『年収90万円で東京ハッピーライフ』 by 大原扁理

年収90万円で東京ハッピーライフ
大原扁理
太田出版
2016年7月27日 初版発行
2016年12月11日 第四刷発行

 

また、なんで読もうと思ったか忘れてしまった・・のだが、何かで見かけて、図書館で予約した。すぐに借りられたので読んでみた。

191ページの単行本。文字も大きくて、あっという間に読める。なかなか、楽しく読めた。
文字通り、年収90万円程度で東京で暮らしている著者のエッセイみたいな感じ。

著者の大原さんは、1985年愛知県生まれ。 東京都在住。高校卒業後、3年間引きこもり、 海外1人旅を経て、現在、 隠居 6年目。 著書に『20代で隠居 週休5日の快適生活』がある、とのこと。

すでに、隠居6年目、 31歳の時の著書ということ。毎日アルコール漬けの母親と、学校ではイジメられる日々。それでも、英語が好きで得意だったことから、引きこもりの後に海外放浪の旅に。そして、シンプルライフになっていく。

 

感想。
うん、なんか、面白い。90万円で暮らしているということよりも、自分の頭で考えて、こうして著書にしているというところがすごい。色々とやってみた結果、今の成果に落ち着いた、ということなんだろう。東京といっても、23区ではない郊外のようだけれど、たしかに、自然もあって、お金もかからなくて、いいと思う。木の実をとったり、野草をとってきたり。自炊をしているところもいい。

 

私も、自給自足の生活、晴耕雨読にあこがれているので、ちょっと、羨ましいと思う。でも、なぜ、すでに50歳もすぎた私が、未だに首都圏に住んでいるのか。サラリーマンもやめたのに。。。仕事も、ほぼパソコン一つあれば済むこともあるし、あるいは、現場に出張するのであればどこに住んでいてもかまわない。でも、やっぱり、今の生活をいますぐやめようとは思っていないんだな。じゃぁ、いつ?!と言われてもわからないけれど、、、

本書の中で、「若いのに隠居なんて、この先どうするの?」とか「今しか見てない」と責められたりすることがあるけれど、それこそ「今こそ大事」ではないのか、と。いやぁ、ほんとにそうなんだよね。どうなるかわからない将来のことをあれこれ思い悩むより、「今」を一生懸命生きている著者は、なかなかいさぎよい。ただ、流されて今をいきているのではなく、ちゃんと自分の頭で考えている。だから、なかなか面白い一冊。

 

目次
はじめに
第1章  ハッピーライフの基本とは 
第2章  普通って何 
第3章  衣食住を実感する暮らし 
第4章  毎日のハッピー思考術 

 

「はじめに」で、なぜ、今の隠居生活にたどり着いたのか、ということが書かれている。高校を卒業したとき、私生活で他人に会うのを一切やめたそうだ。生活費を稼ぐためにバイトはしていたけれど、それ以外の時間は全部趣味につぎ込んだと。来る日も来る日も、図書館で借りた本を読んだり、映画を観たり、料理をしたり、掃除をしたり、寝たり起きたり。。。携帯も解約。引きこもりというより、他人との交流を絶ったということ。気が付いたら3年たっていて、気が付いたら口から言葉がでなくなっていた。バイトのマニュアル言葉はでて来るけれど、他の言葉がでてこない。こりゃやばい、と思い、お金を使わない生活で溜まった100万円で世界一周してこよう、と思い立った。

そして、行く先々で、住みついて本を読み漁り、テキトーに仕事もして、、観光もせずに過ごした。ロンドンでは、日本人の大学教授と出会い、色々なことを話した。気が付いたら、自分のなかに話題のストックがたくさんできていた、と。

そして、帰国後、東京に引っ越してみたけれど、家賃が高い。東京西部の多摩地区に引っ越したら家賃はその半分。ということで、忙しすぎる生活もやめて、仕事も減らし、使うお金も減らしたら、、きがついたら、週休5日の悠々自適の生活になっていた、と。

 

うん、やっぱり、羨ましい。
羨ましいといいつつ、「いつするんだよ!」と自分に突っ込みたくなる。
「いまでしょ」って、、、言い切れない自分が、しょぼい。。。

著者がいうハッピーライフとは、自分の価値観で生きること。

 

学校では、かなりひどいイジメにあっていたらしい。で、「今イジメられている人」に向けてのメッセージは、「いじめはかならず終わる」ということ。そして「イジメられたら全力で逃げろ」ということ。学校生活が終わると同時に、いじめは終わるのだ、と。まぁ、心の傷は終わらない気がするけど、、、。

