デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門
長尾一洋
KADOKAWA
2022年10月20日 初版発行
新聞の広告で、この著者のセミナーが紹介されていた。今私は仕事として、DX関係に関わることもあるので、自分の勉強のために興味を持った。とは言っても、セミナーに参加する気は無いので、講師の本を読んでみることにした。どんなことを書いたらDXの本として売れるんかいな?と。2022年の本だけれども、図書館ですぐに借りられた。特に、ベストセラーって感じではなさそうだ・・・・。
表紙の裏には、
”業務プロセス効率化から、営業モデルの確立、組織改革まで、、、、
中小企業の経営者、リーダーが、知っておくべき、
デジタル活用のすべて!”
とある。
いわゆるマニュアル本のような感じ。。。。う~~ん、手に取ってパラパラめくった瞬間に、これは、、、、読まなくてもいいかな???なんて・・・・思った。。。。けど、まぁ、さらっと読み。
著者の長尾さんは、株式会社NIコンサルティング代表取締役。自社開発のITツール「可視化経営システム」は9000社を超える企業に導入され、営業力強化や業務改革をローコストで実現しているとの事。著書もあるようで、それなりになの知れた人なのかもしれない。私は全く知らなかった。そのツールの営業のための著書ってことか?まぁ、それは小さい法人としては当然の経営戦略。営業に使える本を書く。。。
目次
はじめに
序章 DXとは何か?
第1章 中小企業のDX戦略①
デジタル人材を代替するノーコーダーの獲得
第2章 中小企業のDX戦略②
業務プロセスの効率化とスピードアップ
第3章 中小企業のDX戦略③
会わずに売れる営業モデルの確立
第4章 中小企業のDX戦略④
顧客とのつながりを強化し、リピーターを獲得
第5章 中小企業のDX連絡⑤
テレワークの普及率を高め、会社の枠を取り払う
第6章 中小企業のDX戦略⑥
AI導入で働き手不足を解消する
第7章 中小企業のDX戦略⑦
フィードフォワードでビジネスモデルを変革
第8章 中小企業のDX戦略⑧
「人」の力を最大化する”省”人数経営
感想。
うーん。なんとも言えない。
ものすごく細かなメッシュの話と、随分とざっくりした話が入り混じる。全体に、中小企業の経営者をターゲットにしているのだけれど、やっぱりそのターゲットの幅が広すぎるのだと思う。中小企業といっても、製造業からサービス業、ビジネスの形態は様々だ。小売業とか、製造業とか、もうちょっとターゲットが絞られている方が、読みやすいかなぁ。という気がした。でも、それは、中小企業を顧客と想定したビジネスを考えるときに、どのような会社でも陥りがちなところなのではないかと思う。事実、私の会社も、なかなかうまく営業ができないのは、ターゲットがイマイチぼんやりなのだ・・・。
そんな反省につながった一冊だった。あんまり、DXとは関係ないけど。
だから、部分を捉えれば、それなりに活用できそうな情報も入っている。自分で、自分たちに適用可能な情報を選び取ることができる読者であれば、活用できるのかもしれない。DXをどうしよう、と思っている人が読んでも、ちょっと、???が並ぶかも。。。
そもそも、DX「デジタルトランスフォーメーション」とは?
本書の序章における説明によれば、
”もともとDXと言う概念は、2004年に当時スウェーデンのウメオ大学の教授であったエリック・ストルターマンが発表した論文の中で提唱したものです。その論文では、人々の生活のあらゆる側面にデジタル技術が引き起こしたり影響を与えたりする変化の事とDXを定義しています。
なるほど。また経済産業省が2018年に発表した「DX推進ガイドライン」の中で示したDXの定義は、
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応して、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービスビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織プロセス、企業、文化、風土を変革し、競争力の優位性を確立すること”
とある、と。
また、経産省の文章のわかりにくさといったら、、、。骨子だけに略すると、
「企業が、データとデジタル技術を活用して、競争力の優位性を確保すること。」
こういうシンプルな文書にできないかな、、、、。
役所の作る文章は、いつでも通訳泣かせ、、、。修飾の言葉が多すぎる。。。
8つの戦略は、目次のタイトルそのままなので目次だけ読んでおけばいい。具体的な中身は、知りたい項目だけ読めばいい、。
ちょっと共感したのは、”中小企業は、デジタル人材を雇う事は難しいし、雇っても育った頃には大企業に引き抜かれてしまう。デジタル人材を確保するということよりは、その企業変革したいと言う意思を持った人間をDXプロジェクトに投入するべき”という話。
考えてみれば当たり前のことだけど、デジタルと言うのはあくまでもツールでしかない。確かに、デジタルは、初期投入コストはかかるけれど、その後は拡張性が強い武器になる。でも、そのツールを使って何をしたいか、それをやりとげたいと言う意思を持っているか、そのことの方がよほど重要なのである。
そして、プログラミング専門家でない人でも使えるデジタル技術として、ノーコードツールを使えば良いと言う。
ノーコードツールとは、ノンプログラミング、つまりプログラムを書かずにシステムを作ったり、変更したりするできるシステムのこと。それができるツールをノーコードツールと呼ぶ。プログラミング言語などの習得が不要で、要するに、、みんなが使いやすいアプリを導入するということ。
まぁ、著者の会社がそういうアプリやソフトを売っているのだから、そりゃそう書くよね・・・。
そして、そのアプリを従業員全員が自分で入力して使いこなす。わかりやすい事例で言えば、経費使用記録を事務の担当が入力するのではなく、アプリを使って、従業員全員が自分で入力すると言う事。
これは、確かに、アプリさえあれば、誰でもできる。私がかつて働いていた会社でも、領収書の電子化保存が認められるようになって、即座に導入された。
ただし、そこで重要なのは、すべての従業員に個人識別ができるIDを付与すると言う事。大企業においては、社員番号のように個人のIDがあると言うのは当たり前だけれど、中小だと全員にIDを付与するということそのものが、一つのハードルのようだ。なるほど。
他には、営業モデルやテレワークのポイントなどが紹介されているけれど、それはとりたてて、、、、、という感じの内容。
発信コンテンツの基本4つ、というのは、ちょっと参考になった。
①優位性はなにか
②独自性・差別化はなにか
③発信者の人柄
④サービスをつくるストーリー
まぁ、これも、当たり前といえば当たり前だけれど、私自身が自社のHPをなかなか更新できていなくて、発信できていないなぁ、、、と思っているので、これを参考にもうちょっと頻度よく発信しよう、、、という気になった。
全体に、ちょっと、ぼわっとしているので、熟読するというより、さらっと読みの一冊。
顧客のペルソナを固定しないと、響く発信にならない、、、と、ある意味反面教師として参考になった感じ。
何事からも、学べることはある・・・。
そんなことを感じた一冊。
やっぱり、本にして出版するということだけでも、すごいことだけどね。
それにしても、やっぱり、営業ツールとしての著書をつくるっていうのも難しい・・・。でも、出版するということが大事、ともいえる。
DXではなく、宣伝広告戦略として、気づきのあった一冊だった。DXに関して言えば、こういった著書より、ネット上の情報のほうが最新だし、参考になるモノが多いと思う・・・。