改訂新版 日銀を知れば経済がわかる
池上彰
平凡社新書
2017年5月15日 初版 第1刷
先日、元日銀総裁 結城豊太郎について学ぶ機会があったので、初心に返って「日銀」について勉強し直してみようと思って、図書館で検索したら出てきた本。
池上さんの本だし、それなりにわかりやすいだろう、、、と思って借りて読んでみた。
池上さんは、1950年長野県松本市 生まれ。 慶應義塾大学卒業後、73年、NHK入局。 1994年から11年間は「週刊こどもニュース」のお父さん役としてニュースを解説。
私もまだ実家にいたころで、時々「 週刊こどもニュース」を見ていた記憶がある。ふむふむ、って勉強になった。そのあと、フリーになられてからも様々なTV番組、ニュースの解説者としてのご活躍は、みなさんご存じだろう。
個人的には、必ずしも 池上さんの解説に同意しかねる こともなくはないが、やっぱり、わかりやすく話してくれるところは尊敬している。主義思想うんぬんではなく、なんかきれいにいっちゃってるなぁ、、、というように感じることがある。NHKで培った表現型が身についているのだろうか。とはいえ、最近は私自身がTVをみないので、最近の著書以外での発言がどんななのかは、よく知らない。けど、やっぱり、すごい知識人だと思う。
表紙裏の説明には
” リーマン・ショックで世界の金融界が大混乱した2008年秋。
その後 日本ではこの 7、8年の間に、
安倍政権への交代に加え、 黒 田東彦が 日銀総裁に就任。
デフレ脱却のための「異次元緩和」や、「マイナス金利」導入など、強力な金融緩和策を推し進める日銀の動向に注目が集まっている。
そこで、データを最新のものに更新し、この間の日 銀の動きを加筆。
改めて、日本銀行の仕事を知ることで、 金融経済の仕組みを見る目を養おう。”
とある。
まさに、マイナス金利は、そのまんまだからわかるとして、「異次元緩和」って、実のところ、なんのこっちゃ?って思っていたので、基礎を学ぶつもりで読んでみた。
目次
はじめに デフレからの脱却に悪戦苦闘
第1章 そもそも金融とは何か
第2章 日本銀行は「銀行の銀行」だ
第3章 日本銀行は「政府の銀行」だ
第4章 日本銀行は「発券銀行」だ
第5章 紙幣はいくらでも発行できる?
第6章 日銀はこうして誕生した
第7章 「公定歩合」はなくなった 金融政策の仕組み
第8章 日銀の政策委員会とは
第9章 ゼロ金利政策で悪戦苦闘
第10章 「異次元」の緩和に踏み切った
第11条 景気の動向を常に監視
第12章 FRBはアメリカの日銀
第13章 金融グローバル化時代の日本銀行
おわりに 日銀は「奴雁」たりうるか
感想。
うん、基本を復習できた感じ。ただ、2017年の本なので、やはり新鮮味はない。日銀総裁もFRB議長も変わっているし。でも日銀の役割は変わっていないので、勉強になった。
第1章では金融とは何かについて。金融とは、 世の中で「お金が余っているところ」から「お金が必要なところ」にお金を融通する仕事。資金を融通するから金融。
わかりやすい。そのまんまだ。英語でfinance。
ペイオフ( 金融機関が潰れても 一定額の預金が戻ってくる)については、自己責任で銀行を信頼できるかを考えて、できることなら1000万円ずつ、分散すべし、と。なぜなら、ペイオフの上限が1000万円だから。
そして 第2章から第4章で日本銀行とは何かについて。
日本銀行とは、
・「銀行の銀行」:いわゆる三菱UFJとかみずほ銀行とか、私たちが口座をつくる銀行が「当座」にお金を預ける銀行。私たち一般人は、口座をつくれない。
・「政府の銀行」: 政府のお金「国庫金」を管理している。 私たちが交通反則金を納付するときなら、日本銀行に直接納付できる。通常は、 日銀の代理店となっている一般銀行をつかう。そして国に反則金をおさめる。現金だけでなく、国債も管理。
・「発行銀行」:10000円、5000円、1000円札は、正式には「日本銀行券」という。お札を発行している。ちなみに硬貨は、政府がつくっているのだそうだ。 確かにお札には「日本銀行券」と書いてあるけれど、硬貨には 「日本国」 と書かれている。トリビア!
