『自分の小さな箱から脱出する方法』 by  アービンジャー・インスティチュート (その3)

第1部、第2部ときて、今日はとうとう最終章。

この二日間の続き。

 

最後に、パドの教えのすべてのまとめメモも。

 

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自分の小さな箱から脱出する方法
人間関係のパターンを変えれば、うまくいく!
アービンジャー・インスティチュート
金森重樹監修
冨永星 訳
大和書房
2006年11月5日第1刷発行
2016年2月1日第45刷発行

 

The Arbinger Institute:アメリカ・ユタ州に拠点を置く研究所。哲学者 T・ウォーナー が創設メンバーに加わっていたという異色の集団。現在ではビジネス、法律、経済、哲学、教育、心理学の専門家が一堂に会し組織内にある人間関係の諸問題を解決することによって収益を高めようという独自のマネジメント研修やコンサルティング業務を行っている。ちなみにArbingerとは先駆けの意。

 

目次
第1部 「箱」という名の自己欺瞞の世界
Chapter 1 「君には問題がある」
Chapter 2 自分だけきづいていないこと
Chapter 3 何も見えない状況に陥るとき
Chapter 4 さまざまな問題のもとになっている一つの問題
Chapter 5 効果的なリーダーシップを支えるもの
Chapter 6 自己欺瞞に冒されている人ほど問題がみえない 
Chapter 7 目の前の相手は「人」か「物か
Chapter 8 うまくいかないのは自分が悪いのか? 

第2部 人はどのようにして箱に入るか
Chapter 9 箱に入っているのはあなた一人じゃない
Chapter 10 箱の中に押し戻されてしまうとき
Chapter 11 あなたを箱の中に追い込む「自分への裏切り」
Chapter 12 ほんとうに相手が悪いのか?自分を正当化できるのか?
Chapter 13 他の人たちが何を必要としているのか
Chapter 14 なぜ自分ばかりが責められるのか
Chapter 15 自分の気持ちはどこに向いているか
Chapter 16 箱の問題は、なぜ解決しなければならないか

第3部 箱からどのようにして出るか
Chapter 17 「素直な自分」を引き出す
Chapter 18 「どうすれば箱の中からでられるか」
Chapter 19 人として、相手と接する
Chapter 20 箱の中にいるときにしても無駄なこと
Chapter 21 自分が楽な人間関係を選択する
Chapter 22 何のために努力するのか
Chapter 23 本気にならなければ人はついてこない
Chapter 24 2度目のチャンスは用意されている

 

主な登場人物は、

トム・コーラム:最近ザグラム社に転職してきた。上級管理職の研修で本書の内容を学んでいく。

パド・ジェファーソン:ザグラム社専務副社長。トムの研修相手。

ケイト・ステナルード:ザグラム社会長。

ルー・ハーバート:ザグラム社元会長。ケイトの元上司。

 

最終章は、いかに箱から出るか。本書の総まとめ。

 

パドとケイトから、様々な経験談をきいて、箱とはなにか、箱に入っているとなぜよくないのかがわかってきたトム。1日目の研修が終わり、家に帰ったトムは、妻と息子に今日の話を一生懸命話した。訳がわからないような顔をしながらも、なんだかトムが一生懸命になって自分たちに話している姿に心を許す妻と息子。トムは、久しぶりに心が軽くなるような気持になれた。そして、翌日、研修の続きが始まる。

 

第3部 箱からどのようにして出るか
Chapter 17 「素直な自分」を引き出す

翌日、再びパドの元をおとずれたトムは、元会長のルー・ハーバードにも会う。そして、昨晩は、家族と素直に向き合い、妻と息子と、久しぶりに楽しい時間を過ごしたことを話した。

ルーは、自分がこの「箱問題」研修を始めたきっかけについて語り始めた。

 

Chapter 18 「どうすれば箱の中からでられるか」
ルーの息子は、若い時、ドラッグに手をだして逮捕される不良少年だった。また、ルー自身も癇癪もちで、一時は、ケイトを含めた優秀な社員たちが一気に退職するという事態にもみまわれたことがあったのだ、と話し始めた。今の穏やかで、素晴らしいカリスマ経営者として知られるルーからは想像がつかない。

