『時間の終わりまで』 by ブライアン・グリーン (その2:第3~5章)

時間の終わりまで
物質、生命、心と進化する宇宙
ブライアン・グリーン
青木薫
講談社
2021年11月30日 第1刷発行 
Until The End of Time  -Mind, Matter and Our Search for meaning in an Evolving Universe (2020)


目次
第1章 永遠に魅惑 始まり、終わり、そしてその先にあるもの
第2章 時間を語る言葉 過去、未来、そして変化 
第3章 宇宙の始まりとエントロピー 宇宙創造から構造形成へ
第4章 情報と生命力 構造から生命へ
第5章 粒子と意識 生命から心へ
第6章 言語と物語 心から想像力へ
第7章 脳と信念 想像力から聖なるものへ
第8章 本能と創造性 聖なるものから崇高なるものへ
第9章 生命と心の終焉 宇宙の時間スケール
第10章 時間の黄昏 量子、確率、永遠
第11章 存在の尊さ 心、物質、意味 

 

昨日の続きで、第3章から。

 

第3章 宇宙の始まりとエントロピー
 宇宙の始まりが、約140億年前のビッグバンだった、ということは現代では一般的に知られるところとなっている。かつて旧式のテレビで、夜の放送が終了した局にチャンネルをあわせると聞こえたザーーーッという雑音の一部は、ビッグバンの名残の電波によるものだったのだそうだ。へぇ、、、よくわからないけど、宇宙の音だったのか!しらなかった。


本章では、「インフレーション宇宙論なるものが、展開されている。加えて、ヴェルナー・ハイゼンベルクによる「不確定性原理。量子のあいまいさのせいで、ぼんやりとしか決定できない物理的特徴があるということ。実在は、量子の法則に支配されている。でも、そこに曖昧さがある・・・。やっぱり、量子論ならハイゼンベルグは外せない。

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とにかく、宇宙はビッグバンで始まった。バーーんと広がった。

 

ビッグバンをおこした宇宙は、エントロピー拡大の方向にすすんだはずならば、どうやって、恒星や惑星はできたのか。爆発したバラバラ事件のままではなく、ぎゅっと一つのかたまりになったのか?ここで、「インフレーション宇宙論」にもどると、インフレーションとは、直訳すれば「急激な膨張」という意味。広がろうとする力。ビッグバンの前に、インフレーションがあって、膨張し、その後ビッグバンがあったというのが、「インフレーション宇宙論」。で、どうやって、恒星や惑星のような、低エントロピーの配置ができたの???
と、本書の中でも、それは、「宇宙の起源に関する完全な理論が得られていないため、科学はこの問いに応えることができない」とある。。。う~~ん、、、。そんな簡単にかたづけられちゃったらなぁ、、、。と思っていたら、一応、次章でちょっと、それらしき理屈はでてくる。

 

惑星がどうできたかは説明がつかなくても、私たちが現象として知っていることがある。重力。ぎゅっと中に集まろうとする力は、重力、皆さんご存じ、地球上では重力のなかで私たちは生きている。だから、どれだけジャンプしたって、地面に戻ってくる。でも、重力というのはすごい力のようでいて、実はもっと強いのが核力や電磁力電磁力があるから化学結合がある。そして、核力があるから分子が分子でいられる。でも実は、重力が触媒となって、核力が遂行する。重力があることで、粒子たちは高密度の球状に圧縮され、核融合によって崩壊を食い止めながら、エントロピーをさらに増大へと駆り立てている・・・。著者は、それを「エントロピック・ツーステップ」と呼んでいる。

これも、よくわからないけれど、、、とにかく、、、恒星ができたのだ。バーンと広がる力と、ぎゅっと集まる力。そして、惑星、私たちの地球もできた。


第4章 情報と生命力
宇宙から、命の話へ。そして、著者自身の研究についての言葉。いわゆる化学系分野と生物学系分野との融合について。

 

”・・・より最近になって、研究が深まるにつれ分野と分野の間に広がる領域を理解する必要があることが徐々に明らかになってきた。科学の様々な分野は、互いに切り離されているわけではないのである。そして生命から知的生命へと焦点が移動すれば、科学の分野と重なり合う、さらに別の学問領域、ー言語学、文学、哲学、歴史、芸術、神話、宗教、心理学などなどーが、知的生命について語られる壮大な物語にとって非常に重要になってくる

本書の中で、一番、そうそう、、、と、うなずいた所かもしれない。

 