第5章のいくらでもお札を刷ったらいいじゃないか、というのは、やはりNG。もともと物々交換がよりいつでもどこでもできるように、と物々交換の仲立ちとしてうまれたのがお金。そのお金が、むやみやたらに増えると、、、、その価値が落ちてしまうということ。
歴史的には、「金本位制」といって、金と交換できる量だけお金をすっていた。「金解禁」とは、 貿易による資金決済として金の輸出が許可されたということで、金本位制ということ。
この「金本位制」と「金解禁」がなかなか理解しにくかったのだけれど、最近ようやく自然と頭にはいってくるようになった。
第一次大戦後、戦時中は好き放題通貨を刷っていた世界各国は、金本位制に復帰。日本も、 シベリア出兵 や関東大震災などで経済は停滞したが、1929年に金本位制に復帰。が、同年にアメリカで株価の大暴落。世界恐慌が始まる。円高となった日本は、輸出が激減し、深刻な不況に。
1931年、高橋是清が大蔵大臣に就任したことで、金本位制を廃止。
なんとなく、今では変動為替があたりまえなので、この高橋是清の決断がどれほど大きなことだったのかはわかりにくいけれど、日本の不況をすくったのだ。
「公定歩合」については、私も今はなくなった、、、ということを認識していなかった。そういえば、ニュースで「公定歩合」という言葉を聞かなくなった。1994年、規制緩和の一環として「金利の自由化」が実施され、それまで一律だった銀行の金利が、金融機関が自由に設定できるようになった。つまり、金利は市場原理にまかせられた。とはいっても「物価の安定」がおおきな使命である日銀としては、あまりに金利が変動し、物価変動が大きくなるのは好ましくない。そこで、需要と供給が大幅に変動しないように、「コール市場」への資金量を調整することで、金利水準をコントロールする。国債を売買することでコントロールしている。
このときに、望ましい金利を「誘導目標」といったり「政策金利」と呼んだりしている。
なるほど、自由にうごくお金の量を調整することで、金利を調整しているのだ。
で、そのコールレートの金利がゼロだとか、マイナスだとかで、「マイナス金利」といってたのだ。
お金を預けたほうがお金が目減りするマイナス金利って、ありえない、、、っておもったけど、実際、2016年から実施されたのだ・・・・。
まぁ、おかげで、私が住宅ローンを組んだ時の金利は、1%以下だった。
そして、本書に描かれた2017年頃は、日銀の政策もふんだりけったり、、、で日本経済はインフレにはならなかった。黒田さんのインフレ2%目標は最後はとりけされていたけれど、給料が上がらないんだから、物価だけ上がってもね。。。
今回、なるほどと思ったのは、日銀は市場の期待を操作するということ。
結局、経済がこの先どうなるかは誰にもわからない。だから、期待をもたせることで、景気上向きを期待する。
「異次元緩和」というのも、なんだかわかっていなかったのけれど、デフレ脱却のために、「リフレ派( 中央銀行が積極的な金融政策を実施することで世の中の人がインフレになると考えるようになれば デフレから脱却できると考える人)」の黒田さんが行った様々な金融緩和が「すごーーく」緩和させる策だったので、「異次元」といわれた、ということ。まぁ、それでも、デフレ脱却できなかったわけだけど。
日銀は、年に4回、「さくらレポート」という地域経済報告を発行している。だれでもHPから見ることができる。
ちなみに、2024年10月のレポートには、
”一部に弱めの動きもみられるが、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。”とある。
まぁ、そんな気もする?かなぁ?実感を伴わない。悪化しているとも思わないけど。
経済がわかると、新聞やニュースがもっとおもしろくなるんだろうなぁ、、、なんてことを、50代がいってちゃいかんかね。けど、やっぱり、私にはまだまだ経済は理解できていない。
今年のノーベル経済学賞のダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソンの『国家はなぜ衰退するのか』は、かなり面白いらしい。kindleでポチってあるのだけれど、まだ手が出ない・・・。
もう少し、経済の基礎固めをしないと、、、って思う。
本で独学できるって、楽しい。