『なぜヒトだけが老いるのか』 by 小林武彦

なぜヒトだけが老いるのか
小林武彦
講談社現代新書
2023年6月20日 第一刷発行

 

本屋さんで平積みで目に入り、新聞の広告で見かけた気がしたので、ポイント倍DAYに惹かれて購入した。900円(税抜き)の新書。

帯には、「大反響 累計20万部! 『生物はなぜ死ぬのか』待望の最新作!」とあって、著者の小林さん写真が。。う~~ん、みたことあるような、ないような、、、、。

他にも帯にはたくさんの文字が並ぶ。

 

”人間以外のの生物は老いずに死ぬ。ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があった。

「老いの意味」を知ることは、「生きる意味」を知ることだった。

本書の主な内容。
・産卵直後に死ぬサケ、老いずに死ぬゾウ、死ぬまで子が産めるチンパンジー
・ヒトは人生の40%が老後
・ヒトは毛が抜けて長生きになった?
・長寿遺伝子の進化
・寿命延長に影響した「おばあちゃん仮説」と「おじいちゃん仮説」
・「老化するヒト」が選択されて生き伸びた理由
・ミツバチとシロアリに学ぶ「シニアの役割」
・昆虫化するヒト
・不老長寿の最新研究
・85歳を超えたら到達できる「老年的超越」というご褒美
・廊下はどうやって引き起こされるのか

生物学者が提言する「最高の老後の迎え方」とは。”と。


著者の小林さんは、1963年、神奈川県生まれ。九州大学大学院修了(理学博士)。基礎生物学研究所、米国ロシュ分子生物学研究所、米国国立衛生研究所、国立遺伝学研究室を経て、東京大学定量生命科学研究所教授。日本学術会議会員。。。とのこと。

まぁ、随分と、コロコロとキャリアを変えている方だこと。。。でも、まだ60歳。

著書もいくつかあって、そのうちの一つが、本書の前段ともいえる『生物はなぜ死ぬのか』ということらしい。

 

目次
第1章  そもそも生物はなぜ死ぬのか 
第2章  ヒト以外の生物は老いずに死ぬ 
第3章 老化はどうやって起こるのか 
第4章 なぜヒトは老いるようになったのか 
第5章  そもそもなぜシニアが必要か 
第6章  「老い」を老いずに生きる
第7章 ヒトは最後に老年的超越を目指す


感想。
う~~ん、、、。何だこりゃ???
なぜ、20万部も売れるんだろう・・・・。
と、私にとっては、本書の主旨がイマイチよくわからなかった。

生物学的なことが書いてあるのかと思えば、どちらかというと著者の思想が書いてある感じ。

それは、人間社会にとってはシニアも役割があるので、人間は生殖機能をうしなった高齢になっても、幸せにいきていくことができる。ってこと?!

 

親しみやすい文章にしたくって、遺伝子をやきそばに例えたりしてみているのだけれど、分子生物学を専門とするわたしにとっては、なんだそれは?!?!余計わからないよ!!って、突っ込みたくなる感じだった。。。。


これは、前段の『生物はなぜ死ぬのか』を読んでみないと流れがわからないのか?

でも、養老先生は、「なぜ死ぬのかなんて考える必要が無い」ということをおっしゃるし、、、。『生物はなぜ死ぬのか』は、もう少しアカデミックにかかれているのか??
けど、この文体そのものが私はあまり得意ではないなぁ、、、って感じ。

 

おかしな主張があるわけではないけれど、サイエンスに基づいた仮説と、著者の思想的仮説とが、ごっちゃになっている・・・。生物学に詳しくない人が読むと、全てが科学的根拠に基づいている話しのようにおもっちゃうのではないだろうか。。。そこに、私は違和感を感じた。

 

人は、高齢になっても活躍できるというのは、その通りだと思うし、たしかに、肉体的にも精神的にも若い時のような勢いを無くしても長く人生をすごす。それは、「老いの時代」というのかもしれないけれど、そもそも「老い」という定義だって曖昧だ。「高齢者」の定義が曖昧であるように。法的・社会的な制度上の「高齢者」はあると思うけど。

これは、『日本の歪み』のなかでの東さんの「自由意志」のありようと似ているかもしれない、と、私は感じている。

 

ただ、著者は、「子孫を残すこと自体は生物の生きる目的ではなく、結果的に、子孫を残す生物がいきのこってきただけのことです」といっていて、すべては偶然の結果である、というのはちょっと共感する。

 

なぜヒトだけが老いるのか、がタイトルになっているけれど、実は、ヒトだけでなく、生殖可能年齢を過ぎても長生きする生物が紹介されていて、それは興味深い。
老後期間があるのは、シャチ、ゴンドウクジラ、ヒト、なのだそうだ。そして、その性質は、共通の祖先から受け継いだ性質ではなく、その種固有の性質、ということ。

たとえば、チンパンジーやゴリラは、ヒトと同じ霊長類の祖先をもつけれど、老後はない。ヒトだけが、老後期間がある。そして、シャチ、ゴンドウクジラも子供を産まなくなっても、子育てに協力する、という特徴があるそうだ。

 

著者は、「シニア」の存在意義を高く評価している。そして、「老人的超越」なんて言葉まで使っている。でも、、、、ご自身はまだ60歳。まだ、85歳まで生きたこともないのに、なんで85歳を過ぎると「老人的超越」というご褒美がある、なんて言えるんだろう。。
勝手に、人の人生にご褒美とかいわないでよ、、、って感じてしまった。

 

もうちょっとアカデミックな本かと思ったので、ちょっと、がっかり・・・。

社会的な意味で、なんで老いるかなんて、どうでもいいじゃないか。
そんなの、身近な諸先輩方の生き方をみて感じればいい。

なーんてね。

 

なんで、わざわざ買っちゃったのかなぁ。まぁ、別に、買って読んだことは後悔してないけど。たかが、900円(税別)だからね。高級グラスワイン1杯にもならない。

 

なぜ、この本が20万部も売れるのか、ということが興味深い。
老いることの意味を求めている人がいるということなのか???

 

私は、そんなこと考えるより、今日一日を大切に生きよう、と思う。