ブッダ【第6巻】スジャータ
手塚治虫
潮ビジュアル文庫
1993年2月10日 第1刷
2014年1月1日 第56刷
第5巻の続き。
目次
第三部
第7章 懲罰
第8章 アッサジの死
第9章 スジャータ
第10章 ルリ王子
第11章 ヤタラの物語
主な登場人物
・シッダルタ:シャカ族の王子。ブッダ。
・タッタ:山賊。バリア(人間以下とされた最低身分階級)出身。子供の時にシッダルタと出会っている。
・ミゲーラ:タッタの妻。昔はシッダルタが好きだった。
・デーパ:苦行僧
・スジャータ:シッダルタに恋した村長の娘
・バセーナディ王:コーサラ国王。カピラヴァストゥのシャカ族を破滅させる。
・ルリ王:バセーナディ王の子。ビドーダバ王子。母はシャカ族の元奴隷。
・ヤタラ:シッダルタが初めて教えを説いた巨人。
シッダルタは、ウルベーラの森で修行を続けている。ときどき修行を抜け出して、一年かけてミゲーラの身体をなおしてやる。それを、修行をさぼっていると怪しんだデーパは、シッダルタの後をつけ、ミゲーラの身体をなめて治してやっていたことをしると、シッダルタを責めるだけでなく、バリア出身のタッタが一緒にいることが気に喰わない。森から出ていけという。
デーパは、シッダルタを砂に首までうめて、放置する。苦行だという。死ぬことが最高の苦行だと信じるデーパは、シッダルタを半死にしてしまう。シッダルタは死の淵にあっても、やはり、苦行の修行は間違っていると考える。
シッダルタが今にも死にそうになったとき、夜の闇にまぎれてアッサジがシッダルタを掘り起こし、水辺につれていき助けてくれる。アッサジに感謝しつつ、断食なんてするものではないと思うシッダルタ。死を恐れないというアッサジに、動物は毎日死を恐れて生きているわけではないと教えられる。
ウルベーラの森での修業は6年目を迎えた。苦行僧の多くは死んでいった。シッダルタはタッタやミゲーラを救ったことで制裁を受けたことに反発し、苦行をやめて、アッサジと二人きりの修行を続けた。
が、アッサジは、自らの運命を受け入れ、最後は自分の身を獣に食わせて死んでしまう。その前、スジャータは、アッサジから一日だけシッダルタのそばに仕えるのぞみがかなうだろうと、告げられる。
アッサジの壮絶な死を目の当たりにしたシッダルタは、一人で苦行にちかい修行を続ける。苦行林の修行僧たちが一緒に戻ろうといっても一人さまようシッダルタは、苦行林で長老同士の対立が激化していることをデーパから聞く。苦行の無意味さをさとり、川で身を清めていると、スジャータがやってきてシッダルタに牛乳粥をご馳走してくれる。小さかったスジャータは、16歳の娘になってシッダルタに恋していた。苦行をやめるというシッダルタに、結婚してほしいとせまるスジャータだったが、シッダルタに振られてしまう。失恋のショックで森に駆け込んだスジャータは、コブラに噛まれて危篤に。スジャータの父(村長)は、シッダルタに助けを求める。シッダルタは、スジャータの元に走り、魂の中をさまよう。さまよっている間に、また、いつもの不思議な仙人にであい、命と宇宙の話をきかされる。彼は、「ブラフマン(梵天)」だと名乗り、それがシッダルタの悟りのきっかけとなる。
ブラフマンとの出会いで、全ての命の尊さを悟ったシッダルタは一人静かに木の下で瞑想をしていた。そこにデーパがやってきて、「カピラヴァストゥは滅んだ」と聞かされる。シャカ族は、コーサラ国王バセーナディのまえに引き渡されたという。かつて、シャカ族がバセーナディ王に差し出した妃が貴族の血ではなく侍女だったことがばれて、激怒したのだった。二人の間に生まれたビドーダバ王子(ルリ王)は、カピラヴァストゥの学校に通っていたが、学友たちに嫌われる乱暴もので、学友たちから「おまえの母は奴隷だった」と聞かされてしまう。それを知ったバセーナディ王は怒り、ルリ王子は母を奴隷用の部屋に閉じ込めてしまう。そして、カピラヴァストゥの城は、コーサラ軍にふみにじられて落城。
シッダルタは、父と母の危機を思い、ヤショダラの救いの声を胸の中で聞くが、今の修行の径から逃れるわけにはいかないと苦しむ。
「第11章 ヤタラの物語」は、シッダルタの話を離れて、人への憎しみから巨人になってしまったヤタラの話。奴隷の身分で生まれたヤタラは、子供の時に両親が目の前で主人に殺される。両親を殺された恨みで、巨人のように大きくなり、人びとを襲う。ある時ルリ王を人質にとって人びとと戦うが、ルリ王から「自分も奴隷の血が入っている」と聞かされ、ルリ王の部下として雇ってもらい、コーサラ国の近衛兵となった。が、ルリ王が母親を奴隷扱いしていることを責めると、ヤタラも奴隷扱いされてしまう。奴隷部屋でルリ王の母と出会ったヤタラは、亡くなった母の面影をルリ王の母にみて、大事にするようになる。城を逃れた二人だったが、奴隷部屋で流行った疫病がもとで、母は死んでしまう。悲しみにくれるヤタラ。
悲しみに沈んでいたヤタラは、木の下で瞑想していたシッダルタに出会う。そして、これまでの不幸を語り「俺は世の中でいちばん不幸な人間だ」という。すると、シッダルタに、不幸なのはルリ王や、死んでしまった母も同じだといわれる。そして、ヤタラが
「みんな不幸なら、なんで人間はこの世にあるんだ?」と聞くと、シッダルタは、
「 木や草や 山や川がそこにあるように、人間もこの自然の中にあるからにはちゃんと意味があって生きているのだ。 あらゆるものと繋がりを持って そのつながりの中でお前は大事な役目をしているのだよ。
その川を見なさい。
川は偉大だ。 自然の流れのままに任せて何万年もずっと流れている。 流れをはやめようという欲もなければ、流れを変える力も出さない。 全ての自然のままなのだ。
しかも 大きく 美しい。 喜ばれ そして 恵みを与えている。
お前も 巨人だ。お前の行き方次第で川のように偉大にもなれるだろうよ。」
といった。
ヤタラは、自分にも生きる価値があるといわれたことに感動し、シッダルタに名前を尋ね、弟子にしてくれという。が、シッダルタはまだ修行中で弟子は取れない。おまえと同じように苦しんでいる最中なんだ、といった。
ヤルタは、「シッダルタ、おまえ おれ生きるのぞみ おしえてくれた。ありがとう」
といって、去っていく。
ヤルタが去った後、シッダルタは自分の言葉でヤルタが生きる希望を持ち、かつ、自分をたたえてくれたことに気がつき衝撃を受ける。私が、人にものを教えた?!
それこそが、シッダルタの悟りの瞬間だった。
「私があの男にしゃべったことばは、私が自分自身に教えたんだ。おお!私の心の扉が、今開いた!光よ!!
私は命のかぎり果たします。
この宇宙の中の私の役目を!」
ブラフマンが現れ、むかしの予言の通りシッダルタはピッパラの樹の下で悟りを開き、その悟りを死ぬまで人びとに伝え続けるという。
どうやって人に教えればいいのか?わからないというシッダルタに、ブラフマンは額に聖なるしるしを授ける。
「シッダルタ、あなたは今日からブッダ(目覚めた人)と名のりなされ。さらばじゃブッダ」
シッダルタはまた一人になった。
7巻に続く。
