『武器よさらば(下)』 by アーネスト・ヘミングウェイ

武器よさらば(下)
アーネスト・ヘミングウェイ
金原瑞人 訳
光文社古典新訳
2007年8月20日 初版第1刷
2016年12月25日 2刷
Title: A FAREWELL TO ARMS (1929)
 

武器よさらば(上)の続き。

 

本の裏の説明は、
”傷が癒え、再び 前線へと戻るフレデリック。 しかし戦況は厳しく、イタリア軍は敗走を余儀なくされる。フレデリック は戦線を離脱し、命がけでキャサリンのもとへ帰り着く。結婚を近いスイスへ脱出する二人。だが、 戦場の中で燃え上がった愛の結末はあまりにも悲劇的なものだった。 ”
とある。

 

え?そうなの?この二人に悲劇がやってくるの?フレデリックの心変わりか???
と思いながら、続きを読む。

 

感想。
あんまりだ・・・・。
救いようがない。。。。
こんな悲しいお話あるか???

 

まどろっこしいから、ネタバレしてしまおう。

なんと、二人に起きた悲劇とは、、、
逃亡した先のスイスで二人は生活を落ち着けるのだが、キャサリンは難産で危険な状態になり、急遽帝王切開をしたものの子供は死産。そして、キャサリンも出血多量で死んでしまうのだ。。。。

えー?えー?えー??
まぁ、、、これが、ヘミングウェイか。と思いつつも、むなしく本を閉じた。

むなしすぎる・・・。

 

まぁ、そこに至るまでに、物語があるのだけれど、、、(上)の最後、リハビリ休暇だったはずが、黄疸で寝込み、その原因がアルコールの飲みすぎだったことがばれて、前線おくりとなったフレデリック。膝は手術が成功したおかげで、歩くことには支障がなくなっている。

そして、再び、リナルディたちのいる前線の現場にもどる。フレデリックの帰りを喜んでくれるリナルディ。リナルディは、現場で手術ばかりやらされていた。そして、「まったくひどい戦争だ。さぁ、ふたりで酔っぱらって、元気になろう」とコニャックとコップをもってくる。リナルディが手にしていたコップは、フレデリックが以前、歯磨き用にしていたコップだった。
「おまえを忘れないようにこれを使っていたんだ」と。

 

こんなチョットしたやり取りで、リナルディがフレデリックのことをどう思っていたかがつたわってくる。うまいな、、、ヘミングウェイ

 

そして、戦況は、だんだんと怪しくなる。どっちも消耗しているし、戦地には、ドイツ軍の姿もみられるようになる。そんな戦地でフレデリックは、部下としてボネッロ、アイモ、ピアーニをついれてすすんでいく。大雨の戦地をすすみながらフレデリックはキャサリンのことを思っていた。

 

”あぁ、いまキャサリンがこの腕の中にいて、一緒にベッドにいられたら。大好きなキャサリン。やさしい恋人のキャサリン、雨のように降ってきてくれ。風よ、彼女を運んで来い。そう。おれたちは風の中にいた。だれもが風につかまっている。小雨なんかじゃ、風はやまない。「おやすみキャサリン」おれは大声で言った。”

 

フレデリックは、すっかりキャサリンに夢中になっているのだ。愛する者がいるということに夢中になっている。だから、戦地でもがんばれるのか・・・・。

フレデリックたちは移送用の車を届けるのが任務だったのだが、途中で車が泥で脱輪し、にっちもさっちもいかなくなる。やむなく車をすてて、歩き始めたフレデリックらは、敵兵の姿をときに目にしながら、隠れて歩き続ける。そして、途中でこともあろうかイタリア兵がフレデリックらに銃を発射した。誤射だったのだろうが、アイモは、あっという間に死んでしまった。弾が頭を貫通した・・・。

またも、部下を失ったフレデリック。そして、人気のいなくなった農村を歩きながら、基地をめざした3人だったが、途中でボネッロは逃げ出す。もう、みんな戦争なんて、、、とおもっていたのだ。ピアーニと二人になったフレデリックは、歩いている最中に憲兵につかまってしまう。そして、中尉であるがために、尋問され、射殺されそうになる。

フレデリックは、尋問される前に逃げ出し、河に飛びこんで逃亡する。撃たれて死ぬか、溺れて死ぬか、冷たい水で凍え死ぬか、、、、。フレデリックはしばらく丸太につかまって流され続け、ようやく岸辺にたどり着く。そして、もうそこからは脱走するしかなかった。
列車の貨車に隠れて乗り、ミラノまで帰ってくるのだった。

軍服は捨てた。逃亡兵になってしまったのだ。ミラノの街では、怪しげな人がウロウロしている。親切な男に助けられ、フレデリックは軍服から普通の洋服に着替え、一般人の顔をしてミラノの街をあるく。キャサリンがいるはずの場所へ行ってみるが、キャサリンはストレーザに行っていると聞かされる。そして、キャサリンを追いかけて、ストレーザへ行くフレデリック

キャサリンと無事に再開し、喜び合うふたりだったが、フレデリックが軍服をきていないことで、脱走兵だと指摘する人が現れ、かくまってもらっていたホテルのバーテンダーが、「明日あなたを逮捕しに来るそうです」とつたえてきた。

バーテンダーが用意してくれたボートで、夜中にイタリアを出てスイスへ亡命しようとする二人。危ない橋を渡りながらも、夜中に国境を越え、身重のキャサリンフレデリックは無事にスイスへの入国をはたす。二人のパスポートがアメリカとイギリスだったこと、二人とも2500リラと1200リラと大金をもっていたことでスイスの警察からは丁重に扱われた。

当時のリラがどれほどの価値だったのかはわからないけれど、少なくとも警察が「客」とみなすだけの金額だったらしい。

そして、二人は、スイスの街に落ち着いて生活を始める。そして、とうとう、キャサリンの陣痛が始まり・・・・・

先に述べた悲劇で物語は終わっちゃうのだ。

 

子供も、キャサリンも死んでしまった。フレデリックは、途方に暮れる。
死んだキャサリンの部屋で一人にしてくれと、医師と看護士を追い出したフレデリック

”しかし、二人を追い出してドアを閉めて伝記を消したものの、何がかわるわけでもなかった。銅像にさよならをいうようなものだ。しばらくして、部屋を出た。病院をあとにすると、ホテルまで歩いてもどった。雨が降っていた。

THE END”

 

あぁ、、、、、なんということ。。。
ほんとになんて小説なんだ・・・。

 

キャサリンが死んだのは出産のせいであって戦争とは関係ない。でも、故郷でもなく逃亡先のスイスで死んでしまう。キャサリンと二人だったからスイスに来たはずが、独りぼっちになったフレデリックは、このあとどうするのだろう・・・。アメリカに変えるのかな、、、なんて思ったり。

 

なるほど、人は簡単に死んでしまう・・・・。

なんてこった。。。

 

描写は美しく、読んでいてドキドキする。いつかは、ヘミングウェイを英語で読んでみたいな、って思った。なんだかんだ、やっぱり古典はいい。

 

救いようがなく悲しいお話だったけれど、そこに生きた二人がいたかお話がある。

やっぱり、小説もいい。

読書は楽しい。