物理学の量子の世界も、人の心の謎を説明するために必要かもしれないし、一つの「パースペクティブ」なのである。つまり、ツール、かな。

物理学者が書く著書は、いつも哲学的な感じがする。ハイゼンベルグの『部分と全体』は、哲学を超えて詩的でさえある。あ、数学者、岡潔もそうか。


宇宙も、粒子も、生命も、微視的物理学の観点から見ることにより、地球の生命は深いレベルでひとつだ、、と。

そして、第3章で、なぜ惑星ができたのかは説明できない、とされてしまったが、少なくとも今わかっている太陽系の事実。

太陽がうまれたのは、メシエ67として知られている領域だそうだ。太陽が形成された後にのこった物質は、数百万年にわたり重力によって、惑星になった。軽くて揮発性の高い物質、水素、ヘリウム、メタン、アンモニア、水などは、太陽の強い放射によって吹き飛ばされ、外側に広がる低温領域にあつまった。それらが、ガスの巨大惑星、木星土星冥王星海王星。鉄やニッケルやアルミニウムといった、より重い元素は太陽に近くて温度の高い環境に踏みとどまり、太陽系の内側には、水星、金星、地球、火星という小さくてかたい惑星になった。

ほほぉ。。。軽い元素は遠くへ、近い元素は近くへ。そうだったのか。

惑星たちは、太陽よりもずっと質量が小さいので、自分たちの持つ原子に固有の抵抗力で、宇宙からの圧縮に耐えることができるのだそうだ。太陽と同様に、惑星の中心部でも温度と圧力は上昇する。でも、太陽で起こっているような核融合が始まるレベルには遠く、惑星の環境は比較的穏やかなものになる。

 

でも、やっぱり、なんで、重力ができたのか、密度とか、エントロピーとか、、言われても、やっぱり、頭に描けない。なぞだ。。。少なくとも、拡大方向にいこうとするエントロピーに打ち勝って、重力によって惑星はできている。。。。ぎゅっと。なにかのエネルギーで・・・。

 

エネルギーの話へ。すべての生物は、化学的な燃焼を利用してエネルギーを得ている。生命のエネルギーの中心となる化学的燃焼は、酸化還元反応と言われる。燃料を燃やして(=酸化して)エネルギーを得るように、生物はその細胞の中で、酸化還元反応でエネルギーを作っている。だから、生きていける。電子が酸化還元反応を繰り返すのだ。私たちは、ATP分子をADPとリン酸にすることで、エネルギーを得ている。また、プロトン電池に駆動された細胞タービンでATPを再生する。
このあたりの記述は、かなり省略されている。けど、人間なら、食べ物を食べることでATPを作り、エネルギーを得ている。もちろん、人なら酸素も必要。

 

私は、その生物がATPを再生することを利用して、物質生産プロセスを研究開発していたことがある。ATPこそ、命の母なのだ。最小ポンプとも言われるプロトン輸送機のタンパク質構造解析とか、、、楽しかったなぁ。。。生物は、ATPを再生できなくなると、死んじゃうのだ。


第5章 粒子と意識
ATPでエネルギーを作っている生物もまた、物理のルールにしたがって生きていることになる。では、その生きるということから「意識」をもつ人間へ至るに、どういう物理の法則がありえるのか?宇宙、人間、そして、意識へ。

40億年前に誕生した原核生物から、現在の人間にいたるまで、同じ物理の法則を共有しているのだが、どこかで、意識が芽生えた。意識とはなんぞや?それを理解するにも量子物理が必要だ、というのが本章。

意識とは何かというのは、ずっとずっと、いまでも永遠の課題。様々な人の言葉が並んでいる。

 

アウグスティヌス
「このように、心はそれ自体含むほどは大きくない。では心に含まれない部分はどこに存在できるだろうか」

 

トマス・アクィナス
「心は自己を、自らの本質によってみるのではない。」

 

ウィリアム・シェイクスピア
「ご自分の胸中を訪れて、扉を叩き、お前は何をしているのかとお尋ねください」

 

ゴットフリート・ライプニッツ
「音楽とは、心が行う、隠された算術的計算なのですが、心は自分が計算しているということに気づいていないのです 」


そして、カール・セーガン
「途方もない主張をするためには、途方もない証拠が必要だ」

ということで、意識の理論を説明するのは、途方もない、、、、けれど、脳の働きも、その物質的な構造は、量子力学の法則に支配されうる。

 

”人は、意識を持ち、物語を語る。その物語で語られる行動と経験は自分には自由であるように感じられ、自律的に制御しているかのように言われるが、やはり、物理法則に完全に支配されているのである。”
そして、
”自由な意思があるという「感覚」は現実に存在するが、自由意志を及ぼす力ーー物事を支配している物理法則を超越する力は現実には存在しない、ということに気づく必要もある。”

と、意識と物理法則と。。。著者にとってはやはり、すべては物理法則ならしい。

 

ちなみに、本章でも多くの人の言葉が引用されているけれど、聖アウグスティヌスも、トマス・アクィナスも、数年前までの私だったら、まったく馴染みがなかった。物理学者は、神学者の言葉を引用するのが好きなようだ。カルロ・ロヴェッリも、著書『時間は存在しない』のなかで、アウグスティヌスを引用している。

 

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トマス・アクィナスは、佐藤優さんの本によくでてくるので、いくつか読んでみたけれど、やはり、、神学の世界は、ふわっとしか理解できず、わたしにとってはまさに量子の曖昧さのような世界だ・・・。それでも、なんとなく、点と点がつながりそうな気が、、、しなくもない。

 

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と、また長くなってしまったので、続きはまた明日。