くことがある。商業捕鯨が行われる以前はこのような偶然によってしか入手できない非常に貴重な天然香料であった。”だって。

 

へぇ、こんなところで、マッコウクジラとは。Moby-Dickのような巨大なクジラなら、巨大な竜涎香がとれるのかしら???

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ついでに、美しい女奴隷や白人奴隷もいただいたりしている。奴隷が貿易の商品であった時代なんだね。

 

アラジンと魔法のランプ」は、貧乏で怠け者だったアラジンが、王女様に一目ぼれし、ランプの魔人のおかげで、結婚できるというお話。ディズニーのアラジンもそういうお話だったのか??記憶にない。


「ペルシア王と海の王女」は、陸の王様と海の王女との物語。王様の元に仕えていた女奴隷は、実は海の王女、グルナーレだったのだ。海の国では、だれもが水で呼吸し、着物が濡れることもないのだという。海の国の言葉は、ダビデの子、大予言者ソロモン王の玉印に刻まれているものと同じ。女奴隷の正体がわかった王様は、グルナーレを妃にする。そして、べーデル王子が生まれる。グルナーレは、王様とベーデル王子をつれて、実家(海の国)にいる家族に会いに行く。海の国は、グルナーレの兄、サーレハ王の国だった。家族に挨拶して、今後ともよろしく、、、、と。


「ベーデル王とジャウワーラ姫」は、グルナーレとペルシア王の子、ベーデルが大きくなってからのお話。ペルシア王が、大きくなったベーデル王に譲位することを決心。ベーデル王が即位して1年、ペルシア王はおかくれになる。(ようするに、死んじゃった)そして、しばしの喪に服した後、色々すったもんだの末(話の中枢だけれど、だいぶはしょった)、海の王女・ジャウワーラ姫と結ばれるはなし。


最後の、2つの話は知らなかった。まぁ、シンドバッドも、アラジンも、聞いたことはあっても、しっかり内容はわかっていなかった。

 

まぁ、夢のあるお話で、楽しい。これは、岩波少年文庫だから、おとぎ話的に楽しいはなしにしているのだろう。千一夜物語といえば、もっと、おどろおどろしいところもあると聞く。やっぱり、いつかは、大人の千一夜物語を読んでみないといけないかな。

 

また、楽しみが増えた。 

 

読書は、楽しい。