『サロメ』 by オスカー・ワイルド

サロメ
オスカー・ワイルド
平野啓一郎 訳
光文社古典新訳文庫
2012年4月20日 初版第一刷発行

 

先日、本家本元 こちらのオスカー・ワイルド 作 『サロメ』を知らずして、原田マハさんの『サロメを読んだので、改めてオスカーの『サロメ』を読み直してみることにした。

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図書館に、光文社古典新訳文庫があったので、迷わず、選択。やはり、新訳はわかりやすい。

本書は、薄い単行本。戯曲の台本のように書かれていて、本文は81ページと短い。それに、注、訳者あとがき(平野啓一郎)、解説(田中裕介)、書誌(底本、参考文献など)、サロメ』によせて(宮本亜門と、半分以上が作品にまつわるエトセトラ。

物語はもう知っているつもりだったので、『サロメ』にまつわる様々な逸話のような方が面白かった。それでも、原作としての『サロメ』を読むと、いかに狂気的であり、いかに無知というのか純真というのか、、、幼い思い込みの恐ろしさのようなものが、ひしひしと伝わってきて、面白かった。

物語の解釈にも、色々とあるようだ。


主な登場人物は、
ヘロデ王ユダヤの4分封領王。兄の妻だったヘロディアを妻にしている。
カナーン:予言者。ヘロデ王とヘロディアの結婚を非難し、牢獄に入れられている。
ナーマン:首切り役人。王の命令があれば誰の首でも斬る。
ロディア:ヘロデの妻。
サロメ:ヘロディアの娘。(ヘロデの娘ではない)

 

舞台は、サロメが自分のお誕生日のお祝いがつまらないといって、抜け出してヨカナーンが繋がれている牢屋のあたりに遊びに来るところから始まる。衛兵たちは、サロメの美しさをひそひそと称え合っている。そこに、サロメがやってきて、ヨカナーンに興味を持ち、牢屋から連れ出してくれと若い衛兵たちにいいよる。
私の為なら、なんでもしてくれるでしょ」といって。
衛兵たちは、王に固く禁じられているのでもちろんサロメのいうことなど聞けない。でも、サロメに「私のいうことならなんでもしてくれるわよね」と言い寄られた若いシリア人は、何度も拒みながらも「予言者を連れてこい」といって、サロメの願いをかなえてやる。
サロメは、ヨカナーンを見つめる。その声の美しさにも魅了される。しかし、ヨカナーンは、サロメをなじる。ヨカナーンに「おまえが愛おしい」というサロメ。「下がれ、バビロンの娘」とサロメを責めるヨカナーン
「おまえの口唇にキスするの、ヨカナーン」といって、サロメがヨカナーンに近寄ろうとした時、若いシリア人は二人の間に入って、自らを刺す。
若いシリア人の自死。血にまみれる舞台。

お誕生日のお祝いの舞台に戻ったサロメは、ヘロデに踊るようにと言われる。ヘロデを好ましく思っていないサロメは、ヘロデが何をいっても知らん顔。ヘロデは、「踊ればなんでも願いをかなえてやる」という。そして、サロメはなんでも願いをかなえてくれるという条件で、七つヴェールの踊りを舞う。裸足で、そして裸に近いほどにエロチックに。
踊り終わって、サロメがヘロデへ要求した願いは、「ヨカナーンの首」。ヘロデは、それはならん、といって、他に誰も見たことのないような美しい宝石、土地、なんでもあるから他を選べという。なにをいっても、「ヨカナーンの首をちょうだい」としか言わないサロメ

そして、ヘロデは、ナーマンに命じて、とうとう、ヨカナーンの首を狩り、銀の皿にのせてサロメに与える。

サロメの長いセリフ。ナーマンがヨカナーンを切っているであろう物音、運ばれてくるヨカナーンの生首。もう、目をあけることのないヨカナーン。そして、、、生首に口づけするサロメ

それをみたヘロデは、サロメの狂気の沙汰に怒りと怖れを抱く。”あの女を殺せ”とナーマンに命じる。兵たちは、サロメに突進する。

ー幕ー

 

なんて、おどろおどろしい話だ。。。

 

サロメ』を巡っては、三島由紀夫が執着していたことが紹介されている。宮本亜門さんの解釈では、三島由紀夫サロメに触発されて、金閣寺を書いたのにちがいないだろう、と。
金閣寺』の主人公、溝口は最後に金閣寺に火をつける。それは、”特殊な環境の中で育ち、ある意味の純真無垢で実直な考えをもちながら思春期を迎えた二人が、物語のなかでとてつもなく大きな変化をし、サロメはヨカナーンの首を斬らせ、溝口は金閣を焼きます。世間から見ると許されない犯罪行為が、彼らにとっては気づきと達成、成長を意味している。”と。

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おもしろいなぁ、、、、、、そういう解釈か。

小説の解釈は人それぞれだけれど、そういう風に読む人もいるのだ。
これも "connecting the dots"の一つだろう。

そういわれると、溝口とサロメとの共通点がたくさんあるように思えてくる。無邪気に「ヨカナーンの生首にキス」するサロメ。狂気なのか、無垢なのか。金閣寺に火をつける溝口の狂気。

 

やっぱり、原作を読むって大事だな。

古典は新訳がわかりやすくていい。

光文社古典新訳文庫って、やっぱり、画期的だ。

 

古典読書も楽しい。