『百年文庫 42  夢』  ポルガー、 三島由紀夫、 ヘミングウェイ

百年文庫 42 

ポルガー、 三島由紀夫ヘミングウェイ
株式会社ポプラ社
2010年10月12日 第一刷発行

 

図書館で、特設コーナーに置いてあった。『夢』という文字と、作家の名前だけがかかれたシンプルな装丁。三島由紀夫の名前があったので、手に取ってパラパラみてみると、短編のオムニバス。時間つぶしに良いかと思って、借りてみた。

本書は、三つの作品がおさめられている。

 『すみれの君』ポルガー  池田紀訳
 『雨のなかの噴水』 三島由紀夫
 『フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯』 ヘミングウェイ 高見浩訳

 

それぞれの紹介が、本の裏に。

『すみれの君』
”女友達に効果の贈り物をし湯水のように金を使う 貴族 ルドロフ 借金を重ねて 落ちぶれてもプライドは置いてなお高く・・・・”

 『雨のなかの噴水』
” 人生で最初の別れ話を切り出す 少年 の 高揚感をユーモラスに描いた三島由紀夫の作品”

『フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯』 
” 料理人や世話係を連れ 狩猟のテントを張る マカン バは妻に融資を見せようとライオン狩りに向かうが…”

”夢を追った人たちのおかしくてちょっぴり 苦い物語”とある。

 

ポルガー(Alfred Polgar)は、1873年生まれ。オーストリアの作家で、ジャーナリスト。世紀末のウィーンでカフェに集い、多くの文学者や芸術家と交流しながら新聞記者 演劇評論家として活躍。

 

三島由紀夫は、1925年、東京四谷生まれ。1946年 川端康成の推薦で文壇にデビューし 49年の仮面の告白 で作家としての地位を確立。 70年に 自衛隊の 市ヶ谷駐屯地で割腹自殺。

 

ヘミングウェイ (Ernest Hemingway) は、1899年生まれ。 アメリカの小説家、詩人。 新聞記者として 滞在した パリで小説を書き始め、従軍や狩猟旅行などの実体験をもとにした作品で作家として不動の地位を確立した。 1954年にノーベル文学賞を受賞。

 

感想。
へへへ。なんだか、おかしいというか、悲しいというか、人間って、みじめで情けなくても愛すべきものっていうか。くすっと笑ってしまう1冊。ヘミングウェイの作品は、笑えないほどブラックだけれど。。。

 

最初に、三島由紀夫の作品を読んで、クスっというか、あらら、というか、おかしくて、、、、。短編なので、他の2つも読んでみた。ポルガーの作品から順番にブラック度が増していく感じ。さらっと読める。小型の単行本。何も考えたくないようなときに、さらーーっと読み流してみると、ま、人生そういうこともあるよな、、、みたいな、セツナサを笑い飛ばせるような。

 

この、「百年文庫」というのは知らなかったけれど、他もさらっと読みに読んでみてもいいかな、という気がした。本のうしろについていた百年文庫の作品リストには、どの本も漢字一文字のタイトルが並ぶ。2010年から2011年にかけて100巻完結予定、となっている。他は見かけたことないけれど、今度暇なときに探してみよう、と思う。

 

ちょっとだけネタバレすると、、

 

『すみれの君』は、羽振りのよかった女ったらしの貴族ルドルフが、落ちぶれた後年に、昔の女性のひとりに結婚を申し込まれる。子供ができたけど、相手が死んでしまったので私生児にしないために、一瞬だけ結婚して、すぐに離婚してほしいと。戸惑いながらも承諾したルドルフは、結婚指輪を買う金もなく、彼女の宝石箱からブローチをくすねて指輪にリメイクし、彼女にプレゼントする。落ちぶれても、女に好かれたいルドルフが、笑える。

 

『噴水の中の君』は、女と付き合うということよりも、女と別れるということに憧れてる明夫のバカ話。「別れよう」という言葉を口にしてみたかった明夫は、カフェでのデートの途中、雅子に「別れよう」と言ってみる。雅子は、何も言わず泣き出す。そうか、これが別れるってやつか、と調子に乗っている明夫だが、さて、その次にどうしたものか、、、。喫茶店をでると、雅子がついてくる。しょうがないから、明夫はただ街をふらつく。噴水に辿りつく。雅子の涙のように流れ続ける噴水。ただ、歩き続ける明夫に雅子がふいに「どこに行くの?」といって、ついてくる。「どこっへって、そんなことは俺の勝手さ。さっき、はっきり言ったろう?」という明夫。雅子は平然という。「何て?」
自分に都合の悪いことは、きかなかったことにした雅子。女は強し。明夫は、何も言えなかった・・・。

 

『フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯』 は、アフリカに狩猟旅行に来たアメリカ人夫婦に起きた悲劇。いや、喜劇か?奥さんに勇敢なところを見せようとするマカンバーだったけれど、自分が撃ったライオンを最後の仕留めに向かったとき、怖さのあまりに逃げ出す。ハンティングガイドのウィルソンとその助手らがライオンを仕留めたことで、助けられたマンカバー。ひとりライオンに背を向けてすたこら逃げ出す姿は、マカンバー夫人を失望させた。マカンバー夫人はその夜のキャンプで、数時間ほど留守にした。そして、翌日の朝、不機嫌なマカンバーをみて、ウィルソンは夫人が自分のキャンプに戻ったときに夫を起こしたことを知る。。マカンバーは、その失態を回復すべく、翌日にはバッファロー狩りに向かう。車でバッファローのいる沼地に向かった一行は、3頭の立派なバッファローを見つける。事もあろうか、車の中からバッファローに発砲したマンカバー。ウィルソンに責められ、いそいそと車を降りて、バッファローにとどめをさしに行く。1頭は、マカンバーの弾が当たって、倒れる。逃げた2頭は、ウィルソンのとどめで完全に倒れた。立派な3頭を倒したと思っていた一行だったが、最初の1頭は、絶命していなかった。そして、マカンバーらに向かって突進してくる。ウィルソンが急所を撃ったにもかかわらず、マカンバーに突進してくるバッファロー。絶体絶命。そこに一発の銃声。車にいたマカンバー夫人が撃った弾は、夫の後頭部に命中した・・・・。夫人の向けた銃口は、果たしてバッファローに向かっていたのか、夫にむかっていたのか。。。
ちゃんちゃん。


なんとも、物悲しくも、くすりと笑ってしまう3つの短編。
なぜ、タイトルが、「夢」なのだろう。
「夢」であったらよかったのに、、、ということか。はたまた、いずれも誰かの「夢」の物語なのか。

 

なんともいえず、読み応えというか、あら、面白いじゃない、って感じだった。
このシリーズ、100冊読んだら、かなり楽しそう。

気が向いたら、少しずつ読んでみよう。 

 

図書館は、時に予想外の発見があって、楽しい。

やっぱり、読書は、楽しい。