『2ひきのわるいねずみのおはなし』  by ビアトリクス・ポター

『2ひきのわるいねずみのおはなし』
ビアトリクス・ポター さく・え
いしいももこ やく
福音館書店
1972年5月1日 発行
2002年10月1日 新装版発行
2019年11月5日 新装版改版発行
ピーターラビットの絵本ー7
First published by Frederic Warne & Co. Ltd., London, 1904

 

石井桃子さん翻訳のピーターラビットシリーズ、7。三冊セットの3つ目。シリーズ6の続きだけれど、『こわいわるいうさぎのおはなし』の次は、『2ひきのわるいねずみのおはなし』。どうやら、悪い奴らが主人公のお話がおおいらしい?!

 

シリーズ7に出てくるのは、はじめての登場人物(ねずみと人形と人間)。文字も多めで、55ページもある。結構な物語。

 

わるいねずみは、トム・サムとトムのおかみさんのハンカ・マンカ。2匹が、すみついている家の子どもがもっている「人形の家」に侵入して悪さをはたらく。人形の家には、ルシンダとシェフでお手伝いさんのジェインが住んでいる。おもちゃの家なので、テーブルの上に並ぶ美味しそうなハムもチーズも全部作り物。なのに、主人(人形の家の主人のルシンダとジェイン)の留守に人形の家にしのびこんだ2匹は、食べようと思ったハムやチーズがコチコチで、ナイフもフォークも立たないことがわかると、かんかんに怒って、テーブルからご馳走をほっぽりだすと、火鉢やシャベルでめちゃくちゃに叩きのめしてしまう。

 

2匹は、台所で燃えている真っ赤な日に、魚の皿をそのままほうりこんでしまう。でも、
”けれど、その火は、ちりめんがみでできていたので、おさかなは こげもしませんでした。”
って、リアルな現実。

 

台所のコーヒー缶も、お米缶も、なにもかもが偽物であることがわかった2匹。次にジェインの寝室に行って、タンスから洋服を引き出し、まくらから羽をひっぱりだし、家じゅうをめちゃくちゃにしてしまう。

 

ハンカ・マンカは、自分も羽根布団が入用だったことを思い出し、トムに手伝ってもらって、まくらを自分の巣穴に持ち込んだ。それから、また人形の家に戻ると、赤ん坊のゆりかごを略奪!さらに、椅子を略奪しようとしているところに、人形たちが帰ってくる!!人形たちは、家のありさまをみて目を丸くしました。


”でも ふたりとも べつに いけんはのべませんでした”。

 

それから、ハンカ・マンカは、包丁や鍋もいくつか手に入れていた。

人形の家の持ち主である女の子は、巡査服の人形を買うことにする。お手伝いさんは、「わたしは ねずみとりをかけますよ!」といいました。

 

と、これが、悪い2ひきのねずみの話。

 

”でも、トム・サムとハンカ・マンカは、ほんとうは それほどわるいことをしたとは いえないのですよ。なぜかというと、トム・サムは あのあとで、自分たちがこわしたものを お金で全部かえしたのです。”
って。

暖炉の裏で見つけた6ペンス銀貨を人形の家のくつしたにいれておいたのだと。

おいおい!!
略奪しておいて、お金をはらったから、それほどわるいことをしていないって、それありか?!?!

”それに、ハンカ・マンカも まいあさとてもはやく ちりとりとほうきをもって、人形の家にでかけてお掃除をしました。

おわり”

 

なんとまぁ、悪いことをしたら、償いましょうというお話なのか?!面白い。
ちなみに、2匹には、子ネズミたちもいたらしい。だから、ゆりかごが必要だったんだね。リボンをつけたかわいい子どもたちの絵が。でも、略奪はいかんなぁ。

 

こんなお話、子どもに話聞かせたら、子どもはどう反応するんだろう。動物も人形も擬人化しているところが面白いし、そのくせ、現実的な「ねずみとりをしかける」というお手伝いさんの意見もでてくるのが笑える。

人形の家の食べ物も暖炉の火も全部偽物。でも、大きさ的にはねずみたちにちょうどよかったんだろうね。

 

だいたい、ねずみが住んでいる家っていうのは、1900年初めのイギリスでは普通だったのだろうか?日本だって、昭和初期には家にねずみがでていたんだし。。。

 

でも、古さを感じさせないストーリー。

 

ピーターラビット、楽しい。