 

ルーは、自分自身が「箱」に入っていることに気が付いたのは、息子がアリゾナの更生施設で3か月を過ごすことになったときだったと語った。息子をアリゾナまで送っていった後、ルーと妻のキャロルは1日がかりの研修に参加することになった。それは、息子らの更生についての研修ではなく、自分たちがどんな問題を抱えていたのか、という研修だった。そして、「問題なのは、ドラッグをやった息子で、会社社長の自分がなんでこんな研修を受けなきゃいけないんだ」と反発していたのだが、しだいに、自分の防御の構えに潜んでいるに気が付いた。自分が箱に入っていたことに気が付いたのだ。

トムは、ルーに「どうやって箱からでたのか?」と聞いた。
ルーは、「君はもうその答えをしっているよ」という。


Chapter 19 人として、相手と接する
ルーは、「どうやって箱から出るんだろうと思ったときは、箱からでている」といった。
自分が息子や部下たちにしてきたことを悔やんだ時、息子や部下は、「物」から「人」に変わった。
箱の外にいると、それまで「物」だった周囲が「人」であることに気が付く。
相手のためになにかしたい、と思った時はすでに「箱」から出ているのだ、と。

そして、人は「どうすれば箱の外に出られるか」の次に「どうすれば一度出た箱の外に居続けられるのか?」と悩み始める。
自分は箱の外に出たけれど、相手が箱の中にいつづけると、自分もまた箱の中に入ってしまう。どうしたら、それを避けられるのか?

 

Chapter 20 箱の中にいるときにしても無駄なこと
ルーは、ホワイトボードに「箱の中にいる時にしても無駄なこと」と書いた。

1 相手を変えようとすること
2 相手と全力で張り合うこと
3 その状況からはなれること
4 コミュニケーションを取ろうとすること
5 新しいテクニックを使おうとすること

多くの人は、人間関係の問題をテクニックをつかって解決しようとするが、自分への裏切りがあるかぎりは、箱の中にいるかぎりは、解決することはないのだ、と。
そして、ルーはもう一つ書き足した。

6 自分の行動を変えようとすること

 

箱の中に入っているときは、たとえ行動を変えようとしても、それは自己正当化のためであって、相手の為ではない。だから、自分を変えようとする行動も無駄なのだ、と。


Chapter 21 自分が楽な人間関係を選択する
自分がまちがっているかもしれない、と思ったとき、人は箱から出ることができる。自己正当化の必要がなくなったからだ。
箱の中にいると、「自己正当化」しなくてはいけないので、人は不安定な状態で暮らしている。でも自己欺瞞をやめて、自己正当化が不要になると、ひとは楽な気持ちになれるのだ。

 

Chapter 22 何のために努力するのか

自分の感情に背き続けることが、自己欺瞞となり、不安定な自分を作ってしまう。なぜ、自分の感情に背くのか、どうやって自分を裏切っているのか、それを知ることが大事だという。

 

パドは、若い時の仕事の失敗の話をした。ある大きな仕事で、パドは見事に法律関係の仕事をやりこなした。さぁ完成という直前になって、上司が法律の更新「ポケット・パート」も確認したわよね?と聞いてきた。パドは、していなかった。それからが大変。何もかもやり直しが必要なくらいな失敗だった。でも、その時の上司は、パドのことを責めなかった。会議の場で「法律が変わったことを見落としていたのは自分だ」と言ったのだ。どう考えても彼女のせいではなく、パドの手落ちだった。だのに、上司は自分のミスだと言ったのだ。

彼女は、箱にはいっていなかったんだ、とパドはいった。
だから、パドのことを「人」として見ていた。
おかげで、パドは、責められるよりよほどその案件を重要に受け止めた。2度と同じミスはしない、と堅く心に誓った。


Chapter 23 本気にならなければ人はついてこない

ルーは、以前ケイトたちが一気に退職していった時の話をはじめた。自分が箱に入っていたことに気が付き、アリゾナ送りになった息子に対して心が氷塊したとき、ルーは同時に、集団で退職していったケイトたちにも申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

