『DXの思考法 日本経済復活への最強戦略』 by 西山圭太

DXの思考法
日本経済復活への最強戦略
西山圭太 著
冨山和彦 解説
文藝春秋
2021年4月10日 第1刷発行
2021年9月15日 第6刷発行

 

新聞の広告でみたのだったか、、、忘れてしまったのだが、DXが目について、図書館で借りて読んでみた。

 

著者の西山さんは、1963年、東京生まれ。経済共創基盤(IGPI)シニア・エグゼクティブ・フェロー。東京大学未来ビジョン研究センター客員教授。1985年、東京大学法学部を卒業。冨山和彦氏と共に産業再生機構、東電再建と電力システム改革にて、 増田寛也氏とともに地方再生 にて、松尾豊氏と共にAIにて協業。企業再生やデジタル関連で色々活躍されている方、ということらしい。

最初は、解説の冨山和彦さんと共著の予定で計画していたのが、冨山さんが解説を書くという形に落ち着いて、本書の出版となった。

 

表紙の裏には、
”「著者は時代の数歩先を行く天才だ」冨山和彦氏絶賛!

DXの要諦は、「抽象化」にある。そして世界は、「レイヤー構造」へ。

・抽象と具象を行き来する
・あなたも会社もデジタル空間の一部に
・「相対性理論」の感覚を実践する
・ タテからヨコへ、 ピラミッドからレイヤーへ
人工知能と人間の距離をどう埋めるか
・日本の中小企業が真似しやすいのはドイツ
・ アリババが自らをケーキに例える理由
・ ネットフリックスには、なぜ上司の決済がないか
・ 見たことのない「万能工場」の作り方
・自社の製品・システムから発想してはいけない
・読者のUXを研究していた夏目漱石
・各国が注目する インド 政府のデジタル化
・ 10億人に給付金とワクチンを届ける仕組み”
とある。

 

目次
第1章 デジタル時代の歩き方
第2章  抽象化の破壊力  上がってから下がる
第3章 レイヤーがコンピュータと人間の距離を縮める
第4章 デジタル化の白地図を描く
第5章  本屋にない本を探す
第6章 第4次産業革命とは「万能工場」をつくることだ
第7章 アーキテクチャーを武器にする
第8章 政府は サンドイッチのようになる
第9章 トランスフォーメーションの時代
あとがき
参考文献
解説 本書は、全てのビジネスパーソンへの応援的挑戦状 冨山和彦


感想。
まぁまぁ、面白かった。たしかに、DXだ!DXだ!と、バズワードになっているからといって、なにかしなくっちゃっていう経営者への応援的挑戦状って感じ。確かに、視点が高くて面白い。些末な末端の話ではなく、全体像についての話で、視野が広くなる感じが楽しい。

副題として、「日本経済復活への最強戦略」となっているが、つまるところ、日本高度成長期を支えたロジックではもうだめで、デジタル時代における変革には従来とはことなるロジックで物事をとらえる必要があるということ。そういう戦略でないと、また後手後手に終わってしまう。加速的に進化するデジタル時代には、それにあわせた戦略でないと、常に遅れを取ってしまい、負け組になってしまうということ。

 

第5章の「本屋にない本を探す」というのが、上手い表現で、自分が本を出すなら、既に本屋にある本をしっかり把握しないと、誰かの二番煎じになってしまうということ。本屋、つまり市場に今あるもの、市場が必要としているものを理解せずに、自分ができることだけで製品・サービスを提供してしまえば、一時売れたとしても、長い目で見れば世の中のトレンドから見向きもされなくなる、、、ということ。自分の得意分野だけでなく、デジタル時代には、異業種を含めた様々なプレーヤーといっしょにやっていく、という戦略が重要ということ。なるほど、わかっているようで、なかなか、実際には難しい。慣れ親しんだ業界より、もっと外の世界にも協業できるパートナーがたくさんいるはず。だけど、なかなかその一歩が、、、と思っている人には、まさに叱咤激励の一冊かもしれない。

 

気になったところを覚書。

・日本の顧客は、自社特有の業務の進め方に適合するようにITシステムをカスタマイズすることを好む。ベンダーはベンダーで、その方が顧客囲い込みができるので、そのリクエストに答えようとする。そして、長年にわたって、独自の特殊加工をつづけていくことで、何がどうなっているかわからない複雑怪奇なシステムになってしまう

これは、あるある!で、何かを変更しようと思っても、現行を理解するだけで、ものすごい手間暇がかかり、全交換したほうがいい!!となりがち。でも、これまでに独自改善を積み上げて構築してきたものを捨てきれず、、、、時間も、人も、無駄になる・・・。まさに、私もサラリーマン時代経験してきた。

カスタマイズの危うさ。それは日本の会社に特徴的な危うさということ。

 

