『かえりみち』 by ブリッタ・デッケントラップ

かえりみち
ブリッタ・デッケントラップ 作・絵
木坂涼 訳
ひさかにチャイルド
2022年7月 第一刷
2023年8月 第二刷

 

『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第四章 家族の会いに包まれる」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。

 

まずもって、表紙が可愛い!綺麗!!

これは、読む前から、ワクワクしちゃう感じ。

 

そして、その表紙をめくると、
”おおきなハリネズミとちいさなハリネズミ
 ふたりは いえに かえるところです。
そらは ゆうひに そまって まっかです。

ちいさなハリネズミが いいました。
「 ねえねえ、ちょっと まって」

ゆっくり歩く、かえりみち。
夜へとむかう時間は とくべつな時間。”

 

作者の ブリッタ・ テッケントラップは、ドイツ・ハンブルク生まれ。ロンドンのセントマーティンズ・カレッジ・オブ・アートで学ぶ。夫と息子とベルリンで暮らしている。他にも日本語に翻訳されている絵本多数あり。

 

訳者の木坂さんは、詩人、児童文学作家、翻訳家。詩集、エッセイ集の他、創作絵本、絵本翻訳も手がけているとのこと。ブリッタ・テッケントラップの他の絵本も翻訳している。『とらさんおねがいおきないで』『おなじそらのしたで』など。

 

感想。
シンプルに、お話も、絵も、可愛い。これは、好きだ。

 

最初は、夕日が真っ赤にそまる夕方の場面。

沈みゆく夕日と、大きなハリネズミと小さなハリネズミが森の木の下で同じ方向を向いて歩いている姿。森の木には、リスやテントウムシの姿も。かすれたような色ののせかたが、なんともほのぼの。

 

そして、小さなハリネズミ
「ねぇねぇ ちょっと まって」
と、大きなハリネズミに呼びかける。

「なんだい?」

「おひさまが どんどん しずんでいくよ。
みえなくなるまで みていたいな」

 

そして、二人は眺めのいい所に座って、夕日を見つめる。
二人のハリネズミの後姿のシルエット。空は、赤く染まっている。
森の中には、こうもり、ほたる、蟻、カブトムシ?などなど、違う動物も登場。

赤と黄色、黒と緑に青、、、色使いも美しい。

 

そして、おうちへのかえりみち、小さいハリネズミは何度も、
「ねぇねぇ ちょっとまって」を繰り返す。

 

「あのね おつきさまを みていたいんだ」
「うん わかった みよう」

 

「ちょっとまって、 すごく いい においだ」
「ほんとだね。 すごく いい においだ」

 

「ねぇねぇ いまの きこえた?」
ホーコー ホーコー
「あれはね、フクロウだよ。」
 フクロウをみて、小さく手を振るふたり。

 

「ほら、 おつきさまが くもに かくれちゃう。
 また でてくるのを まちたいな」

 

「あのね、カエルさんや さかなたちに おやすみって いわなくちゃ」
「そうか、そうだね」

 

「みてみて あかりが とんでるよ」
「これはね、ホタルって いうんだ。
 いっぱい みられて よかったね」

 

「ほしをかぞえようよ」

 

草の上で星を数え始めた二人の絵では、大きなハリネズミの頭の上に、テントウムシがいる。星、ホタル、蟻、テントウムシ、カブトムシ、コウモリ、、、、。

 

そして、次のページでは、丘の向こうに明かりのついたお家がみえる。

ちいさなハリネズミは、もう「ちょっとまって」とはいいません。
だっこされて きもちよく ねむっていました。

 

おしまい。

 

最後のページは、家の前にたどり着いた二人。小さいハリネズミは、大きなハリネズミにだっこされて寝ている。お家のまわりには、草花とともに、また、昆虫や、フクロウ、カエル、リス、、、みんなが二人の帰りを待っていた。


なんて、可愛いお話でしょう。

大きなハリネズミは、都度、「早くお家に帰らなきゃね」、といいつつも、小さいハリネズミといっしょにかえりみちをゆっくりと進む。夕暮れから、だんだんと暗闇に。1人だったら、寂しくなっちゃいそうな夜道も、ふたりだと楽しそう。

絵もまた、かわいい。


夜道のお話なので、全体にブルーの暗いトーンだし、ハリネズミは灰色。でも、かわいい。草花、生き物、、、森が生きている感じがつたわってくる。

 

これはまた、素敵な絵本だった。とってもシンプルだけど、ほっこり、こころが暖かくなる感じ。

 

二人は、親子なのかな?
兄弟なのかな?
最後まで、出てこなかったけど、仲良しの二人のお話は、楽しい。  

 

こういうの好き。

 

絵本は楽しい。