著者は、親や先生、大人をたよってみたけれど、何も頼りにならなかった。だからこそ、自分の価値観で生きるのだ、と。自分の価値観で生きる、と思えれば少し強くなれるかもしれない。人の目を気にしない、って大事。

 

是枝監督の映画『怪物』も、いじめが一つのテーマだったけれど、子どもがそれぞれ自分の価値観をもっているところが、素敵なところかもしれない。好きなものがあるというのは、一つの価値観を持てるということなんだと思う。

megureca.hatenablog.com

そして、好きなこと、やりたいこと、がわからないときは、「やりたくないこと」をやらない、から始めればいい、と。

 

私も、脱サラして無職になったとき、「やりたくないことリスト」をつくってみた。これは、なかなか有効だ。

例えば、「汚い部屋に住む」のがやりたくないリストにあると、とうぜん部屋を綺麗にしたくなる。だれだって、「汚い部屋に住む」のなんて嫌だろう。でも、「綺麗な部屋に住む」という目標を立てるより、「汚い部屋に住まない」という目標の方が、行動に移しやすいのだ。

「やりたくないことリスト」って、結構お薦め。

・汚い部屋にすみたくない
・嫌な上司にイライラしたくない
・不健康に太りたくない

などなど・・・。

やりたくないことを解消する行動のほうが、実はやることがシンプルだったりする。

衣食住の話では、

食:自分で作って食べる。健康を体が知るようになる。
  食材を買う店を決めておく。
  安い食材を求めて歩き回る時間より、その時間を読書にあてたほうが幸せ。

衣:自分にしっくりくるものを着る。安いものでもいい。
  着ているモノより、姿勢が大事。
  
住:しっくりくる家に出会えるまで探す。

ってなことが語られる。

 

安いものを探して遠くの店に行くより、いつもの近くの店で購入するほうがいい、というのはよくわかる。安い店に行くと、要らないものまで買っちゃったりするし。
私も、買い物が牛乳だけのときは、自宅から1分かからないセブンイレブンで買うことにしている。セブンイレブンの牛乳、味も悪くない。他に余計なものも買わないし、コンビニは、ほんとにコンビニエンスだ。

 

すごいブランドの服を着ていても、姿勢が悪いと台無し、っていうのも大いに共感。姿勢もそうだし、肩掛けカバンでスーツが崩れているのも残念。姿勢、気を付けよう。
姿勢が悪いと、顔の表情まで暗く見える。姿勢よく立ったり歩いたりした方が、実は疲れにくいし、正しい姿勢を維持する事自体が筋トレになる。うん、姿勢、気を付けよう。

 

住まいは、私は今のマンションに落ち着いて6年以上になるけれど、やはり、駅近で、徒歩圏で暮らそうと思えばすべてそろうというのが、気に入っている。実際には、週に数日は電車に乗って出かけるけれど、それはそれで、やはり便利でいい。残念なことは、近くで畑をやったりできないこと。。。畑が近くあったら、最高なんだけど、、、さすがに、晴耕雨読の生活は、もうちょっと先かなぁ。。。

 

著者は、100人からの「いいね」より、自分の「いいね!」の方がずっと大事、って言っている。ほんと、その通り。自分の価値観で生きていて、素敵だと思う。

将来を考えてないのではなく、「今を大事」にしているのだ。

 

お金をたくさん持っていても、「なんでこんな高いんだ」とか「税金高い」とかいって殺伐とお金をつかうより、少ないお金を「ありがたい」と思いながら使うほうが、健全だって。お金を大事に使うと、お金からも自分を大事にしてもらえる、って感覚らしい。

著者にとっては、お金は「所有する」という感覚より、お金が「来てくれる」という感じだそうだ。買いたいもの、やりたいことがあるのにお金がないというのは、お金が「こいつにこれは似合わない」とか「こいつにこれはやらせない」って考えているということじゃないか、って。

ちょっと、わかる気がする。

お金は、大事だ。
でも、それは、大事なものに交換できるから大事なのだ。


なかなか面白い本だった。
何で読もうと思ったのかわすれてしまったけれど、自分の価値観で生きる、という大事なことを思い出させてくれた。

90万円で暮らす、というのは、著者にとっては結果論だ。
自分の価値観で生きたら、気が付いたら90万円で暮らせていた、ってことだろう。

自分の価値観を見つめ直したいなら、「やりたくないことリスト」お薦め。
私も、久しぶりに「やりたくないことリスト」を更新しようかな、って思った。

 

読書は楽しい!