『津波 TSUNAMI!』  by キミコ・カジカワ、エド・ヤング、小泉八雲

津波 TSUNAMI!』
キミコ・カジカワ 再話
エド・ヤング 絵
小泉八雲 原作
グランまま社
 2011年10月28日 初版発行

 

世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第九章  災害に襲われ、乗り越える」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。

 

手にしてみて、びっくり。
小泉八雲原作?! だそうだ。小泉八雲ラフカディオ・ハーンの作品集『仏の畑の落穂』(1897年)に収められた英文の『A Living God(生神様)』をアメリカ在住のキミコ・カジカワが再話化した絵本とのこと。


かなり大判の絵本で、表紙は、まさに大きな大きな波が船、赤い鳥居、壁?岩?色々なものをのみ込んでいく。そして、真っ赤な文字で津波 TSUNAMI!とある。表紙をめくると、
縦に「 村びとをすくえ」の大きな文字。
裏表紙の袖にも、「高台へいそげ!」と、大きな文字。

 

絵は、コラージュでできている。貼り絵。

 

お話を書いたキミコ・カジカワさんは、 米国人の父と日本人の母の間に生まれる。両親、家族から多くの影響を受け、 特に日本の民話への関心が強く 児童向けの作品に評価が高い。 ペンシルバニア州にて家族と動物たちと暮らす。元高校図書館司書。

 

絵のエド・ヤングさんは、 中国 天津 生まれ、 上海、 香港で育つ。 イリノイ大学、 ロサンゼルス・アートセンター 大学、ニューヨーク・ プラット 研究所などで学ぶ。

 

力強い、貼り絵。物語もすごいけれど、それに負けない表現力の作品になっている。


”これは 海辺にある小さな村の出来事だ。
村と海を見渡す丘の上には、ひろい田畑を持った長老が住んでいた。
彼は村人からじじさまと呼ばれていた
じじさまは、村一番のとしよりで、たいそう 知恵 深かったので
村人は何かあるたびに おかを登って じじさまを訪ねた。”

 

そして、ある日のこと、豊作を祝う祭りの日、みんな山をおりて祭りにでかけた。でも、じじさまは「どうもようすがおかしい」といって、祭りに行こうとしなかった。

孫の忠(ただ)は、じじさまといっしょに丘に残って、祭りをみまもることにした。

 

すると、地震がおこる。
ゆっさ ゆっさ、ゆっさ ゆっさ、と。

 

大きく揺れはしたものの、家が壊れるような大きな地震ではなかった。
人びとは祭りを続けた。

地震は何度も経験している。でも、じじさまは、胸騒ぎを覚えた。じじさまは海に目をこらした。浜が広がっていくように見えた。

「みさきの岩がふえている。とんでもなく 潮がひいている」

じじさまはこおりついた。


これは、津波だ!!


村人は気がつかずに祭りを続けている。

「タダ、いそげ。火じゃ。松明をもってくるのじゃ!」

じじさまは、忠から松明をひったくると、収穫をまった黄金色の稲に火をはなった。
火は瞬く間に燃え広がり、大きな煙となって空にまいあがった。

 

「じじさま。どうして。どうしてこんなことするの?」
忠は叫んだ。

答えている暇はない。

 

じじさまは、海を振り返った。
潮は、陸から沖へと 走るようにひいていく。

「いそげ。おかじゃ。高台に にげるのじゃ」
じじさまは声の限り村に向かってさけんだ。
しかし、祭りでにぎわう村に、じじさまの声がとどくはずがなかった。

 

ようやく、神主様が稲村の火にきがつくと、やぐらにのぼって 鐘をたたいた。
かーん、かーん、かーん。

村人は、火を消そうと丘へのぼってくる。しかし、じじさまは、消しちゃいかんといい、
「高台へにげるのじゃ!」


村の衆が全員高台に移動したとき、海の底が抜けるような恐ろしい地響きと雷のようなとどろきが村人たちにぶつかってきた。

「つなみだ!!」

村人たちは、さらにやまをよじのぼった。

村人たちがやっとのことでうしろをふりかえると
村はきばをむいたつなみに、のみこまれていた。

 

つなみは、四回にわたって 村をのみこんだ。

 

つなみが過ぎ去った後には、 静かすぎるほどの海が戻った。
みなが、 言葉を失っていた。
何もかもがなくなっていた。
田畑も馬も家も神社も。
村は、なくなった。

 

じじさまの稲むらはすべてもえつきた。
でも、村人の命はすべて救われた。

 

村人たちは、じじさまの恩をわすれないようにした。
そして、神社をたて、じじさまの名をきざんだ。

「高台へ走れ」

いらい、村人の命をすくったじじさまの言葉と津波の恐ろしさは、
村人の間で、長く長く、語り継がれている。

おしまい。

 

1897年の小泉八雲のお話。1896年の明治三陸地震津波の後にかかれたのだろうか。

2011年3月11日の東日本大震災からも、すでに、13年以上。

こうして、絵本でも伝え続けるというのは、大事なこと。

 

日本は地震が起きる国だ。

それをわかって住んでいるんだから、みんなで災害対策を学び続けないといけない。

 

ふと、自宅の非常食を見直してみると、缶詰めのクラッカーたちは、期限切れ・・・。まぁ、、、腐んないよなぁ、、とおもいつつ、、、そのうち、買い直しておこう・・・。