『きみのお金は誰のため』 by 田内学

きみのお金は誰のため
ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」
田内学
東洋経済新聞社
2023年10月31日 第1刷発行
2023年12月4日 第3刷発行

 

新聞の広告で見たのだと思う。 面白そうだなと思って、 図書館で予約した。 1ヶ月以上は待ったような気がする。そして忘れていた頃に 順番が回ってきたので、 読んでみた。

 

著者の田内さんは、1978年生まれ。 東京大学工学部 卒業。同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。 2003年 ゴールドマンサックス証券株式会社 入社。 以後16年間、 日本国債、円金利デリバティブ、 長期為替 などの トレーディングに従事。 日本銀行による金利指標改革にも携わる。 2019年に退社してからは、佐渡島庸平氏のもとで修行し、 執筆活動を始める。 お金の向こう研究所代表。 社会的金融教育家として、 学生 社会人向けにお金についての講演なども行う。

ふ~~ん、知らなかった。

 

表紙の裏には、
” 今でも、時々思い出す。 ボスの豪快な笑いと、あの口癖を。
「 道徳の話なんて誰がするねん。 僕はお金の話しかせえへんで。」”

うん、確かにお金の話の本だった。でも、それだけじゃなかった。

 

目次
プロローグ  社会も愛も知らない子供たち
第1章 お金の謎1 「お金自体には価値がない」
第2章 お金の謎2 「お金で解決できる問題はない」
第3章 お金の謎3 「みんなでお金を貯めても意味がない」
第4章 格差の謎 「退治する悪党は存在しない」
第5章  社会の謎 「未来には贈与しかできない」
最終章 最後の謎 「ぼくたちはひとりじゃない」
エピローグ 6年後に届いた愛

 

感想。
ほほぉぉ!!!そうくるか!!!
うん、これは、いい本だ。私は、結構好きだ。

 

お金に関する本ではある。でも、社会とはなにか、経済とは何か、なぜ働くのか、なぜ生きるのか、、とても色々なメッセージが含まれている気がする。
内容自体は、特に目新しいものではない。というか、経済の仕組みや貨幣とは何ぞや、というのは、一般的に経済の勉強をすれば、ミミタコで聞くような内容だ。でも、そんなことはわかったうえで、日々の生活のなかで忘れてしまいがちな、とても大事なことがメッセージとして物語の中に組み込まれている。

 

一つの物語の中で、「ボス」が、とんかつ屋の息子「優斗」と、金融バリバリキャリアウーマン「七海」に、お金とは何か、経済とは何か、大事なものは、、愛である、と伝える物語。

物語自体も、なかなか楽しい。なんで、こんな凝った作りにしたのかな?って思うけれど、物語になっていることで、登場人物の優斗や七海の立場になって、お金の循環の仕組みについて考えることができるから、腹落ちしやすい。

ほほぉぉ。よくできたお話だ。
そして、大事なことは、お金には何の価値もなくて、そのお金で実際に得られるサービスやモノに価値があるということ。そのサービスやモノを提供してくれる人がいなければ、お金だけあっても何の役にも立たないという、どうしようもなく当たり前なことを教えてくれる。

 

私がいつも、「金は天下の回りもの」といっている概念が、そのまま肯定されているようで、よみながら、そうそう!!それそれ!!と膝を打ちたくなる感じ。

 

一気読み。文字数もすくなく、無駄がなく、でも、たのしく物語としても読める。
うんうん、これは、ベストセラーになってもおかしくない。
そして、これを読んだのなら、気が付いてほしい。
本当に、お金そのものには価値なんてない、ということに。お金と交換してえられるものにしか価値が無い。無人島ではお金は役に立たない、ってこと。
それが、「お金で解決できる問題はない」ということ。

ボスは、「それに気が付けば、お金の奴隷から解放さえる」って教えてくれる。

お金の奴隷。

気が付いたら、稼ぎたい、儲けたい、お金を増やしたい、とお金の奴隷になっていないか?
お金は、使わないと何の価値もない。お金を食べてもお腹は満たせない。お金を払って、レストランで食事をして、はじめてお腹は満たされる。レストランでの支払いは、お料理を提供してくれる人へのお礼ってこと。

 

ボスの素敵な教えを覚書。

・「自分で調べて、自分の言葉で深く考える
人は、難しい言葉を覚えると、なんだかわかったような気になる。「グローバルな過剰流動性相場」とか言わずに、「世界でお金があまっている」って自分の言葉で言えることの方が大事。

  そうそう、自分の頭で考える、何より大事!