・日本の高度成長期を支えたカイシャ、産業界のロジックは、タテ割りの行動様式。現在のグローバル経済、デジタル化時代のロジックとは合わなくなっている。そのことを理解したうえで「タテ割り打破」を捕らえないと、ただのヨコのつながり行動様式になってしまう。
会社同士が世界ネットワークで連携する新しい事態にどう対処するか、そのためのタテ割り打破が必要。

 

・世界の中で、自分たちが地図のどこかにポジショニングしていて、地図を描き替えようとしている、という意識がIX時代には大事。
IXとは、単なる会社のDXだけでなく、それぞれの会社が変革することで、産業全体として変革していくこと。IX=インダストリアル・トランスフォーメーション。

自分も世界の仕組みの一員として貢献する、っていう意識が大事。

 

・アルファ碁は、打ち手の超天文学的な計算をしてるのではなく、「こうやると勝てるっぽい」というマクロ的・質的なパターンを学習し、実現している。
計算がはやいのだと思っていたけど、そうではないらしい。それは、確かに機械学習だ。

 

夏目漱石は、イギリス留学後に 東京帝国大学で英文学を講義した講義の記録がある。『文学論』という。そこで、漱石は、文学を分析している。漱石の結論は、文学的内容には形式があり、(F+f)という形をとる。Fは認識の焦点(Forcus)、fは情緒的な要素(feeling)。漱石は、fの分類、Fの分類を行い、様々な英文学作品の該当箇所を引用して論じた。学生には、面白くなかったらしい、、、けれど、人の意識の構造をFとfで形にしようとするのが文学だといった。面白い!

 

ネットフリックスのDXについて。ネットフリックスは自由な会社のルール、つまりルールが無いルールが有名。そこでは、「規律や コントロールではなくコンテクストによって会社を引っ張る」というキーワードがある。だれもが会社のコンテクスト、白地図に描かれた自分たちのポジションを理解しているから、ルールがなくても会社経営が成り立つ。

 

・「本屋にあるものはそこで買え」。すでに市場にあるものを物まねして売る時代は終わった。また、市場にあるモノを自社で活かすことも必要。自前主義では、グローバル、デジタルの波には乗れない。カスタマイズにこだわることの愚かさ。

 

・DXに有利なのは、自社システムにこだわる大企業より、本棚から自由に好きなものを選べる中小企業かもしれない。市場にはすでにたくさんのアプリケーションがある。それをどう使いこなすか、ということは担当者だけでなく、社長が理解しなくてはいけない。本屋の本棚を見ない人は、経営できない、ってこと。

 

第四次産業革命は、製造業かどうかなど業種を問わないロジックで語るべきこと。世界をパターンの組み合わせで理解し、サイバー空間とフィジカルな間をタテにもヨコにもつなげることが強さにつながる。ダイセル網干工場の生産革新活動の話から派生した話題。生産革新では、工場内部で起こることをパターンとして表現してモニタリングする仕組みにしたことで、他のプロセス産業一般で使用可能なシステムを作り出すことに成功した。具体的なことから抽象的なことへと視点をあげ、パターン化することで一般適応の範囲を広げたベストプラクティス。

 

たしかに、このパターン化して対応するという視点は、視野が狭いと見逃しがち。横展開できることを想定して仕組み作りをするということは、パターンの組み合わせで仕組み作りをすることに他ならない。自分が世界の白地図にポジションを作ると考えれば、目の前の事象だけでなく、パターン化して考えることがとても重要だと思う。

 

・IX時代の歩き方
(正解)
 ・課題から考える
 ・ パターンを探る
 ・アジャイル にこなす
 ・抽象化する
(不正解)
 ・ 手元にある解決策から考える
 ・ 既存のカテゴリー・ルールを当てはめる
 ・要件定義をしっかり書く
 ・目の前の具体にとらわれ、 さらに細分化する

とてもわかりやすく、表にまとめられている。これが本書のまとめといってもいいくらい。

 

・IX世代に必要な発想を身に着けているかのテスト。次のことが出来ているか。
テスト1:課題から考える、解決策にこだわらない。
スト2:抽象化する、具体にとらわれない。
テスト3:パターンを探す、 ルールや分野にとらわれない。

たとえ、顧客が具体的なリクエストをだしてきたとしても、根本の課題は何なのかを考えることは、事象の抽象化、パターン化につながって、解決の可能性、適応範囲の拡大につながるはず。

 

うん、確かに面白い本だった。

大企業なら大企業の、中小やベンチャーならその規模なりの、気づきや学びがきっとあると思う。

 

自分が世界地図の中のどこかにポジショニングするなんて、ワクワクするではないか!世界地図でなくても、日本地図でも、自分の貢献が地図を書き換えるって思ったら、視野がぐっと広がる気がしないだろうか。

 

俯瞰して見る、抽象化してみる。やっぱり大事。

細谷さんの著書を読み直してみたくなった。

megureca.hatenablog.com