お金の減らし方
森博嗣
SB新書
2020年4月15日 初版第一刷発行
先日、YouTubeで、お金の減らし方の話をしている人がいた。その人の本を図書館で借りようかと思ったら、予約者がいっぱいだった。。。「お金の減らし方」ってタイトルで、本書がでてきたので、借りてみた。
著者の森さんは、1957年愛知県生まれ、小説家で工学博士。随分とたくさんの著書をかかれていて、映画化されたものもあるそうだ。まったく知らなかった。印税だけで年収1億というのだから、相当の売れっ子作家らしい。でも、私は知らないものは知らない。
249ページのSB新書。あっという間に読める。
感想。
なるほど。面白い。
でも、『お金の減らし方』というタイトルだけれど、べつにお金の減らし方のノウハウ本ではない。どちらかというと、お金とのつきあい方って感じだろうか。編集者からは「お金の増やし方」というタイトルで執筆を依頼されたらしいのだが、天邪鬼な著者は、『お金の減らし方』という本をかくこととなる。
そもそも、
”僕はお金を増やした経験がない”といっている。自分で作った鉄道模型を走らせる大きな庭が欲しかったけど、大学教官の給料だとお金がたりなかった。小遣い稼ぎに小説を描いてみたら、小説が売れて、お金になった、、、って。面白すぎる。
その、第一作をちょっと読んでみたくなった。1週間程度で仕事の合間にかいた小説だったらしい。
目次
まえがき
第一章 お金とはなにか?
第二章 お金を何に使うのか?
第三章 お金を増やす方法
第四章 お金がないからできない?
第五章 欲しいものを買うために
第六章 欲しいものを知るために
そもそも、お金とは何か。経済学の書ではないけれど、やはり「価値交換」の手段なのだ。なにと交換するか。自分にとって価値のあるもの。それが買い物。
”お金は自分の満足を得るためのもの”
その通りだ。
で、問題は、何に満足をえられるのか、ということ。
森さんは、
”人のものを羨ましいと感じやすい人ほど、自分がもっているもので人を羨ましがらせたがる”といっている。
なるほど!ちょっと、わかる。
私は、あまり「モノ」に対する所有欲求がないほうだと思う。だから、他の人が持っているものを羨ましいとも思わない。でも、人が持っているものを羨ましいとおもうと、自分もそれを買うことにお金をつかっちゃうのだろう。。。。
私の場合、欲しいと思うものは、たいていその「機能」に魅せられる。故に、「使用するもの」にお金をつかうことになる。私にとっての満足は、「使い心地」「使いやすさ」「便利さ」なのだ。
森さんは、「ストレス解消にお金をつかう」というのも悪くないけれど、本当にそれがやりたいことなのか?と問う。
たしかに・・・。そのストレスの原因をなくすことにお金を使った方がいい・・・
例えば、会社の給料が安いことにストレスを感じていて、給料日にぱーーっと飲みに行っちゃう、みたいなお金の使い方。たしかに、わるくないけど、、、。お給料が上がるにはどうしたらいいのか?会社を変える。転職する。いやいや、割と手っ取り早いのは、会社員だったら昇格をめざして勉強することだ。
”お金は、自分の未来のために使う”
強く共感。それこそが、最大の投資だ。
それは、若者に限らない。50過ぎたって、還暦過ぎたって、お金は自分の未来のために使う。なにって、一番は健康だろう。
添加物まみれの加工食品ではなく、多少はお金、手間暇がかかっても、健康的な食事をするって、何よりの自己投資だと思う。
かつ、勉強にお金をつかう。自分の身についた知識やスキルは、自分を裏切らない。いくつになっても、好奇心を満たす勉強をし続けることほど、趣味と実益を兼ねた自己投資はない。
第三章 お金を増やす方法という章もちゃんとある。でも、財テクがかいてあるわけではない。確実にお金を増やす方法は、細かく分類すれば無数にあるけれど、大きくは次のようなものだと。
1 自分の時間とエネルギィを差し出して、その対価をもらう。 = 働く
2 自分の持ち物を売る
3 投資
4 ギャンブル
そして、3投資と4ギャンブルは、お金を減らす方法でもある!ということ。
あるいは、
5 盗む。お金の偽造。
これは、違法行為になるので、やめたほうがいい、、、と。
6 物乞いする
