『あひるのジマイマのおはなし』  by ビアトリクス・ポター

あひるのジマイマのおはなし
ビアトリクス・ポター さく・え
いしいももこ やく
福音館書店
1973年1月20日 発行
1988年4月1日 新装版発行
ピーターラビットの絵本ー11

 

石井桃子さんの翻訳絵本をもとめて、ピーターラビットシリーズ11。
今回は、あひるのおはなし。主役のジマイマは、シリーズ4『こねこのトムのおはなし』で、トムやミトン、モペットたちの洋服を着てみたものの、泳いでいるうちに全部ぬげちゃったあひる一家のお母さん。ジマイマ・パドルダック。あひるのレベッカもでてきた。

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今回は、ジマイマが自分で生んだたまごを自分で温めさせてもらえないことを不満に思って、外でたまごを生んで育てようとして、きつねにだまされちゃうはなし。最後は、猟犬にたすけられるけれど、ジマイマのおまぬけぶりと、たまごを育てることのへたくそさが露呈するものがたり。これも、なかなか、辛いお話でもある。

ジマイマは、自分の家の女主人が、じぶんのたまごをめんどりに抱かせるのを不満に思っていた。それを義理の姉さん(なんと複雑な!!義姉がいたのか!)のレベッカにぐちると、レベッカは、28日もすわっているなんて私はいやだし、あなただってできない、といわれる。
ジマイマは、自分は立派にたまごをかえしてみせる!とクワツクワッ。

ジマイマは、最初は、自分でうんだたまごをあちこちにかくしてみたけれど、すぐに家の人にみつかってしまう。そこで、家からずっとはなれたところでたまごを生もうと決心。

 

ジマイマは、よそゆきのショールをかけ、ボンネットをかぶって、遠くの丘へ向かう。いままで、あまり飛んだことはなかったけれど、おもいきって、ばたばたしてみたら、ちょうしがついて、みごとに飛ぶことができた。そして、森にひらけたところを見つけ、どすん、とそこへおりてみた。たまごを生むのによい場所を探していると、きりかぶに腰かけて、新聞をよんでいる紳士に出くわす。紳士のみみは黒くてぴんとたち、ひげは薄茶色。長い太いしっぽを腰の下にして切り株に腰かけていた。紳士は、とても行儀よく、「おくさま、みちに おまよいになりましたかな?」ときいてきた。ジマイマは、みちにまよったのではなくて、たまごを生む場所をさがしているのだという。

ジマイマは、おせっかいなめんどりがいて迷惑している、とはなす。紳士(正体はきつね、、なのだが)は、ジマイマを自分の小屋へと案内し、ここをつかえばいいと親切にしてくれる。

小屋の中は、とりの羽でほとんどいっぱい。ジマイマは、さっそく巣をつくることにした。

 

紳士は、「たまごや あひるのひなはだいすきだから、自分のたきぎごやで立派なたまごがたくさんできたら、たいへんうれしい」といいました。

 

そりゃそうだ、ぺろりと食べちゃうつもりだろう・・・

そして、ジマイマは、そこ毎日通い、9個の卵を産む。そして、明日からたまごを抱き始めるので、巣からは一歩も出ないので、家に帰って麦をとってくるという。それを聞いた紳士は、
「たまごをだくという 退屈なお仕事を始める前に、あなたに ごちそうをさしあげたい。あした、ふたりだけのパーティーをひらきましょう」といって、美味しいオムレツを作るために、セージとタイム、たまねぎ、パセリを持ってきてほしいという。

 

あひるのジマイマは、おばかさんでした。たまねぎだの、セージだのいえわれても、まだ おかしいなと おもわなかったのです。”

 

そしてジマイマは家の畑から材料を集める。そしておかってに入って、玉ねぎを取り出していると、番犬のケップにであう。

「その玉ねぎを どうしようというんだね?
おまえ このごろ毎日 ひとりで、どこにゆくんだね?」

”ジマイマは、いつもケップのことをちょっと怖いと思っていたので、すっかりはなしてしまいました。”

かしこいケップには、すぐにキツネの考えていることがわかった。ケップは、ジマイマが行っている森のことを詳しく聞くと、友だちのフォックス・ハウンドの2匹の子犬をさがした。

 

一方のジマイマは、荷物を抱えて、紳士の小屋にもどっていくと、紳士は、丸太のうえに腰かけているけれど、くんくんとあたりの匂いをかいで、落ち着かない様子で周りに目をくばっている。紳士は、急に乱暴に「そのオムレツにつかうやさいを私によこして。さあ、さっさとするんだ!」とらんぼうにいったのです!


ジマイマは、おどろいて、心細くなってしまう。
小屋に入ると、扉がしめられてしまい、そとでは怖ろしい物音が!!
吠える声、獲物を追い詰める声、うなるこえ、遠吠え、かなきりごえ、うめくこえ、、、。

 

そのときかぎり、薄茶色の紳士をみたものはおりません。

 

さわぎがすむと、ケップが扉をあけて、ジマイマを外に出してくれた。
ところが、うんわるく、ケップが止める間もなく、猟犬たちがこやにふみこんで、ジマイマのたまごをがつがつ たいらげてしまいました。”

ひゃ~~~、子どもの絵本か?!これが?!?!

 

ケップは、耳にかまれたあとがあり、猟犬たちはびっこをひいていた。

”あひるのジマイマは、たまごがなくなってしまったのを かなしんで、涙をながしながら いぬたちにまもられて 家に帰りました。”

ジマイマは、6月になるとまたあたらしいたまごを産み、”それをだかせてもらったけれど、4つしかひながかえりませんでした。”

 

ジマイマは、ひなが ぜんぶ かえらなかったのは、じぶんが しんけいしつになっていたからだと、いいました。でも、ほんとうのことをいうと、ジマイマはたなごをだくのが へたなのですよ。

おわり

 

ひゃ~~~、シュールだわ。

 

自分の能力の過信へのいましめ。危機管理能力なさの反省。それでも、自己弁護の言い訳をしてしまうことへのいましめ・・・。
深いわぁ・・・・。

自分の能力がたりなければ、誰かの支援をうければいい。そういうこと。ジマイマは、お母さんで、たまごを産むことはできるけれど、育てることがへたくそ。だったら、それが得意なめんどりにまかせておけばいいのに、、、ってことか。

うん、ジマイマは大人だから、不得意なことは無理せずに、人に頼ればいいよね。

深い・・・・。 

 

気になるのは、ジマイマは、いまだに自分が騙されていたことに気が付いていないのではないだろうか?ってところ。また、次のシリーズでジマイマ、出てこないかな。。。

 

ちなみに、このシリーズ11を探しているときに、早川書房から川上未映子訳の別のピーターラビット絵本が出版されていることに気が付いた。同じ小型版の大きさで、もちろん、絵も同じ。でも、訳がちがうのと、シリーズにしている順番もまるで違う。川上さんの訳でも同じ『あひるのジマイマのおはなし』を読んでみたけれど、だいぶ、現代っぽい訳になっていて、日本語としてはこちらの方がすっとくる。漢字もかなり使用されている。石井さんの訳では、あまり漢字が使われていないので、ひらがなで書いてある分、読むペースがちょっとゆっくりになる。古き良き時代を感じるが石井さんの翻訳って感じかな。

どちらも、素敵だと思う。けど、私は、まずは、石井桃子さんの翻訳で読了したと思う。絵本翻訳の大先生としての翻訳で。