『90歳までに使い切る  お金の賢い減らし方』 by  大江英樹

90歳までに使い切る 
お金の賢い減らし方

大江英樹
光文社新書
2023年3月30日 初版1刷発行
2023年7月15日 5刷発行

 

先日、YouTubeで、本書の著者・大江さんが話しているのを観て、面白そうだと思った。図書館で借りようかと思ったら、すごい数の予約者だったので、諦めて購入。269ページの新書なので、さーーっと、読める。

 

帯には、
”「いつまでお金を貯めるのですか?」
生き方が変わる
定年後を豊かに生きるの4つの智恵とは
「老後不安」の呪縛を解く!
続々重版!

お金の本質を掴んで、人生後半を豊かに生きる”
とある。

なるほど、なかなか売れているらしい。

 

著者の大江さんは、1952年大阪府生まれ。経済コラムニスト。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」との理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。著書も多数。

知らなかった。こんな人。まぁ、定年退職後の人を対象にされているのだから、知らなくて当然か・・・。

内容は、結構、自己啓発本っぽい。。。。。説教臭くはないけれど、同じ「お金を減らす」というタイトルなら、先に読んだ森さんの方がおもしろいかなぁ、、、、。

megureca.hatenablog.com


ま、YouTubeで動画をみるだけでもよかったかも、、とも思った・・・。
とはいえ、やっぱり、ここは、本書の中で推奨している「寄付でお金を減らす」ということで、「退職後のサラリーマンを応援」する著者への寄付だと思えば、840円(税別)は、安いもんだ。

私は、図書館のヘビーユーザーだけれど、お金をケチっているわけではない。。。本を買いすぎて捨てられず、増えていくのを避けたいと思っているだけだ。KindleKoboも使ってみたけれど、やっぱり、紙の本が好きなのよね。
本を買うのは、著者への応援であり、寄付である。これからも楽しい本を書いてね、って。だから、買った本がつまらないと、結構がっかりする。。。。そういう意味で、本書は、すごくがっかりしたわけではない。それなりに、面白かった。けど蔵書にしたいってほどではない。

 

目次
第1章 ホンネ、タテマエ、そして勘違い
第2章 お金について、少しだけ深く考えてみよう
第3章 ”お金を増やしたい”という呪縛
第4章 お金の使い方、減らし方
第5章 お金よりも大切なもの

 

そもそも、本書は、お金に対する正しい理解をしてもらうための本で、「How to 減らす」のマニュアル本というわけではない。いくつかの著書なども引用しているけれど、こう言っては何だが「深み」を感じるというわけではない。哲学的ではない。でも、庶民にわかりやすく書いているというのか、、、なんて、、上から目線のコメントみたいになっちゃうけど、、、表面的で、さらっとしているな、、、という気もしなくもないのだ。面白いんだけどね。身近なおじさんがはなしている、って感じかな。だから、親しみやすく、読みやすい、という感じもある。

 

「となりに蔵建ちゃ、わしゃ腹が立つ」に代表される、日本人のお金持ちに対する嫉妬心が、お金に対する誤解を助長しているのではないか、と。お金は、汗水たらして稼がないと尊くない、投資の儲けはあぶく銭、などなど、、、。いやいや、投資だって、元金は自分で得た資金だろうし、ボケっとだれかの真似をするのではなく、自分でトライアンドエラーを重ねながらやってみてこそ、儲けにつながる。

お金は汚いものではないし、お金の話をするのははしたないことでもない。でも、日本人は、そうおもわないんだよね、、、というのが著者の意見。まぁ、最近はちょっとちがうかなぁ、という気もするけれど。

その日本人のお金に対する感覚で、面白い例がでてくる。日本のヒーローは清貧の公務員だけれど、海外のヒーローは富豪が多い、という話。

ゴレンジャーは、国際秘密防衛機構の日本部隊。(ゴレンジャーって言って通じるのは、昭和世代だけだろうな・・・)
大岡越前は、江戸の名奉行。
ウルトラマンだって、科学特捜隊が合体しているのだから、いわば公務員の業務委託。

一方で欧米では、
バットマンは、コングロマリットのオーナー大富豪。
サンダーバードの隊長ジェフ・トレーシーは、宇宙ロケットのパイロット出身で、発明特許で巨万の富を絵て、秘密組織をつくった。

なるほど!!
これはこれは、面白い!
水戸黄門だって、公務員だね。

でもって、そこには、報酬の差があるというのだ。
そういや、必殺仕事人だって、貧乏公務員。。。

 

日本のヒーローは、清貧でないといけない・・・
カルロス・ゴーンのように稼ぐと、犯罪者にされてしまう・・・・。

 

ということで、日本人は清貧好き。でも、自分のお金への執着は人一倍。だから、世界でも個人預金の多い国になってしまう・・・。

そのお金は、「使って回そう」というのが、本書の主旨。60歳定年以降を前提のように語られているけれど、実のところ、「お金は使ってなんぼ」は、若い時にも当てはまると思う。月給25万円の時代と、40万円の時代と、同じ1万円でも自分にとっての価値は変わる。それは、「経験」と交換していれば自分の血肉となるけれど、ただ、現金として持っていても、何も価値を生まない。。。。