これも、おすすめではない。。。親や祖父母に物乞いするのはありかもしれないけど、、。ただ、税金がかかるので注意が必要、と。
でも、やっぱり、自分自身に価値とつけて、働くというのが一番だろう、と。
若者の中には、「やりがい」のある仕事をしたい、というひとがいるけれど、そもそも「やりがい」とはなんなのか?今の若者は「人から感謝されること」=「やりがい」と思っている節があるけれど、そうではない、と。森さんは、そういう考え方を「感謝されたい症候群」といっているのだけれど、例えば研究者というのはそこにやりがいを求めない。
私も、サラリーマン時代の半分近くは研究所で仕事をしていたので、顧客に「ありがとう」なんて言われる機会は皆無だ。それでも、研究者には研究者の「やりがい」があって面白いのだ。ある意味、「自己満足」なこともある。でも、それが会社の儲けにつながって、社会に価値提供できている、、と、自分で思えることに「やりがい」を感じる。
森さんは、助教授という立場でいながら、「人にものを教える」というのは好きではなかった、と言っている。
”自分は正しい。だから、教えてやるのだ。という姿勢が自分の価値観と相いれない”と。
あぁ、、、ちょっと、わかる。
私は、脱サラして、セミナー講師やコンサルタントで食べていこうとおもっていたのだけれど、実際に「セミナー講師」をやってみておもったのは、「私ごときが、偉そうによく言うわ・・・」という、自分自身へのダメだしだった。
それでも、コンサルは、私の知識でも人様の役に立てるなら、とおもうとやりがいを感じなくもない。セミナー講師だと、自分の考えを相手におしつけているようなきがして、、、そんなつもりはないのだけれど、でも、やっぱり、ちょっとちがうかも、、って思い始めてしまったのだった。いまだ、迷い中。
とまぁ、お金との付き合い方というのは、自分が何に満足するのか、自分の未来をどうしたいのかということと直結している、ということなんだろう。
森さんは、年収1億円になっても、それまでと生活は変えなかったそうだ。ただ、当初の木て通り、鉄道模型を走らせることのできる広い家を手にする。こう聞いていると、まるで独り者のようだけれど、ちゃんとお子さんも育てて、奥様とも幸せに暮らしていらっしゃる。
結婚当初から、それぞれが「収入の1割を遊ぶために使う」と決めたのだそうだ。二人で1割ずつだから、世帯収入の2割だ。
それって、結構すごい。
でも、そうすることが、「必要なもの」に使うのではなく「欲しいもの」に使う、というお金の使い方につながり、幸せな家庭に貢献したのだろう。
そういわれてみると、「必要」とおもって買うものって、あるようでないような・・・。必要であるから欲しいとおもっているかもしれないけれど、やはり、「欲しい」と思うことが大事だ。
森さんが子供の時にお母さんに買ってもらったニッパの話がでてくる。近所の雑貨屋さんなら1000円で買えるニッパだけれど、お母さんは百貨店で5000円のニッパを買ってくれた。プラモデルづくりが大好きだった森少年は、それを大事につかった。そして、今でもそのニッパは現役で活躍しているのだそうだ。
高くても良いものを手に入れるというのは、実は、投資なのだ。
私も、どちらかというと、そういうお金の使い方が好きだ。
あとは、やっぱり、経験することにお金を使うってことかな。
いくら稼いだから、いくら使う、ではなく、
いくら使いたいから、いくら稼ぐ。
って、発想の方が人生幸せなのかもしれない、って思った。
先日読んだ、『年収90万円で…』でも、忙しく稼いでいた時期もあったけれど、自分の時間を確保するために仕事を減らしていって、好きであまり消費しない生活をし、結果的にハッピーライフになっていたわけだ。
51歳で脱サラして、別にお金には困っていないけれど、なんとなく、やっぱり働かないといけないかなぁ、、、と思っていたけれど、、、お金の問題以前に、何がやりたいのかって、大事なんだな。物欲はあまりないけれど、やってみたいことはまだまだたくさんある。
この先の人生で、貯蓄をどうするかのマネープランではなく、何にお金を使うかのマネープランを作るって大事かもね。
お金は、未来の自分への投資に使う。
そう思ったら、また本を数冊ポチってしまった。
でも、きっと私にとっては正しいお金の使い方、かな。
読書は、楽しい。