『20 CONTACTS 消えない 星々との短い接触』 by 原田マハ

20 CONTACTS 消えない 星々との短い接触
原田マハ
幻冬舎文庫
令和3年8月5日 初版発行
*この作品は2019年8月、小社より刊行されたものです。

 

図書館で 目に入ったので借りてみた。原田マハさんの2019年の作品。

 

裏の説明には、
ポール・セザンヌアンリ・マティスバーナード・リーチ、フィセント・ゴッホ黒澤明手塚治虫東山魁夷宮沢賢治・・・・。アートを通じて世界とコンタクトした物故作家 20名に、著者が妄想突撃インタビューを敢行。
 いちアートファンとして巨匠たちに向かい合い、その創作の秘密に迫る。 自ら初めて手掛けた展覧会の為書き下ろした格別な創作集。”とある。

本書は、実際にマハさんが企画し、清水寺で開催された【CONTACT つなぐ・むすぶ 日本と世界のアート展】のために書き下ろされた作品。2019年9月1日(日)~ 9月8日(日)という、たったの8日間のアート展だったらしい。知らなかった・・・。2019年9月、私はいったい何をしていたのだろう・・・・。 ちょうど、脱サラを決断するかどうか、迷っていた頃かもしれない。ネットで検索したら、まだHPが残っていた。

 

HPでの紹介によれば、
”本展覧会では、日本と積極的に接触をした外国人アーティスト、国際的に活躍した日本人アーティストの作品が、清水寺という特別な空間に集結します。おもな展示作品は、日本美術を通して新しい表現を見出したポール・セザンヌ、南仏でマティスに師事した猪熊弦一郎、哲学者・矢内原伊作と深い交流を持ったアルベルト・ジャコメッティ、四半世紀以上も日本で個展を開催し続けてきたゲルハルト・リヒターなど、西洋美術作品や現代アートを含む30点弱。
 美術のみならず、文学、マンガ、映画など多彩なジャンルで魅せるユニークな展示も見どころのひとつで、ふだん非公開の清水寺成就院で美しい庭園を背景に、西洋近代絵画の鑑賞、現代美術のインスタレーションを楽しんでいただけます。”
と。

こんな楽し気な企画があったことを知らなかった。知っていたら、行ったのにな・・・。残念。いったい、清水寺をどう使って開催されたのだろう・・・。気になる。

 

で、本書は、20名のアーティストに、マハさんが会いに行ってインタビューする、という妄想ストーリー。それぞれの人のちょっとした紹介にもつながっている。川端康成が、人の眼をじ~~っとみるのがクセだったとか。猪熊弦一郎は、三越の包装紙を「犬吠埼で拾った石を見て、戦争に負けた日本人が、荒波耐える石のように強くなってくれたら」っておもいながらデザインしたとか。

それぞれのアーティストとの出会いが、短編小説みたいな感じ。さすがマハさん、楽しい。しかも、登場しているのは、ご自身。原田マハが、自分でインタービューにいった(妄想)のレポートをしている。現実にあるあるな展開から、タイムトラベルしないと起こりえない話から、不思議な物語が綴られる。

 

あぁ、マハさん、今回もやってくれましたね。アーティストに出会って、一人ハイテンションになっているマハさんの様子や、したたかだったり、気さくにマハさんを受け入れるそれぞれのアーティストの様子が、なんとも楽しい。

 

それぞれのアーティストとの対話のお話に、それぞれタイトルがついている。タイトルをみて、次は誰が出てくるのかな?なんて想像しながら読むのも楽しい。ま、目次になっているけどね。

 

登場する20名は、次の通り。

猪熊弦一郎
ポール・セザンヌ
ルーシー・ リー
黒澤明
アルベルト・ジャコメッティ
アンリ・マティス
川端康成
司馬江漢
シャルロット・ペリアン
バーナード・リーチ
濱田庄司
河井寛次郎
棟方志功
手塚治虫
オーブリー・ビアズリー
ヨーゼフ・ボイス
小津安二郎
 東山魁夷
 宮沢賢治
 フィンセント・ファン・ゴッホ

 

最後に、ゴッホを持ってくるあたりがやっぱり、マハさん。どれも、夢のあるお話。さら~~っと軽く読める。日本人以外もでてくるので、当然、突然、エクス=アン=プロヴァンスに飛んじゃったり。アーティストの会話も楽しい。

 

セザンヌに、
「日本の絵の中の松は極端に曲がっているが本当にあんな風に曲がっているのかね?」って聞かれて、
「ええ 本当です。 少なくとも 画家にはそう見えているのです」と答えるマハさん。

確かに、松って、、、まっすぐな松と、曲がった松がある。同じ等伯作品でも、「松林図屏風」のようなまっすぐの松もあれば、「松に秋草図」のように曲がりくねったごっつい松もある。実際、庭に生えている松だって、両方ある。あれは、種類の違いなんだろうけど、フランスには、まっすぐの松しかないのかな?こういう、会話を発想するところが面白い。

 

それぞれの アーティストに会う時にお土産を持っていくのだが、 黒澤明監督に持って行ったのが、松坂牛というのも面白い。「和田金」の松坂牛。すき焼きが食べたくなった。

 

川端康成には、水道橋のとんかつ名店「かつ吉」のトンカツ折り詰め。行きつけだったらしい。私は、トンカツ折り詰めは、そんなにそそらないな・・・。あの、細くて気難しそうな川端康成がトンカツ好きだったとは、知らなかった。って、それもマハさんの妄想?かも?
いやいや、思わず食べログで確認したら、「三島由紀夫川端康成も愛したとんかつの名店」とでてきた。へぇ・・・。三島由紀夫にトンカツは似合う気がするけど・・・。

 

シャルロット・ぺリアンって、誰だか知らなかった。フランスの建築家で、ル・コルビュジェのアトリエで共同デザインしていた人らしい。そこで、坂倉準三に誘われて来日。日本の伝統工芸にふれ、柳宗理デザインにも感銘をうけたと。へぇ。。。家具の世界もね、深い・・・。実は、私は、デザイン家具が大好きだ。機能性が高く、美しい家具ほどすぐれた芸術はないと思っている。ネットで、シャルロット・ぺリアン、スツールで検索したら、骨董品の値段だった・・・・。見て楽しもう。

 

とまぁ、色々な出会いが楽しい。

気になる人がいたら、そこだけ読むのも楽しいかも。

マハワールド全開で、アート気分に浸れる一冊。

いいね、こういうの。

結構、好き。