「世界史に学ぶコロナ時代を生きる知恵」
出口治明 鹿島茂
2020年10月13日 第1刷発行
文春ブックレット、99ページという、ちょっと薄めの一冊。
週刊文春に掲載されていたものを増補しつつ、単行本にした一冊。
コロナ関係はいくつも読んできているけれども、出口さんと鹿島さんの対談の本ということで、面白そうなので読んでみた。
さらっと、読める一冊。
第1章 感染症が世界を変えた
”世界ヨーロッパの人口の1/3以上が死んだペスト。
コロンブスが新大陸に持ち込んだ天然痘などの感染症は、人口を激減させ、新しい世界の扉を開いた。”
など、歴史にのこる、感染症のお話が第一章。
出口さんが、マンゾーニの「いいなずけ」をイタリアの高校の校長先生が引用し、医学を信頼して落ち着いて行動しましょう、と話したことを言及されていた。「いいなずけ」は、ペストでパニックになったイタリアが舞台となった、若者の恋愛話。小説で、歴史を学べる一例。私もコロナの流れで読んでみた。お話としても面白かった。
もう一つのパンデミック、第一次世界大戦中に始まった、スペイン風邪。最初の感染者はアメリカで報告されているのに、戦争中で国内のことをあまり報じなかったため、中立国であったために世界中に報じられたスペインが感染源のようにおもわれて、「スペイン風邪」と言われるようになってしまったらしい。
これは、知らなかった!
でも、スペイン風邪のせいで、戦争している場合ではなくなって、戦争が終わった。
ペストは、ルネサンスを生んだ。
人がバタバタと死んでいくと、「これは天罰か?!」とおもって、神様を拝む。でも、みんなが教会に行って、密になって、さらに感染する。神様が助けてくれない。
祈っても助からないことで、教会の権威が凋落する。そして、明日死ぬかもわからないのだから、もっと人生を楽しもう!ってことで、ルネサンスが生まれる。
ペストにしても、スペイン風邪にしても、生きるか死ぬかとなると、集団として生き残るための道、享楽への道を選ぶのが、人間の本能か?
パンデミックは、社会の進歩を促す、のかもしれない。
であれば、コロナもきっと、、、何かの進歩をうめるはず、と思う。
第2章 コロナが変える日本
”在宅勤務リモートワークの増加は日本社会にどのようなインパクトをもたらすのか。
コロナをきっかけに日本をより住みやすい社会にするための処方箋は?”
と、日本のこれからを語る第二章。
コロナで、協力金や助成金が出されているけれど、一時収入として、結局課税されるのだから、国もケチンボだな、とおもっていたら、本の中にもっとしょうもない話がでてきた。
困窮する学生に「学生支援緊急給付金」として20万円を配布しますと言いながら、外国人留学生に限っては成績優秀であることや、出席率8割以上に限りますといった条件をつけたそうだ。
知らなかった!
そんな対策で、よく、「留学生を増やしたい」とか言ったもんだ。
条件をつけるのなら、日本人だって同じ条件だろう。
よくわからない、条件だ。
建前では、グローバル化、とかいいながら、「日本人ファースト」なのは、コロナ禍のような非常時にはよろしくないのではないか、、、と思う。
そいうところ、これから変わっていけばいいのに、と思う。
リモートワークがもたらしたメリットについて、語られていた。
個人的には、リモートワークは、これからもある程度続くのではないかと思う。リモートワークが増えて、家族が一緒に食事ができること、ありがたくもあり、大変でもあったと思うけれど、やはり、昔のようにサラリーマンは毎晩外で付き合いの宴会、という日はそうそう戻らないのではないだろうか。家庭で過ごすことの当たり前を認知していしまうと、もう、そんな時間の使い方はしなくなるのではないだろうか?と思う。
バブル時代から考えても、経済成長と外での宴会回数はパラレルに右肩上がりだった。その時代を知っている年代(今の50代以上)にしてみれば、仕事の後に飲みに行くのは当たり前。でも、20世紀のような経済成長ではない21世紀の日本、経済も宴会も、ちょっとスローなペースで良いように思う。かつ、持続可能であることも求められているわけだし。
経済成長より、家庭の幸福や、子供の未来。そういう価値観への移行が、少しコロナで後押しされているような気がする。そうであったらいいな、、、と思う。
成長は、永遠に右肩上がりという事はあり得ない。
立ち止まっている時間、停滞している時間も、価値を見直すためには大切なのではないかと思う。
第三章 コロナと米中激突の行方
”コロナに対して人類は一致団結するどころか米中が対立を深めるなど連帯よりも分断が目立っている。混迷を深める国際秩序の行方はいかに?”
2020年10月の本なので、コロナによる米中激突は、トランプ大統領が拍車をかけた、というトーンになっている。それは、それで、事実だ。
バイデンさんになって、かわったか???
あんまり、そこは変わっていないように思う。中国より、アフガニスタンやメキシコとの国境問題の方が忙しいから、かもしれないけれど。
鹿島さんは、
”見方を変えれば、(中国は)実はとても付き合いやすい相手ともいえます。なぜかと言えば、中国の行動原理は二つしかないからです。「強いか、弱いか」「損か、得か」。”
と言っている。
それはわかりやすい。
その分かりやすさは、実はトランプ大統領も一緒だったかも、、、、なんて思う。
最後に、出口さんのまとめのコメント。
”歴史から学べる大切なことは少なくとも二つあります。
それは時と場合に応じて様々な時間軸を自分の中で使い分けて、複眼的に物事を見ることと、エビデンスや記録の重要性です。コロナ後の世界ではその二つのことがもっともっと大切になるはずです”
複眼的に物事を見ること
エビデンスや記録の重要性
国として、社会としても大事だけれど、個人にとってもやっぱり重要だ。
物事は、複数の側面からの見方・認識がある、という事を理解したうえで、自分にとっての解釈をするよう気を付けようと思う。
あとから見直すことが、未来のより良い一手になる。そこに必要なのは計測と記録。
やっぱり、記録すること、大事だ。
一行日記でもいいから、これからも続けようと思う。
緊急事態宣言が、2021年9月30日をもって解除された。
今週は、開けて、初めての週末。
そこかしこで、昼飲みを楽しむ人々がいた。
私も、その一人だ。
人と会って話すことの楽しさ、大切さ、痛感した。
コロナで長引くステイホーム、色々なことを見直す機会になったと思う。
人と会って話せる、食事ができる、そして、その食事を提供してくれるお店がある、お店に材料を提供してくれる人がいる、人と物を運んでくれる人がいる、、、。
これも一つのバリューチェーン。
感謝したい人がたくさんいる。
昨日、私が美味しく楽しく食事して、ビールもワインもウイスキーも楽しめたのはたくさんの人に支えられた経済活動があるからだ。
皆さん、ありがとうございます。
美味しかったです!
感謝したい人がいるというのは、幸せなことだ。
コロナがくれた立ち止まって考える時間、自分になりにも記録しておいてもいいかもしれない、と思う。