『ダークパターン 人を欺くデザインの手口』  by ハリー・ブリヌル

『ダークパターン  人を欺くデザインの手口』
ハリー・ブリヌル
長谷川敦士 監訳
髙瀨みどり 訳

株式会社ビー・エヌ・エヌ

2024年5月15日 初版第一刷発行
Deceptive patterns: Exposing the Tricks Tech Companies Use to Control you(2023)

 

2024年7月13日 日経新聞の書評で紹介されていた本。記事には、

”「ダークパターン」の著者による定義は「ユーザーを騙(だま)して、たとえば、品物の購入時に保険に入らせたり、定期購入を契約させたりなど、特定の行動に誘導するため慎重に設計されたユーザーインターフェース」。割引終了が近いことを示唆するカウントダウン、在庫が少ないことのアピール……。多くの人が、インターネットでこうした広告を目にしているだろう。

ディセプティブ(人を欺く)パターン」とも呼ばれるこうした手法は欧米で急速に研究・規制が進んでおり、「応用心理学、デザイン、法律が交差する」重要なテーマとなっている。多くの訴訟に専門家証人として協力してきた著者が、具体例とともに歴史と現状をまとめたのが本書。AI(人工知能)が大量の広告を作るようになり、ダークパターンがさらに世に溢(あふ)れるのではないかというSFさながらの指摘もされている。

邦訳である本書では、日本の法規制に関して弁護士による解説もつく。日本に直接的・包括的な法規制はないが、景品表示法個人情報保護法など「ダークパターンを規制し得る法令」が存在しており、対処できるものはあると考えられるという。表現や営業の自由とともに、いかに消費者を守るのか。議論のきっかけになる一冊だ。長谷川敦士監訳、髙瀨みどり訳。(ビー・エヌ・エヌ・2860円)”

とあった。

興味をひかれたので、図書館で借りて読んでみた。


著者のハリー・ブリヌルは、 2010年から、 オンライン上でユーザーの弱みにつけ込むために用いられる マニキュラティブ(人を操る)な テクニックや ディセプティブ(人を欺く)なテクニックを研究し、 光を当てることに力を注いできた。 現在この研究分野において普及しているいくつかの用語を生み出した功績を持ち、 ウェブサイト「deceptive design」の創設者でもある。

 

目次
プロローグ
第1章 人を欺く デザインとは
第2章 人を搾取するための戦略
第3章 様々なディセプティブ パターンの種類
第4章 ディセプティブ パターンの弊害
第5章 ディセプティブ パターンを撲滅するために
第6章 未来への歩み
エピローグ
著者について
注記
日本語解説
ダークパターンが生まれる 構造と向き合い方   長谷川敦士
ダークパターンに関する日本の法規制の視点と同行   水野祐


感想。
へぇ、、、、確かに、たしかに、、、Webでよくあるある。
なるほど、こういやって、騙されていたのか、、、と。。。
面白かった。
ただ、webユーザーとして、騙されないように気を付けるため、というよりは、コンテンツ制作者として、ディセプティブ パターンを使わないように気を付けるべき人が読む本かもしれない。

 

翻訳書のタイトルにしている「ダークパターン」という言葉は、いまでは「 ディセプティブ パターン」とよばれている。が、本書では、従来から使われていたダークパターンとすることを、著者の了解の元、選択したとのこと。

プロローグでは、webコンテンツに関わる用語の説明もあるので、素人の私にもわかりやすい。また、章の構造、内容も必要に応じて箇条書き、図(Web 画面のスクリーンショット)等が掲載されていて、わかりやすい。

なかなか、興味深い一冊。

 

様々な ディフェクティブパターンによる搾取の様子がしめされているのだが、中には、あぁ!!それ、あるある!!というものもたくさん・・・・。

第2章に、どのような戦略種類があるのかが説明されている。

1  知覚的脆弱性を利用する戦略
2  理解力の脆弱性を利用する戦略
3 意思決定の脆弱性を利用する戦略
4  思い込みを利用する戦略
5  消耗させ プレッシャーを与える 戦略
6  強制・ブロッキング戦略
7  感情的脆弱性を利用する戦略
8  依存症を利用する戦略
9  説得力と心理的操作の線引き

 

そして、具体的な種類は、
1 こっそり型 (Sneaking)
2 緊急型  (Urgency)
3 誘導型  (Misdirection)
4 社会的証明型  (Social Proof)
5 希少性型  (Scarcity)
6 妨害型  (Obstruction)
7 強制型  (Forced action)

 

言われてみると、Amazonでしょっちゅう目にしているじゃないか!!というものが多い。

カウントダウンのタイマーを見せて、早く「ポチル」ように誘導する。
気が付いたら、Amazonプライムの年間契約になっている。
定価より高値になってるのに気が付かずにポチってしまう。
解約しようとしても、手続きがわかりにくい。
解約しようとすると、やたらと面倒くさい。

こうして、消費者は知らないうちに企業に延々とお金を払い続けることになっている・・・。

こうしたやり方が消費者から奪うのは、金銭的なことだけではない。時間、プライバシー、精神的被害、思考の自由、、、、

たしかに、「おすすめ商品」をだしてくれるアルゴリズムはすごいけれど、自ら選択するという思考を奪われているかもしれない。。。

本書によれば、ヨーロッパ、アメリカでのこれらの搾取的活動に対する規制も始まっている。ただ、著者が2010年頃から警笛を鳴らしているにもかかわらず、 ディセプティブ パターンは蔓延しており、規制、教育、倫理といった対策はなかなか実を結んでいないようだ。

 

最後に、日本での取り組みに関して、監訳者と解説者からの説明がある。日本も、取り組みが無いわけではないようだ。

 

しかし、、、あからさまに小さな文字や、見えにくい色で、重要説明事項をわからないようにしてあるとか、一度契約するとキャンセルできない(と誰も読まないような小さな字で書いてある)とか、、、酷いことをする企業があるものだ、、と思う。

 

ただ、著者が言っているのは、プロダクトオーナー(Webの責任者)と、実際にWebをデザインする人が異なるので、気が付かないうちに、自社の利益の為と思って、「人を欺く」ようなデザインを知らず知らずに選んでしまっている場合があるから注意せよ!ということ。

だから、「説得力」で商品をアピールし、「心理的操作」で商品を買わせようとしないように、気を付けることが大事だという。

 

今では、毎日のように使っているWebコンテンツ。Web App。登録するときにも気を付けないと、個人データが全部企業に流れることもある。
けど、あの、細かな契約確認事項、、、全部読んでいる人は世の中にどれだけいるもんだか…。
みんな、性善説で、信じてポチっているよなぁ、、、と思う。

 

本書に出てきた事例では、大手の企業が訴えられたケースもでてきた。とはいえ、明確なルールがなければ、罰せられることはない。。。

 

時間が無いとか、余裕がないと、ゆっくり考える時間が奪われ、こういった企業の作戦に、まんまとひっかかってしまうリスクが高まるという。

余裕って、大事だね。

さらーーっと読んだだけだけど、なかなか、面白かった。
次に、何かをWebで契約するときには、よくよく気を付けよう・・・。


そういえば、一度開始したサブスクで、使っていないけど解約するのも面倒でほおってあるものって、いくつもある気がする・・・。う~~ん。
時々は、見直さないとね。 

 

知らないうちに自動更新って、、、ほんと、あるある。。。。

 

普段あまり気にすることのないテーマだけれど、こうして読んでみると身近な話。

ちょっとでも気になったら、読んでみるって、大事だな。