『キツネどんのおはなし』 by ビアトリクス・ポター

キツネどんのおはなし
ビアトリクス・ポター さく・え
いしいももこ やく
福音館書店
1974年2月28日 発行
2002年10月1日 新装版発行
2019年11月5日 新装版改版発行
ピーターラビットの絵本ー13

 

石井桃子さん翻訳の絵本をもとめて、ピーターラビット、シリーズ13。キツネどんのおはなし。これも、12と同様に、白黒のイラストもある。


そして、

”わたしは、これまで、おぎょうぎのいいひとたちのおはなしばかり かいてきました。”

とはじまる。


え~~~!! へんなひとたちばかりだったじゃない!って、いきなり突っ込みたくなる。おばかさんだったり、おぎょうぎわるかったり、、、。

”そこで、こんどは 気をかえて、 ふたりの いやなひと アナグマ・トミーとキツネどんのおはなしを かいてみようとおもいます。”、だって。

 

そして、嫌われ者のキツネどんとアナグマ・トミーのお話。

 

キツネどんは、いやなかんじのひげをはやし、いつも引っ越しをしていたけれど、冬と春先は、ブル・バンクスという土手のあいだの土の中にもぐっている。でも、ベンジャミン・バニーの一家をふるえあがらせたりもする。

 

ベンジャミン・バニーは、シリーズ2に出てきたピーター・ラビットのいとこだ。ピーターの兄妹のフロプシーと結婚している。

megureca.hatenablog.com

 

キツネどんは、家をたくさん持っていて、留守にしている家には、アナグマ・トミーが(ゆるしもうけずに)入っていることがよくあった。

 

アナグマ・トミーは、いつも笑ったような顔をしていて、"くらしぶりは、あまりじょうひんではありません。"

ねるのはひるまで、ふくはいつでもどろだらけ。トミーは、ときたまうさぎ肉のパイをたべるけれど、年寄りのうさぎのバウンサーさんとは仲良しで、ふたりはそろってキツネどんを嫌っていた。キツネどんのわるぐちをいうときは、ふたりは大いに盛り上がった。

と、ここで、驚きの事実。
バウンサーさんは、むすこのベンジャミンや、よめのフロプシーや、うまれたてまもないまごたちと くらしていました。”と。

そう、シリーズ13は、キツネどんとアナグマ・トミーという嫌われ者二人の話なんだけれど、そこに巻き込まれるのが、ベンジャミン一家とピーター。
83ページの大作なのだ。

 

長いストーリーをかいつまんで話すと、、、、

 

嫌われ者のキツネどんとアナグマ・トミー。ふたりは、互いにもいがみあっていた。

キツネどんの家に無断で入り込むトミーは、あるとき、エサをさがして彷徨っているうちに、仲良しのうさぎのバウンサーじいさんに出会う。バウンサーじいさんは、たいそうなお年寄りで、家の前でのんびりしていた。いやいや、ほんとう、のんびりしていてはいけなくて、ベンジャミンとフロプシーが出かけている間、生まれて間もない子ウサギたち、孫の子守りをしていたはずだった。

でも、トミーと話し込むと、家の中に誘って、「よめのつくったさくら草酒」までご馳走してしまう。そして、眠り込み・・・・。

ベンジャミンとフロプシーが家に戻ったときには、トミーも、子どもたちの姿もなかった!
「だれも、家になんかいれていない」とうそをついたバウンサーじいさんだけれど、アナグマ・トミーのいやな匂いですぐに嘘だとばれてしまう。おまけに、子どもたちがさらわれた。さぁ大変!!

おじいちゃんは、面目丸つぶれ。フロプシーはおこっておじいちゃんをぶちました。

おっと!老人虐待!!

フロプシーは、おじいちゃんのお気に入りのパイプも煙草も取り上げてしまう。。。

 

ベンジャミンは、あわてて、トミーの丸い足跡を追いかける。途中で、いとこのピーターにであう。そして、ピーターは、ごにょごにょ動く袋を手にして歩いていくトミーをみたという。子どもたちがトミーにさらわれてしまったことを理解したピーターは、ベンジャミンと一緒に、トミーの足跡を追いかける。

途中、ピーターの妹のカトンテール(黒兎のところへお嫁に行っている)の家で、トミーをみなかったかと聞くと、あっちへ歩いていくのをみた、という。

 

ふたりは、トミーの足跡を追いかけ、ついに、キツネどんの小屋で、こうさぎ料理を準備しようとしているキッチンを目にする。トミーは、キツネどんの寝室で大いびきで寝ていて、こどもたちはまだ料理されていない様子。バウンサーじいさんのだした、さくら草酒がきいているらしい。

しかし、小屋のまども扉も鍵がかかっていて、中に入ることができない。こどもたちの姿も見えない。まどをカタカタしていると、どうやら、キッチンのかまどの穴に、こどもたちは閉じ込められて、蓋をされているらしい。まだ、火はついていないので、こどもたちは無事だった!!

