「なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか」
枝廣淳子・小田理一郎
2007年3月29日
東洋経済新聞社
図書館の棚で目に入ったので借りてみた。
タイトルにはなっていないけれども「システム思考のススメ」みたいな本。
私がシステム思考に最初に触れたのは、 ドネラ・H・メドウズさんの「世界はシステムで動く」(2015年1月 英治出版)。訳者が枝廣さんだった。昔の読書メモをみると、なんで借りたかわすれた、と書いているのだが、たくさんメモを書き残している。とても良い本だと思った。
その時に、世のなかで起きていることのダイナミクスを、「インフロー → ストック → アウトフロー」、という実にシンプルに表現されていることに、目からうろこ、だった。すべては、挙動と構造。その時に、一生フローを作って生きていこう、と思った。構造にしがみつかない。挙動を起こす。
本書では、思考するために、「ループ図」を書いてみよう、ということが推奨されている。
ループというのは、それぞれの関係が→でつながって、輪になっている構造。
文字で説明するのはいささか困難なのだが、説明すると、
まず、社会と自分という2つのループがあるとする。
自分は、自己強化型ループ。
社会は、バランス型ループ。
例えば、会社の中でプロジェクトを起点にした、自分と会社のループ。
自分のループは、
「関わるプロジェクトの数 → 成果 → 満足感 → やりたい気持ち → 関わるプロジェクトの数」 と、自己成長のよい循環がまわる。
会社のループは、
「関わるプロジェクトの数 → (逆)プロジェクト当たりにかける時間 → 仕事の質 → 客からの仕事の依頼数 → かかわるプロジェクトの数」 と、数が増えすぎると時間が足りなくなって、仕事の質が下がれば、依頼の数は下がりかねない。
「関わるプロジェクトの数」を真ん中にして、自己ループを左側に、会社ループを右側にそれぞれおくと、2つのループが関係しあうことが表せる。
世の中、うまく回っていたものが停滞したり、成長が鈍化する時には、このような二つのループのうち、バランス型(ここでは会社)のループがブレーキになっていることが多い、という。
また、矢印で示していても、そこには時間的ずれが大きい場合もある。仕事の質の変化が、仕事の依頼数の変化に影響するまでには時間がかかる、ということ。
つまり、仕事の質が変化して、依頼数が減るというブレーキがかかれば、自分はどんどんプロジェクトをやりたいのに、プロジェクトの数が増えないということが時間差で起きてくる。その時に、ただがむしゃらに自分の頑張りだけでなんとかしようとしても、矢印はまわらない。
バランス型ループにブレーキ要因があるときに、自己強化ループだけ回そうとしても、どんどん悪循環に陥ってしまう、ということ。
なので、システム思考。
全体の中でループがどのように回っているのかを考えよう、ということ。
全体の中でループの関係性を見ずに、近視眼的に目の前の問題に飛びつくのは、一番やってはいけないこと。
「急がば回れ」
Haste makes waste.
More haste less speed.
近視眼的にならないために、物事は全体をとらえる。
全体というのは、目の前に見えているものだけではない。
そこで、物事の「氷山モデル」が示されている。
海の上に見えているのは
「出来事」
その下に時
「系列パターン」
「構造」
「意識・無意識の前提」
が隠れている。
目の前の、「出来事」だけを見ていては、問題は解決できない。
浮き沈みを繰り返しながら右肩上がりや右肩下がりの「系列パターン」がある。
そこには関係する様々な要因が「構造」をなしている。
そして、その関係性を「意識・無意識の前提」によるブレインロックで凝り固まって認識している。
一番深層にあるのは意識あるいは無意識の前提。無意識の前提を問い直し、視野を広げないと思考の境界を乗り越えることはできないという。
そして、このような氷山モデルをループ図を書いて考えてみよう、ということ。
ループ図を書く時、システム思考をするときに大切な7か条が紹介されている。
1.人を責めない
2.出来事ではなくパターンを見る
3.「このままパターン」と「目指すパターン」のギャップを見る
4.パターンを引き起こしている構造ループを見る
5.目の前だけでなく全体像とつながりを見る
6.働きかけるポイントを幾つも考える
7.システムの力を利用する
一定のこだわりを捨てて大局から目的を見る。
目の前の課題に飛びついて、対応していることで、問題を解決しているような気になるのが一番危ない。
そして、最も重要なのは、やはり、「何を達成したいのか」ということ。
ダイエットは、目的ではない。
健康的な体が、手に入れたいものだろう。
ダイエットはそのための一つの手段。
英語の勉強は、目的ではない。
英語を通じて、世界を広げることで自分の世界を広げ、自分が貢献できる世界を広げることが、目的。
英語が話せても、使わなければ意味がない。
そう、解決策がうまくいっている人は、何を解決したいのかを知っている人。
大きな課題ほど、成果は、ずっと後になってでることがあることを覚えておこう。
やはり、あなどれない、こつこつ。
継続は力なり。
でも、その方向性を間違えないこと。
べただけど、自分のやり遂げたいことを壁に書いて貼っておくのは、近視眼的になりがちな行動を思いとどめるのに効果的。
と思って、自宅の壁をみると、
今年、2021年中にやり遂げたいことしか貼ってなかった。
もう少し、長期視点での目標を書き直してみよう。。。
読書はインプット。
行動はアウトプット。
インプットをアウトプットにつなげることで、初めてフローが生まれる。
フローで生きていこう。