 

・金融の世界では、自分の財布だけを見つめて、お金は増えるものだと考える。本当は、財布から財布にお金が移動しただけのこと。

 なるほど!確かにそうだ。その移動が、国内だけだったり、インターナショナルだったり。

 

・ボスが投資をするのは、株価が上がる会社とかいうことではない。ボスはエンジェル投資家。投資をしているのは、お金だけではなく、若い時間。未来に投資をしている。

 うんうん、未来への投資が、一番のお金の使い方だと思う。ボスは、なぞのキャラとして登場するけれど、なかなか「人物」である。

 

・「稼ぐことと同じくらい、お金を使うことも難しいや。使いようをよう考えへんと、これもまた労働のムダ使いになってしまうからな。

 これは、使わなかったお金は、ただ働きになってしまう、ということと似ている。

megureca.hatenablog.com

 

 

・「みんな、上の世代に文句を言うんや。『上の世代の借金なんて自分たちはしらん。なんで背負わなあかんのや』ってな。それなのに、自分の親からは、お金を相続して当然やと思っている。親も上の世代であることを都合よく忘れているんや。」

 

・「誰のためにはたらくのか。この問いかけに、自分や家族の為だと答える人は多いやろう。彼らは、「誰のためにお金を稼ぐのか」という質問されたと考える。「働く」という言葉を、「お金をかせぐ」という言葉に自動変換しているんや。
 資産運用をすすめる銀行員が「お金に働いてもらいましょう」というときの「働く」も、「お金を稼ぐ」という意味や。「働く女性」という表現をするとき、専業主婦は含まれない。家族のために家事をしたり、子どものために育児をしたり、しっかり働いているにもかかわらずや。ここでの「働く女性」も「お金を稼ぐ女性」という意味で使われている。これは、お金のどれいになっている証拠やと僕はおもっている」

 

・「儲からないと会社は存続できないが、もうけること自体を目的にしたら会社は長続きしない。会社が長続きできるのは、社会の役にたっているからや。その結果として、儲けることができる。そういう会社に、人もお金も集まる。

 そうそう、それぞ、持続可能な社会の第一歩。


とまぁ、深い言葉が面白いストーリーの中に織り込まれている。

 

ホント、なかなか、よくできた本だと思う。主人公の1人、優斗は中学2年生の時にボスとであって、このようなお金にまつわるお話を学ぶのだが、最後は、高校生になっている。また、七海も愛する人をみつけて結婚することに。

実は、ボスの家族愛のお話でもある。

まぁ、面白いので、ぜひ読んでみて、って感じ。

 

私は、人はお金の奴隷から解放されることができる、と信じている。稲垣さんも、お金の奴隷から解放された人のひとりだろうな。

megureca.hatenablog.com

 

脱サラして、収入が減ったのに、豊かになった気がするのは、私も経験中。自分が提供するなにかで、報酬としてお金がもらえるというのは、社会の仕組みなわけで、だから無職でいると社会から取り残されてしまったような気になるんだな、、、。

 

大切なのは、愛、といってしまえばそれまでだけど、やっぱり、愛だと思う。地球愛かな。身の回りの人への愛が大きいと思うけれど、それも、その人たちだけが良ければいいのではなくて、地球が良くなればいいな、って思う。だから、「未来の地球」をよくしてくれるであろう若い世代への愛をエンジェル投資家としてお金をつかうって、自分にとってもハッピーなお金の使い方になるのだと思う。

 

自分のお金の使い方も、

自分の頭で考えて、

自分で決めよう!