宇宙英雄ローダン・シリーズ〈1〉 大宇宙を継ぐ者
シェール&ダールトン
松谷健二 訳
早川書房
昭和46年7月31日 発行
昭和60年7月31日 24刷
佐藤優、片山杜秀著『生き延びるための昭和100年史』の中で「昭和100年の知的遺産」のうち、ノーベル生理学・医学賞受賞者である中山伸弥先生が科学を専攻するきっかけになった本として紹介されていた。
かつ、『大人も読みたいこどもの本 200」(BRUTUS Casa 2025年8月)』でも、「あの人がこどもの頃に読んだ本。」のシリーズで、
” 映画『スター・ウォーズ』のルーツの1つでもある世界最長のスペースオペラ小説シリーズ。1961年西ドイツで刊行以降、現在も刊行が続く。少年時代に出会った胸踊るサイエンスフィクションの世界は、医学研究者である山中伸弥さんの原点”
と紹介されていた。
現在も続く最長シリーズということだけれど、とりあえず、第一巻を図書館で借りてみた。
かなり年季の入った、昭和の文庫本。裏には、「定価380円」とある。消費税導入前だ!すごいアンティーク…。
最後に、訳者の解説が載っている。
” 10年以上も前の1961年、 西ドイツのSFで1つの大胆な計画がスタートした。ペリー・ローダンというアメリカ人を主人公とした大スペースオペラをドイツ現代SF 作家を総動員 (厳密に言えば、総ではないが)した メドレー方式で創造しようというのである。それも週刊で。”
というわけで、作者が変わりながら、リレー方式で物語が展開したっていうことらしい。今も続いているの??
ネットで調べてみたら、
”『宇宙英雄ペリー・ローダン』シリーズの日本での最新刊は、早川書房より電子書籍および文庫で継続的にリリースされています。2024年末時点で通巻700巻を超え、現在も月2回ペースの刊行で最新エピソードが配信されています。特にリブート版である『ローダンNEO』シリーズも展開中です。”
とのこと。
へぇぇ。すごい。知らなかった。SFは嫌いじゃないけど、『スター・ウォーズ』も実はあまりよく知らない私は、本シリーズの存在も知らなかった。なかなか、面白い創作方法。初期の作家は、まさかこんな展開になるとは???という感じなのだろうか。
とにかく、その第一巻を読んでみた。
ページを開くと、表紙カバーの袖に、登場人物紹介がある。これは、なかなかありがたい。それと、カラーのイラストページも。
中表紙に、内容紹介があった。
” 人類初の有人宇宙船スターダストに乗り込んだ ペリー・ローダン少佐をはじめとする4人の合衆国宇宙軍将校は、着陸直前、突如襲ってきた超強力な妨害電波に地球からの誘導パルスを断たれ、かろうじて月面に不時着する。彼らはそこで人知を超えた途方もない規模を持つ異星の球体宇宙船を発見。この瞬間に地球人類の未来は決まったのだった。全ヨーロッパ 2億のSF ファンを熱狂させた ドイツ・スペース・オペラ、 待望の本邦初登場。”
ドイツの初版が1961年で、日本語初版は1971年。10年遅れで日本でも発表された。アメリカのアポロ11号がニール・アームストロング船長とバズ・オルドリン月着陸船操縦士を乗せて人類史上初の月面着陸に成功したのは、1969年7月20日。つまりは、それよりずっと前にSFとして月面着陸から始まる本シリーズがはじまったということ。
そういう中でのお話かと思うと、すごい創造性。
目次
スターダスト計画
《第三勢力》
訳者あとがき
感想。
へぇ。おもしろい。
今読むと、まだまだアナログ時代の物語だな、という気はするけれど、映画『未知との遭遇』(1978)とか、『E.T.』(1982)のティーブン・スピルバーグ監督は、本シリーズに触発されたのではなかろうか??と思ってしまう。
物語の主人公は、ペリー・ローダン少佐。宇宙船スターダスト号の指揮官。最初の登場人物紹介では、「大宇宙の後継者」となっている。つまり、この先、大宇宙という社会が出来上がっていくのだろうか。
ざっくりストーリーを紹介すると(ネタバレあり)、月にむかっていたスターダスト号は、何ものかに妨害されながらも、月面着陸する。そして、月面を探検中に巨大な宇宙船を発見。月面着陸を妨害したのは、アメリカの宇宙開発ライバルのアジア連合の仕業かと思っていたローダンたちは、敵は地球人ではないことを知る。宇宙船にいたのは、アルコン人という人々で、姿見た目は人間と同様だが、地球よりずっと早くから発展し、すさまじい科学技術を持っている。が、人としてはすでに退化しつつあり、大成長をとげたあと、やる気をうしなって「ゲームにうつつを抜かす」スノッブが増えていた。
異星人であるクレストがいうには、純粋精神の次元では、新帝国建設の大計画をいだいているが、自己満足に陥ってしまい、今では実行に移すエネルギーがなく、「われわれは力と意思をうしなってしまった。」そして、地球の存在は、「宇宙の辺境に位置している」けれども、数千年まえにはその存在をしっていた、と。
ローダンたちは、異星の知性は太陽系第三惑星だけを問題とするのであって、国家など相手にはしないという話を聞く。そして、国家間での争いが絶えない地球の平和のために、アルコン人の力を借りることを決意し、クレストというアルコン人の宇宙調査隊学術部長を地球に連れてかえる。クレストは、ローダンたちが出会ったときに体調がすぐれず、それをローダンと共に月におりたったマノリ教授に「白血病」と診断され、地球で治療を受けさせることとの引き換えだった。
ローダンたちは、無事に地球に向かうが、アメリカがクレストたちアルコン人の持つ科学技術を独り占めして地球を戦争へと向かわせることを阻止するために、アメリカではなく、第三国へ着陸する。それは、モンゴルの砂漠地帯だった。
シベリア指令団、アジア連合、アメリカ軍、さまざまな欲望が飛び交う中、各国同士の核戦争を避けるべきだと考えるローダンは、「第三国」として地球統一を目指し始める。
アメリカから国賊とされたローダンだが、、、、今後の活躍にこうご期待!
という感じで、一巻は終わる。
でてくる超絶科学技術が面白い。重力を無くしてしまうとか、バリアをはってミサイルを防御するとか、精神干渉装置で相手意思を思いのままに操るとか。ついでに、無限発電機まで。ドラえもんのポケットから出て来そうな武器がいっぱい。そして、地球より進んだ星だったはずのアルコン人が退廃している姿というのもシニカル。活躍するアルコン人の一人は美しい女性。やっぱり、いかなる英雄物語も、ヒーローだけでなく、美人がでてこないとね。
続きを全部読んでみよう、という気にまではならなかったけど、それなりに面白いシリーズだということが分かった。今の時代のサイエンスを背景にしたら、どんな展開になっているのか、あいだを飛ばして最新号を読んでみてもおもしろいかも。量子をつかった武器とか出て来そう・・・。
やっぱり、SFは、推理小説より知的エンターテイメントかもしれない。1970年代に読んだら、もっとすごい興奮があっただろうな、と思う。