 

なんとか子どもたちを助け出そうと、小屋に侵入するために、ふたりは中に通じる穴を掘り始める。もう、日も暮れて、夜になっていた。二人は掘り続け、明け方、もうすぐ、キッチンの真下まで届きそうなところまできた。そのとき、昨晩よく眠れずにとっても不機嫌なキツネどんが、小屋に向かってやってきた。大変!!!

二人は、自分たちの掘った穴に逃げ込んだ。

幸いなことに、キツネどんは、アナグマ・トミーのいやな臭いに気をとられて、うさぎの臭いには気づかない。キツネどんは鍵をつかって中に入ると、寝室ですごい大いびきをかいているトミーをみつける。おまけに、ひとのベッドを使いやがって!!!

 

キツネどんは、トミーを叩き起こすことはせず、仕返しを模索する。思いついたのは、水攻め。バケツを用意すると、バケツにつないだひもを外の木にきつく結びつけた。そして、寝室に戻ると、バケツをベッドで大いびきをかいて寝ているトミーの真上にぶら下げて、水をみたした。そとから、紐を切って、バシャンと水をぶっかけてやろうという魂胆だ。

外にでて紐を切ろうとするけれど、固く結んだヒモはほどけない。キツネどんは20分以上もかけて、カミカミ噛んで、やっとこさっとこ、紐を切ることに成功。バシャン!!小屋の中では、バケツがひっくり返った音が響いた。

ずぶぬれになったトミーをみてやろうと窓際に戻ってきたキツネどんだが、ベッドはずぶぬれになっているけれど、蒲団の中の盛り上がりはピクリともしない・・・。これは!思いのほか、トミーを殺すことに成功したか!!と小躍りするキツネどんだった。

けれど、事実はちがった。途中で眠りから覚めていたトミーは、キツネどんの作戦に気づき、眠っているふりをしながら、キツネどんの作業を見守り、キツネどんが小屋を出た時にはベッドからはい出て、かわりに毛布を丸めてじぶんのかわりに仕立てて、ベッドにもぐらせていたのだった。

キツネどんが小屋に戻ってみると、なんと、トミーは食卓で悠々とお茶をのんでいるではないか!!!


そこから、二人の格闘。小屋の中はぐっちゃぐっちゃ!お皿は割れるし、椅子も壊れるし、なにもかもがぐっちゃぐちゃ!!二人は掴み合ったまま小屋から転がり出ると、そのままどんどん小屋の遠くまで、ケンカをし続けた。

おそるおそる穴からでてきたベンジャミンとピーターは、急いで子どもたちを救出すると、家へと戻ったのでした。

 

こどもたちが帰ってきて、フロプシーは大喜び!一晩、おじいちゃんと険悪な空気で過ごして、気分転換に春の大掃除をはじめていたフロプシーは、おじいちゃんにあたらしいパイプとたばこをプレゼント。

”おじいちゃんは はじめ もったいぶって、手をだしませんでしたが、やがて、うけとりました。”

それから、ピーターとベンジャミンが自分たちの冒険を話して聞かせる。でも、キツネどんとトミーのケンカがそのあとどうなったか、ふたりともしりませんでした。

おしまい。 

 

なんともまぁ。。。

アナグマ・トミーもキツネどんも、、、。

キツネどんの小屋には、壊れたバケツが2つ、煙突の代わりに置かれていたというから、このキツネどんは、どうやらシリーズ11であひるのジマイマをだまして卵をたべちゃおうとした紳士と同一キツネらしい。

megureca.hatenablog.com

孫を危険な目にあわせてしまったバウンサーじいさんの、なんともいたたまれないこと、、、。嫁には、叩かれるし、、、。まぁ、無事にこうさぎが帰ってきたからよかったようなものの、これで、こうさぎがトミーにうさぎパイにされていたら、、、お話にもならないな・・・。

 

それにしても、ベンジャミン・バニーの子供たちは、いつでも危険な目にあう運命らしい。この子たちが育った姿はいつかお話に出てくるのだろうか・・・。

 

続きが楽しみ。