キリンのなやみごと
ジョリ・ジョン さく
レイン・スミス え
岡野 佳 やく
化学同人
2021年9月25日 初版第一刷発行
GIRAFEE PROBLEMS (2018)
『世界をひらく 60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)で紹介されていた本。『世界をひらく 60冊の絵本』自体は、まだ、全部読んでいないのだけれど、あえて、紹介されている絵本を読んでから、読んでみようかと。絵本を先入観なしに読むために。
本書は、”第一章 自分らしく生きる”からの紹介。
大判の絵本。
表紙をめくると、中表紙にゼブラ模様がどーーん。
絵は、色を紙面に落とした後にブラシをかけたような、不思議な筆づかい。
そして、1ページにキリンの全体像が入りきらず、首だけとか、耳だけとか、、キリンの大きさを感じさせてくれる配置も楽しい。
”このくび、いやなんだ。
ほんと
いいとこない。”
と、主人公のキリン、エドワードは、自分の首が長いのが悩みの種。一生懸命、長い首を隠そうとする。周りのシマウマ、ゾウ、ライオンの首はみんな素敵に見える。
”なんで、ぼくのくびは こうじゃないんだろう”
と、しょんぼりして、くびを地面の石の上に投げ出すと、それは石ではなくカメだった!
カメのサイラスとであったエドワード。エドワードは、サイラスが首が短くてあこがれのバナナに届かない、、、と嘆いているのを聞いて、いとも簡単に木の上のバナナを取って、サイラスにプレゼントする。
エドワードの首を褒め讃えるサイラス。
”サイラスのくびも すてきだよ。”
もしかすると、ぼくたちの首は素敵なのかもしれない。ちょうネクタイが似合いそう。
二人でおそろいのちょうネクタイをして、森の木の上から首をだすエドワードの首に登ったサイラス。
二人でいっしょに草原のむこうをみつめる。
”ありがとう、サイラス。
このくびでよかった。
はじめて じまんにおもえたよ。”
THE END
ちょっと、アニメチックな絵で、キリンのクリーム色と、カメのグリーンがかった色、自然の緑と木の茶色。色の具合が、なんともナチュラルに美しい。
お話は、他の人との違いに悩むサイラスが、自分のよいところにも気が付く、っていうことだけれど、まさに、自分のままで、いい所あるよ!って感じ。
ほのぼの。
サイラスは、自分の長い首が嫌いだから、スカーフを巻いてみたり、ネクタイを巻いてみたり、首を隠すためにたくさん飾りをつけるのだけれど、そのページは、絵本が見開きをタテヨコ90度に回して使っていて、首の長さを強調。また、サイラスがエドワードにバナナを取ってあげるシーンは、絵本の1ページが袋とじの縦開き。
地面にいるエドワードと、たか~~いところのバナナをくわえるサイラスの長い首の対比が面白い。
ほほほ。
楽しい絵本。
ストーリーは単純だけれど、サイラスが羨むたくさんの動物もでてきて、にぎやか。蟻の絵が、なぜか、頭・胴・腹の3つの丸ではなく、4つの丸なのが気になるけど、、、、。ま、それをいったら、草食動物のキリンの目が、横に二つ並んでいるし、、、。ピカソ的?!でもある。
写実は求めていない。
それぞれの動物の特徴が可愛らしく描かれていて、すごいなぁ、、、って思う。
『世界をひらく 60冊の絵本』の解説によれば、最後に二人が眺めているのは「サバンナの夕日」らしい。
自分の好きになれないところも、他の人から見たら素敵なところかもしれないよ。
サイラスは、おかあさんしか褒めてくれないっていっていたけど、おかあさんが褒めてくれていたのは、ホントだったんだね。
分類するなら、動物を主人公にした、動物擬人化絵本ってところかな。
だいたい、自分でコンプレックスにおもっていることなんて、他の人はたいして気にしていなかったりする。みんなちがっていて、当たり前なんだしね。