THINK AGAIN
発想を変える、 思い込みを手放す
アダム・グラント 著
楠木建 監訳
三笠書房
2022年4月30日 第1刷発行
2022年10月31日 第3刷発行
アダム・グラントの本だけれど まだ読んでいなかったので、 図書館で借りて読んでみた。2022年の本だけれど、ちょっぴり待った。やっぱり、人気なんだろう。
アダム・グラントは、1981年生まれ。私よりはだいぶ若いのだけれど、私は彼の本にいつもいろんな気づきをもらう。『GIVE&TAKE 与える人こそ成功する時代』がデビュー作らしいけれど、『ORIGINALS 誰もが人と違うことができる時代』よりも面白いと思う。
日本語では、よく「吸う人と吸われる人がいる」という言い方をするけれど、結局、人から吸ったからと言って、TAKEしまくったからといって、成功とは関係ないという話。成功するのは、与えることのできる人。善人が成功する、とも言えるかも?まぁ、耳障りのいい言葉だし、私は性善説を信じたいので、結構いい話だと思う。
と、そんなグラントの新刊。「発想を変える、思い込みを手放す」という日本語タイトルになっていて、要するにマインドセットの話。思い込み、執着、偏見、、、、。自分でそこに執着していることに気が付かないから危ないのだ。時々、こういう本で、リマインドするのはよいことだと思う。
表紙裏には、
”「脳の処理速度」が速いからといって
「柔軟な思考の持ち主」であるとは限らない。
人は疑うことの不快感よりも、
確信することの安心感を好む。
既存の考え方が新たな観点から見つめ直すことがいかに大事にであるか、
それを伝えるのが本書の目的である。”
とある。
うん、もう、それに尽きる。
自分が執着していることに気が付けば、新たな観点から見つめ直せるけれど、気が付かないから難しい。あるいは、相手がなかなか新しい発想に合意してもらえないとき、どうすればいいか。みんなが柔軟な発想を持てる社会にするには、どうしたらいいか。明確な正解がかいてあるわけではないし、誰にも通じる共通のやり方があるわけでもないだろうけれど、考え方は本書に大いに同意する。「思い込みを手放す」まえに、自分が「思い込み」にとらわれていることに気が付かないと、ね。
contents
プロローグ
思い込みを手放し、発想を変えるための「知的柔軟性」について考察する本
Part1 自分の考えを再考する方法
Chapter 1 今、自分の「思考モード」を見直せ
あなたの中にいる牧師、検察官、政治家、そして科学者
Chapter 2 どうすれば「思考の盲点」に気づけるか
「自信」と「謙虚さ」のバランスの取り方
Chapter 3 「自分の間違い」を発見する喜び
なぜ「過ちに気づく」ことはスリリングな経験なのか
Chapter 4 「熱い論戦」(グッド・ファイト)を恐れるな
「建設的な対立」の心理学
Part 2 相手に再考を促す方法
Chapter 5 「敵」とみなすか、「ダンスの相手」と思うか
議論の場で相手の心を動かす方法
Chapter 6 「反目」と「憎悪」の連鎖を止めるために
相手の「先入観」「偏見」とどう向き合うか
Chapter 7 「穏やかな傾聴」こそ人の心を開く
相手に「変わる動機」を見つけてもらう方法
Part 3 学び、再考し続ける社会・組織を創造する方法
Chapter 8 「平行線の対話」を打開していくには
分断された社会の「溝」を埋めるために
Chapter 9 生涯にわたり「学び続ける力」を培う方法
健全な懐疑心と探究心の育て方
Chapter 10 「いつものやり方」を変革し続けるために
「学びの文化」を職場で醸成させる方法
Part 4 結論
Chapter 11 視野を広げて「人生プラン」を再考する
「トンネル・ビジョン」を回避するために
エピローグ
インパクトのための行動
謝辞
訳者あとがき 楠木建
「考えること」よりも、「考え直すこと」の重要性
感想。
うん、まぁまぁ、おもしろかった。比較的、考え直したり、学び直したりが好きな私としては、すでにそういう行動しているなぁ、と思えることもあるし、あぁ、できてないこともあるなぁ、、、って色々。脱サラしていなかったら、今のような学び直しはしていなかっただろうから、本書に対してもっとインパクト強く感じたかもしれない。ま、思い込みは成長の妨げになるというのは間違いない。
柔らか頭で考えよう!
