『しらふで生きる』 by  町田康

『しらふで生きる  大酒飲みの決断』
町田康
幻冬舎
2019年11月5日第1刷発行

 

図書館の特設棚、新生活向け?のようなテーマ棚で見つけた本。著者も知らないし、お酒をやめる気もないから、、、でもちょっと気になって手に取ってみた。パラパラと見てみるとなんだか面白そう。借りて読んでみた。

 

著者の町田さんは、1962年大阪府生まれ。町田町蔵の名で歌手活動を始め、1981年パンクバンド「INU」の『メシ食うな!』でレコードデビュー。俳優としても活躍する。著書もあるらしい。

 

が、しらない。
私は、まったく知らない。。。
萩原朔太郎賞、川端康成文学賞も取られているとのこと。
知らない・・・。

 

本書は「小説幻冬」2017年1月号から7月号小説幻冬に連載された「酒をやめると人間はどうなるか。ある作家の場合」を改題し、加筆・修正したものとのこと。

 

感想。
結構、面白かった
あっという間に読んでしまった。
紙質が、わらばん紙みたいな感じで、活字も見やすいとは言えないのだけれど、なんだか、あっという間に読んでしまった。

なんか、すがすがしい気持ちになれる。

 

面白い。
さすがに、著書で受賞されている方ということで、文中に出てくるたとえ、引用がなかなか文化的だ。でも、中身は、酒にまつわる話。
くすっ。
ふふぅ。
ぷっ。
って、思わず、笑いが出ちゃう感じ。
ふざけているようでいて、中身は結構、切実というか、真にせまるというか、、、。

 

お酒を飲む人、飲まない人。
お酒をやめようと思っている人、思っちゃいない人。
誰が読んでも面白いと思う。

否。
お酒を好きでない人には、ばっかじゃないの、、、、と言われるかもしれない。
そうなのだ、酒のみは、阿保なのだ。
いいのだ。それで。

 

本書の8割ぐらいは、なぜ、30年以上1日も休むことなく浴びるように飲み続けていたお酒を著者が辞めようと思ったのか。うまく説明できないから、何とか理屈をこねくり回して自分が酒を辞めた理由を導こうとしている。そして、いかにお酒の誘惑から自分を奮い立たせたか。

 

最後のほんの少しがお酒を飲まなくなってどんな良いことがあったかという話。
さもありなん、の話ではあるけれどもふむふむなるほど。
完全な禁酒をしなくても、このぐらいの境地には行けるかもしれない。
と思わせてくれるような話。

 

酒を止めたことで彼が良かったと思うこと四つ。
①ダイエット効果
②睡眠の質の向上
③経済的な利得
④脳髄のええ感じによる仕事の捗り
とのこと。

どれも、さもありなん、だ。
私も、、、私はこよなくお酒を愛しているので、たまに過度に摂取してしまうことがある。
そんなとき、
①太る

②眠りが浅くなる(あるいは寝不足になる)

③散財する(時によっては深夜のタクシー代も)

④仕事で頭が回らない
を、身をもって経験する。

幸か不幸か、お酒に強いので、ワインボトル2本飲んでも二日酔いにはならないのだが、当日はええ感じに酔っぱらう。調子に乗ってもっと飲む。。。グラッパに手が出てたり、3本目に突入したり、、、。
はい、失敗の数々もありますです。。。。

でも、、、禁酒をするつもりはない。
一応、毎日飲んだくれているわけではないので、、、楽しむお酒、ということにしている。

 

で、彼がなぜお酒をやめたか。

とにかくある日、突然と禁酒という言葉が天から降ってきた、、、感じ。で、本書の多くは、お酒をやめるどんな理由があるのか、、、ということが等々を思考されている。
その一つの結論は、


そもそも「人生は、楽しくない。だから酒をのんで紛らわす」ということ。
そして、人生が楽しくないのは、「人生はもっと楽しいもの」という思い込みと、「自分はもっと賢い人間なのに、周囲の扱いがなっとらん」という勝手な不満
故に、
「人生なんて、そんなに楽しいものではない」
「自分は、アホである。」
という自己認識に改変すれば、酒を飲む理由がなくなる、というのである。
酒は、負債だと。


人生は楽しいものである、とうい強迫的観念を抱き、それはやがて、楽しんだ者=勝者、楽しまなかった者=敗者、という考えになっているのではないか、と。
人は競って人生を楽しもうとし、またインターネットに写真や動画を上呈することによってそれを他者に訴え主張するようになり、それがまた強迫的観念を亢進せしめた”と。

云えてる。

 

「人生は楽しくないもの」とする認識改革によって、楽しくないことに不満を持たなくなれば、酒はなくてもいい、、、と無茶だけど、ちょっと、、ぷぷぷ、、、わかる。

「自分は特別な人間ではない → 普通の人間 → 普通は楽しくない」のだから、楽しくないことに無念だといって酒を飲む必要はない、、、と。

不満があるから、お酒を飲む。
であれば、不満をなくせばいい。
不満の多くは、自分がこの世で正当に遇されていない、と考えるからであるが、そもそもそれが誤りであり、その誤りを知ること、すなわち自己認識を改めることによって、現在の不満は消える。


自分を普通以下のアホと思えば、
一、少々のことで腹を立てなくなる。
二、学びにおいて多くの果実を手にすることができる。

大切なのは、
他人と自分を比べることによって、自分の価値を測ることの無意味を知る

なんとも。
御意!
と、思う。


確かに、お酒より楽しいものは沢山ある。
けど、つい、最後にお酒で〆てしまう。
ゴルフの後。温泉の後。ハイキングの後。。。。
「お酒なしでは楽しめない」と思っているからかもしれない。。。
確かにね・・・。
「自分はいっぱしの人間で、楽しむ権利がある!」と思っているかもしれない。

いやはや。
酒豪がドクターストップになったわけでもないけど、お酒をやめたという話。
なかなか、面白い。

 

ま、少なくとも、酒は飲んでも飲まれるな、、、ですなぁ。

 

折口信夫全集』、柳田國男、ウンベルト・エコー、本居宣長吉田松陰、『無限耳鼻舌身意』『阿耨多羅三藐三菩提』(般若心境)、『方丈記鴨長明、、、、

数々の引用が、また、面白い。
ふざけているのか、真面目なのかわからない。
で、いいのだ、ということだと思う。

人生、こんな感じで、いい感じ、と。

 

私も、重要な仕事の何かがあるときは、前日は飲まない。
頭の回転が鈍るのがわかっているから。

そうね、お酒は、不満の解消なのかもしれない。
私が会社をやめたら、お酒が減ったのは、同時にコロナだったことだけではないかもしれない。 

 

毎晩、外食でなくても、自宅でワインを飲んでいるのだけど、たまには完全禁酒の日をつくろうかな、なんて気になった。

 

①ダイエット効果
②睡眠の質の向上
③経済的な利得
④脳髄のええ感じによる仕事の捗り

を思い出して、たまには、お酒を控えてみよう。。。

 

あ、でも、今日はワインの勉強会。。。

 

偶然出会った本だけど、面白かった。

読書は楽しい。

図書館は、楽園だ。

 

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『しらふで生きる』