そして、何が何でもケイトに謝って、会社に戻ってきてもらおうと思った。

そして、アリゾナから自宅へもどると、ルーは即座にケイトの元へ向かった。ケイトの自宅まで赴き、3時間かけて、自分は箱に入っていたこと、箱からでたこと、とにかくケイトの力を必要としていることを本気で本気で、語り続けた。

 

Chapter 24 2度目のチャンスは用意されている

ケイトはルーのザグラム社へ戻ってきてくれた。ルーは、部下たちに対して、自分自身をやり直すチャンスをもらえたのだった。

人と人とをひきはなす「箱」は、家族にも会社にもいたるところに存在している。そして、細菌のように蔓延する。

「箱からでること」
それは、「自分をだますことをやめること」


最後に、パドの、そしてもともとはルーの教えをまとめて本書はおしまい。

 

知っておくべきこと
・自分への裏切りは、自己欺瞞へ、さらには箱へとつながっていく。
・箱の中にいると、業績向上に気持ちを集中することができなくなる。
・自分が人にどのような影響を及ぼすか、成功できるかどうかは、全て箱の外に出ているか否かにかかっている。
・他の人々に抵抗するのをやめたとき、箱の外に出ることができる。

 

知ったことに即して生きること
・完璧であろうと思うな。より良くなろうと思え。
・すでにそのことを知っている人以外には、箱などの言葉を使うな。自分自身の生活にこの原則を生かせ。
・他の人々の箱を見つけようとするのではなく、自分の箱を探せ。
・箱の中に入っているといって他人を責めるな。自分自身が箱の外に留まるようにしろ。
・自分が箱の中にいることが分かっても、あきらめるな。努力を続けろ。
・自分が箱の中にいた場合、箱の中にいたということを否定するな。謝ったうえで、さらに前に進め。これから先、もっと他の人に役に立つよう努力をしろ。
・他の人が間違ったことをしているという点に注目するのではなく、どのような正しいことをすればその人に手を貸せるかを、よく考えろ。
・他の人々が手を貸してくれるかどうかを気に病むのはやめろ。自分が他の人に力を貸せているかどうかに気をつけろ。 

 

とまぁ、盛りだくさんになってしまったが、

「自分への裏切り」が「自己正当化」につながり、それが「相手を悪者にする」につながる。

「自己正当化」のために、「相手を責める」

なんだか、とっても納得してしまった。

 

たとえ、相手が「箱」に入ったパワハラ上司だったとしても、自分も「箱」にはいってしまうと、どんどん相手を責めることになる。そういう相手に「箱からでたまま」でいることはとても難しいことだ、とルーも認めている。それでも、相手を「物」ではなく「人」とみること。そうしないと、「箱の中にいる時にしても無駄なこと」を繰り返すことになってしまうのだ。

 

人間関係を円滑にするのは、テクニックじゃない。

「箱の中からでること」

ただ、それだけ。

 

最後のまとめにあるように、「箱などの言葉をつかうな」とあるので、もう「箱」の話はしない。

興味をもったら、ぜひ読んでみてほしい。

きっと、楽に生きるヒントになると思う。

 

世の中には、どんなことをしても箱から出ないタイプの人、人から搾取している自分にまったく気が付かない「サイコパス」と呼ばれる人もいる。そういう人たちに出会ってしまったら、全力で逃げ出すのが一番だけれど、仕事ではなかなかそうもいかないこともあるだろう。そんな時役に立つのは、「Chapter 20 箱の中にいるときにしても無駄なこと」かもしれないな、と思う。スティーブ・ジョブズサイコパスだったと言われるけれど、chapter20をわかっていた人が、彼と上手くやっていけたのかもしれない。

 

いやぁ、なかなか、濃い一冊だった。

けど、物語形式なので、結構あっという間に読める。

読んでよかった。

 

頭でわかっても、なかなかできることじゃない。

だから、また、時々読み返すとよい本かもしれない。

 

うん、読書は楽しい!