およそ、目次をみただけでも、書いてあることの想像がつく感じ。わかりやすい。最後の、インパクトのための行動というのは、「再考スキルを磨くための30の秘訣」として箇条書きになっている。まぁ、本書のサマリーという感じだろうか。そこに全てがギュッと凝縮されている。422ページの本なので、なんならその箇条書きだけを読むことでも参考になる。アメリカ発のこういった啓発本は、事例紹介が圧倒的に多い。もちろん、事例があることで文章を通じてでも実際に起こりえる状況が想像しやすく、参考になるのだけれど、本書もその傾向があるので、やや回りくどくはなってしまう。特に、アメリカ文化にどっぷりなじんでいないとわからない事例もあったりするし、、、。このまとめだけなら、たったの12ページ。ちょっと気になるという人は、本屋の立ち読みでもあっという間、、、、かも?!
ちょっとだけ、覚書。
・”私たちが学ぶのは、自分の信念を肯定するためではない。学びの目的は、信念を進化させることだ。”
そう。だから、前に学んだことと違うことが出てきたら、喜ぶべきなのだ。信念の進化とは、、、、なるほど。
・「謙虚さ」は自信を控えめに持つことではない。「謙虚さ」とは、しっかりした知識や能力、つまり自分の過ちや不確実さを認識する力。
・ダニエル・カーネマンの言葉
「自分が何かを学び得たかどうかを知る唯一の方法は、自分の過ちを発見することだ」
・一流の交渉人は、攻撃や反撃ではなく「質問」によって、相手から引き出す。
・対立し合っていると、相手の良い所をみようとしなくなる。ビジネスの世界の例として、プーマとアディダスが何代にもわたる熾烈なライバル競争をしている、と。戦後に一つの家族経営の企業が分裂したのだそうだ。知らなかった・・。
・相手への動機づけは傾聴が大事だという話で、動機付け面接の3技術。
1開かれた質問を投げかける
2聞き返しを行う
3変わろうとする意思や能力を是認する
悪い動機付けの例は、怒鳴る、操作する、支援しない、小馬鹿にする、恥じ入らせる、説教する、品位を傷つける・・・・・・。あぁ、、、そういう残念なひと、、、いるいる。
・合意に至るには、建設的な対話が重要。そのためには、同じ方向を向くこと。
『住職さんは聞き上手』にでてきた、「How」を問うということと似ている。
・学校の成績優秀者が社会で必ずしも成功しないのは、古い思考にこだわるから。
・学ぶための最善の方法は、教えること。
これは、ホントによく言われる。だれかに話そうと思ったら、一生懸命考える。覚える。自分なりに理解しようとする。。。、
・学びの文化を醸成するには、「心理的安全性」と「アカウンタビリティ」という組み合わせが重要。「アカウンタビリティ」がないと、一生懸命考えようとしない。。。。それは、「教える」必要がなければ、一生懸命学ばない、というのと似ているかも。
説明責任をはたせるということは、そのことの背景から見通しまでしっかり理解しているということ。言われた仕事をこなすだけでなく、仕事を後輩に教える様になって急に成長する若者は、アカウンタビリティを果たそうとしているのかもしれない。教えるチャンスがあるというのは、ありがたいことだ。
・「トンネル・ビジョン」とは、目標を一つに定めてしまうことで、視野が狭まり、他の可能性が見えなくなってしまうこと。これは、誰にでも起こりえる。私も、よくあると自覚する。集中もだいじだけれど、コンティンジェンシープランももっておかないとね。
・人は環境が変わって歓びが持たされると一時は幸せを感じるけれど、長続きしない。環境をかえても自分の行動をかえなければ同じ、ということ。行動を変えることが幸福度の高まりに影響する。
とりたてて斬新!というほどのことはないのだけれど、こうしてまとめてくれているのでわかりやすい。監訳が楠木さんというのも、本の目指す方向がわかりやすい。
たまには、こういう本をアラートにして、自分の執着度チェックをしないとね、って思う。
発想を変えよう。
思い込みを手放そう。
新しい一歩のためには、とっても大事。