60歳以降についても、「老後が不安」だからお金を使わずに、貯めようとする人が多い。実際、日本人の平均貯蓄額は、70代まで、年齢とともに増える。でも、著者も言っているように、80代になれば食べる量も減るし、余暇でつかうお金もへる。ある意味、毎日が余暇みたいなもんだし?!?。若い時のようにアグレッシブに旅行で贅沢三昧、とかもしなくなるだろう。

60歳過ぎたら、死ぬまでにどうやって使いきるかを考えたほうがいい、と。


「2000万円問題」とか言っているけれど、そもそも、老後が心配というなら、老後に自分がどれくらいの年金をもらえるのか、ちゃんと調べてみればいい、と。それなりの歳になれば、年金だけでも、十分にくらしていける、と。

不安というのは、どうなるかわからないから。
そもそもの収入、出費、どちらも自分でマネープランを確認してみればいい、、と。

 

私も、51歳で脱サラしたときに、ちょっとだけマネープランを自分でつくってみた。年金を抜きにしても、こりゃ、もう稼がなくても生きていけるかも、、、、とも思った。それは、会社で頑張ってきたからでもあるけれど、若い時から天引きで積み立て投資をしていたことが大きい。「時間を味方につける」ことができると、本当にお金というのは増えるのだ。。。

リーマンショック、コロナ、、、色々あったけれど、どれだけマイナスになろうとキャッシュを必要としない限り、解約せずに持ち続けると株や証券は、そこそこちゃんと増えてくれるのだ。コロナになったころ、それまで20年近く持っていた投資信託が、突如償還するといって、数万円損したことがあるけれど、他が増えていれば、どうってことない。

 

老後、確かに「介護」という心配事項はある。でも、心配しても解決できないことは、心配しない。その時の収入に応じて、介護の負担費用だって変わるんだから。

 

『DIE WITH ZERO』という本が引用されていて、死ぬ時までにすべてのお金はつかいきりましょう、ということをいっている。この本は、知人から面白いよと薦められていたのだけれど、それこそ図書館では長蛇の予約数だったので、結局本書と同時に購入した。まだ読んでないけれど、読まずとも中身が予測できる・・・。そして、私自身がもともとそう思っているので、めっちゃすごい!とはならないだろう、、、と思っているのだが・・・。次によんでみよう。

 

この『DIE WITH ZERO』のなかでは、死ぬときに思い出があることが一番、ということが書かれているらしい。思い出、それはお金で買えるものではなく、お金をつかって経験すること、なんだろう。そう、経験にお金を使え、って話。

大江さんは、「お金がないからできない」という言い訳は、それに使いたいと思えない、と言っているのと同じだという。森さんのケースだと、ポルシェを買っているのだけれど、それは、森さんが昔から欲しかったからだ。お金があるから買ったわけではない。欲しいものがあって、そのお金を稼いで、買った。私にしてみれば、「ポルシェはお金がないから買わないのではなく、欲しいと思わないから買わない」ということ。だれかに「ポルシェ買わないの?」と聞かれて「欲しくない」というと角がたつけれど、「お金がないから」というとやんわり否定になるのだという。。。

そう、「お金がないから」というのは、何かを断るときの常套手段。ほんとは、したくないんだよね。そんなことに、お金を使いたくない、ということ。
とはいえ、その言葉は、時に「時間がないから」という言葉に置き換えられている・・・。
お金がないというと、貧乏でみじめだけれど、「時間がない」というと、忙しい立派な人みたいだから。。。。なーんてね。

 

そうそう話は飛ぶが、脱サラしてフリー^ランスで仕事をしていると、何かを断るときに「忙しくて」と言いづらくなる。。。
「忙しい」って、なんて体のいい断り方だったんだろう、、、って思う。

と、あえて理由をいわず、「先約があって」と、ことわるのが一番無難・・・。

 

大江さんの引用する言葉の身近感を一つ具体的にあげてみよう。
ダウントン・アビー』に登場する執事カーソンのセリフ。
”人生でしなければならない一番大切な仕事は、思い出を積み重ねることです。最後に残るのは、結局それだけなのですから”

うん、いい言葉だ。
死ぬ間際に、どれだけお金があっても意味がない。
体験にお金を使おう!!

コト消費と言われて久しいが、コロナでさまざまな「経験」が制限されてしまった。そして、いま、解禁の時が来ている。
書をもって、旅に出よう!

 

最後に、第5章 お金よりも大切なものから、覚書。
お金より優先すべき4つのこと。
1 時間
2 信用
3 健康
4 幸福感

これは、順序なく、全部第一かな。 

 

ま、お金はあの世には持っていけないわけだから、有意義に使おう!